自動車が誕生してからおよそ一世紀が経ち,現在ではこの自動車を用いた道路交通網は,現在の社会運営や人間の日々の生活に欠かす事のできない要素となり,あらゆる利便性を人間に提供している.一方,その普及に伴い,数々の問題も発生してきた.交通事故や渋滞のもたらす時間と資源の浪費,環境汚染等である.これら諸問題の根本的解決の実現手段として,道路交通に関する総合的な情報通信システムである高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)の構築が世界規模で盛んに行なわれている.
プローブ情報システムは,自動車の保持するセンサデータ(プローブデータ)を,インターネット等の汎用的な情報通信基盤を用いて収集して,統計的な処理等を施すことで,交通情報や気象情報,安全運転支援情報等の価値ある情報(プローブ情報)の生成・提供を実現するITSの1つである.センサや道路ビーコンなどの特別な情報収集基盤を必要としないため,既存のITSにくらべ広範囲に渡って動的に情報を収集できる.また,車両の持つ情報をもとに情報を生成するため,蓄積・加工の方法によって従来にない様々なニーズに応じた情報提供の可能性を持つ.
本講演では,インターネットを基盤としたプローブ情報システムの研究開発の概要,各種の実証実験の紹介を交えつつ,共通基盤としてのプローブ情報システムの普及展開について述べる.また、国際標準化団体であるISOにおける標準化の概要と共に,これまでのプローブ情報システムに関する国際標準化活動について紹介する.
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