ゼミナール発表

日時: 10月6日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:中村(文) 助手
小野寺 博和 D2 湊 小太郎 飯田 秀博 西谷 紘一 杉浦 忠男
発表題目:白血球除去フィルターの流れ解析
発表概要:白血球除去治療は、体外循環により末梢血中の白血球を除去する治療で、潰瘍性大腸炎や関節リウマチに対して、高い治療効果が得られている。一方、このような医療用具に於いては、カラム内部の血液の流れについて、これまで評価することが困難であった。本研究では、X 線CT を用い、血液の流れを撮像し、フィルタードバックプロジェクション法で再構成することでカラム内の血液の流れを測定する技術について検討した。更に、充填されているフィルターの通気抵抗と血液粘度をパラメータにモデルを構築し、流れ解析シミュレーションを実施した。結果、本法により、再構成された画像により、3 次元で白血球除去フィルターの流れの可視化が可能となった。更に、得られた3 次元画像より、造影剤の濃度が最大となる時間を求めることで、カラム内での速度分布を求めることに成功した。白血球除去フィルター内の本法で得られた流速分布はシミュレーションとほぼ同等の結果であった。
 
松原 佳亮 M2 湊 小太郎 飯田 秀博 西谷 紘一 杉浦 忠男
発表題目:PETを用いた[18F]F-dopaの薬物動態解析 発表概要:ポジトロン標識薬剤[18F]F-dopaを用いてPET(Positron Emission Tomography)による撮像を行い,得られたデータに対して動態モデルを仮定して解析することで,線条体におけるドーパミンの代謝及び取り込みに関して機能の評価を行う試みが数多く行われている.しかし,[18F]F-dopaに関する解析には薬剤の比放射能の低さ,複雑な代謝物の存在といった問題がある.本研究ではこの2つの問題について高い比放射能をもつ薬剤を合成可能な合成装置の開発,及び,シミュレーション環境を用いた既存モデルにおける系統誤差の評価という2つのアプローチから取り組んでいる.本発表ではそれらの進捗について発表する.
 
栗山 進 D2 松本 健一 西谷 紘一 飯田 元 門田 暁人
発表題目:Tree-Mapを用いた共著関係の視覚化による対面コミュニケーション支援
発表概要: これまで,研究者個々人の共著関係を視覚化し,会議や集会における研究者らのインフォーマルな対面コミュニケーションを支援するシステムSCACS (a Social Context-Aware Communication System) を開発してきた.本システムは,対面コミュニケーションにおいてユーザが共著関係を即座に理解できるように,人間関係の表現に従来用いられてきたグラフ表現ではなくTree-Map表現を採用している.Tree-Map表現による共著関係の理解容易性を検証することを目的として,Tree-Map表現と無向グラフ表現の両者について,共著関係の読み取り速度を比較する実験を行った.その結果,Tree-Map表現における平均タスク遂行時間は無向グラフ表現のおよそ半分の時間であることがわかった.また,共著関係を対面コミュニケーション時にTree-Map形式で提示することの心理的効用を調べることを目的とした予備実験を行った.予備実験では,SCACSが視覚化した共著関係を現役の研究者15名に利用してもらい,自由にコミュニケーションしてもらった.その結果,「話題の種になる」「いつもより相手に親近感が湧いた」など,対面コミュニケーションにおいて効用のあることを確認した.
 

会場: L2

司会:神原 助手
鈴木 夢見子 M2 小笠原 司 木戸出 正継 金出 武雄 加賀美 聡
発表題目:車輪移動ロボットの高速化のための滑らかな経路生成の研究 発表概要:人間の生活する環境の中でロボットが人と共存するためにはロボットが人を認識しスムーズに移動することが必要である. 現在、ロボットの経路計画は主にグリッドベースで行われており、生成される経路は直線的になり, 実機で使用する際には平滑化などの補間処理が必要となっている. このようなヒューリスティック手法を導入すると、得られた軌道が障害物に 干渉したり、元の軌道に比べて不必要に長くなったり、連続ではあっても 曲率が大きくなるなどの弊害が発生する. 本研究では車輪型移動ロボット適した滑らかな経路を得るために 車輪の挙動を模したステアリングセットを用いた経路探索手法を提案する. 本発表では環境が変化しない静的な地図でのシミュレーション結果から,本手法の有効性について示す.
 
