ゼミナール発表

日時:11月12日(水)3限(13:30-15:00)


会場:L1

司会:孫 為華
石丸 泰大 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介:"An IP Address Configuration Algorithm for Zeroconf. Mobile Multi-hop Ad-Hoc Networks"(InternationalWorkshop on Broadband Wireless Ad-Hoc Networks and Services, 2002)
発表概要:近年, 通信インフラストラクチャを必要とせず, 移動する通信端末相互間で動的にネットワークを構築し, マルチホップ転送を行うことができる無線モバイルアドホックネットワークが注目されている. 多くのノードから無線モバイルアドホックネットワークを構築する場合, 各ノードの設定を手動で設定するのは煩雑なため, 自動で設定が行われることが望ましい. しかし無線モバイルアドホックネットワーク上では, ノードの移動等によってネットワークの分離や統合が行われるため, 従来のDHCPやauto-configurationなどではうまく対応することができない. 本論文ではAgent Based Addressingという手法が提案, 評価された. 本論文の方式により, 無線モバイルアドホックネットワークのようなネットワークの分離や統合が行われる環境でも高速な自動設定が可能であることが示された. 本発表では, 本論文について紹介を行い, 最後に今後の研究テーマについて述べる.
 
松山 拓矢 インターネット工学 山口 英
発表題目:論文紹介:"Exhibit: Lightweight Structured Data Publishing" (David F. Huynh et al., 2007 International WWW Conference pp.737-746)
発表概要: 現在、Web上に公開されている情報は、類似もしくは重複している情報が数多く存在し、 これらの中から必要な情報のみを抽出し収集することは、多大な時間と労力を要する。 また、必要な情報のみを手作業によるキーワード検索によって情報を収集するのは困難であり、 自動化により収集を行ったとしても精度に限界がある。 そこで本発表では、構造化データを用いたwebサイトを構築できるフレームワークであるExhibitを紹介する。 Exhibitでは基本的な知識しかないユーザでも、簡単に構造化データを作成しWebページとして公開するための仕組みを提供する。 これによりWebサイトに含まれる情報に意味を持たせることができ、収集効率を高めることが可能となる。 また既存のExhibitの構造化データはそのまま自分のWebサイトに再利用することが出来る。 本発表では本論文の紹介に加え、本論文の問題点に対する自身の考えについても述べる。
 
片渕 雄一 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:FM多重放送を用いたVICSに適した誤り訂正復号法に関する研究
発表概要:本研究では,FM多重放送を用いたVICS(Vehicle Information and Communications System)の移動受信環境における受信特性の改善手法を検討を行う.同システムの誤り訂正符号としては,短縮化差集合巡回符号の積符号が用いられる.従来の受信手法では単純なブロック誤り訂正が用いられており,移動受信環境や受信レベルが低い環境では十分な受信率が得られないことが問題となっている.これに対して本研究では送信電力のレベル制御及び受信信号のチャネル情報を信頼性情報として誤り訂正に組み込み従来の受信方式よりよい受信特性を目指す.
 
木村 眞吾 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介:”Query processing, resource management, and approximation in a data stream management system”(In Proceedings of the First Biennial Conference on Innovative Data Systems Research (CIDR), pp.245-256,January 2003)
発表概要:広範囲にセンサを設置し、気温や湿度等の気象データを収集する。そこで発生するデータ量は膨大かつ頻繁なデータ追加処理が行われる。このようなデータに対して解析処理を行う場合、膨大な処理時間が発生すると考えられる。これを高速に解析するための手法としてストリームデータ処理というものがある。ストリームデータ処理というのはデータをディスクに一旦蓄積し、解析するのではなく、到着データに対して処理を行う。この方法を用いることでセンサデータを高速に処理することが可能になる。本発表ではこのストリームデータ処理を実装したエンジンであるSTREAMについて紹介する。また、STREAMをセンサネットワーク適応した際の問題点も論じる。
 
