ゼミナール発表

日時: 9月29日(火)1限 (9:20-10:50)


会場: L1

司会:小林 和夫
大迎 卓也 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎(バイオサイエンス研究科)
発表題目:α-cateninとvinculinによる細胞接着制御機構の構造的基礎の解明
発表概要:上皮細胞では細胞の側面に高度に発達した細胞接着システムが形成され、組織の形態形成、細胞運動や細胞極性の形成・維持などの様々な役割を果たしている。昨今、接着結合(Adherence junction:AJ)は張力刺激によりシグナル伝達調節が行われている事が示唆されている。その生命現象を解明する為、本研究ではα-cateninと呼ばれるタンパク質を研究対象としている。接着分子であるカドヘリンは接着結合形成を担う主要な分子であり,細胞膜動態の変化や細胞骨格系の再編成と協調的に接着結合を制御している。重要な事は、α-cateninとvinculinを介して、カドヘリンはアクチン細胞骨格との相互作用が安定化されることである。α-cateninとvinculinの相互作用は昔から知られていたが、最近になってこの相互作用は、アクチン張力依存的な動的相互作用であることが示唆されている。そこで本研究では細胞接着の動的な制御機構の解明の目的とし、α-cateninとvinculinの結合制御機構を構造生物学的アプローチによって明らかにしていく。本発表では、研究背景を紹介して、今後の研究方針について説明する。
 
黒木 亮 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎(バイオサイエンス研究科)
発表題目: 微小管の翻訳後修飾酵素TTLLsを介したシグナル伝達制御の構造生物学的解明
発表概要:TTLファミリーは哺乳類ではTTL、TTLL (TTL like protein) 1-13の計14のタンパク質から構成され、共通してTTLドメインをもつファミリーである。TTLドメインはグルタチオン合成酵素と相同性があり、ATPで駆動されてアミノ酸付加を行う。14のタンパク質のうち9個がポリグルタミン酸付加酵素に分類され、うち6つが単独で活性をもつことが示されている。それ以外ではTTLがチロシン付加、TTLL3、8,10がポリグリシン化活性をもつことが明らかとなっており、TTLL12については機能未知である。翻訳後修飾はシグナル伝達の主要かつ普遍的な制御機構である。タンパク質にタンパク質を付加するタイプの翻訳後修飾によるシグナル伝達制御はここ数年で構造生物学的手法によってそのメカニズムは原子レベルで明らかとなってきている。その一方で哺乳類においてTTLのように1アミノ酸を付加,伸長する酵素は非常に珍しい。細胞内においてポリグルタミン酸付加やポリグリシン付加されるタンパク質はtubulinだけでなく、他にも見出されていること から、より一般的な翻訳後修飾となる可能性がある。現在、TTLLsの機能の構造生物学的解明を目指して研究を行っている。
 
杉藤 宏信 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎(バイオサイエンス研究科)
発表題目:Tight junction形成制御に関与するZOタンパク質複合体の構造研究
発表概要:Tight junction (TJ)は上皮細胞側面に形成される接着構造のうち、最も頂端に位置し、Claudin,Occludinなどの接着分子により形成され、組織内の恒常性や細胞極性を維持している。ZOタンパク質 (zonula occludens proteins:ZO-1,ZO-2,ZO-3)はTJ の形成や制御に関与しており、TJ 形成を制御する。ZOタンパク質は複数のドメインから構成されているが,このうちSH3-GuK領域はClaudinの集積に必須の機能を担っていることが明となってる。また、SH3-GuK領域はoccludinやAdherence junction (AJ) 形成を担っているα-cateninと相互作用することで、AJとTJを構造的に結び付けていることが示唆されている。しかし、ZOタンパク質のSH3-GuK領域を介した標的タンパク質との結合様式やTJの形成制御機構については不明な点が多い。そこで、本研究はTJ 形成制御にZO タンパク質がどのように関与しているのかを、ZOタンパク質と結合するタンパク質との相互作用機構に着目し、構造生物学的手法によって明らかにする。本発表においては、 ZOタンパク質によるTJ形成の制御機構について述べ、結合するタンパク質との相互作用を明らかにするために行っている構造的研究の進捗状況について報告する。
 
畑野 大樹 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎(バイオサイエンス研究科)
発表題目:モータータンパク質Myosin-XのMyTH4-FERM domainの構造的研究による積み荷認識機構の解明
発表概要:モータータンパク質の一種であるMyosinのTail domainは、Myosinの種類によって多様性に富んだ構造を有している。Myosinのうち、Myosin-VII,X,XVのTail domainにはMyosin Tail Homology 4 (MyTH4) domainとFERM domainという共通の構造が含まれており、タンパク質間相互作用を担っていることが示唆されている。Myosin-XでのMyTH4-FERM domainは、糸状仮足の伸長や細胞分裂に関与すると考えられており、微小管やDCC (deleted in colorectal cancer)などに相互作用することが示されている。この標的分子との相互作用にはMyTH4とFERMの2つのドメインが協調的に働くことで標的を認識すると考えられている。DCC-neogeninの細胞質領域は300-400a.a.程度で、P1,P2,P3という種間で保存性の高い3つの領域が存在するが、P3 domainがMyosin-Xとの相互作用に重要であるとされている。結晶構造解析によって、Myosin-Xの積み荷認識、DCCとの相互作用の様式を解明することを目的とする。本発表では研究背景とこれまでの進捗状況について報告する。