ゼミナール発表

日時: 11月30日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会: 油谷 暁
田中 大介 知能システム制御
発表主題:[論文紹介] H∞フィルタを用いた非最小位相系の独立成分分析
発表概要:多変量のデータから隠された因子や成分を見つけ出すための一手法として独立成分分析(ICA)がある.ICAでは,入力信号の独立性を仮定することで,観測信号のみから入力信号を推定することができる.入力信号から観測信号を出力する混合系は,信号発生から観測までの時間遅れなどを考慮すれば動的システムとなり,観測信号は入力信号のconvolutionで表される.この場合の信号分離問題は特にblind deconvolutionと呼ばれ,制御工学への適用も盛んに行われており,システム同定との関連も深い.これは,入力信号の推定を行うと同時に,観測信号から入力信号の推定値を出力する分離系を学習することによる.先行研究では,最小位相系と呼ばれる,零点が安定なシステムに対しての手法が提案されてきた.しかし,世の中には非最小位相系のシステムが存在する.例えば一般に,むだ時間要素を含むシステムは非最小位相系となる.この場合,分離系が不安定になるために最小位相系に対して提案されている従来手法をそのまま適用することができない.本発表では,H∞フィルタを用いて非最小位相系の逆システムを構築した論文を紹介し,あわせて,この論文を基に行った再現シミュレーションの結果を示す.
 
白石 諒 神経計算学
発表題目:強化学習モデルによる齧歯類の意思決定タスクにおける行動と神経活動の分析
発表概要:ヒトや動物は日々、どのような行動をとるかを意思決定し、その結果に応じて行動を改善している。 これを行動と報酬、状態遷移により構成される強化学習としてみることができる。 そして、中脳のドーパミン細胞が強化学習における報酬予測誤差をコードしているとみられることから、 ヒトや動物の意思決定タスクにおける行動と神経活動を強化学習として解釈することが試みられている。 これまで、行動と報酬のみに着目したモデルフリーな強化学習を用いて研究が主に行われ、その解釈の妥当性と脳内表現が確認されてきた。 そこで、状態遷移予測も考慮したモデルベースな強化学習を用いた研究行う。 本発表ではモデルフリー強化学習モデルによるラットのレバー押し課題の分析を行った先行研究を紹介し、これから行うモデルベース強化学習を用いる研究計画について説明する。
 
小出 真子 数理情報学
発表主題:Aesthetics and Fixation Point in Paintings Observation
発表概要:絵画には, 美的意識を想起させるものとそうでないものがある. その違いを引き起こす特徴が絵画中にあると考える. この特徴の種類や度合いは, 個人の経験や主観に依拠するところが大きく, 従来, 定式化できるものとして考えてこられなかった. 絵画鑑賞時についての個人間で普遍的な事柄としては, 絵画は視覚情報であり, 注視が絵画中の特徴をとらえる重要な指標と考えられる事が挙げられる. そこで本研究では, 美的意識や情動度を高めるような特徴を仮定して, 注視点から獲得できる特徴量と美的意識の度合いとの相関をみつける事を目的とする. 本発表では, 美的意識の要素として考えられる選好と注視点で獲得される特徴量との相関を測る方法について説明する.
 
田口 裕也 ロボティクス
発表題目:義手の応用に向けたICFを用いた日常手作業の分類
発表概要:事故や感染症といった疾患のために自身の腕を失った患者は,その失われた機能を補うために義手を利用する.現在,軽量でより人間らしい把持を可能にするため劣駆動型のハンドが開発されているが,義手に求められる構造や重量の制約から,実現できる行動は限られている.また,これまでの生活(手作業)に比べて,どの程度義手によって補われているかを定量的に評価する方法は確立されておらず,義手の設計・開発も明確な指標が存在しない.本研究では,日常生活の中で義手に求められる機能を明らかにするために,ICFと呼ばれる生活行動の記述法を用いたユーザーの生活行動の解析を行う.解析された結果より,最適な義手の設計手法を提案し,提案手法を用いた義手の製作を目指す.
 
