ゼミナール発表

日時: 9月26日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:和泉
益井 賢次 D2 山口 英 砂原 秀樹 門林 雄基
発表題目:アプリケーション志向の広域分散計測環境に関する研究
発表概要: インターネット上で大規模なオーバレイネットワークを構成するようなネットワークアプリケーションにとって、自身のサービスの維持と拡張のために下位層ネットワークの特性を把握することが必要となる。このようなアプリケーション側からの要求に応えるため、インターネット広域でネットワーク特性を収集し、必要に応じてアプリケーションへその情報を提供するサービスを実現する分散計測環境が登場しつつある。これまでに、このような目的の計測環境の構築手法がいくつか提案されており、特にpeer-to-peerネットワーク上に計測サービスを展開する手法は、負荷分散の実現や協調計測手法との親和性の高さから実運用に適した方式のひとつとして考えられている。本発表では、アプリケーションにネットワーク特性を提供するという目的の達成のための要件を整理し、特に (1) 大規模計測の実現、(2) 高速な応答性、(3) インターネット上の要素の非均質性の考慮 という3点に注目する。これらに基づいた計測環境の設計を提案し、実ネットワーク環境での計測環境の動作検証と性能評価をもとにそれらの有効性を示す。
 
栗山 恭嘉 M2 伊藤 実 砂原 秀樹 安本 慶一
発表題目:将来の混雑状況予測に基づく混雑回避巡回スケジューリング手法とその評価
発表概要:近年,都市部,観光地など慢性的な混雑が生じる環境において,希望する目的地を限られた時間内で効率よく巡回するスケジューリング手法の確立が望まれている.これまで,ユーザ間で経路情報を共有し互いに重複しない移動経路を選択することで混雑を緩和する方式や,直近の混雑情報から最も混雑していない地点を次に訪問することで特定の地点へのユーザの集中を防ぐ方式が提案されている.これら既存研究では,経路,目的地のどちらか一方の混雑のみを考慮し,スケジューリングを行うが,観光地など特定の目的地にユーザが集中することで滞在時間が延長し得る環境においては,移動経路に加えて,各目的地における混雑も考慮する方が望ましい.また,現実環境においては,ある特定の時刻までに自宅に帰らなければならない,といった時間制約も同時に考慮する必要がある.本研究では,移動時間および各地点での待ち時間の両方を同時に扱い,複数ユーザの巡回スケジュールを同時に調整することで,各ユーザが混雑を避けて優先度の高い地点を制約時間内でなるべく多く巡回できるようなスケジューリング手法を提案する.シミュレーション実験の結果,ユーザが直観的に行動する場合に比べて,より効率の良いスケジュールが得られることを確認した.
 

会場: L2

司会:中西
池田 直嗣 M2 藤原 秀雄 中島 康彦 井上 美智子 大竹 哲史
発表題目:高位合成情報を用いたRTLフォールスパス判定に関する研究
発表概要:近年,半導体技術の進歩により回路の集積度は飛躍的に増大している. しかし,その一方で回路の動作を保証するためのテストコストも増大している. パス遅延故障テストは動作回路のタイミングの正当性を保証するための重要な技術である. しかし,パス遅延故障テストのテストコストの大きさが問題となっている. 回路中には,遷移が伝わらないフォールスパスが多く存在している. フォールスパスには遷移が伝わらないため,フォールスパス上の遅延故障は回路のパフォーマンスに影響を与えない. そこで,本研究では高位合成情報を用いて多くのフォールスパスを高速に判定する手法を提案する. 本手法を用いてあらかじめフォールスパスを判定し,テスト対象から除外することによりテストコストを削減できる.
 
長谷川 宗士 M2 藤原 秀雄 中島 康彦 井上 美智子
発表題目:平衡構造を利用した安全なスキャン設計
発表概要:順序回路からなるLSIのテストは困難である.解決策として,スキャン設計を一例とする,テスト容易化設計が提案されている.しかし,スキャン設計には可観測性・可制御性を高めるという特徴があるため,暗号チップなどの秘密データを保護するには都合が悪い.本研究では,安全なスキャン設計として,危険レジスタをできるだけスキャンに含ませず,また,スキャン化した危険レジスタに対してはデータ混乱化を行い,同時に回路を平衡構造とするテスト容易性設計法を提案する.
 
山原 幹雄 M2 中島 康彦 藤原 秀雄 山下 茂 中田 尚
発表題目:異種命令混在実行プロセッサ向けOS
発表概要:近年の携帯端末などでは,複数のプロセッサを独立で存在させる手法や コプロセッサを用いる方法などを用いてアプリケーションを実行している. しかし、これらの方法ではOSの機能が冗長であったり,命令セットの拡張が必要となるなどで互換性が低いといった問題点が挙げられる. 本講座では異種命令を混在実行するプロセッサOROCHIを提案している.OROCHIでは複数の命令セットを内部でデコードし,共通の演算器内で混在実行している.OSやコアを1つに集約可能であるが,OS側は実行される命令の識別や混在実行のための方法が求められる. 本発表では,異種命令セットの混在実行が可能となるOS機能についての説明をのべる.
 

