ゼミナール発表

日時: 12月6日(月)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:加藤 有己
西薗 和希 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:ソースコード変更工数の見積もりに向けたパッチの特徴とレビュー時間の比較
発表概要:保守・派生開発では,変更仕様に従って既存のシステムのソースコードに手を加え,レビュー・テストを実施する.この場合,変更規模だけからレビューやテストのコストを見積もることは困難であり,既存システムのどこに変更を加えたのか,どんな変更を加えたのか等,様々な要因を考慮する必要がある.本研究では,実務経験者116名を対象として実施したパッチ(変更前と変更後のソースコードの差分)リーディング実験の結果を用いて,パッチの特徴とそのレビューにかかった時間の間にどのような関係があるかを分析する.本発表ではパッチのコード行数およびコードクローンの含有量,元のソースコードとパッチの間の結合度(Afferent/Efferent Coupling)について,レビュー時間と比較,分析した結果を紹介する.
 
西原 有哉 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介"Reducing Pattern Delay Variations for Screening Frequency Dependent Defects",Bemjamin N Lee, Li-C. WANG, Magdy S.Abadir, IEEE VLSI Test Symposium 2005.
発表概要:近年、技術の向上により半導体製造プロセスが微細化している。微細化に伴い潜在的な物理的欠陥が多数存在するようになり、それら物理的欠陥は遅延欠陥として顕在化する。そのため高品質な遅延欠陥のテストが必要となっている。従来手法であるTiming-Aware ATPGでは計算時間がかかってしまい、それに対し本論文では異なる手法を提案している。提案手法ではタイミングを考慮しない一般的なATPGによって各遷移故障に対し複数回検出パターンを生成し、そのパターンセットの中から、遅延欠陥を検出するためにパターン印加から出力までの時間、すなわちパターンディレイのばらつきがないようにパターンを選択しパターンセットを作成する。そのパターンセットを使い通常より高速なクロックでテストすることにより多くの遅延欠陥を検出することができる。
 
狹間 洋平 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:論文紹介”Configurable Isolation : Building High Availability Systems with Commodity Multi-Core Processors”
発表概要:高可用性は企業システムにおいて重要性が高まっている.通常,冗長化を用いて高可用性を満たす.そこで,この論文では同一資源を複数所持している市販のマルチコアプロセッサを基に,アーキテクチャに修正を加え,更なる高可用性を満たす手法の提案している.また,発表では高可用性に関する,私の今後の研究方針を述べる.
 
福澤 優 インタラクティブメディア設計学 加藤 博一
発表題目:データベース処理における処理速度を考慮した低消費電力化
発表概要:世の中の様々な媒体のデジタル化により,データセンターなどにおける処理対象データが 急激に増加している.それにともないデータ処理に対する消費電力量の増加が地球環境や企業コストの観点から問題となっている.この問題に対して,本研究ではデータベース処理におけるOLAP処理に着目して,これまで重要視されてきた処理速度も考慮した上でソフトフェア側からの低消費電力化の改善を目指す.
 
藤原 賢二 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:ソフトウェア開発履歴を用いたリファクタリングと欠陥の関係分析
発表概要:リファクタリングとは,ソフトウェアの外部的な振る舞いを保ったまま内部の構造を改善することである.一般に,ソフトウェアの開発が進むと,リファクタリングが必要となるような設計品質の低い箇所がソースコード中に増加していく.このような箇所は「コードの不吉な匂い」と呼ばれている.ソフトウェア開発過程において行われる「リファクタリング」は,不吉な匂いを除去することでソフトウェアの欠陥を予防出来ると言われている.しかし,リファクタリングの実施に対して,即時的にその効果が得られるのか,ある程度の期間を要するのかについては,未だ明らかになっていない.本研究は,リファクタリングの実施時期,およびコードの不吉な匂いが多い時期と欠陥との関係を詳細に把握することを目的とする.そのために,発表ではリファクタリングの頻度,コードの不吉な匂いの滞留,欠陥の発生頻度の経時変化を比較・分析する手法を提案する.
 

