ゼミナール発表

日時: 11月30日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:石川
川合 利佳 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:情報学的解析による漢方薬有効成分の解明
発表概要:漢方薬は多数の生薬を組み合わせた複合処方であり、数千もの化学物質を含み、その効用は多岐にわたる。しかしその処方は医師の経験則よるところが大きく、はっきりとした化学的根拠はあまり示されていない。そこで本研究では、生薬要素間の相互作用に注目し細かく代謝の変化を見ることで、生薬が代謝経路に与える影響を予測し、複雑な漢方薬全体を体系的にシステムバイオロジーとして理解することを目的とする。本発表では、先行研究及び、現在までの研究結果と今後の方針について報告する。
 
南部 羽蘭 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:漢方薬を中心としたメタボローム解析
発表概要:漢方薬の最大の特徴は、多成分のカクテル(複合成分系薬物)であるといえ、それ故に多彩な作用ベクトルをもち、様々な症状に対応できる。
しかし、実証的な西洋薬に比べて科学的なデータが不足しており、「非科学的な」ものとする意見が聞かれる。本研究では、漢方薬に含まれる複合成分を
網羅的に解析し、処方される症例に関係する成分を推定することを目的とした、バイオインフォマティクス技術要素を開発する。本発表では、先行研究な
らびに現在までの研究結果と今後の方針について報告する。
 
深田 幹保 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:マイクロ流体デバイスを用いたDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションの実時間計測
発表概要:DNAマイクロアレイは遺伝子発現を網羅的に解析するためにとても有効なツールである。 しかし解析に時間がかかることなどが問題であり改良が望まれている。 そこで本研究では実時間計測を解析時間とコストを削減するためにマイクロ流体デバイスを用いたDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションの実時間計測を目的とする。 本発表では、先行研究の紹介および今後の方針を発表する。
 
前田 雄翔 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:トランスクリプトーム解析を用いたBacillus subtilis遺伝子のオペロン同定
発表概要:ゲノムプロジェクトの進展や実験技術の発展は大量のDNAの配列情報や発現情報などを利用可能にしており、それらの情報の中から正確な遺伝子発現制御の情報を抽出し、ゲノム上で特定の因子によって制御される遺伝子を的確に同定される技術が必要とされている。そこで本研究では、トランスクリプトーム解析データを用いてBacillus subtilis遺伝子上の各転写因子により制御される転写単位を特定することを目的としている。本発表では、先行研究の概要及びに今後の研究指針について紹介する。
 
水上 祐子 構造生物学講座 箱嶋 敏雄
発表題目:三量体Gタンパク質Gαシグナル伝達に対する新規制御タンパク質の構造学的研究
発表概要:生物はいくつもの細胞がたがいに協調し合いながら、成長や生理機能、行動などさまざまな生命現象を調節している。これら細胞の社会生活の営みには他の細胞との情報伝達が重要であり、細胞はさまざまな化学シグナルにより細胞間情報伝達をおこなっている。近年、三量体Gタンパク質のGTPaseサイクルを制御する活性をもった新規制御分子としてRic-8が同定されたが、その生理学的な役割や機能、コードされているタンパク質のドメインやモチーフ構造は未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、構造生物学的手法により三量体GタンパクのGαサブユニットとRic-8Aの複合体を用いて、そのGEF機能のメカニズムや生理的役割を明らかとすることを目的とする。本発表では、先行研究ならびに現在までの研究結果と今後の研究方針について報告する。
 
三好 秀明 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:光ピンセットを用いた機械刺激に対する細胞膜の応答計測
発表概要:細胞膜は、細胞を包んでその境界を決め、細胞質ゾルを外部環境と異なる状態で維持し、細胞の生存にとって不可欠な役割を果たす。また、細胞膜は外部環境と接しており外部からの機械刺激を常に受けている。近年この機械刺激に対するセンサーとしてStretch activated (SA)チャネルの存在が明らかとなり、細胞膜の機械刺激に対する応答に対する研究が現在注目を集めている。そこで本研究は、当研究室基盤技術である光ピンセットを用いて細胞膜へ機械刺激を与え、機械刺激に対する細胞膜の応答を測定できる計測系を確立することを目的としており、基礎生物、基礎医学、製薬産業への応用を目指している。本発表では、測定手法と現状および今後の展開を報告する。
 

会場: L2

司会:和泉
坂本 一仁 情報基礎学 関 浩之
発表題目:センサネットワークにおける暗号鍵共有方式について
発表概要:センサネットワークとは,センサノードと呼ばれる小型端末のアドホックな無線ネットワークである.センサネットワークの主な目的は,各センサノードによってセンシングされた情報を収集することである.しかし,センサネットワークは無線通信を用いているため,暗号化されていない通信路は容易に盗聴されてしまう.さらに,センサノードは電池を用いて駆動し,メモリやCPUに制限があるため,従来のネットワークで用いられているような,多くの資源を使用する公開鍵暗号方式をセンサネットワークに適応することは非効率的である.これらの理由から,センサネットワークの鍵共有方式では鍵事前格納方式が効率的であると研究されている.鍵事前格納方式とは,センサノードに事前に鍵を格納しておき,鍵共有を行う方式である.本発表では既存研究を3つのカテゴリに分類し,各方式の特徴等を概観する.また,既存研究の問題点について考察し,現在発表者が検討中の方式について簡単に紹介する.
 
