ゼミナール発表

日時: 12月1日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:竹村 憲太郎
北浦 真樹 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:照度の異なる領域を含む画像のための領域分割によるトーンマッピング
発表概要:人の視覚に比べ、CMOSセンサなどの一般的な記録手段が表現できるダイナミックレンジは狭いため画像の見え方が異なる。狭いダイナミックレンジでより詳細な特徴を表現するために、複数の異なる露出の画像から広いダイナミックレンジを持つHDR画像を生成する。HDR画像の情報をLDRディスプレイに出力するためはLDRに適した輝度の幅にスケーリングを行うトーンマッピングという処理が必要となる。本研究ではトーンマッピングの対象をより広いダイナミックレンジが必要となる照度の異なる領域を含む画像とし、特に屋外と屋内のシーンを含んだ画像とする。そして、屋内と屋外の領域を分割することで出力画像のダイナミックレンジを有効に利用できると考えられるトーンマッピング手法を提案する。
 
熊谷 謙造 インタラクティブメディア設計学 加藤 博一
発表題目:モデルベーストラッキングにおける推定不可能位置姿勢の検出
発表概要:拡張現実感を実現するために、現実世界と仮想物体の位置合わせは必要不可欠である。 位置合わせはユーザ視点に対する実物体の3次元位置および姿勢を推定し、その結果に合わせて仮想物体を表示することで実現する。今日、この問題の解決には様々な手法が提案されているが、ある物体に対して仮想物体を描画する様な場合はモデルベーストラッキングとよばれる手法が用いられる。この手法は事前に作成された3Dモデルを画像上で観測された特徴点と対応付け、その投影誤差を最小化することで対象物体の3次元位置および姿勢を推定する手法である。本研究ではモデルベーストラッキングを行う際に物体の見え方によって発生する推定不可能な位置および姿勢の検出を目的とする。
 
熊代 桂太 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:任意の話者および言語に対応した声質変換に関する検討
発表概要:ある話者の声質から別の話者の声質へと変える技術として声質変換がある。声質変換はエンターテインメント分野や声帯を失った発声障害者補助などに応用されている。中でも任意の話者から任意の話者へと声質を変換することができる多対多声質変換は従来の声質変換と比べて柔軟性があり、今後様々な活用が期待されている。しかし、他言語の話者からの変換あるいは他言語の話者への変換を行った際の変換性能に関してはまだ詳細に調査されていない。そこで本研究では、実験や評価によりこれらを明確にし、多対多声質変換を拡張することで任意の話者および言語に対応した声質変換技術の構築を目指す。
 
近藤 修平 自然言語処理学 松本 裕治
発表題目:統計的機械翻訳における長距離の語順並び替えの改善
発表概要:フレーズベースの統計的機械翻訳は語順の近い言語間の翻訳は比較 的上手く行えるのに対し、語順が大幅に違う言語間での長距離の語順並び替え は不得手であることが分かっている。本発表では、この語順並び替えを単語の 線形順序付け問題として解く先行研究の紹介と、そのフレーズベースへの拡張 の提案、およびそれに伴う課題の報告を行う。
 
坂本 一樹 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:照度に関するフィンガープリンティングと照明装置の連動による屋内位置推定法の提案
発表概要:近年,位置情報を利用したユーザ支援サービスが多数提案されている.例えば,美術館において,ユーザの眼前にある美術品の情報を端末にARを用いて提示することや,地図上に経路を表示して次の美術品への誘導を行うなどが挙げられる.このような位置情報サービスを屋内で実現するためには,屋内で使用可能でかつ誤差の少ない位置推定手法が必要である.これまで,複数の参照点からのWiFiやZigBeeの電波強度を基に位置を推定する方法や超音波を用いて,参照点からの距離を正確に計測することによる位置推定手法が提案されているが,誤差が大きいことやコストが高いという問題が挙げられる. 本研究では,ある程度正確な屋内位置推定を安価に実現することを目的に,照度センサを用いたフィンガープリンティングを基とした位置推定手法を提案する.提案手法では,照明装置が設置された対象空間の複数個所で,予め照度を計測しDBに保存しておき,ユーザが携行する照度センサが計測した照度とDBを比較し,最も照度が近い場所を推定位置とする.また,類似した照度を持つ箇所が複数ある場合に,対象空間の幾つかの照明装置のスイッチを瞬間的にオフにすることで生じる照度の変化を利用して場所を特定する方法を提案する.
 

