ゼミナール発表

日時: 09月26日(Mon)2限


会場: L1

司会: 渡辺 一帆
井元 兼太郎 M 生命機能計測学 湊 小太郎 池田 和司 杉浦 忠男
発表題目:二光子顕微鏡像の立体可視化のための高感度イメージング法
発表概要:二光子顕微鏡を用いれば生体組織内部を非侵襲かつ低光毒性条件で長時間観察でき,取得した画像を重ね合わせることで三次元画像を作り出すことができる.そのため,二光子顕微鏡は生物分野において微細生物構造の理解のための重要なツールとなっている.しかしながら,二光子顕微鏡で得られた画像を用いた大規模な三次元の立体可視化や探索は未だ達成されていない.そこで本研究では,二光子顕微鏡を用いた2000³voxelの大規模三次元可視化や効率的解析法を実現することを目的として,可視化に適した三次元データの取得法を考案・開発し,巨大画像を立体可視化する枠組みを構築することを目指す.現状の二光子顕微鏡では,画像に含まれるノイズが深部の観察を困難にしているという問題がある.この問題を解決するために二光子顕微鏡にEOMによるパルス列変調法を導入した.また,脳ファントムを用いて感度計測実験を行い励起効率が向上し,深さ1000μmまで高感度にイメージングできることを確認した.今後,サンプルにマウス脳を用いて深部観察を試み感度測定を行う予定である.
 
田中 達規 M 生命機能計測学 湊 小太郎 池田 和司 杉浦 忠男 佐藤 哲大
発表題目:膵がん患者データを用いた知識獲得の検討
発表概要:本研究の目的は血液検査データを利用し、膵がん疾患に関連する項目の抽出と膵がん患者と非膵がん患者との判別分析の精度を高める手法を提案することである。血液検査の中でもAlb、HbA1cなど一般的な血液検査項目を対象とし、それらにデータマイニングを行う。収集したデータを膵がん患者と非膵がん患者とでグループ化し、「マハラノビス距離」と「決定木法」を用いて両者を分別するためのルールを抽出し、また学習データとテストデータに分けた後に判別分析の精度を求めた。判別結果はTP率が66%、70%、FN率が98.1%、99.4%であり、医師からはスクリーニング検査として十分との評価を受けた。またAlb 、HbA1c、RBCの差分が影響因子として共通していることが示された。本発表では得られた結果と今後の検討事項を報告する。
 
丸野 由希 M 数理情報学 池田 和司 金谷 重彦 作村 諭一
発表題目:Wavelet変換と特異値分解を用いたユーザ状況推定技術
発表概要:We propose a novel human activity recognizer for an application for mobile phones. The goal of this study is to discriminate user’s status into walking, running, standing still or being in a moving train, providing rich information to the user according to the status. The method collects only a time-series of a three-axis accelerometer, which is nowadays equipped to most mobile phones, and preprocesses it so that it does not depend on the position or direction of the sensor. The wavelet transform is known to provide good features for discrimination but it requires a large amount of computation. Our method reduces the dimensions of features by using the singular value decomposition and classifies the status with a neural network. Our experiments show an accuracy of over 90% for human activity recognition.
 
田中 大河 M 数理情報学 池田 和司 金谷 重彦 作村 諭一
発表題目:力学過程を考慮した細胞の形態変化と分子活性のモデルの提案
発表概要:脳の学習機能は神経回路の変化、つまりシナプス可塑性と構造可塑性(形態変化)によって実現される。構造可塑性は未だに不明な点が多いため、その原理解明は重要である。一般に、細胞の形態変化は、Rho family small GTPaseと呼ばれる生体分子群によって制御されていることが知られている.しかし、これら分子の活性度に対する形態変化は複雑であり、未解明である。本研究では,細胞の形態変化に必要な力学過程の静止摩擦力・動摩擦力によるモデル化、および細胞内のGTPasesの活性度に関する実験データの解析を行い、分子活性と形態変化の複雑な関係が説明可能であることを示す。
 

