ゼミナール発表

日時: 10月2日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会: 松原 崇充
稗方 孝之 D2 鹿野 清宏 杉本 謙二 猿渡 洋
発表題目:独立成分分析に基づくリアルタイムブラインド音源分離・抽出マイクロホンに関する研究
発表概要:近年、機械装置の音響診断、携帯電話、ロボット音声対話、カーナビ等、多くのアプリケーションで「聞きたい音」だけを瞬時に取り出したいニーズが高まっている。本研究では、高速かつ高精度なブラインド音源分離技術の提案およびそのリアルタイム実装に関して論じる。まずはじめに、雑音環境下で混合音を分離可能な新しいブラインド音源分離マイクロホンを提案・開発する。本マイクロホンは単一入力・複数出力型の独立成分分析とバイナリマスク手法を組合わせたリアルタイム処理向けのブラインド音源分離アルゴリズムを基礎としており、本アルゴリズムを改造してDSP(デジタルシグナルプロセッサ)上にリアルタイム実装する。さらに、本マイクロホンへのリアルタイム実装上の問題を詳説し、本マイクロホンの実験的評価によって、本マイクロホンの有効性を評価する。次に、本マイクロホンをさらに現実的な環境で使えるようにするために、拡散性雑音環境下で特に有効な新しいブラインド音源抽出法を提案する。本研究では、本手法の詳細についても述べ、提案法を実装したマイクロホンを用いた様々な雑音環境下での評価実験から、提案法が従来法に比べて優れた性能を発揮することを示す。
 
松本 鉄平 M2 鹿野 清宏 杉本 謙二 猿渡 洋
発表題目:Closed-form second-order ICA と least-squares ICA を用いた BSS
発表概要:近年,テレビ会議システムやハンズフリー音声通信,音声認識システムへの応用を目指して音源分離技術が盛んに研究されている.その中で事前情報をほとんど用いることなく音源分離できる,独立成分分析(ICA)に基づくブラインド音源分離(BSS)が注目されている.しかしこの技術には予め仮定した確率密度分布に従わない音源の分離精度が低いという問題がある.本研究では,信号の非定常性を仮定する代わりに確率密度分布を仮定しない closed-form second-order ICA と分離精度が初期値に依存する代わりに入力信号の仮定をする必要のない least-squares ICA の2種類のICAを互いの弱点を補完するように組み合わせ,どのような入力信号に対しても頑健に動作するBSSを提案する.
 
波多野 学 M2 鹿野 清宏 木戸出 正繼 猿渡 洋 戸田 智基
発表題目:非可聴つぶやきの習得支援システムに関する検討
発表概要:近年,周囲の人に聞こえない程小さなつぶやき声である非可聴つぶやき(Non-Audible Murmur: NAM)を用いた音声認識(NAM認識)が音声認識の新たな形態として注目されている.これまでの先行研究の結果,話者ごとに認識率が大きく変動する(40〜90%)という問題点があることが確認されている.この問題点の解決には,高精度に認識できるNAMの発声方法を明らかにすることが必要である.そのためには,話者間で認識率が変動する原因を明確にすることが必要である.そこで,私は様々な音響特徴量と認識率との関係を調査し,話者間で認識率の変動要因を分析する.この分析を通して,複数の特徴量から認識率の予測を行い,認識率との相関を求めることで,認識率に影響を与える特徴量を明らかにする.本発表では,その結果を報告する.
 
吉﨑 航 D2 小笠原 司 木戸出 正繼 金出 武雄★2 加賀美 聡
発表題目:キャラクタ姿勢入力のための双方向パペットインターフェイス
発表概要:製品の設計段階における評価検討のため、CAD上で利用可能な人体モデルであるデジタルマネキンが広く用いられている。このような人型キャラクタのポーズ付けを効率化するため、各関節にサーボを配することで双方向の通信が可能で、かつ人体の計測データベースと連携することで人間らしい動作を生成可能なパペット型の姿勢入力インターフェイスを提案する。
 

