計算理論 I
Theory of Computation I
講義内容
計算理論は,情報科学において多くの重要な方法論と結果をもたらした。例えば,有限オートマトンに関する基礎的な事柄は,情報科学の多くの分野で必須の知識となっている。
本講義ではまず,重要な言語クラスである正規言語と文脈自由言語に話題を絞り,形式言語理論のエッセンスを解説する。 次に「計算機で解けない問題があるのだろうか」といった,計算機の能力の限界に関する疑問に答えていく。
最後に,さまざまな計算モデルの関係を表すチョムスキー階層について簡単に解説する。
1. 正規言語
・有限オートマトン(定義, 決定性モデルと非決定性モデルの等価性)
・正規表現(定義, 有限オートマトンとの等価性)
・有限オートマトンの簡単化
2. 文脈自由言語
・文脈自由文法(定義, 簡単化, チョムスキー標準形)
・文脈自由言語の性質
(言語演算に対する閉包性, パンピングレンマ, 認識アルゴリズム)
3. 計算可能性
・チューリング機械(定義, 能力を限定/拡張したモデル)
・決定不能性(対角線論法, 還元による証明法)
4. チョムスキー階層
・正規文法と有限オートマトン
・文脈規定文法と線形拘束オートマトン
・0型文法とチューリング機械
教科書
J.ホップクロフト・J.ウルマン著,野崎・高橋・町田・山崎訳 :
オートマトン 言語理論 計算論 I,サイエンス社,1984.
参考書
1. J.E.Hopcroft and J.D.Ullman : Introduction to Automata Theory,Languages,
and Computation,Addison-Wesley,1979
(本講義の教科書の原典)
2. 富田悦次・横森貴著 : オートマトン・言語理論, 森北出版
(基本となる概念を丁寧に説明したテキスト)
前提とする知識(必ずしも先修条件ではない)
アルゴリズムとデータ構造(アルゴリズム概論 )
ブール代数(計算機構造概論)