ゼミナール発表

日時: 12月4日(火)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:大竹
木浦 幹雄 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:異なるプロジェクト間におけるFault-Prone モジュール判別の精度評価
発表概要:信頼性の高いソフトウェアを開発するために,ソフトウェアテ ストおよび保守工程でfault-prone モジュール(バグを含む確率の高いモ ジュール)を特定することが重要である.そのために,従来,多数のモ ジュールから計測されたプロダクトメトリクスを説明変数とし,モジュー ルに含まれるバグの有無を目的変数とする判別モデルが多数提案されて いる.一般に,判別モデルの構築には,旧バージョンのモジュールから計 測されたメトリクス値とバグの実績データが用いられる.しかし,この 方法は,旧バージョンの存在しない新規開発プロジェクトでは使えない. 本稿では,異なるプロジェクトのモジュールから計測された実績データ を元にモデル構築を行い,fault-prone モジュール判別を試みた結果につ いて報告する.
 
平田 雄一 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:論文紹介:The quantum fourier transform on a Linear Nearest Architecture, Y.Takahashi, N.Kunihiro, K.Ohta, Quantum Information and Comutation, Vol.7 No.4 (2007) 383 - 389
発表概要:量子回路設計はこれまで任意のビット同士を作用させることが可能であることを前提としていた。しかし、近年物理実験等から近接したビットとしか作用できないという制約のあるLNNアーキテクチャが提案されている。量子コンピュータの計算量は量子回路のゲート数と関係しており、少ないゲート数で回路設計を行うことが重要となる。 本論文では代表的な量子計算の一つである量子フーリエ変換を近似した、近似量子フーリエ変換をLNNアーキテクチャ上で少ないゲート数で設計する手法を示す。本発表では、本論文の紹介と共に、今後の研究方針を述べる。また、本発表は英語で行う。
 
深坂 紘行 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:Vaidman-Aharonov Schemeを使った量子による暗号鍵共有
発表概要:量子コンピュータが実現されれば、現実的な時間で解読困難であることを安全性の根拠にしている公開鍵暗号方式は、破綻してしまう。量子の世界では、量子鍵配送と呼ばれる乱数を共有する仕組みによって、情報理論的な安全性を根拠に、破綻しない暗号方式が存在する。その代表的な方式がBB84であるが、この方式では多くの量子ビットを廃棄しなければならない。量子ビットを効率良く利用するために、Vaidman-Aharonov Schemeを用いた新たな量子鍵配送の仕組みが考えられる。だがこのSchemeでは盗聴者が介在した場合の有効性は確かめられていない。今後の研究では、このSchemeが量子鍵配送として有効かどうかを確かめる必要がある。
 
堀田 敬一 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:トランジスタレベルによる回路の信頼性評価
発表概要:近年、トランジスタの微細化に伴い回路の信頼性が低下してきている。そこで従来の単線式セルに比べて、信頼性の高い2線式セルが提案されている。また、回路の信頼性を評価する手法としてゲートの故障率を基に評価する手法がある。この手法ではゲート自体の故障率については任意であるため、2線式や単線式のセル自体の信頼性は評価できない。そこでトランジスタレベルを基にしたゲートレベルの故障率で評価する手法が考えられるが、これには問題点がある。本発表では従来法の概要と、従来法をトランジスタレベルに適用するときに起こる問題点を述べ、それらを解決するための研究方針について説明する。
 
宮野 耕一 インタラクティブメディア設計学 加藤 博一
 
松田 侑子 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:論文紹介:What Are You Looking For?An Eye-tracking Study of Information Usage in Web Search(出典:Edward Cutrell and Zhiwei Guan. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems 2007, pp.407-416.)
発表概要:Web検索は,Webユーザが行う最も重要な行動である.一般に利用されているWeb検索サイトの多くは同様のインタフェースを用いているが,それらのインタフェースを用いてユーザが検索結果に含まれる情報をどのように利用しているかはわかっていない.本論文ではより効率のよいインタフェースの提案を目的とし,サイト要約に注目した実験を行う.実験ではWeb検索サイト利用者の視線を計測することで,サイト要約の長さの影響と,検索タスクの種類による影響について分析する.本発表では,本論文の紹介と共に,今後の研究方針について述べる.
 