会場: L2

司会:松原 崇充
桜 文武 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:[論文紹介]High Performance Object Detection by Collaborative Learning of Joint Ranking of Granules Features [IEEE 2010]
発表概要:物体認識のために用いられる特徴はたくさんあるが、本提案手法ではJRoG featureとよばれる新しいfeatureを用いている.検出精度と効率向上のために, SA Module,Real Adaboost,Incremental Feature Selection Module等を用いた共同学習を行う. 本発表ではこの論文について紹介し、JRoG featureがいかなるものか,また共同学習のアルゴリズムについて触れ,優れた人物検出手法だと証明する.
 
佐藤 志保理 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:任意の動作を女性らしく変化させるスタイル変換フィルタ
発表概要:人の動作には,同じ種類の動作であっても,性別や年齢,人種などによって多様性が存在する.この多様性を生成するようなモデル化ができれば有用だと考えられる.本研究では,性別による動作の違いに着目し,任意の動作を女性らしく変換することを目的とする.従来より,動作の多様性を表現するために,動作の内容(コンテント)と多様性(スタイル)を分離する研究が行われている.同様のアプローチで女性らしさを抽出できると考えられるため,スタイルを分離する従来手法を調査した.具体的には,Multifactor Gaussian Process Model と呼ばれるモデルを用いて,女性らしさを抽出する実験を行った.本発表では,この結果を報告し,問題点を考察する.さらに,この実験を踏まえた本研究のアプローチについて述べる.
 
佐藤 省三 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:2次元断層画像に対する点群入力による手術ナビゲーション方法の開発
発表概要:内視鏡技術の向上に伴い,脊椎外科手術において内視鏡手術が試みられるようになってきた.だが,内視鏡下の手術は視野が狭く患者ごとの切削範囲の綿密な計画・ 内視鏡下における解剖の理解が望まれている.そこで,本研究では内視鏡下脊椎後方手術における新たな手術ナビゲーション方法の開発を行う.内視鏡下脊椎後方手術は,従来の固定具を用いた脊椎の固定術と異なり,椎骨の一部のみを切削することで患部へアプローチし低侵襲で神経の圧迫を緩和する手術である.提案する手術ナビゲーション方法では,医師の方による数点のクリックのみで各患者固有の切削を表現でき,更に切削箇所に到達する経路をVirtual Endoscopyのように表現することを目指している.
 
佐藤 琢矢 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:[論文紹介]Using Cloud Shadows to Inter Scene Structure and Camera Callibration
発表概要:近年、都市計画、防災、景観シミュレーション、交通システムなど様々な場面で都市空間の3次元モデルの需要が高まっており、それと同時に、3次元モデルを作成する際に必要となる3次元形状推定の研究が注目されている。3次元形状を推定する方法は様々あるが、本発表では、その中でも固定の野外カメラを用いた手法に注目し、従来ではノイズとして扱われがちな雲の影を推定の手がかりとする手法を紹介する。それとともに、本手法の有用性と今後の課題を検討する。
 
白井 将之 インタラクティブメディア設計学 加藤 博一
発表題目:ムービングプロジェクタを用いた投影手法の検討
発表概要:プロジェクタを用いて実環境に映像を投影するプロジェクションARにおいて,プロジェクタ一台だけでは投影範囲が限られるという欠点がある.そこで本研究では,投影方向を変える事ができるムービングプロジェクタにおいて,投影位置を指示する方法を検討する.本発表では,関連研究で行った投影位置指示方法について考察し,本研究で行う投影方法について発表する.
 
水本 智也 自然言語処理学 松本 裕治
発表題目:Webから得られる大規模添削データを用いた機械翻訳手法による自動誤り訂正
発表概要:相互添削SNSサイトの登場により,大規模な添削データが手に入るようになった.しかし,Webから得られるデータはノイズが多く使いにくいものになっている.本発表では得られたデータを加工せずに用いて,フレーズベースの機械翻訳でどれだけ訂正ができるかを実験した結果について述べる,また,得られた添削データの様々な問題についても言及をおこなった後,今後の方針について述べる.
 

会場: L3

司会:中村 文一
高橋 健太郎 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:[紹介論文] "Coordinated Rhythmic Motion by Uncoupled Neuronal Oscillators with Sensory Feedback"
発表概要:生物が行っている周期的な運動 (locomotion) は脊髄に存在すると言われる CPG (Central Pattern Generator) によって実現されている.近年,その生物学的アプローチを二足歩行ロボットや多脚歩行ロボットに応用する研究が数多くなされている.この手法は既存のアプローチと異なり,環境のモデリングを必要とせずに環境に対して高いロバスト性を持つ.しかし,この手法の有用性を解析的に,数理モデルを用いて検討をしている研究は少ない.本論文ではダイナミクスの切り替え等を含まない,機械的整流器のプロトタイプ (PMR) を考え,数理モデルを用いて最適な軌道解を導出する.さらに,実際に CPG を用いたシステムを構築し,最適解との比較をおこなっている.本発表では,この論文の紹介に加え,独自にシミュレーションを行った結果を示す.
 