中 久枝 生命機能計測学
発表題目:光ピンセットを用いたソーティング技術の開発
発表概要:近年、医療・バイオ分野で細胞や染色体遺伝子レベルの生体試料を対象とした研究が増加している。生体試料中から特定の個体を弁別・抽出するために用いられるソーティング技術では分離時の物理的ダメージや、ウイルスのような微小な個体の回収が困難といった問題があり、これらを改善する手法が求められている。そこで、本研究では集光したレーザー光を照射したときに発生する光の放射圧を用いた光ピンセット技術で対象物を三次元的にトラップして高速にソーティングする手法を提案する。本発表では、光ピンセットによる高速操作実験について述べ、移動特性の計測結果を示す。
 

会場: L2

司会: 川波 弘道
足立 麻衣子 環境知能学
発表題目:ロボットによるソーシャルファシリテーション:人の行動継続に対するロボットの振る舞いの影響
発表概要:HRIの研究のひとつとして,ロボットによるソーシャルファシリテーションの研究が行われている.ソーシャルファシリテーションとは,例えば見張り役の人がユーザのタスクを見張るとき,その人の存在によってユーザのタスクの結果に肯定的な影響を与える現象のことである.ロボットによるソーシャルファシリテーションでは,この見張り役の人の代わりにロボットが見張りを行うことで,ユーザのタスクの促進を行う.しかし現状では,ロボットの存在による効果の検証のみに留まっており,振る舞いが及ぼす効果はまだ検証されていない.そこで本研究は,ユーザのタスクを促進する上でロボットの振る舞いがユーザに与える影響を調べる.なお,本研究ではタスクの促進の要因の一つである行動継続を扱う.具体的には,ユーザの行動継続の対象として,動機付けが揺らいでいる状態のタスクを想定し,別の行動に逃避するユーザの行動をタスクに集中させることを目指す.例えば,子どもが行う宿題や〆切がない仕事など,日常で動機付けが揺らいでいるタスクは様々ある.この動機付けが揺らいでいる状態で,ユーザがそのタスクに対して適応ができない場合にしばしば逃避が起こる.本研究ではこの逃避を抑制することで行動継続を促し,ロボットによるソーシャルファシリテーションを実現する.
 
真嶋 温佳 音情報処理学
発表題目:音声情報案内システムにおけるユーザ発話の教師無しトピック分類による複数言語モデルの構築・評価
発表概要:音声情報案内システム「たけまるくん」における音声認識では,システムによって収集されたユーザ発話から構築した言語モデルが用いられている.言語モデル構築に用いるユーザ発話を分類し,複数の言語モデルを併用して音声認識を行うことで,音声認識率を改善できると考えられる.そこで,トピックモデリングの一手法LDA (Latent Dirichlet Allocation) を用いてユーザ発話のトピック分布を自動推定し,K-means法を用いて類似トピック分布を持つユーザ発話のグループに教師なしで自動分類する.そして,それぞれのグループごとに言語モデルを構築し,複数言語モデルに対する音声認識実験により有効性を評価した.
 
叶 高朋 知能コミュニケーション
発表題目:音素表記を利用した音声翻訳システム
発表概要:近年,国際化により海外の人と話す機会が身近になってきており音声翻訳の活躍の場が増えてきている。音声翻訳は音声認識,機械翻訳,音声合成という3つのシステムから構成される.音声翻訳の問題点の一つとして音声認識誤りによる翻訳精度の低下があり,現在,音声認識誤りを含む文から音声認識誤りを回復することは困難である.この問題に対し,音声認識誤りを含む文と正解文の音声の類似性に着目し音声の情報を用いて音声認識誤りの回復に取り組んだ論文を紹介する.この論文より音声の情報を利用することの有効性を明らかにし,今後の修論に向けた研究の方向性を示す
 
久保 和樹 インタラクティブメディア設計学
発表題目:広大なディスプレイ環境におけるウィンドウマネジメント
発表概要:近年,ディスプレイ機器の高解像度化および低価格化が進んでおり,複数のディスプレイ機器を組み合わせる事で広大なディスプレイ環境を構築する事が可能となった.そのような環境はミーティングや共同作業での活躍が期待でき,今後増加していくと考えられる.しかしディスプレイが広大になる事で,人がディスプレイを遮る可能性が高まることや操作量が増加するという問題が発生する.そこで本研究では,目的と状況に合わせてアプリケーションウィンドウの表示位置やサイズを調整することにより環境内での作業支援を行うシステムを提案する.本発表では,論文調査の結果と提案システムの概要,そして現在までの進捗について述べる.
 
坂口 慶祐 自然言語処理学
発表題目:カーネル法を用いた英語の文法自動誤り訂正
発表概要:英語学習のニーズが高まるなか、英語学習者の悩みの一つとして「自分が書いた英文が文法的に正しいかどうか、ネイティブスピーカーにチェックしてもらうほかない」という問題がある。ネイティブチェックには時間や金銭的なコストがかかる場合が多く、また添削するネイティブスピーカーの側にとっても負担が大きくなっている。このような背景から英語の文法自動誤り訂正が注目されており、近年ではルールに基づく訂正手法に加え、Web等から取得した大規模データを使用するのが主流となっている。本発表では、大規模データを用いた英語の文法誤り訂正に関する既存研究と、新たに提案するカーネル法を用いる方法の概略について述べる。