高畑 裕美 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:家庭内電力線通信(PLC:Pwer Line Communication)が既存通信システムに与える干渉波除去方法
近年、ディジタル家電に代表される各種家電機器の高機能化が進み、これらの家電機 器をネットワーク化したホームネットワークへの関心が高まりつつある。ホームネッ トワークの構成手段として現在は無線LANが主流であるが、電力線通信も有効であ る。
しかし、電力線に高周波を重畳すると電力線がアンテナとして作用して漏洩電 磁波が発生する。またその周波数が短波帯の電波と重なるため、短波ラジオ、アマ チュア無線、非常通信用無線などの無線通信、電波天文学などに影響が出る可能性が 指摘されている。
また電子レンジ使用時の不要波の発生も同様の問題がある。 無線LAN IEEE802.11b, a, gではISM(Industrial, Scientific and medical)バンド)として2.4GHz周波数を通信に使用可能となったが電子レンジは 2.4GHz付近で不要波を出すことで影響があるとされている。
そこで本発表では、PLC通信時および電子レンジ使用時に発生する不要波の、時間波 形の測定と分析を行い、ここから不要波の特性を検出して、相関関数の導出と信号除 去手法について検討を行う。また、先行研究を行っている京都大学守倉研究室を訪ね て現在の動向や研究中の諸問題を調査し、その結果、PLC通信の現状と従来からの問 題点、不要波除去方法の今後の方針を明らかにする。
 
杉山 貴信 インターネット工学 山口 英
発表題目:水中音響ネットワークの構築に関する考察
発表概要:海洋資源の持続的な利用を目指すために、海洋の調査、観測を行う必要がある。 現状の調査方法は海底に沈めた機器や水中ロボットを有線で接続し、データを取得している。 しかし、有線では海底機器の設置ポイントや水中ロボットの行動範囲に制約が発生してしまう。 この課題を解決するために、水中音響技術を発展させ、各機器を無線で接続する研究が行われている。 そして、水中にネットワークを構築することで、各観測機器から相互に情報を得、効率良く海洋観測を行うことができると考えられている。 本発表では、水中音響無線ネットワークを構築する場合の課題を紹介し、今後の研究方針を示す。
 
田中 翔 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:衛星通信キャリア重畳方式における測距符号を用いた不要波キャンセラの提案
発表概要: 衛星通信システムでは周波数利用効率の向上のために、キャリア重畳方式が提案されている.
VSATシステムにおけるキャリア重畳方式では、HUB局と小型局で同一の通信周波数帯域を使用することによって周波数の利用効率を高めることが可能となる. この場合、受信時には同一周波数帯に重畳された信号のうち、所望の信号だけを取り出す必要がある.
本発表では、まず先行研究から、不要信号(送信信号)のレプリカを作成しそれをキャンセルすることで所望信号のみを取り出すといういくつかの不要波キャンセラ方式を紹介する. また、それらの先行研究から得られた課題をもとに、提案する遅延測距符号MCC(Multi Component Code)を用いた不要波キャンセラについて説明する。 この方式は受信信号にMCCを付加することによって遅延時間を正確に測定し、送信信号データをこの遅延時間分だけシフトさせることでレプリカを作成し不要波をキャンセルする方式である.
しかし、この技術にはまだ十分検証されていない部分もあり、それらの課題を考察した後、今後の方針について報告する.
 
黒田 笑子 情報コミュニケーション 岡田 実
発表題目:衛星通信キャリア重畳方式における測距符号安定性の検証
発表概要: 衛星を用いた通信システムで周波数利用効率を高めるために、キャリア重畳方式が提案されている. VSATシステムでのキャリア重畳方式では、HUB局と小型局で同一の通信周波数帯域を使用し、周波数利用効率を2倍にすることができる.
この場合、受信時には同一周波数帯に重畳された信号のうち、所望の信号だけを取り出す必要がある. 本研究では、受信信号から不要信号(送信信号)のレプリカを作成し、それをキャンセルすることで所望信号のみを取り出す方式について検討する. また、このレプリカは受信信号に付加された遅延測距符号を用い、遅延時間を正確に測定したのち、送信信号データをこの遅延時間分だけシフトさせることで作成することができる.
この測距符号にはMCC(Multi Component Code)を使用し、受信信号との自己相関を計算することで遅延時間を測定する. しかし、MCCの測距の安定性についてはまだ十分検証されていない. 本発表ではこのMCCの安定性についての検証結果と今後の課題について報告する.
 