久保 健太 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:信号重畳衛星通信システムにおいて非線形素子によって起こる干渉キャンセラの特性劣化の改善
発表概要:衛星通信システムでは周波数利用効率の向上のためキャリア重畳方式が提案されている。 VSATシステムにおけるキャリア重畳方式では、HUB局と小型局で同一の通信周波数帯域を使用することによって周波数の利用効率を高めることができる。この場合、受信時には同一周波数帯に重畳された信号のうち、所望の信号だけを取り出す必要がある。本研究では、受信信号から自局が送信した不要信号のレプリカを作成しキャンセルすることで所望信号のみを取り出す方式について検討する。従来の研究ではすべて線形の通信路を想定し設計されていたが、実際の衛星通信においては、衛星中継器に非線形増幅器(TWTA:Traveling Wave Tube Amplifier)が搭載されているためTWTAの非線形特性を考慮しなければならない。本研究では、非線形増幅器をもつ衛星中継器を介して受信する信号に非線形特性を考慮した干渉キャンセラを検討し、今後の方針について報告する。
 
小柳 衣津美 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:波長変換に制限のある光パス網におけるサービスの差別化を実現するマルコフ決定過程モデル
発表概要:データを光のまま伝送可能な光パス網では,優先度に応じたサービスをユーザに提供することが必要である.その一方で,限りある波長を有効に利用することも重要である.先行研究では,サービスの差別化と波長の有効利用の両立を図るため,マルコフ決定過程(MDP)を適用した方式を提案している.しかしながら,この方式は波長変換に制限がない場合にしか利用できず,コストの面から現実的ではない.そこで本研究では,波長変換に制限のある光パス網において,サービスの差別化を実現するマルコフ決定過程モデルを提案する.本モデルでは各波長の使用状況を考慮して,光パス設定の最適行動を導出する.数値例では,シミュレーションにより提案手法の性能を評価し,今後の展望について述べる.
 

日時:11月12日(水)3限(13:30-15:00)


会場:L2

司会:藤澤 誠
伊吹 拓也 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介"Fast 3D Scanning with Automatic motion Compensation" Thubaut Weise et al., 2007 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 2007
発表概要:本論文ではステレオマッチングと位相シフト法を用いた新しい3Dスキャンシステムの提案を行う。 ステレオマッチングは位相シフト法における位相連結問題を解決し、複数の物体からなる複雑なシーンの復元を可能にする。 本手法ではプロジェクタから3種類の位相パターンを順番に投影し、カメラで撮影したそれら3種類の位相情報から幾何形状の復元を行うため、1カットの復元に用いる位相データが複数フレームに渡っている。 そのため、撮影対象が運動している場合は、フレーム間の位相に予期しないズレが生じるため表面に歪みが生じる。 この歪みを取り除くため、物体表面の運動の推定を行い、誤りを補正する手法についても論じる。
 
小橋 優司 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:イメージトレーニングを支援するVRリハビリテーション
発表概要:近年、高齢化社会に伴い脳卒中患者は増加の一途を辿っており、特に問題は後遺症の難治性である。従来のリハビリでは実質的な回復を示すのは30%に満たないという報告もあるため、効果的なリハビリが必要である。その中でも注目を浴びているのがイメージトレーニングを用いたリハビリとVRを用いたリハビリである。本報告ではこれらの先行研究を紹介し、今後の研究方針について述べる。
 
井上 喜仁 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:論文紹介"A Signal Processing Approach To Fair Surface Design", Gabriel Taubin, Proc. of SIGGRAPH 95, pp. 351-358, 1995
発表概要:CTやMRIデータより作成される三次元メッシュモデルは,元のデータが離散的であるため物体の表面に多くのノイズが含まれる.従来手法では,平滑化を行いノイズを除去する際に,モデルの形状が縮小するといった問題があった.本発表では物体の形状を保ったまま,これらのノイズを除去を可能とする平滑化手法について紹する.この平滑化手法では,ローパスフィルタを用いる事により形状の縮小を防ぎ,医用データなど複数のメッシュからなる任意の形状の物体の場合でも,線形時間と空間計算量で平滑化可能となる.本発表では,本論文について紹介を行い,最後に今後の研究テーマについて述べる.
 
