ゼミナール発表

日時: 9月28日(木)1限 (9:20-10:50)


会場: L1

司会:浮田 助手
中里 祐介 D2 横矢 直和 木戸出 正継 山澤 一誠
発表題目: 不可視マーカを用いたウェアラブルコンピュータユーザの位置・姿勢推定システム
発表概要: ウェアラブルコンピュータを用いて拡張現実感(Augmented Reality:AR)を実現するためには ユーザの位置・姿勢を正確に計測する必要があり,様々な計測手法が提案されている. その中の一つとして位置が既知である画像マーカを実環境中に配置し, ユーザが装着したカメラで撮影・認識することでユーザの位置・姿勢を推定する手法が提案されている. この手法はインフラに電源が不要で安価に実現することが可能であるが, 景観を損ねてしまうため,実際の環境にマーカを多数設置することが困難である. そこで本研究では,景観を損ねることなく実環境に多数の画像マーカを配置し, 屋内の広範囲で正確なユーザの位置・姿勢を計測するシステムを構築することを目標とする. 提案システムでは半透明の再帰性反射材からなる不可視マーカを ユーザが装着した赤外線カメラから赤外光を照射して撮影し,ユーザの位置・姿勢を推定する. またマーカの設置をより簡単に行うために,画像マーカ環境構築を支援するツールを提案する. ツールでは高解像度なデジタルカメラで撮影した画像からマーカの三次元位置を推定し, AR技術を利用してマーカの設置作業の補助を行う. 本発表では,システムの概要及び今後の研究方針について述べる.
 
小谷 享広 M2 横矢 直和 木戸出 正継 山澤 一誠
発表題目: 注釈対象物体の形状を考慮したARオーサリングシステム
発表概要: 現実シーンに情報を重畳表示可能なモバイル拡張現実感(AR)において,ユーザが直感的に情報を認識できるように情報を配置する必要がある.従来,注釈情報の多くは存在位置を現実環境中の1点として設定しているため,注釈対象の形状が考慮されておらず,効率的な注釈の配置や,隠蔽関係の表現を行うことは困難であった.そこで本研究では,注釈の対象物体の形状の設定を行うオーサリングシステムを提案する.これにより,ユーザの視界画像において,注釈対象がどこに存在しているかがわかるため,物体形状を考慮した注釈の配置が可能となり,注釈情報と対象物体を直感的に対応付けできる.
提案システムはオーサリングの効率を向上させるため2つのフェーズにより構成される.第1フェーズでは環境の大局的な俯瞰を行いながら大まかな物体の初期形状の設定を行う.第2フェーズでは現実環境中においてモバイルARシステムを用い,複数地点から物体の輪郭形状を指示することで,視体積交差法の原理に基づき,物体形状の設定を行う.本発表では提案システムを実装したプロトタイプの説明を行い,本学内の建造物に対して領域設定実験を行った結果を示す.
 
薄 充孝 M2 横矢 直和 木戸出 正継 山澤 一誠
発表題目:スケール不変特徴量を用いたランドマークデータベースに基づく静止画像からのカメラ位置・姿勢推定
発表概要:本発表では三次元復元手法によって自動構築されるランドマークデータベースを用いた静止画像からのカメラ位置・姿勢推定手法において,スケール不変特徴量を用いることで推定のロバスト性を向上させる手法について述べる. 従来手法では,世界座標における三次元位置と見え方が既知の複数のランドマークを入力画像中から探索することでカメラの位置・姿勢をする.しかし,推定手法が画像のスケール変化に対応していないため,ランドマークデータベース構築時のカメラパスから大きく離れた地点では推定が失敗するという問題がある.この問題を解決するために提案手法では,特徴点の周辺局所構造に依存する特徴点スケールをHarris-Laplacianにより算出し,そのスケールを利用した特徴点の対応付けとカメラ位置候補の絞込みを行っている.
 

