ゼミナール発表


会場:L1

司会:北野 健
長嶋 剛志 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:診断支援のための知識収集システムの開発
発表概要:医師の診断プロセスは大きく分けて二つに分かれ,初期診断プロセスと確定診断プロセスに分けられる. そのうち,初期診断プロセスは,数ある疾患の中から考えうる疾患を絞り込むプロセスであるため,医師個人の持つ経験や知識だけでは 絞りきれないことも多い.そのため,過去,様々な初期診断支援システムが開発されてきた.しかしながら,診断支援システムが 医療現場には普及しているとはいえない.本研究では,システムが普及していない原因を,システムの持つ知識の継続的な収集・更新ができないところにあると考え, 知識の収集・更新方法に焦点を当てたシステムの開発を行う.
 
馬 元蛟 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:Paper Review "Virtual MRI: A PC-based Simulation of a Clinical MR Scanner"
発表概要:The aim of this project was to simulate the features and functions of a clinical or real-world MR scanner on a personal computer by means of a computer program. The users should be able to change all relevant settings of the virtual scanner and adapt them to the expected pathology. The algorithms of the simulation are based on parameter images of the three physical basic properties T1, T2, and proton density. From this, the synthetic images are calculated pixel by pixel on the basis of the well-known formulas of the pulse sequences chosen and modified by the user. As the result, besides spin echo pulse sequence, 6 other pulse sequence classes are implemented. Parameters like repetition time and echo time can be adjusted. As the image calculation takes only a few seconds, an interactive manner of working is possible. I will introduce the project from the paper and my current research related with the technique.
 
鎌倉 徳彦 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:Exploming the Arabidopsis thaliana PPI Net work
発表概要:タンパク質間相互作用(PPI; protein-protein interaction)とはタンパク質分子間の相互作用である。生体内のタンパク質は単体で機能するタンパク質もあるが、ほとんどが複数の他のタンパク質と物理的接触(相互作用)をして、タンパク質複合体を形成することで、生理学的機能を発現する。よって、タンパク質の機能およびゲノム配列を解明する上でタンパク質間相互作用ネットワーク情報は必要不可欠な情報である。
本研究では、シロイヌナズナ(白犬薺、学名:Arabidopsis thaliana)のPPIデータに対し、ゲノム配列およびタンパク質の機能に着目したタンパク質間相互作用ネットワークの解析、PPIネットワークとランダムネットワークの各トポロジーの比較、ネットワーク内の中心性を計算による重要なタンパク質の測定を行う。
 
納庄 達也 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:生物活性と関連した最適な塩基配列の抽出法
発表概要:mRNAにおける5’非翻訳領域には翻訳効率に影響する塩基配列があり、この塩基配列を変えることで翻訳効率が変化することが知られている。例えばシロイヌナズナでは、5’非翻訳領域の塩基配列の変化により、熱ストレス条件下での翻訳効率が促進、あるいは抑制されることが明らかになっている。このような翻訳効率と塩基配列とを関連づける方法論は現在までにあまり多く研究されていない。そこで、塩基配列情報をもとに、翻訳効率を予測するアルゴリズムを検討した。多重共線性の問題を解決できるPLS (Partial Least Squares)を解析に用いて、塩基配列中に含まれるn塩基配列の頻度から発現量を予測する。n塩基配列頻度を独立変数X、翻訳効率を応答変数Yとし、XとYを、共通する潜在変数tと特定の重みaの積として分解し、潜在変数tを介すことでn塩基配列頻度Xから翻訳効率Yの予測を試みる。さらに,得られたn塩基配列頻度の係数をもとに、翻訳効率を促進するための最適塩基配列を抽出する。今回の発表では現在の進捗状況と今後の課題について述べる。
 
木村 知永 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:二光子顕微鏡における観察可能深度の向上
二光子顕微鏡は、生体組織深部を非侵襲かつ低光毒性条件で長時間観察が可能な顕微鏡である。 二個の光子を使って蛍光粒子を励起させることで、エネルギーが小さく(つまり細胞へのダメージが小さい)、波長の長い(深部が観察可能)光を得ることができる。 また、焦点面のみで励起されるため、蛍光の退色を防ぎ(長時間の観察可能)、一光子で励起した場合よりも鮮明な画像が得られる。 本研究では1秒間あたりのパルス数を減らすことでFOM(Figure of Merit)をあげるため、EOM(電気光学変調器)を利用してパルスピッキングをすることを検討した。
 

