ゼミナール発表

日時: 11月10日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:浦西 友樹
青砥 隆仁 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:[論文紹介]Bundled Depth-Map Merging for Multi-View Stereo [CVPR 2010]
発表概要:現実世界にあるものをコンピュータの世界に取り込む技術は三次元復元と呼ばれている。本論文ではその中の一つである多数の視点から取得した画像を用いて三次元復元を行うMulti-view stereoを用いた高速かつ復元精度の良い三次元復元手法を提案している。具体的に本論文では、画像から幾何学的なパラメータを推定する問題において非線型最適化を数値的に実行するバンドル最適化を用いた復元精度向上とアルゴリズム並列化による高速化を行っている。 本発表ではこの論文について紹介し、シングルCPUによる演算能力向上の限界が来ている現在における高速化手法であるアルゴリズム並列化の重要性を呼び掛ける。
 
井岡 孝徳 言語科学 松本 裕治
発表題目:[論文紹介]Towards an ISO standard for dialogue act annotation
発表概要:我々人間は様々な言語形式で 情報を伝達している.書籍や新聞,論文といった「書き言葉」がベースとなっているもの,またラジオやチャット,対話などの「話し言葉」が ベースとなっているものである.これらの言語形式を相互に変換することで,より柔軟かつ適切な情報伝達が可能になると考えられる.そのためには「書き言葉」と「話し言葉」の共通点,相違点を明確にする必要がある.本発表では,その中でも「話し言葉」をベースとする対話に関して提案されたISO国際標準に基づく注釈づけ(annotation)を紹介する.
 
池内 亮太 論理生命学 池田 和司
発表題目:行列因子分解を用いたCDごとに異なる特徴の抽出
発表概要: 音楽データから演奏されている楽器の種類を同定することを楽器同定とよぶ. 楽器同定の先行研究において, トレーニングとテストのサンプルデータを異なるCDからとる場合には, 同じCDからとる場合と比べて認識率が下がることが示されており, このことからCDごとに異なる特徴が存在すると考えられる. そこで本研究では,CDごとに異なる特徴を考慮した楽器同定を行う. そのための予備実験として,スペクトログラムの行列因子分解を行うことによって CDごとに異なる特徴を抽出した.
 
石井 隼太 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:ユーザの動きを制限しない非可聴つぶやき認識の性能向上の検討
発表概要:秘匿性の高い音声認識を実現させる技術として、非可聴つぶやき(Non-Audible Murmur:NAM)認識が提案されており、先行研究においてその性能が示されている。しかし、それは話者の体が静止した状態であることを想定したものであり、実用環境での結果とは言い難い。NAMは専用のマイクロフォンを体表に圧着させて収録されるため、体を動かした状態でNAM発声を行った場合、圧着面の動きにより雑音が発生し、認識性能を低下させることが懸念される。そこで本発表では、ユーザの動きを制限しないNAM認識の性能を向上させることの前段階として、運動状態の話者のNAM認識性能が著しく低いことを示し、その解決法について検討を行う。
 
井上 直哉 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:[論文紹介]In-Place 3D Sketching for Authoring and Augmenting Mechanical Systems
発表概要:AR(拡張現実感)は現実環境にコンピュータを用いて情報を付加する技術であり、ARを用いたアプリケーションは多く研究されている。本論文ではARを用いて手描きのスケッチから三次元シーンのモデルを作成するアプリケーションを提案する。また、物理エンジンを使用して作成したモデルのアニメーションも行えるようにする。本発表ではこの論文について紹介する。
 
今津 眞也 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:ユーザの体重変化とアクティビティ履歴の関連付けに基づく健康支援手法の提案
発表概要:近年,メタボリックシンドロームを始めとする健康問題が深刻化しており,これらを予防するためにユーザに生活習慣の改善を促す健康支援システムに関する研究が盛んに行われている. 多くの研究では,血圧や脈拍といった様々なバイタルデータの測定が必要不可欠であったり,身体に直接デバイスを装着する必要があるなど制約が厳しいため,健康管理に対する関心が高くないユーザに対して, 継続的にシステムを利用させることは困難である.一方,モバイル端末に食事メニューを入力したり加速度センサによって運動内容および消費カロリーを推定する研究がなされているが,推定精度の点で問題がある.本発表では, バイタルデータの中でも簡易かつ正確に計測できる体重に着目し, 大まかに入力した食事や運動内容といったユーザのアクティビティと計測した体重データに基づく健康支援手法を提案する.提案手法では,アクティビティの履歴と体重の推移を関連付けすることで, 簡単な入力情報からでも, 適正体重に近づくための適切な食事メニューや運動内容をユーザに推薦できる健康システムの実現を目指す. 加えて,提案手法の継続的な利用を促すために,SNS上で健康改善の成果をユーザ間で競い合うことができるシステムアーキテクチャの提案を行う.
 