会場: L2

司会: 吉田 則裕
木村 周 M 情報基盤システム学 藤川 和利 安本 慶一 猪俣 敦夫
発表題目:認識対象者を考慮した加速度センサによる行動認識
発表概要:近年のモバイル端末への加速度センサの搭載により、加速度センサーを用いた行動認識が広く研究されている。しかし、加速度センサを用いた行動認識では、ユーザの加速度センサの装着部位、着ている服の種類、荷物を持っているか、どこで行動をしているか、など想定されるシチュエーションは多種多様であり、あらゆるシチュエーションを想定して十分な教師ありデータを集めることは難しい。そこで、本研究では、音声認識の分野で研究されている教師なし個人適応技術に注目した。教師なし個人適応技術では、対象ユーザの教師なしデータを分類するために、最初に教師ありデータで構築される分類器(以下:行動者クラスモデル)の精度が重要になる。本提案では、最初に構築する分類器の精度を向上させるために、対象ユーザと類似しているユーザのデータのみを用いて行動者クラスモデルを構築する。そして、行動者クラスモデルで分類した比較的信用度の高い教師なしデータをMLLR法を使うことで、さらに個人に特化したモデルを構築し、行動認識の識別率の向上を目指す。
 
宮城 亮太 M 情報基盤システム学 藤川 和利 安本 慶一 猪俣 敦夫
発表題目:センサーネットワークのためのPub/Subシステムの提案
発表概要:センサデータは時間経過による価値の劣化が激しく、台風など特定のイベントにより問い合わせ要求に偏りが生じるという特徴がある。そのため、条件にマッチするデータが来るたびに配送を行うPush型のデータ配信であること、類似した問い合わせ要求のマージ処理が求められる。センサデータを扱う手段としてPublish/Subscribe(Pub/Sub)システムを利用することが挙げられる。Pub/SubシステムではPush型配信、Subscriptionの統合による類似処理のマージや分散処理が可能である。しかし、データ配送過程における加工処理ができず、配送パスの構築コストが高いためスケーラビリティに問題がある。そこで本研究では、配送過程上でデータ処理を可能とするデータコンポーネントを導入し、登録情報の管理等を専門的に行う管理機構を導入することでスケーラビリティ向上を目指したセンサネットワークのためのPub/Subシステムの提案を行う。また、本提案ではセンサデータとの結びつきが強い地理情報を考慮した分散処理戦略、過負荷時処理のためのSubscription移動機構も取り入れる。
 
和田 倫和 M 情報基盤システム学 藤川 和利 安本 慶一 猪俣 敦夫
発表題目:コンテンツの人気度に応じたP2Pクエリ処理最適化手法
発表概要:P2P技術の発展により, 様々なP2Pサービスが開発・利用されている. 代表的なP2Pサービスモデルとして, SHA-1等のハッシュ関数を用い, コンテンツの所在と実体である"key, value"ペアを作成し, P2Pネットワークを構成しているノードで分散管理を行うDHT(Distributed Hash table)が挙げられる. DHTではコンテンツ数の分散管理が実現されるため, スケーラビリティや耐故障性に優れているが, 一方でユーザからのクエリ処理の最適化は大きな課題として残っている. 例えば, 突発的な天候の変動(夕立, 突風など), 報道などによってユーザの関心が特定のコンテンツに向かうと, コンテンツ数は分散管理されていてもユーザ依存のクエリの偏りがシステム全体の負荷の偏りになってしまうことがある. 本研究では, まずコンテンツ人気度によるユーザ依存のクエリの偏りがP2Pシステム全体にどのような影響を及ぼすかの調査を行う. その後得られた知見より, 特定コンテンツへのクエリ処理最適化手法の提案と実装を行う.
 