会場: L3

司会:天野
野村 尚央 デジタルヒューマン学 金出 武雄
発表題目:複合現実感を用いたヒューマノイドの直接教示
発表概要:近年、ロボットは家庭などの人間のいる環境での活動が期待されている。 ヒューマノイドの技術を実用にて使うためには人間と類似した様々な動作が求められ、動作を生成する研究が数多くある。 本研究では実空間と仮想空間を実時間においてシームレスに融合する複合現実感の技術を用いてヒューマノイドに直接教示するシステムを開発する。 複合現実感を用いる事によりCGにおけるシミュレーションを実空間においても検証する事ができる。 またヒューマノイドの内部情報を教示中に表示する事で運動に適した教示ができるだろうと考えられる
 
野村 烈 像情報処理学 千原 國宏
発表題目:論文紹介“Dense Estimation of Fluid Flows”
発表概要:本発表では、動画像から流体の流れを推定する論文を紹介する。従来、動画像から物体の動きを推定する場合にはオプティカルフロー推定が用いられるが、流体画像は時空間的な変化量が大きいため、流れの推定に準剛体を対象とした時空間勾配法を適用するのは困難であった。よって、紹介論文では流体画像に適したオプティカルフロー推定手法を提案する。オプティカルフローを求める上で必要な推定式は、流体は連続的に変化するという流体力学の法則に依存した項を含んでおり、これにより短時間での大きな動きにも対応できる。また、流体が大きく変位するときに発生する渦の発散・渦度を考慮した項を導入することで、渦や発散構造の突然の出現や消滅の影響を抑えている。実験では、衛星から撮影された雲と、水蒸気の対流、2つの流体画像に対して提案手法を適用し、時空間勾配法に対する推定精度とロバスト性の優位性を確認した。
 
原田 甫 像情報処理学 千原 國宏
発表題目:論文紹介”A New Physical Model with Multilayer Architecture for Facial Expression Animation Using Dynamic Adaptive Mesh(Yu Zhang, Edmond C. Prakash, and Eric Sung, 2004)”
発表概要:コミュニケーション時における顔表情は,重要なノンバーバル情報として用いられることはよく知られており,顔表情アニメーションの研究はコンピュータグラフィックの主要課題として,数多くの研究がなされてきた.本論文では,現在多くの顔表情シミュレーションに用いられている物理モデリング手法であるMSD法を用いる.従来のMSD法では線形バネモデルを使用しているためメッシュが崩壊しやすい,頭蓋骨と皮膚変形の関係性を考慮していない,顔モデルが固定された解像度でシミュレートされているといった問題が存在するが,本論文では,線形バネモデル,エッジ反発バネモデル,頭蓋モデルの導入と,適応型解像度設定の適用により,問題点の改善を行う.本発表では,表題論文の紹介とともに,自身の研究との関連を示す.
 
平井 迪郎 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:時系列3次元情報を用いた人体の実時間姿勢・形状解析
発表概要: 近年,有形・無形の文化遺産の保護を目的とした3次元デジタルコンテンツ化の研究が行われている.
  中でも,無形文化財,つまり,伝統舞踊や能などの人物を対象としたデジタルアーカイブ行うためには対象の姿勢・形状を推定することが重要である. 舞踊動作の形状解析を行うためには,非剛体,つまり緩やかな形状を扱う必要があり, 従来のようにモデルフィッティングによって姿勢推定を行うことは難しい. そこで,従来研究ではこの問題を解決するために,高精細な時系列形状を体節ラベル付きで事前に学習し, この学習データと入力データを比較することで形状解析を行っていた.また, 学習データ探索の高速化のため, 時系列形状は主成分分析して固有空間上の多様体として記録していた.しかしながら, 今後様々なバリエーションの動作パターンを解析するためには単純な主成分分析では不十分であると考えられる.
  そこで本発表ではこの問題を解決する一提案として,Gaussian Process Latent Variable Models (GPLVM)を従来手法に適用する事を検討する.
 
藤原 裕樹 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:Closed-form二次統計量ICAを用いたICAの学習区間判定
発表概要:実環境においてハンズフリーで音声認識を行なう際、周囲の雑音によって音声の認識率が下がるという問題がある。そのため、独立成分分析(ICA)を用いたブラインド音源分離(BSS)を導入することで、観測信号から目的音声のみを抽出し音声認識を行なう方法が提案されている。従来のICAを用いたBSSによるハンズフリー音声認識システムでは時々刻々と変化する環境に追従するために、自身の分離フィルタを逐次学習し続けることが必要だった。しかし、この動作はシステムに多大な計算負担をかけ、さらに利用話者の発話が無いような時間区間では分離フィルタの学習が不安定な挙動に陥る危険性もはらんでいる。そのため、利用話者が存在するかどうかをシステムが自動的に見極め、不要時には学習を行なわない機構が必要である。本発表では,比較的計算量の少ないclosed-form二次統計量ICAを用いて簡易的な分離を行い、尖度に基づく音声・非音声判定によって話者が存在するかどうかを判断する手法を提案する。さらに本手法の有効性を示すため実験を行なったのでその結果についても報告する。