ゼミナール発表

日時: 11月17日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:橘 拓至
幾世 知範 インターネット工学 山口 英
発表題目:クラウドコンピューティング環境における障害地点推定を支援する可視化システムの提案
発表概要:クラウドコンピューティング環境は仮想化技術と分散技術を用いて構築されており,リソースの可用性とスケーラブルなサービスを実現している.ところが,これらの技術によるコンポーネントの多重化や抽象化,および処理の分散と集約は,命令の流れのトレースを困難としてしまっている.クラウドコンピューティング環境では,あるアプリケーションの不具合が別のアプリケーションや他のレイヤのコンポーネントによってひき起こされる可能性があるため,障害地点を特定するにはクラウドコンピューティング環境全体の命令の流れを明らかにすることが必要とされる.そこで,本研究では管理者による障害地点推定を支援することを目的として,クラウドコンピューティング環境における命令経路の可視化システムを提案する.
 
今吉 亮輔 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:DSMSの研究動向
発表概要:近年、モノや環境に組み込むセンサが登場し、それにともなって,それらのセンサデータをリアルタイムに処理する要求が高まっている。それらのデータをリアルタイムに処理するシステムとして、DSMSがある。本ゼミナール発表では、DSMSの基本技術そして、分散型DSMSへの発展について、さらに発展に伴なって発生した課題などについて詳しく発表する。
 
亀山 博紀 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:ESPARアンテナを用いた車載向け地上デジタルTV放送受信機に関する研究
発表概要:現在、地上デジタルTV放送の車載受信機には、複数のアンテナで受信した信号をSNR(信号雑音比)が最大となるように合成を行うダイバーシチ受信機が用いられている。この受信機は高い受信性能を実現できるが、アンテナ素子の数だけ信号処理回路が必要となるため、受信機構成が複雑となり、消費電力が増大する。そこで、本研究では現在の車載受信機の受信性能と同等で、なおかつ受信機構成を簡略化し消費電力を抑える受信機を提案する。この問題を解決する手法としてESPARアンテナの利用が検討されている。本発表では、ESPARアンテナを用いた関連研究を紹介し、本研究ではどのように提案するのかを述べる。
 
神田 景太 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:位置情報に基づいて配信エリアを限定するWebストリーミングアプリケーションの開発
発表概要:近年, Androidをはじめとしたスマートフォンの登場により, モバイル環境でYoutubeなどのストリーミングサービスを受けることが可能になった. また, GPSやWi-Fiを利用した位置情報の取得技術によって, ユーザの現在地を地図上で確認するサービスが普及してきた. これらの背景から, イベント会場での集客などを目的として, その場でしか見られない高い付加価値を持つストリーミングサービスを提供するコンテンツ配信システムを実現したいと考えるに至った. そこで, 利用者の現在地情報に基づいてストリーミングサービスを選択および提供するアプリケーションの開発を行った. 本発表では, 既存のシステムと比較して, より高精度かつ汎用的に利用可能なエリア限定のストリーミング配信アプリケーションを提案し, そのシステム構成と動作実験の結果, 今後の課題について報告する.
 
神田 慎也 インターネット工学 山口 英
発表題目:大規模計算機サーバにおけるログ収集方式の調査
発表概要:大規模計算機サーバが主流になり様々なサービスがインターネットを介して提供されるようになった.複数のサーバを用いて1つのサービスを提供することも多く,サービスの状況を知るためには,それぞれのサーバの稼働状況を監視する必要がある.大規模になるにつれて収集するログの量も増えるため,効率的なログの収集方式が求められている.今回の発表では,RTCE(Run-Time Correlation Engine)を用いたサーバのログ収集方式を紹介する.
 

