ゼミナール発表

日時: 11月9日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:中村(嘉)
市來 亮人 コンピューティング・アーキテクチャ 中島 康彦
発表題目:アウトオブオーダ実行を利用したVLIWプロセッサの高性能化に関する研究
発表概要:
命令スケジューリングをコンパイラで静的に行わせることで, 低消費電力と高性能を実現することができるVLIWプロセッサが注目されている.
VLIWプロセッサの性能向上手法の1つとして,演算器の数を増やし並列性を向上させることが考えられる.
しかし演算器の数を変更することは,プログラム互換性が失われる重大な問題を引き起こす.
そのため既存のソフトウェア資産を利用するため,アーキテクチャを変更しない性能向上手法が求められている.
そこで本研究では,アウトオブオーダ実行の導入による高性能化の可能性を検証する.
 
岩田 大志 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:Fault-Diagnosis-Based Technique for Establishing RTL and Gate-Level Correspondences
発表概要:多大な時間を要する論理合成を行った後に,設計バグが見つかった場合などには設計変更を行う必要がある. そこでその機能を実現するRTL(Register Transfer Level)回路をのみを設計し,先に作ったGL(Gate Leve)回路の部分回路と交換することを考える. このとき,RTL信号線に対応するGL信号線の抽出が必要になる.
本論文ではRTL信号線に対応するGL信号線の抽出に信号線の機能等価性を用いる. この機能等価な信号線を抽出する手法として故障診断技術を利用する. 実験結果では,多くのRTL信号線に対応するGL信号線を検出可能であることを示す.
 
植本 雄一 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:制御パスでの共有によっておこるフォールスループ除去に関する研究
発表概要:順序回路のクロック周波数は組み合わせ回路部分の最大遅延によってきめられており、順序回路の高速化に伴い最大遅延をより正確に評価することが重要になっている。活性化しない組み合わせパスであるフォールスパスの始点と終点が一致したものがフォールスループである。回路中にこのフォールスループが存在すると、タイミング解析時にクロック周波数が評価できなくなる。本論文は制御論理の共有によっておこるフォールスループを検出し、除去するように合成することを目的としている。さらに提案アルゴリズムを実行した結果、合成される回路のハードウェアオーバーヘッドを検証する。
 

会場: L2

司会:浅原
青木 佑紀 生命システム学 作村 諭一
発表題目:高次元階層型ボルツマンマシンの学習
発表概要:Hinton(2006)で紹介された手法では、数百万のパラメータをもつボル ツマンマシンを学習させ、PCA等よりも良い結果を得ることができたと報告して いる。これは高次元パラメータをもつ非線形関数近似器が高い能力をもつことを 実証する一方、従来の学習方法ではその性能を発揮させるには不十分で学習方法 に何らかの工夫が必要であることを示している。本研究では、ボルツマンマシン の学習をProduct of Expertsの学習方法、階層型の初期値学習の導入などによっ て学習が改善できるかどうかを調べる。さらに、その手法を実問題に適用し、そ の性能を確かめる。本発表では本研究の元になる論文の紹介を行う。
 
浅野 慧 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:複数台単眼カメラによる広範囲な顔・視線計測システム
発表概要:顔の向きや視線を計測するシステムは、1980年代より認知心理学的実験やヒューマンインターフェース分野での応用を目差して研究されており、本研究室においてもコンピュータビジョンを用いた単眼カメラの3次元顔・視線計測システムが開発されてきた。しかしながら、これらのシステムは計測範囲が机やモニタの前に制限されており、ユーザの大きな動きへの対応や、広い空間での運用が不可能であった。そこで本研究では、複数のカメラを連携させ、顔・視線計測システムの計測可能範囲を拡張したシステムの開発を目的とする。本発表では従来の顔・視線計測の研究を紹介し、提案システムを実現する手法について述べる。
 
小野 泰寛 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:足裏にMRゲルを有する二足歩行ロボットに関する研究
発表概要:近年,ヒューマノイドに関する様々な研究が行われている.それらのロボットが実空間で
作業を行うためには,人間の生活空間を歩行できなければならない.そのため,不整地歩行に関する
研究が盛んに行われている.従来研究としては,足裏からのZMP情報を元に不整地を歩行する方法が
ある.この方法では,路面状況に応じて脚関節の制御を行うため,歩行パターン生成の計算量が平地
歩行に比べて増大してしまう.一方,計算量を減らす方法として,ロボットの足裏に路面の凹凸に倣
う機構を装着する方法がある.この方法では,足裏を常に平行に保つことができ,路面の状況に関わ
らず平地歩行と同等の計算量で歩行が可能である.しかし,複数のセンサや機械的な構造のため,複
雑なものとなってしまう.そこで本研究では,単純な機構で路面状況に倣うことのできる方法として,
磁性流体をゲル化したMRゲルをロボットの足裏に装着する方法を提案する.本発表では,MRゲルを用
いた足裏機構のコンセプトの紹介を行い,現在の進捗状況について報告する.
 
