ゼミナール発表

日時: 11月2日(月)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:松原 崇充
秋山 寛敏 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:強化学習による個人の能力に合わせた協調動作獲得
発表概要::近年ロボット技術の向上により,一般の家庭にロボットが普及しつつある.ロボットは人と協調作業を行う事もあるため,その場でロボットの行動を人の身体能力に適応させる必要がある.本研究ではロボットと人がビーチボールを打ち合うタスクを題材に,強化学習を用いてロボットのボール打ち動作をその場で人の身体能力に適応させる.本発表では協調動作に関連する研究動向を紹介し,今後の方針について述べる.
 
雨宮 尚範 自然言語処理学 松本 裕治
発表題目:類義語推定可能なシソーラス拡張支援アプリケーションの開発 −ライフサイエンス分野のシソーラス辞書に対し,語の新規登録を支援する試みの進捗報告−
発表概要:専門用語のシソーラス辞書はその分野の検索を行う上で重要である.医療生物学分野では日々新たな言葉が出現しており,シソーラス辞書の持続的な更新が必要とされる.シソーラス辞書の拡張は個々の専門家により行われてきたが,個人の知識への依存や高い人的コストという問題を抱えている.この問題に関して,登録する語の類義語を推定して示すという支援システムが提案されている.本発表ではこのシステムの開発の進捗状況を示す.今後の課題についても述べる.
 
五十嵐 匠真 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:肺腫瘍の三次元位置推定と位置合わせ
発表概要:近年、放射線治療が悪性腫瘍の有効な治療法として注目されている。特に呼吸によって移動する肺腫瘍に対し、腫瘍を追尾しながら放射線を照射する動体追尾照射による治療の実現が期待されている。治療中には二方向からの患者の時系列連続X線直接撮影像が取得可能であるが、このX線画像のみをもとに画像処理で腫瘍位置を正確に把握することは容易ではない。そこで、本研究では術前に取得されるCT断層画像から肺メッシュを生成し、有限要素法に基づく変形シミュレーションにより肺腫瘍の位置を推定する。変形後の肺領域に関して、 DRR(Digitally Reconstructed Radiography)により疑似X線画像を生成し、実際に撮像される2枚の時系列X線画像に位置合わせすることで照射位置を決定する。本発表では、本講座で実施された先行研究を紹介し、課題点と自身の研究の展開について述べる。
 
石黒 剛大 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:車載向け高精度歩行者追跡に関する研究
発表概要:近年,監視や車載用途での利用を対象とした歩行者認識に関する研究が盛 んに行われており,このような応用では遠い視点からの歩行者認識が必要とされる. このような場面で用いられる認識処理は,一般に,前処理等を行った後に画像中から 歩行者を発見する検出処理と,それにより見つけた歩行者の位置を把握し続ける追跡 処理によって実現される.このような歩行者認識の精度を向上させるためには,検 出,追跡,それぞれの精度を向上させる必要がある.現在,検出処理に至っては高精 度な手法が幾つか提案されているが,追跡処理に関しては精度が十分であるとは言い 難い.そこで本研究では,遠い視点からの歩行者追跡の性能に大きな影響を与える特 徴抽出手法に関する検討を行う.
 
伊藤 晃大 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:ヒューマノイドロボットのための音情報を用いた遠隔操縦インタフェース
発表概要:従来のロボット操縦インタフェースでは,視覚メディアを用いて多くの情報が提示されている.しかし,視覚メディアによる情報提示では,負担が大きいことや情報伝達が注視に依存しているなどの問題が生じており,確実な伝達が保証できない.そこで,本発表では,遠隔操縦インタフェース及び音情報インタフェースに関する関連研究を紹介し,ヒューマノイドロボットのための音と視覚情報を相補的に活用した遠隔操縦システムを提案し,今後の研究方針を述べる.
 