会場: L2

司会:北野 助手
及川 雅隆 D2 石井 信 郷 信広 箱嶋 敏雄 川端 猛
発表題目: 分子動力学シミュレーションにもとづく自由エネルギー計算
発表概要: 自由エネルギーは、生体分子がおりなす様々な現象を理解するうえで重要な熱力学量である。本発表では、分子動力学シミュレーションにもとづく自由エネルギー計算を適用した、以下の2つの研究について発表する。
[1]折りたたみの過程でタンパク質内部に取り込まれる水分子がタンパク質の安定性に果たす寄与は、タンパク質の構造の安定性を理解するうえで重要である。しかし、その熱力学量を直接測定することができないため、依然として定量的な理解が欠けている。ヒト・リゾチームのI59Vの1残基置換体は、変異箇所に水1分子が取り込まれることが結晶構造解析で分かっている。また、野生型と変異型の折りたたみの自由エネルギーも測定されている。本研究では、I59Vの折りたたみの自由エネルギーを計算することにより、タンパク質内部の水1分子がタンパク質の安定性に果たす寄与を見積もった。水1分子が変異型タンパク質の内部に取り込まれないとする仮想的な状態を考えた場合、タンパク質が大きく不安定化すること、また、変異箇所に水1分子が取り込まれることによってタンパク質が安定化することが分かった。
[2]古典力学にもとづく分子動力学シミュレーションでは、静電相互作用を点電荷間のクーロン相互作用によって表している。低分子の水和自由エネルギーを計算した従来の研究では、溶媒との相互作用による分子内の電子の偏り(分極)を考慮しない点電荷のモデルが用いられてきた。極性の大きな分子に水和自由エネルギーの計算を適用した研究では、実験値とのずれが一様に大きい結果が得られている。この原因の1つとして、分極を考慮しない点電荷のモデルを挙げることができる。本研究では、この問題に対して、溶媒との相互作用を考慮する点電荷のモデルを新たに提案した。アミノ酸側鎖アナログ分子の水和自由エネルギーの計算に適用することで、提案する点電荷のモデルが水中での分子の電荷分布を表すのに有効であることが分かった。
 
本田 直樹 D2 石井 信 別所 康全 作村 諭一
発表題目:走化性細胞における「揺らぎに誘導される自発的シグナル生成」の役割

発表題目:走化性細胞における「揺らぎに誘導される自発的シグナル生成」の役割

発表概要:粘菌や好中球などの走化性を示す細胞は、誘因性分子の空間的なシグナルを受容体で受け、細胞内シグナル伝達により統合することで、濃度勾配を検知している。しかしながら、細胞が受け取る濃度勾配情報は、誘因性分子やその受容体の数が少ないために、非常に揺らいでいる。さらに、シグナル伝達を担う分子のコピー数も少ないため、細胞は揺らぎに支配された環境で情報処理している。この状況は、細胞にとって不利のように思われる。それにも関わらず、細胞は細胞全長に対して2%という微弱な濃度勾配を検知している。このような、「揺らぎに対して頑健に走化性を実現する分子機構」は未だ不明である。一方で、誘因性分子が一様に分布し、濃度勾配がない環境下においてでも、細胞は自発的に動き、ランダムな方向へ遊走する。これは、細胞内で細胞移動を引き起こすシグナルが自発的に生成されることによる。また、この自発的シグナル生成は、シグナル伝達における揺らぎによって誘導されると考えられている。ここで、揺らぎに対して頑健な走化性は「揺らぎに誘導される自発的シグナル生成」を利用することで実現されている可能性がある。したがって、本研究は「揺らぎに誘導される自発的シグナル生成の動作原理」と「走化性におけるその役割」の解明を目的としている。今回の発表では、自発的シグナル生成に関する計算機実験結果とその物理学的考察、そして今後の展望について議論したい。

 
榎本 真 M2 伊藤 実 植村 俊亮 安本 慶一
発表題目:情報複製配置による需要を考慮した効率的なMANET上での情報検索
発表概要:携帯端末で無線アドホックネットワークを構成し,携帯端末間で情報を共有する仕組みを考える.効率のよい検索を行うため,検索需要の多いところに複製を作成し,通信量を抑えたうえで,平均応答時間を短くするような仕組みを提案する.提案方式の需要情報集計法,複製作成箇所の決定法,複製作成法,検索方法について述べる.シミュレーションにおいては,これまでのところ検索応答において複数の通信プロトコル(フラディング,Location Based Multicast[LBM],Greedy Perimeter Stateless Routing[GPSR])の比較を行い,GPSRが効率のよい通信方式であることを確かめることができた.
 