会場: L2

司会:神原
平田 優 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:細胞のボリューム可視化に関する研究
発表概要:これまで、細胞などのナノ・ミクロレベルの構造は蛍光顕微鏡によって観察されてきたが、共焦点顕微鏡や二光子顕微鏡の開発により、高精細で大規模な三次元ボリュームデータとして得られるようになってきた。ボリューム可視化に関する研究は、医療の分野において活発に進められてきたが、医用画像とはその用途も規模も異なるため細胞特有の可視化方法が求められる。今回の発表では、本研究の背景と目的に加え、先行研究と追試の結果、今後の方向性について報告する。
 
古田 賢吾 計算神経科学 川人 光男
発表題目:ヒトの視覚の物体検出機能の研究
発表概要:ヒトの視覚の物体検出機能の実装レベルでのモデルには大きく saliency model (Itti and Koch)と Grossberg のモデルの2つがある. saliency model は任意の入力画像に対して検出は可能であるが,検出結果の妥当性に問題がある. 一方 Grossberg のモデルは,限られた入力画像にしか適用できないが,検出結果の妥当性は高い. 本発表ではまず,この2つのモデルを解説し,次にsaliency model をロボットビジョンに実装した結果を示す. さらに今後の研究方針を示す.
 
本田 和久 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:通行人分類のための動線データ特徴抽出
発表概要:近年,セキュリティ対策としてカメラによる監視システムが広く利用されている. 現在の監視システムではすべての動画像からの異常検出を人手で行うため 大変コストが高い.そこで,自動的に映像を識別することでコスト削減を 目標とする研究が行われている.本研究では,市街地など広範囲にわたる 監視が必要な環境を想定する.カメラの台数を減らし,コストを下げるために カメラの位置を高くし,一つのカメラで広範囲を監視する. 今回の発表では,監視カメラ動画像中の通行人を大人や子供などに分類するために, 人物の動線データから特徴を抽出するシステムについて提案する.
 
前田 祐輔 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:安全運転支援システムのための車線状況認識
発表概要:近年,ITSの研究・開発が盛んに行われている.
その中でも走行支援システムは,交通事故防止に重要な役割がある.
本発表では関連研究として“複比と消失線に基づく車載単眼障害物検出”という論文を紹介する.
また自分の研究内容について関連研究との違いを説明すると共に,現在検討中の手法について述べる.
 
正時 啓輔 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:独立成分分析を用いた音楽信号圧縮符号化法における音源分離に最適な区間分割
発表概要:近年、従来のステレオ再生技術より高い臨場感を提供する5.1ch,7.1chなどの多チャネルサラウンドシステムが開発されている。信号の多チャネル化に伴い伝送量が増大するため,多チャネルシステムに有用な圧縮技術開発の要求が高まってきている。現在提案されている新たな圧縮技術として、独立成分分析(ICA)を用いた音楽信号圧縮手法が提案されている。この手法は、ICAを用いた音源分離により音源信号のスパース性を分析し、微弱な信号成分を表現するために費やされる信号の冗長性を排除することにより、信号の精度を損ねることなく高い圧縮効率を得る手法である。しかし音源分離を適用する区間分割を適切に行わなければ高いスパース性の分離信号を分析することができなくなり、圧縮効率が低下する。本研究では音源分離に最適な区間分割を検討し、長時間の音楽信号を効率的に圧縮する手法の構築を目指す。
 
越澤 広幸 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介"Multi-View Stereo for Community Photo Collections"(Michael Goesele, Noah Snavely, Brian Curless, Hugues Hoppe, Steven M. Seitz,ICCV 2007)
発表概要:画像を用いた3次元形状復元の主要技術の一つに、Multi-View Stereo(多眼ステレオ法)がある。従来から、多眼ステレオ法では対応点の計算が大いに簡単になることから、状況変化(照明、オクルージョン、スケール等)の少ない画像を用いることが考えられていた。本発表では、様々な状況変化のある画像に対してもロバストで高精度な3次元形状復元を可能にした論文を紹介する。
 

会場: L3

司会:佐藤(哲)
田中 友基 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:ドライバのリスク知覚を考慮した無信号交差点通過行動モデル
発表概要:無信号交差点における出会い頭事故は、現代の自動車社会において非常に問題となっており、このような事故の大半は、ドライバの危険な通過行動に起因すると考えられる。人間の行動に対して悪い影響を与えるPSF(Performance Shaping Factor:行動形成要因)の観点に立つと、ドライバは運転行動に対する誤った意識としての内的危険要因を潜在的に持っており、これが危険な行動を引き起こすと考えられる。本研究では、交差点通過においてドライバがどのような内的危険要因を持ち、どのようにリスクを見積もって運転しているのかを解析する。そして、ドライバの意識や判断を含めて運転行動を再現する無信号交差点通過行動モデルを作成する。これにより、効果的な運転教育やドライバ個々人に適した運転支援、さらにドライバの運転行動と調和した交差点環境設計への指針提供などが期待できる。
 