会場: L2

司会:戸田 智基
伊藤 隆洋 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:内力を考慮した筋電図計測による腕部の筋力推定
発表概要:リハビリ工学やスポーツ工学などの分野において筋力推定が求められている.しかし従来の技術では,任意の運動における拮抗する筋肉の影響を考慮した筋力推定ができていない.そこで本研究では,二関節運動での拮抗する筋肉の影響を考慮した筋力推定手法を提案する.本発表では,筋電図計測により得られる筋活動量を用い,腕の筋張力を推定する手法を述べる.提案手法では,筋骨格モデルをベースとした最適化手法を用いる.筋電図計測で得られた筋活動量の情報を最適化の条件として用いることで,拮抗筋の影響を考慮した筋力推定を行う.
 
内方 章雅 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:外骨格ロボットによる適応的な歩行支援
発表概要:近年,少子高齢化に伴う介護士の不足の解決策や, リハビリテーションなどへの応用として外骨格ロボットへの関心が高まっている。 外骨格ロボットの用途として,運動能力の向上,リハビリテーション,歩行支援などがある。 本題目では,外骨格ロボットにおいて手法がいまだ確立されていない歩行支援に焦点を当て, 従来提案されている方式および,本研究の方向性について発表する。
 
岡野 慎介 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:単眼カメラによる複雑背景下での人体の一般姿勢推定
発表概要:近年、身体動作計測に対する関心が医療、介護、スポーツ、セキュリティ、エンターテイメント等、様々な分野で 高まっており、その代表的な計測方法として機械式、磁気式、光学式のモーションキャプチャシステムが挙げられる。これらの 方法は非常に高精度な計測が行える一方、全身にスーツを着用しマーカーを装着する必要があるため、セキュリティや医療、介護 など、計測対象によっては必ずしも最適な方法とは言えない。そこで本研究ではそのような対象に対応するため、カメラ画像を 用いた非接触な計測方法で人体の姿勢推定を行う。また、より一般的な状況での応用を可能にするため、複雑背景下での単眼カメラ 画像による推定を目指す。本発表では、カメラ画像からの姿勢推定の概要、研究で扱う画像特徴量の一種であるShape contexts の説明、関連研究ならびに今後の研究の予定について発表する。
 
片岡 荘太 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:プレフィルタ統合型Just-In-Time制御
発表概要:計算機の処理能力高速化とメモリ容量の飛躍的増大に伴い,Just-In-Time(JIT)モデリングやJIT制御が注目されている.これは対象の現状に応じて局所モデルを臨時的に構成し,予測や制御に用いるというものである.この発表では, JIT制御・JITモデリングの発想を紹介し,さらに実際のシステムでは応答遅れが生じることを考慮して,本研究室で開発したプレフィルタ統合型2自由度構成をJIT制御に適用する.
 
川尻 圭亮 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:原子間力顕微鏡のプローブ振幅の安定化制御
発表概要:物体表面をナノスケールで観察することは,新素材開発や微細加工技術の研究のために重要である.そのための装置の一つに原子間力顕微鏡がある. 原子間力顕微鏡の測定原理は,プローブと試料表面の力学的相互作用に基づいており,振幅変調方式ではプローブがカオス的振動を含む非線形振動を起こすことが明らかにされている. この振動が発生すると正確な表面イメージが得られないため,その影響を低減する制御が必要となる.本発表では,プローブに生じるカオス振動の遅延フィードバック制御による安定化に関する論文を紹介し,今後の研究方針について発表する.
 
喜多 功次 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:[論文紹介]Cooperative Control and Potential Games
発表概要:近年, 複数のセンサやロボットを用いて目的を達成させる協調制御が注目されている. しかし, 従来の協調制御手法では障害物が存在する等の複雑な環境には対応する事ができなかった. そこで, 協調制御とゲーム理論の関連性に着目し, ゲーム理論を用いて協調制御問題を解く手法が提案された. ゲーム理論を用いる事で障害物が存在する等のより複雑な環境にも対応する事が可能となる. 特に, 本論文ではポテンシャルゲームと呼ばれるゲームを用いて協調制御問題を表現する手法を提案している. 本発表では, この論文について紹介し, 自身の今後の研究計画を述べる.
 