荒井 優輝 デジタルヒューマン学 金出 武雄
発表題目:反射的な要素を取り入れた移動ロボットの実現
発表概要: 近年の少子高齢化やロボットブームなどからサービスロボットの実用化が期待されている. 掃除,警備,接客等のサービスロボットに必要とされる仕事には移動能力が必 要である. 移動ロボットのための経路計画に関係する様々な研究がされている. これらの研究では,経路計画によって生成される経路自体の安全性は保証され るもののロボットの状態に起因する経路追従時における安全性はあまり議論が されていない. そこで本発表では,移動ロボットのシステムの概要と安全性に関するいくつか の研究について紹介し,移動ロボットの安全性の今後取り組むべき課題につい て述べる.
 
稲積 慶人 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:3次元ビデオ作成時におけるカメラワーク決定
発表概要:近年,有形・無形の文化財をデジタルアーカイブするために,"3次元ビデオ"の研究が行われている. 3次元ビデオとはCGとは異なり,実空間を3次元的にそのまま記録した究極の立体ビデオ映像のことであり, 多方向から対象を撮影する事で得られる. 従来の研究において,より高精細な3次元ビデオを生成するためは膨大なカメラが必要であった.
この問題を解決するため,本研究では従来の視点固定カメラを用いず,能動的に対象方向にカメラを制御し,ズームアップ撮影を行うことで, カメラ数を増やすことなく高精細な3次元ビデオを生成する事を考える. しかしながら,ズームアップ撮影を行うことにより,1つのカメラでは全身撮影を行う事が困難となり, 全身の形状を高精細に復元するためには "適切なカメラワーク" つまり, "どのカメラがどちらの方向を向いていれば良いか" という問題の解決を行う必要がある.
そこで,本発表では首振りカメラを用いて高精細な3次元ビデオを生成するためのカメラワーク決定について述べる.
 

会場: L3

司会:小坂
東 良行 論理生命学 石井 信
発表題目: 強化学習による安定でエネルギー効率の良い二足歩行の実現
発表概要: 近年,受動歩行はエネルギー効率の良い歩行ロボットの開発や人間の 歩行を理解する鍵として注目されている.受動歩行は初期条件や外乱に対して敏 感なため,これを克服するために補助的な制御を施す準受動歩行の研究が行われ ている.また,従来のZMPを規範とする歩行では外乱に対しある程度の頑健性を 持つ.しかし,あらかじめ設計した支持多角形内部を通る目標ZMPを参照軌道と したフィードバック制御を行うため,多くのエネルギーを必要とした.そこで,エネルギー効率の良い 準受動歩行制御器と安定した歩行が可能なZMPを規範とする歩行制御器とを,強化学 習法を用いて適切な切り替え則を適応的に獲得することで,外乱に強くエ ネルギー効率にも優れた歩行を実現する手法を研究する.
 
糸数 篤 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:遅延フィードバック制御とむだ時間システムの安定性についての考察
発表概要: 遅延フィードバック制御は、 K. Pyragas(1992)によって提案されたカオスシステムの安定化制御の一つである。 その利点は、現在の状態量と一周期過去の状態量との差にゲインをかけて入力として与えることで、 未知周期軌道に安定化できることである。 しかし、遅延フィードバック制御系は、むだ時間の区間に依存した安定性をもつ微分差分系であり、その設計は複雑な解析を伴うため簡単ではない。
一方、むだ時間システムの線形行列不等式(LMI)による安定条件が報告されている。 LMIによる安定判別はむだ時間を伴うシステムの解析に比べて、比較的容易に判別することができる。
本発表では、遅延フィードバック制御とむだ時間システムの安定性について考察し、 今後取り組む研究について述べる。
 
今井 暁 論理生命学 石井 信
発表題目: 機械学習を用いた生体信号からの運動プリミティブ抽出と合成
発表概要:人間が行っている見まねは相手の行動を認識し脳内である表現形態に
置き換えて,そこから動作の生成を行っている。このときの表現形態を運動プリ
ミティブと呼ぶ。運動プリミティブには多くの表現方法、抽出方法があり,その
中の一つに運動プリミティブをContinuous Hidden Markov Model (CHMM)で
表現する手法が提案されている. 本研究では,CHMMへの入力信号として,関節角度
と筋電信号を与えた場合の運動プリミティブ抽出や動作の生成および合成を提案
する.これにより,力の情報も含んだ動作の生成や合成が可能となることが期待
される.本提案の有効性を検証するため,筋電位と関節角度の計測し,被験者から
運動プリミティブを抽出する実験を行った.
 
角谷 文章 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:モデル予測制御を用いた自動車の衝突回避
発表概要:自動車の普及に伴い, 交通事故の件数や負傷者数は増加傾向にある. この問題に対して, ドライバへの情報提供や運転行動の支援を通じて事故を未然に防ごうとする運転支援システムが研究されている. 運転支援システムの構成は, 情報収集, 状況判断, インターフェースの3つに大きく分けられる. この構成では, 収集された情報から状況を判断し, 判断に応じた支援の内容を計算する理論が重要になる. 支援の内容を計算する理論にモデル予測制御を用いた手法が提案されている.
本発表では, 運転支援システムの応用例として, モデル予測制御を用いた自動車の衝突回避に関する論文を紹介する.