長井 健祐 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:複数の不完全なセンサ情報による状態推定
発表概要:近年カメラによるビジュアルフィードバックなど、制御対象の外部から計測を行うことが注目されている。しかし制御対象の外部から計測を行う場合、障害物等により一時的に計測が行えない場合がある。このような条件下で状態推定を行う場合、従来の方法でオブザーバを設計することができない。本発表では、このような一時的にセンサが無効となるようなセンサを複数用いた計測システムにおいて、有効なセンサ情報のみを用いて状態推定を行う方法について検討を行い、数値例によって有効性を確認する。
 
近藤 祐和 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:独立性に基づく外乱抑制制御
発表概要:近年,制御性能の向上のため外乱抑制制御への関心が高まっている.外乱とは制御系への状態を乱そうとする外的作用のことであり,どのような信号がどのような経路で作用するのかが不明なことが多い.そのため外乱を抑制することは困難になる.外乱抑制方法としてH∞制御があるが,H∞制御ではコントローラを導出する際に,入出力端の重み関数を試行錯誤で設計しなければならず,この点で改善の余地がある.そこで本発表では,独立成分分析を制御へ応用することにより,従来は試行錯誤によらざるを得なかった設計手法に系統的な指針を与える方法の論文紹介を行う.また今後の研究方針であるこの方法の実機への応用について述べる.
 
林 浩平 論理生命学 石井 信
発表題目:リンク構造を持つデータに対するGeneralized PCA を用いた特徴抽出
発表概要: オブジェクト間が互いに関係(リンク)を持つような データセットは世の中に広く存在する(例:WWW). このようなデータセットは離散値の行列として表現できるが, この行列からなにかしら役に立つ情報を抽出することを考える.
一般に,上記のようなデータ行列の解析には 行列の低ランク因子化が有効であると言われている. 具体的には,データ行列を低ランクの因子で近似することにより データのノイズ除去や次元縮約などの効果が期待できる. しかしながら,PCA といった既存の低ランク因子化手法は データに実数を仮定したものが多く,離散データに適した手法は数少ない.
本発表では,上記のようなリンク構造を表す行列に対する情報抽出の一手段とし て,PCA を 離散値にも適するよう一般化した Generalized PCA(Collins et al., 2002) を上記データ行列に適用することを考え,その有効性を検討する.
 
日栄 悠 論理生命学 石井 信
発表題目:強化学習MOSAIC
発表概要:人間は環境や制御対象に対し、非常に高い適応能力を持つ. この情報処理システムの脳内モデルとして、 一組の予測器と制御器を基本単位とするモジュール構造を持つ MOSAIC (MOdular Selection And Identification for Control)がある (Wolpert and Kawato, 1998).MOSAICでは、各モジュールの予測器による 次状態の予測と、軌道などの教師信号との誤差に基づいて、 その予測器と対になる制御器の出力の信頼度を計算することにより、 複雑な環境に適応した制御出力を合成することができる. 一方、実世界の多くの問題では、明示的な教師信号が与えられないため、 試行錯誤によって制御器を学習する強化学習が用いられる. しかし、状態空間が大きい場合や非線形である場合、 適切な制御方策の学習は困難である. このような場合、状態空間を分割したりサブゴールを設定したりして 効率化が試みられるが、タスクについての事前知識なしには難しい. 強化学習を用いたMOSAIC(MMRL[鮫島ほか , 2001])は既に提案されているが、 ヒューリスティックでタスクに依存している部分が大きい. そこで本研究では、強化学習による、より一般化したモデルを提案する.
 
松本 健介 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:マニピュレータに対する非線形適応制御の設計と検証
発表概要:現実のシステムの多くは非線形システムとしてモデル化することができる。これらのシステムに対して有効な制御法として、制御Lyapunov関数に基づく逆最適制御則がある。本発表では、これまで提案されている、非線形システムに対する制御法を簡単にまとめて紹介し、その中で制御Lyapunov関数に基づく逆最適制御則について解説する。さらにこれまで行われてきた逆最適制御則を実機に適用した先行研究を紹介し、マニピュレータに逆最適制御則を適用する際の問題点を示す。これを解決するために適応制御を用いた設計法を説明し、今後の研究方針について述べる。