会場: L2

司会:池田 聖
壱東 孝 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:人に優しい制御系実現のためのMcKibben型空気圧ゴム人工筋の力制御
発表概要:重作業や介護時の能力拡大や負担軽減、運動能力や機能回復訓練を行う装置の研究開発が盛んに行われている。これら装置では人間に直接触れることを考慮したアクチュエータが必要であり、この一つとしてMckibben型空気圧ゴム人工筋がある。この人工筋は電動モータに比べて、軽量で重量比出力が高く、柔軟であるから人間との接触がある装置での使用に適している。しかし、人工筋は強い非線形性を持っているので、そのままでは人に接触する装置での使用が困難である。そこで、本研究では空気圧ゴム人工筋の力制御を行うことで、人工筋を人に優しいアクチュエータとして使用できるようにすることを目的とする。本発表では、空気圧ゴム人工筋のモデリングについて調査したので報告し、今後の課題について述べる。
 
梅原 茂樹 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:安全確保速度を用いた安全運転教育
発表概要:無信号交差点における出会い頭事故防止を目指し多くの研究が進められている.ドライバの運転行動改善のためにはまず各ドライバの持つ運転行動の問題点を明らかにする必要がある.先行研究では様々な交差点での不安全行動を評価するためには,交差点の状況,特徴に適応した安全行動であるかを総合的に評価する必要があると考え,運転行動を評価する指標「安全確保速度(HAS)」を提案した. 本発表では,先行研究で提案されたHASの紹介を行い,HASの応用例として行ったHASを用いた安全運転教育についてその効果を述べる.最後に,考察と今後の研究の展開について述べる.
 
太田 濃 システム制御・管理 西谷 紘一

発表題目:イベント解析によるプラントアラームシステムの適正化
発表概要:近年,プラントの分散制御システム(DCS;Distributed Control System)化に伴い増加した連鎖アラームや繰り返しアラーム,操作不要アラームなどの迷惑アラームの削減活動が盛んに行われている.しかし,既存のアラーム発生件数ランキングに基づいたアラーム削減手法では削減効率が低下している.そこで,プラントで発生したアラーム,操作の種類と発生時刻からなるイベントデータから迷惑アラームを抽出するイベント相関解析手法が提案されている(西口ら).本研究ではこのイベント相関解析手法の問題点であるパラメータの設定指針を提唱する.

 
大西 悟 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:動特性を考慮した超解像処理に関する研究
発表概要:位置ずれのある複数枚の観測画像(低解像度画像)から高解像度画像を生成する技術として超解像処理があり,現在様々な研究が行われている. 従来研究では,観測画像間の位置ずれ情報を予め推定し,高解像度画像を生成するというものであった. ここで,画像間の位置ずれ量を画像の時間軸における変化(動特性)として捉えれば,何らかの関係式を導出できると考えられる.またこの式から 高解像度画像を生成できると考えられる.本発表では関連研究として, 動特性を考慮し,カルマンフィルタを用いた超解像処理を行う研究について紹介する.最後に今後の方針について述べる.
 
粕谷 悠介 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:非優先側交差点通過行動プロフィールの最適化
発表概要:依然として減少傾向を見ない自動車事故に対し、ヒューマンファクターズの観点から運転行動の根本的な改善に向けた研究が進んでいる。本研究では無信号交差点を非優先側から直進する際のドライバーの運転行動の解析を行い、ドライバーのもつ運転行動の問題点を明らかにし、運転行動を改善するための安全運転教育を行っている。安全な運転行動の見本となる理想的な運転行動の確立が今後の課題となっている。本発表では安全な運転行動の評価指標である安全確保速度(HAS)の説明を行い、理想的な条件での運転行動のシミュレーション結果について示す。
 
河野 翔太 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:ネットワーク結合された動的システムの同期現象−モデリング,安定解析−
発表概要:近年,複数のエージェント間の合意問題やセンサネットワークなど協調制御に関する研究が盛んに行われている.メトロノームのような振動子の同期現象も広義の協調制御の一種であり,協調制御の関心の高まりとともに,物理現象や自然現象のメカニズムを数理的に解析しようという研究が注目されている.本論文では,メトロノームの同期現象が,どのような条件下で発生するか解析的に明らかにしている.具体的には,メトロノームをファンデルポール振動子によりモデル化し,弱非線形系の代表的な近似解法である平均化法を用いて解析する.この解析により,安定な同期状態が存在するシステムパラメータの領域を示している.本発表では,本論文の紹介を行い,最後に今後の研究の方針について述べる.
 

