ゼミナール発表

日時: 9月29日(水) 2限


会場:L1

司会:山内 由紀子
大澤 嘉代子 M2 岡田 実 関 浩之 原 孝雄 宮本 龍介
発表題目:二段非線形領域を考慮した多値変調信号の伝送特性の改善
発表概要:衛星放送の高画質化や多チャンネル化に伴って衛星通信の大容量化が求められている。 ここで、衛星通信に用いられる周波数帯域は限られているため変調方式を多値にすること、 また、送信電力を大きくすることで通信の大容量化を実現することが考えられる。 多値変調方式のデータを扱うには、送信側の大電力化も同時に求められるため 本研究では地球送信局と衛星中継器の2段の増幅器で大電力化を行い 多値変調方式を用いた伝送路を補償することを考える。 本発表では大電力化および多値化による伝送路歪の実際を例示し 二段非線形領域を考慮した多値変調伝送路の補償方法とその有効性を提案する。
 
松田 裕貴 M2 岡田 実 関 浩之 原 孝雄 宮本 龍介
題目:衛星の非線形を考慮した多値変調重畳信号の干渉キャンセラについての研究
内容:衛星通信システムでは周波数の利用効率の向上のためキャリア重畳方式が提案されている.
本研究では,従来では考慮されていなかった多値変調信号を利用し,衛星中継器に搭載されたアンプの性能を非線形領域まで使用することにより周波数の利用効率を高める方法について検討する.本発表では,衛星中継器の非線形領域の劣化を確認する実験の結果を報告し,今後の方針について述べる.
 

会場:L2

司会:橘 拓至
小阪 卓史 M2 池田 和司 杉本 謙二 川人 光男
発表題目:モンテカルロ・シミュレーションを用いた拡散光トモグラフィーにおける光拡散過程のモデル化
発表概要:NIRSは近赤外光を用いたヒト頭内部のヘモグロビン濃度変化を計測する非侵襲型の脳活動計測機器である.計測が容易であることや時間分解能に優れているといったメリットがあることから医療面での応用が盛んである.一方,チャネル間隔が3cmほどであり他機器に比べ空間分解能に劣っているといったデメリットがある,そこで,NIRS計測機器から得られる脳活動情報の空間分解能向上、及び、深さ方向の脳活動情報推定が可能である拡散光トモグラフィー(DOT; Diffuse Optical Tomography)と呼ばれる手法が近年注目されている.DOTは,神経活動に伴う脳血流(CBF)の変化によって生じる光の吸収度合いの変化量と検出光強度の変動とを対応づけるモデル化と、そのモデルに基づいた観測データからの内部状態の推定の2つのステップからなる.このうち最初のステップであるモデル化は,照射光の拡散過程を求めることと等価であるが,ヒト頭部は様々な組織によって複雑に構成されており,また,各組織が一般に高散乱体であるため照射から検出までの光行路を解析的に求めることは困難である.本研究は,モンテカルロ・シミュレーションと呼ばれる数値的手法を用いてヒト頭内部における光強度分布を求めた.本発表では,モンテカルロ・シミュレーションを用いたモデル化の信頼性に関する検証結果を報告する.
 
小菅 隆行 M2 池田 和司 杉本 謙二 川人 光男★
 
福嶋 誠 M2 池田 和司 杉本 謙二 川人 光男★
発表題目:スパース化制約を用いた脳活動強度とその時間発展ダイナミクスの同時推定:脳磁図(MEG)への適用
発表概要:脳磁図(MEG)は脳活動に伴う周辺磁場の変化を観測して得られる生体信号であり,これまでヒト脳機能の解明へ向けた学術研究に広く用いられてきた.MEGは脳活動変化と同じオーダーの高い時間分解能を備え,ミリ秒単位で脳活動強度とその時間発展ダイナミクスを明らかにする可能性をもつ.ただし,その実現には時間発展を記述する式が未知である数千次元の内部変数(皮質上の脳活動)の取り扱いが不可欠となる.数百チャネル程度の限られた観測データの情報から,高い次元をもつ未知ダイナミクスを安定的に推定するためには,適切な拘束条件を加えてモデル全体の実効自由度を削減しなければならない.
 本研究では,全体を状態空間モデルで定式化した上で,上記の問題を解決する内部変数とモデルパラメータの同時推定法を提案する.内部変数がスパースな表現をもつように,状態遷移パラメータの各要素に対して平均ゼロのガウス事前分布を設定することで,モデルの実効自由度を削減することができた.これにより脳活動が生じた領域を自動的に抽出すると同時に,抽出領域でのダイナミクスを推定することが可能となった.
 脳活動の性質として広く知られる以下の性質:1)空間的にスパースな活動,2)時間的にスムーズな波形,を満たすシミュレーションデータに提案法を適用したところ,活動領域を正しく抽出することができ,また推定されたパラメータは生理学的に妥当な値を示した.今後は,すでに計測済みのMEGデータを用いて,提案法の実データに対する有効性を検証する予定である.
 
鬼塚 美帆 D2 池田 和司 杉本 謙二 川人 光男★
発表題目:下オリーブ核glomeruli構造への抑制性シナプス入力が下オリーブ核ニューロン間の実効的結合コンダクタンスを調節する
発表概要:下オリーブ核(IO)は、小脳皮質の主要な興奮性2入力の内の1つである登上線維の源である。多くのIOニューロン同士はglomeruliと呼ばれる構造内でギャップジャンクション(GJ)によって結合し,小脳深部核から抑制性シナプス投射を受ける。麻酔下ラットにGABAA受容体拮抗薬のpicrotoxinを投与したとき、IOニューロンの平均発火頻度の増加と,同期リズムと非同期低頻度発火を交互に繰り返す発火ダイナミックスが報告されている。また,GJ遮断薬のcarbenoxoloneを投与したとき,IOニューロンの平均発火頻度は減少する。「IOニューロン間GJの結合コンダクタンスが変化する」と仮定した理論研究では,これら発火ダイナミックスを再現できると報告されているが,実験時のGJ結合コンダクタンス値は不明であり,生理学的にはGJ結合コンダクタンスは一定であると考えられる。そこで本研究では, IOニューロンに遮断薬投与時の薬理学的阻害効果を直接的にモデル化し, IOの発火ダイナミックスを再現した。さらに,通常の条件下と薬理学的条件下の実効的結合コンダクタンスを推定し,その結果IOニューロンglomeruli構造への抑制性シナプス入力がIOニューロン間の実効的結合コンダクタンスを制御することを明らかにした。