ゼミナール発表

日時: 9月29日(月)5限 (16:50-18:20)


会場: L1

司会:中村(嘉)
鈴木 健司 M2 藤原 秀雄 関 浩之 井上 美智子
発表題目:共有メモリシステムにおける調停木スキップ相互排除アルゴリズム
発表概要:相互排除問題は共有資源を排他的に使用するために解く基本問題の1つである.共有メモリシステムにおいて遠隔のメモリ参照回数であるRMR(Remote Memory Reference)計算量に関して効率の良い相互排除アルゴリズムを提案する.Nプロセスの相互排除アルゴリズムでは1回の資源獲得と資源解放に当たり,最悪時のRMR計算量がΘ(logN)であることが知られている.本研究では同時に処理を行うプロセス数が増加した場合に効率の良いアルゴリズムを提案し,ケーススタディにおいて計算量の期待値が同時に処理を行うプロセス数が少ない時にはO(logN)であるが,増加するにつれてO(1)に近づく結果が得られた.
 
平田 雄一 M2 中島 康彦 関 浩之 山下 茂 中西 正樹
発表題目:An efficient method to convert arbitrary quantum circuits to ones on a Linear Nearest Neighbor architecture
発表概要:A variety of quantum circuits have been designed. Most of them assume that arbitrary pairs of quantum bits can interact. However, several promising implementations of quantum computation rely on a Linear Nearest Neighbor (LNN) architecture, which arranges quantum bits on a line, and allows neighbor interactions only. Therefore, several specific circuits have been designed on an LNN architecture. However, a general and efficient conversion technique for an arbitrary circuit has not been established. Therefore, the author gives an efficient method that converts an arbitrary quantum circuit to one on an LNN architecture. Proposed method achieves small overhead and time complexity compared with naive techniques. In addition, our method also achieves smaller overhead for some known circuits designed on an LNN architecture.
 
柴田 章博 M2 中島 康彦 関 浩之 山下 茂 中西 正樹
発表題目:量子計算の並列シミュレーションにおける通信量削減手法
発表概要:量子アルゴリズムの性能評価の方法として,量子計算シミュレーションがある.本研究では,分散メモリ型並列計算機向け の高速なシミュレーションアルゴリズムの開発を行った.本研究で提案する手法では,ボトルネックとなっているノード間の通信量を削減する ことにより,シミュレーションの高速化を図っている.この手法は,量子回路に意図的に交換ゲートを挿入することで,よりノード間の通信量の少ない等価な量子回路に変換することを特徴としている.本研究では,ランダムに作成した量子回路に提案手法を用いた時のノード間の通信量の変化を調べた. その結果,提案した手法は,分散メモリ型並列計算機のノード間の通信量を減らすことが可能であることが分かった.
 
小町 守 D2 松本 裕治 関 浩之 乾 健太郎  新保 仁
発表題目: ブートストラップ法 Espresso における意味ドリフトのグラフ理論的分析
発表概要: 近年自然言語処理では機械学習手法が広く使われるようになった. しかしながら,これらの手法はタグつきコーパスや辞書といったリソースを 必要とするため,人手によるリソース作成コストの削減が重要な課題 となっている. そこで最近半教師あり学習手法が盛んに研究されている. ブートストラップアルゴリズムはその一つで, (1)パターン導出 (2)パターンランキング/選択 (3)インスタンス抽出 の3つのステップを再帰的に適用し, 少量のシードインスタンスを与えることで大量の類似インスタンスを 獲得することができる.
しかしながら,ブートストラップアルゴリズムには意味ドリフトと呼ばれる傾向がある. 意味ドリフトとはブートストラップの反復を繰り返すにつれて, シードインスタンスと関連性の低いインスタンスを選択してしまう現象 のことである. 本研究の主要な貢献は,グラフを用いて単純なブートストラップアルゴリズム の再定式化を行い,ブートストラップにおける意味ドリフトがリンク解析における Kleinberg の HITS のトピックドリフトと同じ原因であることを示した点である. また,我々は Senseval-3 の語義曖昧性解消のデータを用い, 2つのグラフを用いた手法,ノイマンカーネルと正則化グラフ ラプラシアンに意味ドリフトを軽減する効果があることを検証した. 提案手法は Espresso とグラフを用いた語義曖昧性解消手法より 優れた性能を示し,パラメータ数も少なく最適化も容易である.
 

会場: L2

司会:波部
長井 孝之 M2 鹿野 清宏 木戸出 正繼 猿渡 洋 戸田 智基
発表題目:話者正規化学習の導入による非可聴つぶやき認識における特定話者適応モデルの性能改善
発表概要:近年,非可聴つぶやき(Non-Audible Murmur: NAM)を用いて音声認識が可能であることが発見された.先行研究の結果,ある話者のNAMを認識させたい場合,話者適応技術を用いて特定話者適応モデルを構築する手法が効率的であることが示されている.今まで私は,NAMに慣れていない話者における認識性能の評価を行い,適応時の初期モデルを改善することで,これらの話者の認識性能を向上させることを目指してきた.本発表では,事前収録話者のNAMデータを学習データとし,話者正規化学習(Speaker Adaptive Training: SAT)を導入することで初期モデルを改善する手法の有効性について述べる.また,今後の研究計画についても述べる.
 