会場: L2

司会:池田 聖
上野 和哉 言語科学 鹿野 清宏
発表題目:相槌の自動挿入システムの作成
発表概要:コンピュータと人間のコミュニケーションに関する研究の一環として、人にとって自然に使うことができる音声対話システムの開発が行われている。しかし、システムと人間のコミュニケーションが、人間同士のコミュニケーションと同等であるとは言い難いのが現状である。その理由の1つとして、人間同士の会話において聞き手が話し手に対して示す反応をシステムが行わないことが挙げられる。そこで、本研究では、システムと人間のコミュニケーションを円滑にするためのアプローチとして、人間と同じように『相槌』をうつことができるシステムの提案をする。本発表ではまず、音声対話システムの背景について述べる。次に、相槌の定義と役割に関して述べ、相槌をうつ音声対話システムの作成に関する先行研究に関する考察を行う。そして最後に、今後の研究方針を述べる。
 
岡 照晃 自然言語処理学 松本 裕治
発表題目:古典和歌を対象とした自然言語処理研究のサーベイ
発表概要:現在、自然言語処理の分野では、現代語を対象とした研究が多く行われているが、その反面、日本の古文を対象としたものは少なく、その中でも古典和歌に焦点を当てたものはごくわずかである。しかしながら、そこにニーズがないわけではなく、課題も多く残されている。本発表では、これまでに行われてきた古典和歌に関する研究を紹介すると共に、今後の研究方針について述べる。
 
岡田 圭太 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:[論文紹介]"An Augmented Reality X-ray System Based on Visual Saliency"[ISMAR2010]
発表概要:近年、携帯電話などのモバイルデバイスを用いた情報ブラウジングが一般的になってきている。また、AR技術の発展に伴い、人間の知覚できない情報を提示するシステムの研究が盛んとなっている。今回は、あたかも物体を透視しているかのような映像をユーザに提示する「X-rayシステム」の研究に着目する。従来研究ではエッジを考慮することにより遮蔽物体と隠された物体との前後関係を再現していた。本論文では、エッジに加えて色相、明度、運動を考慮したsaliency mapを用いることで、従来研究に比べ視認性がどのように変化するかの検討を行っている。本発表ではそれらの実験結果等について紹介する。
 
岡本 広大 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:場の雰囲気監視を目的とした環境音音源分離
発表概要:ポスターセッションや会議などにおけるディスカッション対話には有益な情報が多く含まれるが、これらを録音したものから所望の箇所を特定することは困難である。そこで集音にマイクロホンアレーを使用し、収録したものをブラインド空間的サブトラクションアレー(Blind Spatial Subtraction Array:BSSA)を用いて音源を分離する。分離した音声に対し音声認識を行い、任意のワードで検索をかけることにより、ディスカッション対話から所望の箇所を容易に取得出来るようにする。
 

会場: L3

司会:姚 駿
上山 祐信 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介 "Buffer-space Efficient and Deadlock-free Scheduling of Stream Applications on Multi-core Architectures"
発表概要:近年のマルチコアプロセッサの普及に伴い、電力制限のあるモバイル機器等にもマルチコアプロセッサが搭載されるようになってきている。そのような機器では構成に応じて通信頻度等を抑え、電力消費を削減する必要がある。本論文はバッファスペースを効率的に利用し、かつ幅広いアプリケーションに適用可能なスケジューリングアルゴリズムであるチームスケジューリングを提案している。本発表ではこの論文について紹介する。
 
内田 行紀 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介 "The BALLAST Methodology for Structured Partial Scan Design"
発表概要:組合せ回路のテスト生成(組合せATPG)は実用時間内にテストパターンを求めることができる.これに対して,順序回路に対するテスト生成(順序ATPG)では,テスト対象回路の内部状態の存在により実用的な時間内にテスト系列を求めるのは一般に困難である.順序回路のテストを容易にする手法として, 完全スキャン設計がある.完全スキャン設計では回路内の全フリップフロップを設計変更し,順序ATPGの問題を組合せATPGの問題に帰着できるが,設計変更に伴う面積オーバヘッドが大きい.そのため一部のフリップフロップのみを設計変更する部分スキャン設計が考案されている.しかし,一般に部分スキャン設計では依然として順序ATPGを行わなければならない.本論文では,組合せATPGを用いてテスト生成可能な順序回路構造である平衡構造を定義し,平衡構造に基づく部分スキャン設計法としてBALLAST(BALAnced structure Scan Test)を提案し,完全スキャン設計と同等のテスト容易性を少ない面積オーバヘッドで実現した.本発表では論文紹介に加え,今後の研究方針を述べる.
 