会場: L2

司会:大島 拓
ZHAI YAN M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎(バイオサイエンス研究科)
発表題目:Tiam1、Tiam2のPHCCExドメインによるCD44,Ephrin,Par3の認識
発表概要: T-lymphoma invasion and metastasis 1 (Tiam1) は白血球の浸潤に関わる遺伝子として同定された低分子量Gタンパク質Racのグアニンヌクレオチド交換因子である。細胞内において、Tiam1は細胞膜近傍に局在してRacを活性化し、細胞運動時の葉状仮足形成に関与する。この細胞膜への局在は、Tiam1分子内のPHCCExドメインが、細胞膜や細胞接着分子、足場タンパク質などと相互作用する事によって行われる事が近年明らかになってきた。しかしながら細胞膜局在に重要なTiam1のPHCCExドメインが、どのように細胞膜や細胞接着分子などを認識し、細胞膜局在に関与しているのかは未だ明らかになっていない。本研究では、Tiam1および、その相同タンパク質Tiam2のPHCCExドメインと、細胞接着分子CD44とEphrin、足場タンパク質Par-3との複合体結晶構造解析を行い、PHCCExドメインによる、それぞれの分子の認識機構を明らかにする事が目的である。今回の発表では、現在の進捗状況と今後の課題について述べる。
 
木村 知永 M2 湊 小太郎 小笠原 直毅 杉浦 忠男
発表題目:二光子顕微鏡における観察可能深度の向上
発表概要:二光子顕微鏡は、非侵襲かつ低光毒性条件で生体組織試料をリアルタイムに可視化できるため、特に脳神経科学において不可欠な研究ツールとなっている。 さらに生体組織深部までを観察するためには深い部分でも高感度にイメージングすることができる技術が求められている。そこで、本研究では、高感度イメージングに着目し、二光子顕微鏡に電気光学変調器(EOM)を用いたパルス列変調系とフォトンカウンタ検出系を導入することで、励起効率と蛍光検出効率をそれぞれ向上させ、高感度イメージング可能な二光子顕微鏡の開発を行った。
 
友松 克之 M2 湊 小太郎 小笠原 直毅 杉浦 忠男
発表題目:臨界角照明蛍光相関分光イメージング法による量子ドット計測系への適用
発表概要: 蛍光相関分光法は、微小領域における分子のゆらぎの情報から分子の大きさや数、拡散係数等の計測が可能な測定法である。生物学においてはタンパク質の相互作用の研究に用いられており、近年、注目されてきている。しかし、従来のFCSはレーザー光を集光した一点の計測しかできず、複数点での同時計測は出来なかった。そこで我々は、電子増倍CCDカメラを用いて多点同時計測可能なイメージベース蛍光相関分光計測系を開発している。この手法では、取得画像上でポイントを指定すればその点での拡散係数を取得出来るため、細胞中の分子の動態を計測するなど生物学分野での応用が期待される。観察分子に蛍光褪色に強い量子ドットを使用し、照明には臨界角照明法を用いて多点同時FCS計測を試みた。更に細胞接着分子であるインテグリンを量子ドットで標識した細胞の計測を行い、本手法の細胞への適用について検討する。
 

会場: L3

司会:齋藤 将人
妙中 雄三 D2 山口 英 岡田 実 門林 雄基
発表題目:無線メッシュネットワークにおける通信品質向上に関する研究
発表概要:近年、都市部全域といった連続的なネットワーク接続性を供給する無線ネットワークとして、複数のアクセスポイントを設置して無線エリアを拡大し、バックボーンネットワークとしてアクセスポイント間での無線通信を用いる無線メッシュネットワークが注目されている。一方、ネットワークを利用するモバイル端末は高性能化が進み、様々なアプリケーションを実行可能となっている。そのため、将来はHDビデオやストレージといった高品質な通信環境を要求するアプリケーションが頻繁に使用されると想定されている。この様な環境では、モバイル端末がアクセスポイントから離れることによる通信品質の劣化や使用するアクセスポイントを切り替える際の品質維持が問題となる。そこで、本研究では無線メッシュネットワーク内でのモビリティ環境において、ネットワーク全域でモバイル端末の通信品質を向上させることを目的にモバイル端末での品質管理と無線メッシュネットワークでの品質管理の両面からの問題解決を図る。具体的にモバイル端末側では、無線LAN間を移動する際の通信品質低下及び通信中断を抑制するハンドオーバ手法と、複数のアクセスポイントが存在する環境で通信の切り替え先として良好な通信品質を供給するアクセスポイントの選択手法に取り組む。ネットワーク側では、通信ができないデッドスポットや通信品質の低下が発生するスポットの特定・解消を目指し、特定の通信品質を供給するエリアの検出を行っている。本発表ではこれまでの研究の概要を説明するとともに、今後の展開についても言及する。
 