会場: L2

司会:中田 尚
下岡 俊介 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:論文紹介"An Adaptive Data Prefetcher for High-Performance Processors"
発表概要:近年,演算速度は急速に増加しているが,データアクセス技術は遅れをとっており,データアクセス遅延は,高性能演算のボトルネックとなっている.演算速度とデータアクセス速度の差を埋める有効な手法 として,演算中に前もってデータアクセスを行う,プリフェッチ技術が用いられている.しかし,ハードウェアによる既存のプリフェッチ技術は, 単一のプリフェッチアルゴリズムしかサポートできないので,特定のデータアクセスパターンにしか対応できない.従って,データアクセスパターンが変化するとプリフェッチの効果が出ず, プリフェッチによって性能の上がるアプリケーションは限られる. 本論文では,データアクセスパターンごとに,動的に適切なプリフェッチアルゴリズムを適用する,Algorithm-level Feedback-controlled Adaptive (AFA) data prefetcherを提案している. シミュレーションの結果,IPC (Instructions Per Cycle) の向上を達成した. 本発表では本論文紹介に加え,今後の研究との関連や今後の研究方針を述べる.
 
田口 雅裕 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:ライブラリ知識やレビュー経験が理解時間に与える影響の分析
発表概要:本研究は,ソースコードレビューの効率的な実施法の提案を目的とする.保守開発におけるソフトウェアのバージョン更新を想定した被験者実験を行い,更新前のソースコード(バージョン1)および差分ソースコード(バージョン1に対して機能追加などの変更を加えたソースコード:バージョン2)の読解時間を計測した.被験者を経験や知識によってグループ分けし,バー ジョン1およびバージョン2ソースコードの理解時間を比較することで知識や経験がソースコード理解にど のような影響をあたえるのかを評価した.レビューの経験が多い被験者は大まかな理解をしていることがわかった。また、小規模な変更の場合には読解に必要なライブラリ知識があれば読解時間が短いが、大規模な変更の場合には読解に必要なライブラリ知識に加えてレビューの経験も必要であることを示す結果が得られた。
 
田中 智也 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:バイナリコード解析によるソフトウェア盗用検出
発表概要:近年, オープンソースソフトウェアの盗用が大きな問題となっている. ソフトウェアの知的財産権の保護という観点からは, たとえオープンソースソフトウェアといえども著作権およびライセンスを保護する必要がある. しかし, 既存のソフトウェア盗用検出手段は高水準言語を対象としたものが大半を占め, 一般にソースコードが公開されない現状に適しているとは言いがたい. そこで本研究では, 公開されたプログラムのバイナリコードを解析することで, ソフトウェア盗用の検出に取り組む. 本発表では, 本研究の背景と概要について述べる.
 
津田 裕司 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:論文紹介:"On the Use of Visualization to Support Awareness of Human Activities in Software Development: A Survey and a Framework",Margaret-Anne D. Storey, Davor Cubranic, and Daniel M. German, In Proceedings of the 2005 ACM symposium on Software Visualization (SoftVis'05), pp.193-202, 2005.
発表概要:一般的なソフトウェア開発では,複数の開発者による共同作業が求められる.重複作業の防止や情報共有の円滑化のために,アウェアネス(他の開発者が現在どのような作業を行っているかを把握すること)を支援するツールが数多く提案されてきた.本論文は,ソフトウェア開発におけるアウェアネス支援ツールの設計に必要な要件を理論的な観点から整理・分類するためのフレームワークを提案している.本フレームワークにより新たなアウェアネス支援ツールが効率的に構築できると期待できる.今回の発表では,本論文を紹介するとともに,私の今後の研究方針について述べる.
 
