ゼミナール発表

日時: 10月13日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:小林 助手
青山 実樹 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎
発表題目:細胞骨格系シグナル伝達タンパク質の相互作用ドメインの構造学的研究
発表概要:真核細胞の細胞膜近傍には、細胞外シグナルを受ける受容体とともに、細胞接着や細胞骨格系を制御するさまざまなタンパク質の関与により、複雑な相互作用系を形成している。本研究では、細胞接着と細胞骨格を連結するERMタンパク質のFERMドメインや、細胞骨格を制御するタンパク質キナーゼ Rho kinaseの PH 様 ドメインにおける分子認識メカニズムを詳細に解明することを目的としている。FERMドメインにおいて今回、細胞接着分子CD44の細胞外プロテアーゼMT1-MMPとの複合体によるX線結晶構造解析に成功し、これまでにはない新しい結合モチーフを持つ可能性を見出した。また、PHドメインに関しては発現系の確立、結晶化、さらには二量体形成に関する研究を行い、興味深い結果を得ることができた。その結果を合わせて報告する。
 
永井 亜季 M2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎
発表題目:早老症に関わるタンパク質の機能・構造研究
発表概要:早老症ウェルナー症候群は、健常者に比べ早い時期から老化症状が現れ、 平均寿命46歳と短命な遺伝病である。発症者の多くは日本人であり、原因はDNAヘリ カーゼの一種、WRNタンパク質の変異であることがわかっている。WRNはDNA修復酵素の ひとつ、FEN1のフラップDNA切断活性を上昇させることが報告されている。これはゲノ ムの安定性維持と老化の関係を考えるうえで興味深い。本研究では、WRNのある機能未 知ドメインに注目し、FEN1活性化メカニズムを解明することを目的に結合実験等を行 い、活性上昇に関する興味ある結果を得た。
 
和田 千穂 M2 湊 小太郎 小笠原 直毅 杉浦 忠男
発表題目:DNAチップ産業の技術的進歩と市場拡大に関する調査
発表概要:DNAチップは、多種の分子間の反応を同時並行的に行うことが可能で、ハイスループットな検出・解析が実現できることが特徴である。このようなDNAチップ産業の動向に関して、過去に遡って調査することで成長法則の類を得られないかと考えた。 検査時のスループットに関連する技術シーズはDNAチップ産業全体の成長を決定する重要な要素である。一方、半導体産業の成長に関して、ムーアの法則(半導体技術の進歩に関する経験則。「半導体チップの集積度は18カ月で2倍になる」)がよく知られており、今も成立しているとされている。半導体産業ではシーズの発展はニーズに変化をもたらし、新たな分野の市場を生み出してきた。拡大した市場によりニーズが増し、それに呼応する形でシーズも発展する。 DNAチップ産業も、このようにニーズとシーズが互いに影響を及ぼし合い、成長する産業であると考えられる。これよりDNAチップにおいてもムーアの法則と同様の法則が見出せると考え、ニーズとシーズそれぞれの成長について調査・検証を行った。今回その結果を報告する。
 
田中 健一 (1回目) M1 金谷 重彦
発表題目:構造情報に基づいたメタボライトの分類
発表概要:近年、製薬業界において人工的な化学合成による創薬から、天然物を元にした創薬へと回帰する動きがある。この際、化合物の母核をキーとした部分構造検索機能と、天然物と生物種名の関連を収めたデータベースが必要になるのだが、両方を持っているデータベースは現段階では存在しない。本研究では、比較ゲノム学講座によって構築が進められている「生物種−代謝物データベースKNApSAcK」に対応した部分構造検索機能を開発し、構造情報に基づいた代謝化合物のメタボライトの分類を行なうことを目的とする。