大上 俊 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:論文紹介"Recurrence Cycle Aware Modulo Scheduling for Coarse-Grained Reconfigurable Architectures"
発表概要:近年の組み込みシステムの多様化・ハイエンド化に伴い,組み込み向けプロセッサは高い柔軟性・電力効率が要求される.その要求を満たすアーキテクチャとして,CGRA(粗粒度再構成可能アーキテクチャ)が注目されている.CGRAはの高度な並列処理を可能とする機構を持つが,十分な性能を引き出す為には,優れた命令スケジューリング技術(コンパイラ)が不可欠である.代表的なスケジュール手法としては,モジュロ・スケジューリング,及びEMS(Edgecentric Modulo Scheduling)がある.しかし,前者は高いスケジュールの質を保証する代わりに,膨大なスケジュール時間を要する.一方,後者は高速スケジュールを可能とするが,再帰ループに於けるスケジュールの質が保証できないという問題を持つ.本論文では,EMSをベースとし,再帰ループをクラスタ化する事でモジュロ・スケジューリング並の質を保ちつつ,速度の向上を可能とするRAMS(Recurrence Cycle Aware Modulo Scheduling)を提案している.本発表ではこの論文の紹介に加え,今後の研究方針を述べる.
 
加藤 孝 プログラミング科学講座 関 浩之
発表題目:プロセス代数を用いたモデルベーステストのブロードキャストシステムへの適用
発表概要:原子力・航空宇宙・医療・鉄道などの現場で利用されるソフトウェアは「セーフティクリティカルなソフトウェア」と呼ばれ,高い安全性が要求される.現在,ソフトウェアの安全性を保証するための手法がいくつか存在しており,そのひとつにモデルベーステストがある.モデルベーステストでは,テスト対象のソフトウェアを何らかの形式にしたがって記述したもの(モデル)をもとにしてテストケースを作成する.モデルを記述するための形式として図や表などの他,プロセス代数が挙げられる.プロセス代数を用いてモデルを記述する場合,仕様における定義の「曖昧さ」や「不整合」といった不具合の混入を減らすことができ,またその定義をもとに仕様の分析を行うことができる.本研究の目標は,プロセス代数を用いて作成されたモデルからテストケースを自動生成する手法の提案である.特に,有効なテスト法が必要なブロードキャストシステムを対象としている.プロセス代数としてはPCBS(Calculus of Broadcasting Systems with Priorities)を採用した.具体例として,車載ネットワークにおける通信プロトコルCAN(Controller Area Network)をPCBSで記述することによって,テストケースの自動生成法の詳細を検討している.本発表では,その検討内容について述べる.
 
瓦谷 佳祐 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:出力単調収束な自己安定アルゴリズム
発表概要:近年,多数の計算機が通信リンクで相互に接続された分散システムが注目を集めている. 分散システムに必要とされている性質のひとつに,故障耐性がある.耐故障分散アルゴリズムの設計手法のひとつとして,自己安定という概念がよく研究されている.分散アルゴリズムにおいて自己安定性とは,任意の規模の故障から,システムが自律的に復旧することを保証する性質である.しかし,多くの自己安定アルゴリズムでは,小規模な故障に対しても,復旧のための再計算がネットワーク全体に及ぶ可能性がある.近年,故障の影響が拡大せず,単調に復旧するという性質を持つ,単調収束な自己安定アルゴリズムが提案されているが,既存研究では単調収束する自己安定アルゴリズムを構成するために必要な情報量が解析されているだけであり,具体的な実現手法は提案されていない. 本研究では単調収束する自己安定アルゴリズムを効率よく実現する手法を確立することを目指す.本発表では特に,現在取り組んでいる極大独立点集合問題に対する単調収束性の実現手法について説明する.