田中 達規 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:患者と医療機関双方のプライバシーポリシーを反映させた診療録閲覧管理システム
発表概要:昨今日本の多くの地域で、地域医療連携が活発に促進されており,医療機関相互で患者の診療情報を共有するシステムが普及されている。しかし、このようなシステムでは、「患者のどのデータを、どの医療機関の、どの医師が閲覧してよいのか」という閲覧権限の問題が存在する。その問題に対して本研究では、診療録管理者の患者と診療録作成者の医療機関相互のプライバシーポリシーを考慮した閲覧権管理システムを開発する。本発表では、"On Privacy in Medical Services with Electronic Health Records"の論文から得られた知見を基に、今後の研究計画を発表する。
 
富永 貴則 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:高空間分解能SPECT装置の開発と性能評価
発表概要:臨床で扱われているSPECTの分解能はPETに比べて10mm前後と低い.また,医療現場においてSPECTの分解能をPET並に上げ,局所を高解像度でみたいという要望がある.そこで,本研究ではSPECT装置の検出器の分解能を上げるための基本機器構成を決定し,実際の実験を通して分解能や感度を評価することで検出器の高空間分解能化を目指す.本発表では高空間分解能検出器システムの最適化について報告を行う。
 
西田 直貴 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:コンパス型二足歩行ロボットの歩行制御
発表概要:人間との共生を目的として,HONDAのASIMOやTOYATAのパートナーロボットのようなヒューマノイド型ロボットが開発されている. これらのロボットの多くはZMP規範による歩行ロボットであるが,近年はエネルギー効率面から準受動歩行ロボットが注目されている. そこで本研究では,準受動歩行ロボットに対してよりエネルギー効率に優れた歩行制御を行う. 本発表ではZMP規範による歩行と準受動歩行の違いについて述べ,エネルギー効率の違いについて詳しく説明する. また,準受動歩行ロボットは制御則の違いが歩行に大きく影響することが知られている. 本発表では,制御則をうまく選ばなければ歩行できないことをシミュレーションにより示す. 最後に今後の予定を述べる.
 
野口 卓磨 論理生命学 池田 和司
発表題目:空気圧人工筋肉を用いた準受動二足歩行ロボット
発表概要:二足歩行ロボットの研究分野では、人間と同等のエネルギー効率で歩行できる準受動歩行が注目されている。 しかし、準受動歩行は歩行安定性が悪く、不整地に対応できない問題がある。 この問題に対して、我々の研究室ではCPGの位相パラメータを強化学習によってチューニングするアプローチをとっている。 これまでの研究では、二足歩行ロボットモデルのシミュレーションで不整地歩行を実現したが、実機において安定した歩行を実現出来ていない。 これは実機に使用している空気圧人工筋肉のもつ非線形特性や劣化特性が関係しており、ロボットモデルに人工筋肉のモデルを追加する必要がある。 本発表では、二足歩行ロボットの歩行方法について紹介し、構築した人工筋肉の同定装置について述べる。 そして、現在の研究の進捗状況や今後の予定について述べる。
 
半澤 宏明 論理生命学 池田 和司
発表題目:オンライン学習の情報統計力学的解析
発表概要:符号関数を出力関数とする非線形単純パーセプトロンを,情報統計力学的手法を用いて,オンライン学習の枠組みで議論する.統計的学習理論の目的は汎化誤差を理論的に計算することである.汎化誤差は生徒ベクトルの長さlと教師と生徒の方向余弦Rの関数なので,これらのダイナミクスを記述する連立微分方程式を熱力学的極限における自己平均性に基づき決定論的な形で導出する.さらにこの連立微分方程式に含まれるサンプル平均を学習則ごとに求める.以上により具体的に得られた連立微分方程式を解析的に解くことにより汎化誤差を理論的に求めることができ,アダトロン学習,ヘブ学習,パーセプトロン学習の順で速く0に収束することがわかった.