ゼミナール発表

日時: 9月27日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:和泉 助手
田口 直樹 M2 岡田 実 砂原 秀樹 門林 雄基
発表題目:ソーシャルネットワーク上での地図情報共有における信頼モデル構築に関する研究
発表概要:Web上で発信・共有する価値は高いが,プライバシーや秘匿性を守るべき情報の例として,地域の安心・安全を示す地図情報がある.地図情報に対して匿名性とアクセス制限を,さらに利用者に対して信頼性の概念を付加することで,SNS 上での地図情報発信・共有の際の適切な信頼管理モデルを提案する.これにより,情報への適切なアクセス制限や,情報発信者・閲覧者へのトレーサビリティを実現することができる.
 
田村 和哉 M2 岡田 実 砂原 秀樹 門林 雄基
発表題目:情報家電制御のプラットフォームの現状と未来
発表概要:常時接続化,ブロードバンド化により情報家電が注目されている.しかし,ネットワークにつながる家電の普及率は思わしくない.そこで,情報家電の動向を調べ,普及の課題と思われるホームネットワーク上での家電制御について関連研究を紹介する.特に,ホームネットワーク上での従来家電制御に関しての問題点をあげ,従来家電の制御にはなぜWebと既存システムの融合が必要であるかを考察した.
 
居細工 高人 M2 伊藤 実 砂原 秀樹 安本 慶一
発表題目: P2Pベースネットワークゲームにおける相互監視を利用した不正の防止法
発表概要: 多人数参加型ネットワークゲームでは、Client/Server (C/S) モデルを使った場合、性能の高いサーバが要求されるため、混雑時のサーバの負荷やサーバの維持コストが問題となる。 そのため、従来のC/S モデルではなく、Peer-to-Peer (P2P) モデルによってネットワークゲームを実現する方法が提案されている。 しかし、P2P モデルは、サーバを設置する必要が無いが、ユーザに処理を委ねるため、不正に対して脆弱であるという問題がある。 この問題を解決するため、P2P ベース多人数参加型ネットワークゲームにおける不正防止手法を提案する。 提案手法で対象とする不正はパケットの改竄である。不正の防止は、不正監視用のサーバを新たに設置することなく、複数の端末による相互監視によって行われる。不正の相互監視には、複数ノードでの同期や整合性が損なわれないようにする必要があり、多数決によってこれを実現する。多数決は、ゲーム空間を複数の領域に分割し、その領域ごとに複数の端末を割り当て、領域内の端末がお互いにイベントを送ることで実現する。提案手法を評価するため、不正発生から状態修正までの時間を測定する実験をPlanetLab上で行った。
 
新川 崇 M2 伊藤 実 砂原 秀樹 安本 慶一
発表題目:バスを利用した低車両密度地域における車車間通信の情報収集効率の改善
発表概要:本研究では,定期巡回を行うバスを利用することで,低車両密度地域において車車間通信の情報伝達効率が低下する問題を改善する手法を提案する.先行研究では,各車両は保持する情報を自車が走行しているエリアとその隣接エリアに伝播することで,情報の維持を行っていた.そのため,一時的に車両密度が低くなった場合,情報の伝播を仲介する車両が存在しなくなり,情報が失われる可能性が生じる.提案手法では,定期巡回車両であるバスを利用し上記の問題に対する解決を試みる.バスは,周辺車両から得た全エリアの情報を保持することで,各エリアに対する情報の消失を防ぐ.また,バス同士が通信を行うことで保持する情報のエリア範囲を広げ,車両が要求する情報の提供を目指す.提案システムを交通流シミュレータNETSTREAMへ実装し,性能評価を行った結果を示す.
 

会場: L2

司会:中尾 助手
大迫 政徳 M2 石井 信 川人 光男 湊 小太郎 神谷 之康
発表題目:階層ベイズ推定法を用いた手指伸展運動時のMEG解析と脳電流源推定法の比較
発表概要:ヒト非侵襲脳活動計測では、神経細胞の活動を計測するために、空間分解能と時間分解能の精度がしばしば重要となる。 従来の非侵襲計測装置(MEGとfMRIをここでは挙げる)では、MEGは時間分解能は優れいているが空間分解能は劣り、fMRIは空間分解能は優れているが時間分解能は劣る。 これらの計測装置のデメリットを改善するため、それぞれの計測装置のメリットを利用した階層ベイズ推定に基づく脳電流源推定法が提案されており、シミュレーションでは非常に優れたパフォーマンスを挙げている。しかし、実際の脳活動解析ではまだあまり検証されていない。 そこで本研究では、この手法を用いてヒト脳活動解析を行い、そのパフォーマンスの比較検証を行った。 検証実験として、比較的生理学的知見の多い手指伸展運動を行った。 運動領野から感覚領野への時間推移が非常に早く、運動領野と感覚領野が空間的に非常に密接している。このため、時間的、空間的検証実験として運動タスクは優れている。 本発表では、手指伸展運動時の脳活動データの推定結果を示し、他推定法とのパフォーマンス比較の例を示す。
 
澁谷 大輔 M2 石井 信 川人 光男 湊 小太郎 神谷 之康
発表題目: MEGによる指運動パターンのデコーディング
発表概要:近年,brain-machine interface(BMI)の研究が盛んである.現在行われているBMI研究の多くは,手足の左右の運動や計算を行うといった脳内において比較的離れた活動領域をもつタスクを行い,そのタスクを行った際のデータとコンピュータ上でのカーソルの上下左右の動きに対応させるというものが多い.そこで本研究ではじゃんけんのような脳内でもほぼ同一の部位が活動するタスクについてのデコーディングを行うことにより,より高度なBMIシステムの可能性を探る.本発表ではシングルトライアルでのオフライン解析を行った結果を発表する.
 