殿谷 徳和 M2 石井 信 木戸出 正継 柴田 智広
発表題目: 人の顔向き推定に適した基底画像学習法の研究
発表概要:画像から人の顔向き推定を行うことは応用上重要である.本研究は2 次元の画像ベースのアプローチに関する.一般的に,画像データセットから基底 を教師無しで学習する方法として, 主成分分析(PCA)が比較的有効であることが 知られているが, 顔向き推定に適した基底が得られるとは限らない.本研究では, 画像データセットを予め顔向きに関する部分データに分割した上で複数のPCAを 行った場合と,全データセットに対して1つのPCAを行った場合について,得られる 基底画像と,それらを用いた顔向き推定性能の比較実験,および今後の展開につい て述べる.
 
鹿内 学 D2 石井 信 木戸出 正継 柴田 智広
発表題目:非周期的視標時系列に対するヒトの予測
発表概要:ヒトを含めた生物が予測的に行動していることは数多く指摘されており,脳科学において予測機構の解明は重要な課題である.これまで行われてきた予測研究は,上肢運動での捕球課題を用いたタイミング予測の研究や視覚眼球運動系での等速度もしくは正弦波視標運動を用いた研究など,パターン記憶で予測可能な課題であった.  本研究では,ヒトの視覚運動系を用い,行動実験を行った.ヒトが予測した非周期的時系列はARモデルで作成し,計算論的に予測性能を評価できるように設計した.また,最適予測するには視標時系列の生成モデルを学習する必要がある実験課題である.行動実験の結果,ヒトが非周期的時系列に対しても準最適な予測性能をもっており,その予測モデルが視標時系列の生成モデルに適応的であることが示唆された.
 

会場: L3

司会:村田 助手
山内 寛己 D2 松本 健一 関 浩之 楫 勇一 門田 暁人
発表題目:系統的なプログラム難読化適用のためのゴール指向分析
発表概要:近年,内部に秘密データを持つソフトウェアが増えており,リバースエンニジニアリングによる秘密データの漏えいが深刻になってきている.これらの攻撃者のリバースエンジニアリングを妨げる技術の一つとしてプログラムの難読化があり,様々な手法が提案されている.しかし,既存の難読化をどこにどのように適用すればいいのか,また,どれだけ攻撃者の攻撃から保護できるか不明瞭であるという問題がある.そこで本発表は,ゴール指向分析を用いることで,系統的にプログラムの難読化を適用できるフレームワークを提案する.具体的には,1.現実的な攻撃者の能力モデルを作成し,2.攻撃者の攻撃達成のゴールを設定する.3.そのゴールをさらに具体的なゴール(サブゴール)に分解する.それを分解ができなくなるまで行う.5.分解できなくなった末端のサブゴール毎に適切な難読化を選択し,これらをプログラムに適用する.
 
杉山 憲司 D2 関 浩之 伊藤 実 楫 勇一
発表題目:完備型Array-LDPC符号の最小重みの評価手法の開発
発表概要:近年,繰り返し復号により,シャノン限界に迫る性能を発揮する低 密度パリティ検査符号(LDPC符号)の研究が盛んである.LDPC符号 は,疎な検査行列により定義される線形符号であるが,従来多くの LDPC符号の検査行列は計算機によりランダムに構成されている.一 方,最近,Array-LDPC符号(ALDPC符号)やQuasi-cyclic LDPC符号 など,代数的に構成された検査行列を有するLDPC符号の研究も少な くない.発表者は,ある条件を課したALDPC符号(完備型ALDPC符 号)の最小重み符号を求めるアルゴリズムを提案した.符号の重み とは符号の系列の中の非ゼロ成分の和のことであり,線形符号の場 合は,最小重みは2つの符号間の最小距離と等しくなる.符号の最 小距離は誤り訂正符号の性能を評価するための重要なパラメータで ある.提案手法により,比較的大きな規模の符号の最小重みを明ら かにすることが可能となった.
 
毛利 寿志 D2 関 浩之 伊藤 実 楫 勇一
発表題目: アドホックネットワークにおけるweb-of-trust型PKIの形式化
発表概要: アドホックネットワークでは,通常のネットワークと異なり,一般的なPKIシステムのように信頼できる第三者機関の存在を仮定することができない.そこで,各ユーザが自律的にデジタル証明書を発行できるようなweb-of-trust型PKIシステムの導入に関する研究が行われている.しかし,アドホックネットワークのような分散型のネットワークにおいて,デジタル証明書の認証に必要な証明書連鎖をどう発見するかという,新たな問題がおこっている.本発表では,まずアドホックネットワークにおけるweb-of-trust型PKIシステムを,重み付き有向グラフで形式化する.さらに,アドホックネットワークにおける証明書連鎖発見問題を有向グラフ上のノード間のパスを発見する問題と見なし,この問題を経路情報に関する分散アルゴリズムを用いて効率よく発見する方式を提案する.