勝間 亮 D2 伊藤 実 岡田 実 安本 慶一
 近年,広範囲のフィールド設置された多数の小型ノードが環境情報を収集(センシング)し, その情報を無線マルチホップ通信により交換することで環境モニタリングやオブジェクトの 追跡などを行うワイヤレスセンサネットワーク(以下,WSN)およびそのアプリケーションが 注目されている. 本発表では,主に環境情報の収集を目的とするWSNにおいて,フィールドをk重被覆し,かつ, 稼働時間を最大化する手法を提案する. k重被覆とは,フィールド上のどの地点も,少なくともk個以上のセンサノードでセンシング可 能な状態(被覆されているという)のことを言う. k重被覆の長時間維持を達成するため,(1)移動可能なノードを使用する手法,(2)多数の センサノードを配置し,一部のセンサノードをスリープさせる手法を提案する.
 手法(1)では,フィールドをk重被覆し続ける時間を最大化するような可動ノードの適切な移 動先の決定,および,データ収集のためのマルチホップ通信経路の構築を行う.対象問題は Minimum Geometric Disk Cover 問題を含んでいるため,NP困難な問題である.そこで,準最適 解を実用時間で求めるため,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm,以下GA) に基づいた近 似アルゴリズムを提案する.一般に,データ収集型WSNでは,基地局ノード(データを収集する ノード)に近いノードは,より遠方のノードのデータを中継するため通信回数(通信量)が多 くなって他のノードより早くバッテリが枯渇し,結果としてWSNの稼働時間が短くなることが問 題になっている.この問題に対処するため,各ノードの通信における電力消費量のバランスが とれたデータ収集木を構築するような解を生成し,GAの初期解に含ませている.本手法による WSN稼働時間延長の性能を評価するため,他のk重被覆を維持するための手法などとの比較実験 をシミュレーションにより行った.その結果,100から300ノードのWSNに対し,他の手法よりも 1.7倍ほどWSN稼働時間を延長できることを確認した.
 手法(2)では,フィールドをk重被覆し続ける時間を最大化するような各ノードの適切な動作 モードの決定手法と,データ収集のためのマルチホップ通信経路構築手法を提案する.本手法 ではk重被覆維持時間を延ばすため,k重被覆を最小個数のセンシングモードのノードで保ち, 余分なノードをスリープモードにしてバッテリを温存させる.センシングモードのノードのバ ッテリが消耗したとき,電力を温存していたノードと交代させる.本手法によるk重被覆保持時 間を,シミュレーション実験により評価した.その結果,本手法は,スリープモード無しの場 合に比べて30倍程度延長できることを確認した.
 
田村 晃一 D1 松本健一 門田暁人 飯田元 森崎修司
発表題目:ソフトウェア開発工数の予測精度向上と低減に関する研究
発表概要:ソフトウェア開発プロジェクトの適切な計画立案と管理を行うためには,開発工数を高い精度で予測することが求められる.また,ソフトウェア開発の大規模化と短納期化への要求が高まっていることから,開発効率を向上させ,開発工数そのものを低減させる必要もある.本発表では,開発工数の予測精度向上および低減を目的として取り組んでいる次の2つのテーマについて述べる.まず,開発工数予測モデルを構築する上で問題となる過去のソフトウェア開発プロジェクトの実績データに含まれる欠損値に着目し,どの欠損値処理手法がより工数予測モデル構築に適しているのか実験的に比較する.平均値挿入法,ペアワイズ除去法,類似性に基づく補完法,及び無欠損データ作成法を比較した結果,類似性に基づく補完法を用いることで高い精度のモデルが構築されることがわかった.次に,テストよりも早期に実施可能であり,開発効率の向上につながることが報告されているレビューに着目し,ソースコード中の欠陥修正に伴って実施される再テストの工数低減を目的としたコードレビュー手法の提案を行う.商用開発の実務経験者6名を含む18名の被験者の間で,提案手法とTest Case Based Reading(TCBR),Ad-Hoc Reading(AHR)を比較したところ,TCBRと比較して平均2.1倍,AHRと比較して平均1.9倍の再テスト件数の削減が確認できた.