岡本 亮維 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:独立成分分析に基づく近接点音源除去を利用したズーミングマイクの検討
発表概要:近年、遠方の音だけを抽出する技術が注目を集めている。本研究の目的は、独立成分分析(ICA)を用いたズーミングマイクを実現させることである。処理は大きく二つのフローに分かれる。まず、ICAによってマイク正面方向の近接点音源を除去するフィルタを構成し、雑音推定を行う。次に、非線形処理によって観測信号から推定雑音を抑圧し、遠方の目的音を抽出する。本発表では、後半の非線形処理部分の検討を行う。従来の目的音抽出技術であるブラインド空間的サブトラクションアレー(BSSA)ではスペクトル減算による非線形処理によって雑音抑圧されるが、ミュージカルノイズという特有の歪みが発生するという問題がある。そこで、ミュージカルノイズが発生しない雑音抑圧手法であるMMSE STSAを用いたBSSAを構成し、従来のBSSAとの雑音抑圧性能と聴感上の差異について検討する。
 
加茂 洋平 知能情報処理学 木戸出 正繼☆8
発表題目:オントロジーによるタスク割り当てを用いた異種ロボット協調機構の構築
発表概要:環境知能化された未来の都市空間には,さまざまな情報機器とともに,多種多様なロボットが存在すると考えられている.そのような環境の中で,実体を持つビジブル型のロボットにしかできないこととして,実世界・実時間での「動き」によるサービスを考え,抽象的なユーザの要求を実現させるために,オントロジーの概念を用いて,ロボットの特徴や状態にあったタスク割り当て機構が有効であると考える.今回は,先行研究を紹介した上で,自らの考えと今後の予定を述べる.
 
京村 俊宏 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:論文紹介"Efficient Rendering of Human Skin ",Eugene d`Eon ,David Luebke,Eric Enderton,Eurographics Symposium on Rendering ,2007
発表概要:人の肌のように複数の層で構成されかつ半透明な物体を精密に表現する際には肌の表面下での光の散乱を考慮に入れなければならず、従来手法では計算時間がかかってしまいリアルタイム性を維持することができなかった。本発表では、リアルタイム性を維持しつつ人の肌を精緻に表現することを目指した、 ガウス基底関数に基づく拡散プロファイルの近似手法を紹介する。最後に、今後の研究テーマについて述べる。
 

日時:11月12日(水)3限(13:30-15:00)


会場:L3

司会:木谷 友哉
上利 宗久 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:Concept to make a processor N times faster
発表概要:In this study, we propose a concept of a processor that increase the implicit data-level parallelism automatically. In general, SIMD instructions or a many-core processor are used to exploit performance. However it is very diffucult to make a parallel programming for them. To solve the problem, we propose a new concept of a processor that can execute the existing software N times faster (without any difficult parallel programming).
In this seminar, we assume special register files that can be cloned to another. Then we explain the concept how the proposed processor works. Finally, we talk about the future work.
 
牛窓 朋義 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:論文紹介"Analysis of Program Obfuscation Schemes with Variable Encoding Technique" (IEICE Trans. Fundamentals, Vol.E91-A, No.1 January 2008, pp.316-329.)
発表概要:ソフトウェア解析技術が発展したことで,ソフトウェアに含まれる価値のある情報を攻撃者が不正に入手する脅威が想定される.そのため,そのような脅威から価値のある情報を守るために,難読化という手法について研究が行われている.本論文では,排他的論理和を用いた新しい難読化手法の提案を行うとともに,既存手法との性能比較を行うことで,提案手法の優位性を示す.本発表では,本論文の紹介とともに,今後の研究方針について述べる.
 
