ゼミナール発表

日時: 10月2日(木)1限 (9:20-10:50)


会場: L1

司会:中尾
和田 眞昌 D2 金谷 重彦 湊 小太郎 川端 猛
発表題目:Arabidopsis thalianaにおける共発現遺伝子の機能関係解析
発表概要:植物のモデル生物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)は多くの研究者らの研究対象となっており、実験で得られた遺伝子の発現情報は公共データベースにおいて公開されている。バクテリアにおいてoperonと呼ばれる発現制御機構があるが、近年これに似たような遺伝子群がシロイヌナズナで見つかり、operon-like-genesとして報告された。本研究ではこれを踏まえた上で、次の解析を行った。公共データベースより遺伝子の発現データを集め、遺伝子ごとの発現プロファイルを作成した。この発現プロファイルを元に統計解析を行った。operonの特徴の一つである隣接遺伝子の共発現という情報を元に、シロイヌナズナの隣接遺伝子間の相関を求めた。さらに隣り合った相関係数の並びにクラスターとする枠を設定してその枠の中での相関係数の平均値を求めた。この平均値のうち統計的に有意な点をこのクラスターの中心として、その枠の中に含まれる遺伝子を共発現遺伝子クラスターの候補とした。結果として、29のクラスターを候補となった。さらにこれらのクラスター内の遺伝子の機能を見たところ、同様の機能群が固まっているものが見られた。これによりさらにoperon-like-geneの発見を見つけることができると考える。
 
田中 健一 D2 金谷 重彦 湊 小太郎 川端 猛
発表題目:MetClassifier:構造情報に基づいたメタボライト分類支援システムの開発
発表概要:生物が体内で生産する化合物のことを代謝物と呼び、生命活動に必須で生物が共通に持っているような代謝物を一次代謝物、そうでない生物種固有の代謝物を二次代謝物と呼ぶ。二次代謝物は各々の生物が自然環境の中でより優位に生き残れるように発達してきた化合物群で、これらの化合物は食品や医薬品の成分にも利用されており人間生活においても非常に重要な化合物である。しかし、二次代謝物は種固有の代謝であるが為に一次代謝と比べ研究が進んでおらずその合成経路の大部分が未解明である。自然界には約5万の二次代謝物が存在すると言われており、この膨大な代謝物の代謝経路を解明するためには情報科学的なアプローチが要求される。すでに解明されている二次代謝経路に関して、代謝経路上で近い代謝物間において構造の類似性が確認されている。構造の類似性に基づいた代謝経路予測手法として、最大共通構造検索を用いて構造がもっとも似ている化合物を見つけるアプローチや、各化合物がどのような部分構造を持っているかを0,1のビット列からなるフィンガープリントとして表現した後フィンガープリントを比較することで類似性を評価するといったアプローチがしばしば行われているが、前者の方法は最大共通構造検索がNP困難な問題に相当するため計算コストが非常に高く、後者の方法は部分構造間の位置関係が保存されない事が原因で予測制度が良くない。本研究では化学構造の類似性を評価する際に、環状構造と置換基の2つに分けて考えた。(1)環状構造間の包含関係を計算コストの低い部分構造検索を用いて評価することで環状構造レベルの代謝経路を予測する。(2)各環状構造のどの位置にどのような置換基が着いているのかを部分構想検索を用いて調べフィンガープリントを構成することで同一環状構造を持った代謝物間の経路予測を行う。(3)(1)で隣接関係であると予測された環状構造グループ間で直接繋がっている化合物を最大共通構造検索を用いて探索する。現状では(1)のアルゴリズムが完成しているので、中間発表ではKEGGに登録されている既知の代謝経路を用いた予測システムの検証結果をあわせて報告する。
 
山倉 健 D2 金谷 重彦 湊 小太郎 川端 猛
発表題目:制限酵素の認識配列によるゲノム戦略
発表概要:バクテリアは外来の遺伝子の侵入を防御するシステムとして制限酵素システムを所有し、修飾酵素により自他のゲノムを識別するということが多くの研究より明らかにされている。すなわち、制限酵素認識部位をメチル化するシステムにより、所有する制限酵素による自らの染色体を切断することから守るとされている。しかし、バクテリアのゲノムも自らの制限酵素により塩基配列が切断されるという事実も報告されている。バクテリアにおいて自ら所有する制限酵素の認識配列をゲノムから減らすことが、所有する制限酵素による切断からゲノムを守るための重要な因子であることが考えられる。そこで、ゲノムの全塩基配列が決定されている371種のバクテリアを対象に、所有する制限酵素の認識配列数がゲノムにおいて抑制されているか否かを統計解析により検討した。また、ファージゲノム、プロファージゲノムに対しても同様の解析を行い、制限酵素の役割をゲノム解析から検討した。
 

会場: L2 (9:40開始)

司会:川口
的場 俊亮 M2 西谷 紘一 池田 和司 中村 文一
発表題目:非線形Receding Horizon 制御のための 効率的数値計算法に関する研究
発表概要:Nonlinear receding horizon control(NRHC) generates an optimal control law via solving simultaneous linear equations. GMRES is one of the most effective algorithm for solving linear equations. However, in the method, numerical calculation errors exist in some situations. Moreover GMRES have potentiality numerically unstable. To decrease errors and numerical unstability, we develop an algorithm based on singular value decomposition(SVD). I-SVD is one of the most effective algorithm of SVD. However, to calculate high-precision singular vector, I-SVD is necessary to set up good parameter. We propose an algorithm for solving linear equations with SVD via mdLVs. Finally, we show the effectiveness of the proposed method by computer simulation.
 