藤原 祐介 D2 石井 信 川人 光男 湊 小太郎 神谷 之康 柴田 智広
発表題目:主観的知覚内容に関わる時空間脳活動パターンの解明に向けて
発表概要:我々は外界の物体を知覚するとき,その物体がどのような形や色をしているかということだけを判断するにとどまらず,その物体に特有な何かしらの印象をもつ.本発表では,現在の神経科学における意識研究の主な流れを概観しつつ,fMRIと質問紙調査法を組み合わせることによって,印象に関わる脳活動を調べる方法を提案する.さらにMEG計測も行うことにより,視覚情報処理と印象の時間的変化を捉える方法を提案する.
 

会場: L3

司会:浅原 助手
大谷 大和 M2 鹿野 清宏 松本 裕治 猿渡 洋
発表題目:固有声に基づく声質変換法と話者正規化学習法による性能の改善
発表概要:従来の声質変換法(Voice conversion:VC)では,変換モデルの学習において元話者および目標話者の同一発話内容のパラレルデータが必要であった.そのためユーザに対する負担が大きく,許容し難いものであった.我々は声質変換法の新しい枠組みとして,固有声に基づく声質変換法(Eigenvoice conversion:EVC)を提案した.この方法では,適応元モデルに対してごく少量の発話データによる教師なし学習を行うことで変換モデルを構築することができる.そのため,ユーザに対して負担の少ない手法となっている.この手法では変換精度が適応元モデルの性能に依存するため,複数話者の情報を含んでいるEVCの適応元モデルでは変換性能の低下が生じてしてしまうと考えられる.そこで,適応元モデルの性能の改善のために話者正規化学習法(Speaker adaptive training:SAT)を適用した.また,客観実験および主観実験によりSATの有効性を評価した.
 
早川 直樹 M2 鹿野 清宏 松本 裕治 猿渡 洋
発表題目:音声情報案内システムの応答文選択におけるスコアリング手法の改善
発表概要:近年,大語彙音声認識の高精度化に伴い実環境下での音声インタフェースの応用が注目されている.我々が運用している用例ベースの音声情報案内システム「たけまるくん」は,ユーザ発話と質問用例との形態素単位のパターンマッチング処理に対応する応答文選択を行い良好に動作している.本研究では,パターンマッチングのスコアリング手法を改善し,実験的評価を行った結果を示す.また,「たけまるくん」の応答に対する正解,誤り,棄却(reject)別にスコアの分布を調査し,設定した閾値未満のスコアの入力に対して一律に棄却(reject)を行う戦略をとることによりシステム応答能力がどう影響を受けるか調査した.
 
加藤 有己 D2 関 浩之 松本 裕治 楫 勇一
発表題目: RNA2次構造記述向き形式文法とその構造予測への応用
発表概要: 近年、核酸やタンパク質などの生物学的に重要な役割を果たす鎖上の高分子の構造予測が注目を浴びており、 本研究では特にRNA(リボ核酸)の構造に焦点を当てる。 RNAの2次構造は、主に塩基のAとU、GとCが選択的に水素結合を形成することにより構成され、 それらの塩基対は互いに入れ子になって現れることが多い。 そのため、RNAの2次構造を文脈自由文法(CFG)でモデル化し、2次構造予測を文法の構文解析に置き換える試みが行われてきた。 一方で、CFGでは記述できない、シュードノットと呼ばれるいくつかの塩基対が交差する部分構造が存在するため、 シュードノットをモデル化するための形式文法がいくつか提案されたが、これらの文法間の生成能力の比較は行われていなかった。
本発表ではまず、形式言語理論の観点から、上記文法間の生成能力の比較結果について説明する。 ここで、CFGの自然な拡張であり、シュードノットを表現できる多重文脈自由文法(MCFG)に着目し、 シュードノット記述向き文法クラスをMCFGの部分クラスとして同定して、言語クラスの包含関係について明らかにする。 次に、MCFGの部分クラスを確率MCFG(SMCFG)と呼ばれる確率モデルに拡張して、確率最大の導出木を求めるアルゴリズム及び 確率パラメータ推定アルゴリズムを与える。 また、上記構文解析アルゴリズムを用いて、シュードノットを含むことが知られているいくつかのウイルス性RNAに対して 2次構造予測を行った結果を示す。 さらに、ゲノム配列中でタンパク質に翻訳されないncRNAの遺伝子発見に対する、SMCFGの構文解析アルゴリズムの応用についても簡単に触れる。