会場: L3

司会:MD.ALTAF-UL-AMIN
高橋 弘喜 D2 金谷 重彦 小笠原 直毅 黒川 顕
発表題目:Elucidation of stage-specific metabolites in Escherichia coli based on FT-ICR/MS and bioinformatics
発表概要:Metabolites are the end products of cellular regulatory processes, and their levels can be regarded as the ultimate response of biological systems to genetic or environmental changes. Comprehensive metabolomics makes a clear distinction from conventional metabolism studies in that it addresses whole cellular activities rather than just focusing on enzymes, reactions, or metabolites. We have developed a metabolic profiling scheme based on direct-infusion Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry (FT-ICR/MS). In this study, the scheme was applied to time-series metabolome analysis in Escherichia coli. First, FT-ICR/MS data sets were converted into metabolome information using the Dr.DMASS software (http://kanaya.naist.jp/DrDMASS). Acquired metabolic profiles were then analyzed by multivariate analyses, i.e., principal component analyses (PCA) and partial least squares (PLS). PCA revealed that the growth stages in Escherichia coli were distinguished by the metabolic profiles, suggesting that metabolic profiles would be sufficient to account for each cell stage. Additionally, in analyses based on PLS, we found out some stage-specific metabolites, suggesting that the characteristics of the metabolic profiles would be influenced by these metabolites. Next, we retrieved and got possible metabolite candidates from the metabolic profiles using a metabolite-species database, KNApSAcK (http://kanaya.naist.jp/KNApSAcK) which was implemented to assign metabolite candidates to each accurate MS data. Our metabolic profiling scheme demonstrated the possibilities of practical application of the FT-ICR/MS-based metabolic analyses.
 
木浦 義明 M2 金谷 重彦 小笠原 直毅 黒川 顕
発表題目:タイリングアレイ情報に基づく枯草菌のRNAポリメラーゼσサブユニットsigAの結合配列の推定
発表概要:枯草菌のRNAポリメラーゼσサブユニットの1つであるSigAは多くの遺伝子の転写を制御する主要なσ因子である。 SigAがゲノム中のどの部位を認識して結合するのかを解析し、枯草菌において転写領域を予測することが可能になれば、近縁種の病原菌や産業有用株に応用することで有用な情報を提供することが可能となる。 現在、-35や-10といったコンセンサス配列は報告されているものの、多くの変異が起こっているにも関わらず結合したり、少数の変異しか起こっていないにもかかわらず結合しない部位が存在するため、 SigAはこの配列だけではなく他の配列も認識に使用していると考えられる。 近年、クロマチン免疫沈降法とタイリングアレイを組み合わせたChIP-on-chipと呼ばれる手法が開発され、ゲノムと相互作用するタンパク質の結合部位を一度に調べられるようになった。 本研究ではこのChIP-on-chipの実験結果を解析し、SigAが認識している配列の特定を目指している。
 
草場 亮 M2 金谷 重彦 小笠原 直毅 黒川 顕
発表題目:Flavonoid類における生物種特有の化学置換パターンの推定法:生物種固有の代謝経路予測に向けて
発表概要:植物種固有の代謝経路の多様性を把握するための一方法として、ゲノム上に存在する酵素遺伝子セットにより代謝経路を把握することが考えられる。しかし、ゲノム上の遺伝子セットが解明されている植物種は非常に限られている。一方、生物種-二次代謝物の関係づけは、ケモタクソノミーの分野で限られてた範囲の生物種に対して行われている。本研究では、生物種-代謝物の関係を悉皆的に整理し、共通の母核を有する代謝産物における置換特異性を推定する方法を検討した。まずはじめに、生物種ごとに共通の母核を有する代謝物の化学置換パターンを1,0のビット列でパターン表現した。このビット列パターンをもとに、生物種を予測することをPartial Least Square(PLS)法で解析し、得られる回帰係数により、生物種固有の化学置換パターンを把握することに成功した。実際の解析例としては、Isoflavoneの化学置換のパターン表を作成し、PLS法を適用した。 その結果、マメ目、アヤメ目に特徴的な置換パターンを見出し、種特有の置換パターンを推定するモデル化に成功した。
 
海内 梨紗 M2 湊 小太郎 金谷 重彦 杉浦 忠男 佐藤 哲大
発表題目: 代謝経路によるアルカロイドの分類 種固有のアルカロイド代謝経路の体系化
発表概要: 創薬においては、リード化合物を化合物ライブラリーから探索する研究が行われている。リード化合物は副作用がない、活性が高い、新規性があるという条件が求められる。2003年Feherらにより、人工合成物質、天然代謝物、薬物の構造多様性の比較が行われ、天然代謝物は人工合成物質よりも構造が多様化しており、開発された薬物も多様な構造が母核となっていることがわかった。よって、創薬において人工合成物質から天然代謝物への回帰が重要となってきた。 本研究では、天然代謝物の中でも特に多様な母核をもち、多様な生理活性を示すアルカロイドの体系化を行っている。現段階での問題点として全てのアルカロイドの代謝経路がわかっているわけではないので、母核が代謝経路のてがかりとし、既知の代謝経路情報と代謝物の母核の情報を統合した代謝物質の分類を行っている。代謝物質の包含関係に着目し、代謝経路予測システムの提案をしている。この体系化は、代謝物質の経路予測、母核を中心とした薬物構造活性相関研究、代謝経路を効率化した組み換え生物の設計などが可能となり、創薬等の分野において非常に有用だと思われる。