会場:L2

司会:垣内 正年
福島 義彦 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:論文紹介"Insights into System-Wide Code Duplication"
発表概要:ソースコード中に存在する同一なコードや類似したコードを,コードクローンという.コードクローンはソフトウェアの保守作業の効率を悪化させる可能性がある.このため保守作業者は一般的に,ソフトウェアをリファクタリングする際に,問題を引き起こす可能性のあるコードクローンを除去する.しかし,大規模ソフトウェアにおいてコードクローンの存在を調べ,それらが問題を引き起こすかどうかを判別することは難しい.本論文では,コードクローンの発見と,問題を引き起こすかどうかの判別を支援するために,コードクローンを可視化するためのいくつかの手法を提案している.可視化手法によって,コードクローンの性質を判断するために有用な,大量の情報を整理して表示することができる.本発表では論文の内容を紹介し,最後に本論文で得た知見をもとに,今後の研究テーマについて述べる.
 
松本 啓司 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:水中センサネットワークにおける移動可能なアンカーノードを用いたセンサノードの位置推定手法
発表概要:近年,海洋調査等の目的のため,広範囲の海域において情報収集のためのセンサネットワークを構築する技術が注目を集めている.一般にセンサネットワークでは,イベントの発生場所や故障機器の場所を特定するため,各センサノードの位置情報を求めることが非常に重要である.しかし,水中ではGPSを用いて位置測定ができない.これまで水中センサネットワーク(UWSN)において,センサノードの位置を,位置が既知の複数ノード(アンカノード)からの距離(音波の伝搬時間により計測)に基づいて順次推定していく手法,海面を浮き沈みするブイを多数設置し,それらブイからの距離に基づいて水中のノードの位置を推定する方法が提案されているが,推定精度やコストなどの点で問題があった.本研究では,UWSNにおいてなるべく早い時間で多数のセンサノードの正確な位置を推定するため,水面を移動可能なアンカーノード(舟型ノード)を使用した位置推定法を提案する.アンカーノードはセンサノードと信号の送受信を行い,信号の到着時間差から各センサノードまでの距離を推定する.アンカーノードは移動しながら,1つのセンサノードに対して1次独立な3地点からこのノードへの距離を測定し位置を推定する.アンカーノードが複数のセンサノードに対して一度に距離の測定を行うことができる地点に移動することで,距離の測定回数を削減できる.本発表では,短時間ですべてのセンサノードの位置を推定することを目的に,効率のよい距離測定地点の発見と,それら測定地点を全て通過するアンカーノードの最短移動経路を求める手法について述べる.
 
水野 恵祐 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:論文紹介“A Review of Design Pattern Mining Techniques”
発表概要:オブジェクト指向開発において,頻繁に生じる問題に対する典型的な解決方法をデザインパターンという.デザインパターンを適用することでソフトウェアの再利用性や可読性の向上が見込めるため,今日多くの開発現場でデザインパターンが使われている.また,既存のソースコードに適用されているデザインパターンを検出することは,システムの設計情報を復元する手段として有効である.ソースコード中のデザインパターンを検出する手法は既に数多く提案されており,本発表で紹介する論文では25個の既存手法を様々な観点から比較している.さらに各手法の検出結果を分析し,デザインパターン検出における課題を明らかにする.最後に本論文から得られた知見に基づき,今後の研究テーマについて述べる.
 
宮田 一希 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介"Critical-Path-Aware X-filling for Effective IR-Drop Reduction in At-Speed Scan Testing"
発表概要:LSIの微細化,高速化により実動作速度でのテストが求められている. 代表的なLSIの実動作テスト手法に、スキャンテストに基づくランチオフキャプ チャー手法がある。しかし、テスト時に必要な電力が通常動作時よりも大きくなることがあり、予期 しない電圧降下のために一時的な動作速度の低下による誤動作を起こし、良品の LSIを不良品と判断してしまう問題が起こっている。本論文では、入力するテスト ベクトルの改良することで,タイミングに余裕が無いパス周辺の消費電力を削減し, それにより電圧降下による誤動作を減らすテス ト手法を提案する.
 