町北 幸大郎 M2 横矢 直和 木戸出 正繼 山澤 一誠
発表題目:画像インペインティングによる不可視領域のない全天球映像の生成
発表概要:近年、全方位カメラを用いたテレプレゼンスシステムに関する研究が盛んであるが、一般的な全方位カメラには死角が存在するため、全ての方向の視野を完全に再現することはできず、臨場感が損なわれるという問題がある。本研究では、画像インペインティングによってこの欠損領域を修復することで、不可視領域のない全天球映像を作成する手法を提案する。
 
松本 健介 M2 西谷 紘一 木戸出 正繼 小坂 洋明

発表題目:無信号交差点環境がドライバの交差点通過行動に与える影響
発表概要:無信号交差点での事故を減らすためには、一般ドライバの行動を解析することが不可欠である。先行研究から一般ドライバの運転には見通しなどの交差点環境が影響を与えていることがわかった。そこで本研究では、交差点環境要因がドライバの運転行動に与える影響について調べる。本発表では、比較的交通量の多い交差点での一般ドライバの速度プロフィールの調査結果について述べる。また速度プロフィールのみからドライバの判断を推定する指標を提案し、検討した結果を紹介する。

 
寺下 訓史 M2 木戸出 正繼 加藤 博一 浮田 宗伯
発表題目:分散首振りカメラ群を用いた広域対象追跡
発表概要:分散カメラシステムにおいて、各カメラの視野が重なるようなカメラ配置では観測範囲の広域化とともにコストの増加や管理の難しさといった問題が顕著になる。そのため、実際に分散カメラシステムを構築する際には、各カメラの視野が重ならないようにまばらにカメラを配置することが多い。従来は各カメラを固定カメラとすることが多かったが、本研究では、カメラ1台あたりの観測範囲の拡大や対象追跡の高性能化を目的とした分散首振りカメラ群システムを提案する。各カメラ視野に重なりがない状態での対象追跡を行うため、まず、各カメラでの移動物体の出現・消失情報を大量に取得してカメラ視野間の連結関係(位置関係)を推定し、その後、推定された連結関係を用いてカメラ間での対象追跡を行う。本発表では、各カメラの制御方法の違いにより出現・消失情報取得の効率にどのような差が出るのかを実験した結果を示す。また、出現・消失情報の取得数が増加するにつれて連結関係の推定と対象追跡が同じフレームワークで実行可能になることも示す。
 

会場: L3

司会:中尾
祖父江 厚志 M2 小笠原 司 湊 小太郎 高松 淳
発表題目:音による作業タスク達成判別システムの開発
発表概要:PC組立等の作業中に発生する音にはタスクの状態や結果に関する情報を含んでいる. しかし,従来の研究において音情報を用いてタスクの状態や結果を判断する研究はあまり 行われてはいなかった. そこで本研究では音情報を基にタスク達成判別を行うシステムを開発する. LANケーブルの挿し込みを対象タスクとし,LANコネクタの爪の音が鳴っているかどうかで タスクの成否を判断する. 力センサ,加速度センサ,音センサをつけたマイクロフォングリッパを作製し. 挿し込み動作について実験を行い,各センサ出力の比較を行った. 本発表では実験での結果,及び音情報の有効性について述べる.
 
杉原 冬樹 M2 小笠原 司 湊 小太郎 高松 淳
発表題目:ピエゾアクチュエータを用いたMRI対応グリッパの開発
発表概要:近年, 患者の負担を軽減する低侵襲手術が普及している. 本研究において, MRI環境下での低侵襲手術を支援するためのMRI対応の医療用ロボットを実現することを目的とし, 「つかむ機能」を実現させるためのグリッパ型ロボットの開発を行う. アクチュエータにはMRI環境下においても使用可能なピエゾアクチュエータを使用し, 変位拡大器によって変位を増大させる. 本発表では, 変位拡大器とグリッパの弾性を考慮した設計手法を示し, CAEを用いたシミュレーション結果や実機を用いたアクチュエータの特性実験を行った結果について述べる.
 
黒澤 慎也 M2 湊 小太郎 千原 國宏 杉浦 忠男 中尾 恵
発表題目:筋電位信号を利用した触力覚提示手法の開発
発表概要:近年,様々な触力覚提示装置が開発され,手術シミュレータ等において実用に至るまでになった.現状の装置の多くは,位置をパラメタにしたポジションベースの手法が採られているが,位置以外のユーザの情報を入力パラメタとして用いることによって応用範囲がさらに広がる可能性がある.本研究では,物体の把持などの際の力みを入力パラメタとした新しい触力覚提示システムの開発を目指している.力みの指標として浅指屈筋・総指伸筋の筋電位(EMG)に着目し,得られたEMGに基づいた力覚提示を可能とする.開発システムを用いてペンの把持の際の力み教示を想定した被験者実験を実施し,有効性を確認したので報告する.
 
南部 羽蘭 M2 金谷 重彦 湊 小太郎 川端 猛
発表題目:多変量解析を用いた生薬配合比に基づく漢方薬の分類
発表概要:漢方処方とは、中国4千年の歴史を背景に、日本で独自に発展して成り立った理論を用い、患者の徴候や体質に基づいて作られる構成要素の混合物である。それ故に多彩な作用ベクトルをもち、様々な症状に対応できることから、慢性疾患や生活習慣病の新しい治療法として期待されている。しかし、科学的根拠が示されている例は少ない。 本研究では、流派によって異なっていた生薬配合比の統合や、新たな配合比の発見、各漢方処方の効果を体系化することを目的に、多変量解析を用い、漢方処方における生薬配合比の特徴付けを行う。本発表では、先行研究ならびに現在までの進捗状況と今後の方針について報告する。