大澤 修一 M2 西谷 紘一 小笠原 司 中村 文一
発表題目:センサフュージョンによる移動体の自己位置推定:カルマンゲインの構造解析
発表概要:移動体の自己位置推定には内界センサによるデッドレコニングと外界センサによるスターレコニングがある.各々には欠点があり,これを補強する方法として複数のセンサ信号を統合するセンサフュージョンがある. 有名なセンサフュージョンとして拡張カルマンフィルタがある.これはカルマンゲインを設計するために誤差分散行列を求める必要があり,これは実験を繰り返すことにより求められるため,実装するためのコストが大きい. もう一つの方法としてオブザーバと座標変換を用いた方法がある.これはフィルタゲイン設計に誤差モデルが必要なく,推定式が簡単である. 本発表ではわれわれが開発した格子点オブザーバによる位置推定とカルマンフィルタによる位置推定法を比較する.そして,カルマンゲインを解析し両者の推定構造の違いを明らかにする.
 
森岡 太一 M2 西谷 紘一 小笠原 司 中村 文一
発表題目:二足歩行ロボットの歩行動作の解析
発表概要:現在まで二足ロボットモデルいに対して様々な歩行制御手法が提案されているが、なぜ歩行できるのかということも明らかではない。そこで、歩行を行うために必要な条件を導出し、歩行原理の基礎を確立する必要がある。本研究では、コンパス型二足ロボットについて力学的に解析るすることで、歩行原理の基礎につながると考えられる2つの力学的な未知の問題を解析することを目的とする。具体的には、股関節角度が変化した場合について、後方トルクの歩行動作における影響についての考察、股関節角速度に変化がある場合の歩行動作に与える影響についての考え方を述べる。
 

会場: L3

司会:松原
山城 容一朗 M2 小笠原 司 木戸出 正繼 高松 淳
発表題目: 屋内外環境のためのビューシーケンスナビゲーションの拡張
発表概要: 移動ロボットの自律移動には,事前の移動経路指定が必要であり,経路指定のた めの環境地図の作成に多大な労力がかかることが問題とされている.そこで,ロ ボットのカメラから得られる画像列(ビューシーケンス)を利用し,作成労力を 軽減するナビゲーション手法が提案されている.これは事前の教示走行におい て走行経路における画像列を作成し,それを基に自律移動を行う手法である.し かし,照明条件が変化する環境では画像の見え方が随時変化してしまうため,ナ ビゲーションが困難であった.本研究では,屋内外を問わず照明条件が変化する 環境でナビゲーション可能な拡張ビューシーケンスナビゲーションを提案する.
 
眞鍋 和寛 M2 千原 國宏 木戸出 正繼 眞鍋 佳嗣 池田 聖
発表題目:距離画像計測に基づく水中画像の色合い補正手法
発表概要:近年,文化財のデジタルアーカイブが盛んに行われている.遺跡や遺物をアーカイブする際には3次元形状情報と表面の色情報が必要であるが,この2つの情報を同時に取得できる点から,カメラを用いた3次元形状計測が有効である.しかし,水中に存在する対象をアーカイブする際には,波長の長い光が減衰してしまい,取得した画像の色合いが変わってしまうという問題がある.そこで本研究では,光の減衰・散乱をモデル化し,マーカを計測することで得られる情報から媒質の特性パラメータを求めることで,水中画像の色合いを補正する手法を提案する.本発表では,補正に使用する光のモデル式について解説する.
 
加門 紗香 M2 千原 國宏 木戸出 正繼 眞鍋 佳嗣 池田 聖
発表題目:対象に固定したカメラによる和綴じ支援のための針位置計測システム
発表概要:和綴じは日本の伝統的な製本技術であるが,現在ではほとんど知られておらず,伝統文化として継承していく必要がある.和綴じ支援では作業状況に応じた的確な情報提示を直感的に行うことが重要である.本研究では,複合現実感技術を用いた和綴じ支援システムの構築を目的とする.本発表では,作業工程の中で特に重要である本を糸で綴じる作業の進行状況を把握するために,本をクリップで留めるフレームに固定したカメラを用いて撮影した画像から針領域の抽出を行い,針位置を計測するシステムの実装,検討について述べる.