会場: L3

司会:川口 助手
劉 永哲 D2 岡田 実 小山 正樹 関 浩之
発表題目:
地上デジタル放送のフェージング環境下での受信機の性能改善に関する研究

発表概要:
2003年12月に地上デジタル放送が始まっていて、また、今年4月には携帯向けの地上デジタル放送の1segサービスが開始された。しかし、地上デジタル放送の移動受信するためにはDoppler SpreadによるFast Fading問題、Multi-pathやSlow Fadingにより性能が劣化する。 そこで、従来の研究ではFast Fadingによる性能劣化に対してArray Antennaを用いたDoppler Spread compensatorが提案されている。しかし、アンテナ素子間の間隔が狭くて相互結合によりDoppler Spread Compensatorの性能が劣化してしまう。 本研究ではダミー素子を付けて相互結合量を減少しDoppler Spread Compensatorの性能を改善する。また、最大比合成DiversityによるMulti-path環境での受信機の性能向上、Reactance-Domain Modulation法によるSlow Fading対策を発表する。
 
白石 勇樹 M2 岡田 実 小山 正樹 関 浩之
発表題目:可変リアクタンス寄生素子による符号化直交周波数分割多重伝送系のバースト誤り削減効果 発表概要:地上デジタルテレビ放送では、マルチパスフェージング対策として畳み込み符号とリード・ソロモン符号による強力な誤り訂正符号化が行われている。しかし、携帯電話などの携帯端末で歩行中や立ち止まって受信する状況では、フェージングによる受信電界強度の時間変動が非常に緩やかになり、その結果、非常に長いバースト誤りが発生し、誤り訂正効果が大幅に低下することが知られている。バースト誤り対策としては、インタリーブがあるが、地上デジタルテレビ放送の規格では、インタリーブ長は最大400ms程度であるため、フェージング変動が数Hz以下の低速フェージング環境では効果が小さいという問題があった。そこで、受信アンテナ近傍に可変リアクタンス寄生素子を配置し、受信アンテナの指向性を変化させることで高速フェージングを発生させて、長い期間にわたるバースト誤りを削減する方法を提案する。提案可変リアクタンス法により、簡単なハードウェアで低速フェージングによるバースト誤りの削減効果を得ることを示す。
 
高山 晴次 M2 岡田 実 小山 正樹 関 浩之
発表題目:
ディジタル信号処理型無線変調器の計算機援用設計における所要ビット精度算出の自動化に関する研究

発表概要:
ディジタル信号処理型(DSP)型無線変調器への入力信号やフィルタの数値表現は、語長を長くすれば量子化による誤差は少なくて済むが、ハードウェアの規模と演算時間が増大する。つまり、量子化による誤差が許容範囲内になる量子化ビット精度(所要ビット精度)を効率的に求める事が重要になる。 小規模な演算ユニットについては、量子化が演算結果に与える影響(誤差)に関する解析が古くから行なわれている。一方、DSP型無線変復調器は構成が非常に複雑であるため、全体を通して誤差解析を行なう事は困難である。従来は、所要ビット精度算出のために、手法として計算機シミュレーションを用い、数値演算精度を変化させビット誤り率に対する影響を測定する方法を演算ブロック毎に適用する手段が用いられていた。しかし、シミュレーションには、所要ビット精度の導出に長い時間を要するという問題がある。 そこで、本研究では、DSP型無線変調器において演算に必要なビット精度を自動的に求める手法について検討する。具体的には、アナログ-ディジタル変換機で付加された量子化誤差は、様々なブロックで演算処理が行なわれるにより、その分散や分布が変化する。その変化を近似的に導出し、量子化誤差を考慮したビット誤り率の理論式を確立し、この理論式を用いて所要ビット精度を求める方法の有効性について検討する。