豊永 翔 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介“Low-Depth Cache Oblivious Sorting”
発表概要:本論文では, 近年普及しているマルチコアプロセッサ向けのアルゴリズムのキャッシュ効率向上を考える. その効率は普通, アーキテクチャに依存するが, ここではアルゴリズム設計とアーキテクチャの詳細を分離するため, キャッシュオブリビアスアルゴリズムを考える. キャッシュオブリビアスアルゴリズムは, 理想キャッシュモデル上の逐次アルゴリズムで, キャッシュ構造の詳細を考慮しないで効率のよい並列アルゴリズムをスケジューリングすることができる. それをマルチコア向け並列アルゴリズムに変換する際, アルゴリズムの"深さ"を小さくすることで, キャッシュ効率を向上することができる. そこで, 深さの小さいソーティングのアルゴリズムを提案している.
 

会場: L3

司会:宮本 龍介
木村 周 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:加速度センサーによる行動速度に応じたコンテキスト推定
発表概要:近年のスマートフォンの普及とそれらに対応したSDKの普及によって、アプリケーション開発が容易となり、スマートフォンなどに搭載された加速度センサーがより身近なものとなってきている。これに伴い、ユーザのコンテキスト情報をもとに適切な情報を配信するコンテキストアウェアサービスが注目を集めている。コンテキスト推定として、歩く、立つ、座る、寝る、階段の登り降りなどに着目した推定が従来から行われているが、単純にこれらの行動を推定するだけでは、ユーザの置かれている状況や心的状態などを把握することは難しい。このため、本研究では、先に挙げた行動をさらに細かく分析することでこれらの問題解決に取り組む。
 
劒持 真弘 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:入店までの所要時間を最小化する駐車場ナビゲーションの提案
発表概要:本研究は,ショッピングセンター駐車場において,入店までの所要時間の最小化を目的とする.提案手法では,駐車場の統計情報と、車両入出庫検知に基づいて車両を複数の駐車ゾーンにバランスよく振り分けるナビゲーションを提案する。本手法は、統計情報により、各駐車ゾーンにおける駐車待ち時間、各ゾーンへの移動時間、及び、各ゾーンからの店舗入口までの歩行時間を予測し、その合計時間が最小となる経路をドライバーに提示することで、入店所要時間が最小となるナビゲーションを行う。また、現在の車両の入出庫情報に基づいて、予測時間を更新する。
 
後藤田 祥平 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:クラウド・コンピューティング環境でのマルチコアプロセッサの停止故障を考慮したタスクスケジューリング
発表題目: 近年,クラウド・コンピューティングが注目を集めており,データセンタをはじめとする多数のサーバが接続された分散システムで利用されている.データセンタのサーバではマルチコアプロセッサ搭載が標準になりつつある.クラウド・コンピューティングではサービスの信頼性と応答速度が要求されており,サーバの停止故障に備える手法と要求されている時間までに処理結果を出力する必要がある.サーバに与えられたタスクはタスクの依存関係をタスクグラフを用いて表現することができ,タスクスケジューリングによって各プロセッサにタスクを割り当てる.サーバで目標時間までにタスクを終了させる問題はタスクスケジューリング問題として扱うことができる.タスクスケジューリング手法については数多く提案されているが,タスク間の通信をおこなうときのネットワークコンテンション,レイテンシを考慮したものは少なく,マルチコアプロセッサの停止故障を考慮したものはない.そこで,ネットワークコンテンション,マルチコアプロセッサの停止故障,レイテンシを考慮したタスクスケジューリング手法について今後の研究方針を説明する.
 
神宮 真人 インターネット工学 山口 英
発表題目:ソフトウェアの修正パッチ自動生成による脆弱性対策手法の調査
発表概要: 近年,ソフトウェアの脆弱性を利用したマルウェアによる被害が絶えず発生している. 日々新たに発見される脆弱性への対策として,ベンダーが公開する修正パッチを適用させる方法が挙げられる. しかし,脆弱性が発見された時点から攻撃の脅威は存在するため,修正パッチを適用させるまでの期間は危険に晒されている. また,ベンダーによるサポートが終了したソフトウェアへの対策や,パッチ適用時の可用性の低下,不具合発生のリスクなどの問題がある. そこで本ゼミナール発表では,ソフトウェアの修正パッチを自動生成することで無防備な期間を大幅に短縮した "Automatically patching errors in deployed software"を紹介する. また,要求事項と関連研究の差異を明確にし,今後の研究のアプローチを述べる.
 
杉田 浩希 情報コミュニケーション 岡田 実