会場: L3

司会:北野 健
池田 純起 論理生命学 池田 和司
発表題目:ヒト皮質脳波からの黙読単語推定
発表概要:近年,大脳皮質表面の脳活動を,侵襲的・非侵襲的計測手法を用いて読み出し,外部のコンピュータに接続しようという,脳ー機械インターフェース(BMI)の研究が,非侵襲的計測手法の発展により,ヒトを対象としても盛んに行われている.本研究では,このBMI技術を用いて,ALS(筋萎縮性側索硬化症)等の,発声が困難である患者のコミュニケーションをサポートすることを目指した基礎研究として,皮質脳波(ECoG)からの黙読単語の推定を行った.ECoGから得られるデータに対して数種類の特徴抽出を行い,各特徴抽出の推定性能を比較した.また,ECoG電極は左脳前頭葉・側頭葉の広い領域に設置されているが,将来BMIとして活用する段階では,単語推定に重要な脳領域が限定されるならば,電極数を減らして侵襲度を下げることができる.そこで本研究では,単語推定性能を基準とした電極群の探索を行った.さらに,選択された電極の皮質上位置について,神経科学の知見や臨床言語学的実験結果を用いて考察を行った.
 
大杉 直也 論理生命学 池田 和司
発表題目:ダーツ熟達者非熟達者間での差異検出のための筋電データの特徴抽出
発表概要:ダーツ投擲時の筋電データに熟達者非熟達者間にどのような差異が見られるかについての解析を行なうために、筋電データの特徴抽出を検討する。PCAなどの次元圧縮の手法が有力候補である。
 
小阪 卓史 生命システム学 石井 信
発表題目:MRI構造データを用いたDOIによる脳活動領域の推定
発表概要:NIRS(Near InfraRed Spectroscopy)は、皮質表面に近赤外光を照射・検出することでoxy-Hbとdeoxy-Hbの濃度変化を測定する、脳機能計測法の一つである。他の機器と比較して計測が簡便であることや、人体にとって安全であり、また、時間分解能に優れているという点から、近年、医療やBMI分野で注目されている。しかし、一般に人間の生体組織は散乱特性が強く、照射から検出までの光路長が不明であるため、oxy-Hbとdeoxy-Hb濃度の空間的な分布が定まらないという問題点がある。この問題に対し、DOI(Diffuse Optical Imaging)は、照射光の伝播をモデル化し、観測されたNIRSデータから皮質表面のoxy-Hbとdeoxy-Hbの濃度の分布を推測することを考える。近年の研究では、生体組織を擬似的に表現した3Dメッシュ内部に仮想的な活動領域を配置し、伝播モデルに基づいて推定された濃度分布と比較することで、伝播モデルおよび分布推定の精度の評価を行っている。本研究では、実際のMRI構造データを用いた光伝播モデルを構築し、実データに基づいたoxy-Hb、deoxy-Hbの濃度分布の生成を目標とする。本発表では、DOIの実現に関して考慮すべき点について考察を行い、今後の研究活動について述べる。
 
小菅 隆行 計算神経科学(論理生命学) 池田 和司
発表題目:非合理的な偏向に基づく報酬誤差学習とその神経基盤
発表概要:我々生物は皆生きていく上で様々な意思決定を行わなければならない。しかし、それらの判断は従来の経済学で考えられていたような経済的合理性のみに基づくものではなく、しばしば近視眼的な選択や感情的な選択を行ってしまう。こうしたともすれば不可解ともとれる選択をしてしまうのは単なる誤りではなく、我々の意思決定器官がそちらの選択肢をより魅力的と感じたが故にそうしているのだと考えられる。
私は、このような人間らしい判断を下すに至る原因の一つとして「損失回避性」という性質に着目し、この損失を重視する偏向と行動学習との間の関係、そしてその神経基盤について研究している。本発表では、こうした考えに至った過去の研究及び今後の方針について述べる。
 
福田 めぐみ 計算神経科学(論理生命学) 池田 和司
発表題目:論文紹介 Subliminal Instrumental Conditioning Demonstrated in the Human Brain
発表概要:Pessiglione et al.(2008)の紹介を行う.意識下で提示される視覚刺激と,取るべき行動の関連付けを学習させることに成功した.さらに,実験から得られたデータを,Q学習のアルゴリズムを用いてモデリングしたところ,fMRIを用いて計測した線条体の活動と,Q値に相関があることが明らかになった.