大賀 健司 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:論文紹介 Yoich SASAKI et al. "Soft Error Masking Circuit and Latch Using Schmitt Trigger Circuit," dft,pp.327-335, 21st IEEE International Symposium on DFT'06, 2006
発表概要:LSI製造プロセスの微細化に伴いトランジスタの性能は向上している. 一方でソフトエラーの影響が大きくなり回路の信頼性が低下してきている. その問題を解決するために回路の高信頼化に関する研究が多くなされているが, 特定の回路・要素に関するものが多くLSI全体での評価には至っていない.
そこで研究目標をソフトエラー耐性のあるトランジスタやFFを組み合わせてLSI全体での信頼性を評価・向上させることとする. 本発表ではまずソフトエラー耐性をもつトランジスタとFFに関する論文を関連研究として紹介する. つぎに提案回路の特徴と残された課題とともに自身の研究における課題と解決方法について述べる.
 
岡原 聖 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:コードクローンを用いたソフトウェア盗用の判断基準の検討
発表概要:近年,ソフトウェア盗用が問題となっている.ソフトウェア盗用とは,ソースコードを不正に利用することを指す.これまでソフトウェア盗用と判断するための基準が存在していなかった.そのため,ソフトウェア盗用の判断基準を明確にすることが必要である.本研究では,ソフトウェア盗用の判断基準としてソフトウェア間のコードクローンを利用する.今回,コードクローンの長さとコードクローンの検出確率に着目して事前実験を行った.本発表では,その結果についての報告を行う.
 
奥村 哲也 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:論文紹介"Visualizing Software Architecture Evolution using Change-sets"
発表概要:ソフトウェア開発において、開発対象となるシステムの進化を理解することは非常に重要である。開発において発生する様々な事象を可視化することはシステムの理解を促進する上で有用である。これまでに提案されてきた可視化ツールによる支援の多くは、開発中に起こった変更を時系列に沿って概略的に表示することのみにとどまっており、変更が多くなりすぎると個々の変更の詳細を把握することが困難である。そこで本論文ではソフトウェア成果物に対する変更の要因を分析し、それらを6つのカテゴリに分類するアルゴリズムを提案した。そして、提案したアルゴリズムに従って変更を分類するツールMotiveの作成を行った。また、Java言語を利用した2種類のソフトウェア開発プロジェクトの開発成果物に対してMotiveを適用した。その結果、提案手法においてソフトウェア開発における進化の過程を確認できた。また関連研究より、開発者やマネージャがどのような視点に基づく可視化を望んでいるかの要件を明らかにし、Motiveがそれらを満たすかどうかを確認した。本発表では本論文で得られた知見をもとに、大規模ソフトウェア開発において、個々の変更が開発工程全体のどの部分に関連するか、階層構造を用いて可視化する研究について述べる。
 
片山 真一 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:論文紹介"Volker Gruhn, “Process-Centered Software Engineering Environments, A Brief History and Future Challenges,” Annals of Software Engineering, v.14 n.1-4, pp.363-382, December, 2002."
発表概要:近年多くのソフトウェア開発組織がソフトウェアの品質改善のためにソフトウェアプロセスの改善に取り組んでいる.プロセス改善に有効な取り組みとして,プロセス中心型開発環境の導入がある.プロセス中心型開発環境とはプロセスモデルを入力とし,モデルに応じて管理者・開発者双方の支援を行う環境のことである.本発表ではプロセス中心型開発環境に関連する様々な研究について述べた論文を紹介する.この論文ではプロセス中心型開発環境が登場するまでのソフトウェア開発環境の歴史,ソフトウェアプロセスの現在のトレンド,今後の課題について述べている.特に現在のトレンドである分散したソフトウェアプロセスについて詳しく説明している.最後に本論文で得た知見を基に,今後の研究テーマについて述べる.