藤本 恭平 M ユビキタスコンピューティングシステム 安本 慶一 伊藤 実 岡田 実
発表題目:監視・追跡用無線マルチメディアセンサネットワークの稼働時間最大化を目指したルーティング手法
発表概要:本研究では,移動オブジェクトを追跡し,ユーザ端末に動画をリアルタイム配送する無線マルチメディアセンサネットワーク(WMSN)において,配送される動画のQoSを保証し,WMSN全体の稼働時間を最大化することを目指したデータ配送経路制御手法を提案する.対象WMSNでは,常に最短経路での動画配送を行うと,ノード間でのバッテリ消費に偏りが生じ,WMSNの稼働時間を縮めてしまうという問題がある.さらに,追跡すべきオブジェクトが多い場合には,動画配信によるトラフィックの増加のため,ネットワークの輻輳が起こりやすい.本研究では,移動オブジェクトとユーザの地理的距離が大きいほど動画の許容配送遅延時間を長く設定可能なWMSNのアプリケーションを想定する.提案手法では,最短経路を含む複数の経路候補について,許容配送遅延時間と動画配送に必要な帯域の制約を満たし,動画配送終了後におけるバッテリ残量最小のノードのバッテリ残量を最大化するような経路を選択することで,WMSNの稼働時間を最大化する.また,本手法の有効性を示すため,典型的な例を用いて,提案手法と最短経路手法によるWMSNの稼働時間を比較する.
 

会場: L3

司会: ディペンダブルシステム学助教
内田 行紀 M コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦 井上 美智子 嶋田 創 大竹 哲史
発表題目:NCL回路のテスト容易化設計法
発表概要:NULL Convention Logic(NCL)回路は非同期回路の現実的な実現手法の1つとして注目されている.NCL回路はレジスタ,組合せ部,および完了検出部から構成され,レジスタ間のハンドシェイクによりデータとヌル(データ区切り)を交互に伝搬する.これらNCLの構成要素にはC素子などの状態を持つ回路素子が用いられており,さらにハンドシェイクのためのフィードバックが存在するため,テスト生成が困難である.本研究ではテスト生成を困難にしている問題を分類,それぞれに対する解決策を提案し,既存のテスト生成ツールでのテスト生成の高速化および故障検出率の向上を図る.
 
大上 俊 M コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦 井上 美智子 嶋田 創 中田 尚 姚 駿
 
下岡 俊介 M コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦 井上 美智子 嶋田 創 中田 尚 姚 駿
発表題目:演算器アレイ型アクセラレータにおけるローカルバッファの最適化
発表概要:我々は,高電力効率かつバイナリ互換性を備えた演算器アレイ型アクセラレータ(LAPP)を提案している.LAPP は既存VLIW命令で記述されたプログラムの最内ループを演算器アレイに写像し,高速実行する.高速実行時は, 写像されたロード命令はアドレス計算とタグ比較によりローカルバッファの該当wayからデータを読み出すことで実行される. ここで各ロード命令とローカルバッファのいずれかのwayとは1対1対応していることを利用することで,各段の ロードストアユニットに含まれるアドレス計算とタグ比較の論理を削減し,ローカルバッファに使用される値のみ を保持するよう最適化することができる.本研究では,写像されるロード命令とローカルバッファのwayを対応させ, 各段のロードストアユニットのアドレス計算とタグ比較を削減すること,および,レジスタに置き換えることにより ローカルバッファを最適化する手法を提案する.提案手法をHDLにより実装し,回路規模および遅延時間を評価した. 評価の結果,ローカルバッファの要素が64ワードまでは,ロードのレイテンシを2から1へ確実に削減可能であることが判明した.
 
狹間 洋平 M コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦 井上 美智子 嶋田 創 中田 尚 姚 駿
発表題目:二重化を用いた演算器の故障箇所特定手法
発表概要:従来,演算器やプロセッサの故障箇所の特定には三重化を用いてきた.しかし,規模が三倍以上になり,面積オーバーヘッドが問題である.我々が提案している高信頼演算器アレイ型アクセラレータでは,演算器アレイを利用して命令の冗長化を行い,故障ユニットを細粒度に特定することにより,無駄を少なく切り離すことができ,演算器アレイの寿命が向上する.本発表では,再マップすることにより命令を別の演算器に移動し,マップ情報とエラー信号を組み合わせることにより,三重化を用いない故障演算器特定手法を提案する.