会場: L3

司会:北野 健
東 真也 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:Z偏光ビームを用いた光ピンセット法の研究
発表概要:光ピンセットは、顕微鏡下の対象物にレーザー光を照射した際に生じる放射圧で対象物を捕まえて操作できる技術である。近年、バイオサイエンス分野では、細胞からDNAや染色体を取り出すなどの用途で微細な対象物を自由に扱いたいというニーズが高まっており、光ピンセットのような微小物体を操作する技術が求められている。しかし、従来の光ピンセットでは、レーザー光を吸収することで発生する熱でブラウン運動が活発化するため、ブラウン運動の影響を強く受ける微小な粒子を捕捉するのは困難になり、ある限界より小さな粒子は捕捉できなかった。そこで本研究では、この限界を超えてさらに微小な物体を捕捉する光ピンセット法を開発することを目的とする。微小な物体を捕捉するには、レーザー強度を大きくすることなく、捕捉力を大きくする必要がある。本研究では光ピンセットにおける光軸方向と水平方向の捕捉力の違いに着目し、光源の偏光状態を制御して光軸方向の捕捉力を強化した光ピンセット装置の開発を行う。本発表では、特殊な状態を持つレーザービームを用いて光軸方向の捕捉力を向上させている先行研究を紹介した上で、今後の研究計画を述べる。
 
池本 高浩 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:[論文紹介] Scalable and Interactive Segmentation and Visualization of Neural Processes in EM Datasets
発表概要:近年、高分解能な電子顕微鏡の画像は神経回路の非常に複雑な構造を再現するために用いられている。しかし、莫大なデータサイズや複雑な構造のためSegmentationやVisualizationを行う処理が難しく、時間がかかる。そこで、電子顕微鏡のデータに対して、SegmentationとVisualizationを行う新しいシステムとしてNeurotraceが開発された。この手法は、Segmentationに関する手法とVisualizationに関する手法の2つの手法の組み合わせでできている。そして、インタラクティブ性を実現するため、GPU上にシステムが構築されている。この手法は、従来用いられてきた手法と比べて、早くかつ簡単に処理を行うことができる。本発表では、この論文について紹介し、自身の今後の予定について発表する。
 
井元 兼太郎 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:二光子顕微鏡における立体可視化のための高感度イメージング法
発表概要:二光子顕微鏡を用いれば生体組織内部を非侵襲かつ低光毒性条件で長時間観察でき,1mm3の領域を20003voxelの高分解能でデータ取得できる.そのため,二光子顕微鏡は生物分野において微細三次元構造の理解のための重要なツールとなっている.しかしながら,16bit20003voxelの三次元画像は16Gbyteにもなるため立体可視化や探索は非常な困難を来たす.そこで本研究では,二光子顕微鏡を用いた大規模三次元可視化や効率的解析法を実現することを目的として,可視化に適した大規模三次元データの取得法を考案・開発し,巨大画像を立体可視化する枠組みを構築することを目指す.現状の二光子顕微鏡では,画像に含まれるノイズが深部の観察やレンダリングを困難にしているという問題がある.そこで,本発表では二光子顕微鏡の高感度イメージングに関する先行研究を紹介し,今後の研究計画について述べる.
 
小村 弘美 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:二次代謝物データベースKNApSAcKを利用した代謝シミュレーションツールの開発
発表概要:本研究では生物種・代謝物二次代謝物データベースKNApSAcKを用いた代謝シミュレーションツールの開発を目的とする。二次代謝経路・二次代謝物の解明は創薬など分野においても非常に重要な役割を担っている一方で、現在二次代謝に特化した代謝シミュレーションに関する報告は少ない。これを受け、本発表では現在あるシミュレーション手法をいくつか紹介し、それらを応用した二次代謝物シミュレーションツールの開発と、二次代謝物データベースKNApSAcKとの融合について述べる。
 
田中 大河 論理生命学 池田 和司
発表題目:細胞の形態変化を制御する分子活性の定量化解析
発表概要:神経細胞の軸索先端の成長円錐において、Cdc42,Rac1,RhoAらによって形態変化が制御されることが知られており、形態変化とこれらの活性度において相関関係がある事がは実際に確認されている。 本研究の最終的な目的はそれらの定量的な数理モデルの構築であるが、今回の発表は、まず先行研究で確認されているスカラとしての相関値だけで無く時系列を残して詳細な因果関係を抽出する為に、形状変化と活性度について定量化解析を行った結果を報告する。
 
藤居 宏平 論理生命学 池田 和司
発表題目:NIRSを用いた基礎的なドラム演奏時における熟達者-非熟達者間の脳活動比較
発表概要:本研究の目的は, 四肢を用いたドラム演奏時における熟達者-非熟達者間の脳活動を比較することである. このように全身を用いた運動時の脳活動を非侵襲に計測するため, 近赤外分光法 (Near-infrared spectroscopy; NIRS) を用いた. 演奏課題としては, 非熟達者にとっては演奏が容易でないが, 熟達者にとっては容易である一小節のドラムパターンを用いた難課題と, いずれの被験者にとっても演奏が容易な一小節のドラムパターンを用いた易課題の2種類を用意した. 解析の結果, 熟達者では主に難易度が高いと前頭葉付近の活動が低下するのに対し, 非熟達者では前頭葉付近や頭頂葉付近で活動が増加することが観測された.