保田 裕一朗 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:差分情報を用いたコードレビューコスト見積り
発表概要:コードレビューは、ソースコードを目視により確認することで、不具合を発見することを目的としている。本研究では、ソースコードの変更情報(追加/削除/修正)を元に、コードレビューにかかるコストを見積る手法を提案することを目指している。具体的には、差分情報の調査に基づき、メトリクスを提案し、実際のレビューコストと比較することにより評価を行う。本発表では、オープンソースプロジェクトで利用されているパッチを対象に行った予備実験結果を報告する。
 
神山 直也 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:スマートスペースにおける複数ユーザの嗜好を考慮したデバイス自動制御法
発表概要:ユビキタス社会では,自宅,オフィス,公共のスペースなどあらゆる 場所にセンサやネットワークが埋め込まれることが予想される.そのような環境 においては,ユーザの嗜好およびコンテキストに合わせて空調や照明,その他の デバイスを快適に制御する技術が求められる.近年,そのようなコンテキストア ウェア制御技術に関して数多くの研究が行われているが,既存研究の多くは特定 のユーザのみを対象としていたり,複数ユーザの嗜好が競合する場合を想定して いない.本研究では,オフィスや公共スペースに居る多種多様な嗜好を持つ不特 定多数のユーザを対象に,それらユーザの嗜好をできるだけ満足するようなデバ イス自動制御手法を提案する.
 

会場:L3

司会:池田 聖
松本 鉄平 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:Closed-form second-order ICA と higher-order ICA を用いた優決定 BSS の検討
発表概要:近年,テレビ会議システムやハンズフリー音声通信,音声認識システムへの応用を目指して音源分離技術が盛んに研究されている.その中で事前情報をほとんど用いることなく音源分離できる,独立成分分析 (ICA) に基づくブラインド音源分離 (BSS) が注目されている.しかしこの技術にはマイクロホンの数より多くの音源を分離できないという問題があった.あらかじめ多くのマイクロホンを用意しておくことでこの問題は解決できるものの,マイクロホンの数より音源が少ない場合には,冗長な計算が必要となる問題がある.本研究では,高速に動作可能な Closed-form second-order ICA を最初に行い音源数の推定を行うと共に,推定された音源数への分離を行う.そして,その分離信号に対して higher-order ICA を接続する事で,最適な計算量の基で,未知の音源数に対する入力に対応できるシステムを提案する.
 
松永 典之 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:歩行者軌跡を利用した移動ロボットの屋外ナビゲーション
発表概要:実環境においてサービスを提供するロボットには安全な移動機能が必要である.屋外環境でのナビゲーションには,一般的に環境マップを用いるが,自己位置推定の精度の問題や路面状況の把握が必要であり,安全な走行を行うことは困難である.そこで,歩行者情報の利用に注目し,関連研究として人の追跡を利用した移動ロボットの経路生成手法を紹介する.また,安全な屋外ナビゲーションを実現するための研究方針について述べる.
 
吉_ 航 ロボティクス 小笠原 司☆4
発表題目:測域センサによる,移動ロボットのための三次元地図作製
発表概要:ロボットの歩行計画などに利用可能な測域センサを用いた三次元地図生成システムを構築する.二足歩行ロボットなどの複雑な機構を持ったロボットが行動計画を行う場合,障害物の三次元配置等をあらかじめ知る必要がある. そこで,ロボット本体に可動式の赤外線レーザーレンジファインダをとりつけ,得られた距離情報と間接角,位置情報からリアルタイムに三次元地図を作製する.さらに,ロボットの歩行計画に利用可能な精度を実現するための各種精度向上手法を提案,実装する.
 
"TORRES RODRIGUEZ, RAFAEL ANTONIO" 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目: SVM Based Inquiry Classification for a Speech-Oriented Guidance System
発表概要: A speech-oriented guidance system provides users an interface for information retrieval, receiving spoken inquiries and answering back with the information required by the users. Users' inquiries are classified in specific categories, and an appropriate answer is selected according to the sort of question. The difficulties that arise when dealing with a high number of classes and the extraction of significant features from the utterances are some of the problems that stand out on this task. In this presentation, a Machine Learning approach including the implementation of the Bag of Words Kernel function in conjunction with Support Vector Machine for the classification of inquiries is considered. On that basis, initial experiment results are presented as well as discussed. Future steps in the research are also indicated.
 
廣瀬 駿 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:色恒常性のための複数光源色推定
発表概要:光源色の変動により観測される画像中の色は変化するため,物体認識やトラッキング等,それらの情報を利用するアルゴリズムは悪影響を受ける.この問題を解決するため,光源の変動に不偏な物体の表面色を求める色恒常性の研究が行われている.しかし,従来手法では,光源は単色で一様に分布すると仮定しており,また得られる推定精度にも改善の余地がある.そこで,本研究では物体の表面色を求めるため,その前段階として屋内外で撮影された画像の複数光源色の推定を行う.本発表では,関連研究としてベイズ推定を用いた確率的光源色推定手法及び複数光源の混合割合を求める手法を紹介し,今後の研究方針について述べる.