ゼミナール発表

日時: 12月5日(火)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:安室 助手
平尾敏廣 システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:車載ヒューマンマシンインタフェースの評価プロセスの構築
発表概要:急速に広まった情報化社会の流れを受け、最近の自動車にはカーナビやドライビングアシストといった先進情報機器が当たり前のように搭載されるようになった。これらによりドライバーの利便性は増したが、従来の空調やオーディオ機器に加え増加するインタフェースを操作することは、本来の目的である“運転行動”へ悪影響を与えるという懸念を起こしている。このため自動車のインタフェースは単に利便性を追求しただけでなく、安全面に対する考慮も重要であると考えられる。本研究では、自動車に搭載される多機能スイッチにおいて、利便性と安全面の両方の観点から行う評価手順の構築を目的とする。
 
橋川拓也 システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:ドライバの交差点通過行動を改善する支援システムの基礎研究
発表概要:近年,自動車保有台数の増加に伴い自動車の事故件数が増加している.最 近では衝突安全ボディやエアバッグといった安全装置の発達により死亡者数は減少し ているが,事故そのものを起こさないようにする予防安全の必要性が叫ばれている. 本研究では交差点でのドライバの運転行動に注目した.停止線で停止することは教習 所などで習っているが,実際ほとんどのドライバは停止していない.そこで支援シス テムが必要であると考える.交差点進入前にドライバーの運転行動から停止の有無や 最低速度が予測可能になると支援システムを構築しやすくなる.本発表はレーザ距離 計を用いた定点観測実験の結果を示し,最低速度と停止線から20m〜50mでの速 度の相関関係を探る.
 
廣田彰吾 システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:車載Human-Machine Interfaceの安全運転への影響を評価する手法の提案
発表概要:近年,自動車は技術の進歩に伴い,カーナビゲーションなどの様々な車載機器が搭載されている.それにより,ドライバーは運転タスクと同時にスイッチ操作などの複数のタスクを行う必要がある.これらの追加されたタスクの安全運転への影響は,タスクインターフェースで決まる.そこで本研究では,Head-up Displayとステアリングスイッチを組み合わせた新しいHuman-Machine Interface(HMI)の安全運転への影響を評価する.本発表では,車載HMIの評価に関する論文"THE EFFECTS OF HEAD-UP DISPLAY CLUTTER AND IN-VEHICLE DISPLAY SEPARATION ON CONCURRENT DRIVING PERFORMANCE"を紹介し,最後に今後の予定を述べる.
 
藤敦 渉 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:統計的スペクトル変換法に基づく電話音声の帯域拡張
発表概要:近年、あらゆる状況で携帯電話が使用されている。しかし、携帯電話音声の問題は、3.4kHzまでの狭帯域音声しか利用していないため低品質である。この問題の解決策として、広帯域音声への帯域拡張が考えられる。そこで本研究では、統計的スペクトル変換法に基づく電話音声の帯域拡張を行う。本発表では帯域拡張音声の有効性を検証するとともに、今後の研究方針についても述べる。
 
牧本 慎平 言語科学客員講座 柏岡 秀紀
発表題目:実対話内における発話の主格同定
発表概要:音声処理技術の発展により人の発話をドキュメントとして保持できるようになりつつあり,質問応答や情報検索などの対象として用いることの需要が高まることが予想される.実対話における表現は書き言葉などのそれとは大きく異っており,既存の技術が適応できない場合が多い.
本研究では,実対話の表現を計算機処理に使用できる表現へ変換することを最終的目標に,まず発話の構造の解析,なかでも発話内容の主格の同定を目指す. 今回,発表では話し言葉の研究とリソースについての先行事例を紹介し,対話表現の構造について論じ,今後の計画について述べる.
 
増子康弘 システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:ヒューマンエラーとドライバーの内的要因の関係
発表概要:出会い頭事故は車両相互の事故の中でも特に死亡事故件数の多いものであるが、本来このような事故は、一時停止等の安全確認を正しく行っていれば回避できるものである。現在ドライバーの安全運転に関しては交通の教則等による指導が行われているが、運転行動それ自体に注視し指導を行う方法が、大きな効果をあげているとは言い難い。そこで本研究では、より効果的な安全運転教育を考案するために、危険な運転行動とドライバーの内的要因の関係を調べる。本発表では研究背景及び関連研究についての説明を行い、最後に進捗状況と今後の課題について述べる。
 

会場: L2

司会:樫原 助手
高江 信次 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:Disconnected Operationにおける問題点の分析と解決手法について
発表概要:近年、多様なモバイルノードの登場と無線ネットワークの普及により、モバイルノードからインターネットへ接続するモバイルコンピューティングが一般的になっている。しかし、インターネット技術は固定端末による利用を前提として発展したため、モバイルコンピューティングではモビリティに特有の性質により様々な問題が生じる。そこで本研究では、まず最初にモバイルコンピューティングにおける問題点について調査を行った。そして、その中でも特にDisconnected Operationに着目し、より詳細な問題点の分析と解決手法の調査、分類を行った。それらの結果から得られた知見を基に、今後の研究の方向性について述べる。
 
永松 良一 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:高付加にさらされるサーバへのオーバーコントロール手法の提案
発表概要:近年, ウェブアプリケーションへの要求が多様化, 複雑化している. このため, サーバへの負荷がかかりやすく, オーバーロードとなりサービスに支障をきたすやすい状況となっている. このサーバへのオーバーロードをマネージメントする機構としてStaged Event-Driven Architectureへオーバーロードコントローラを付加することでオーバーロードを制御し, クライアントへのレスポンスタイムを一定にする.
 
中村 隆志 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:OFDM信号におけるピーク電力削減について
発表概要:OFDM(Orthogonal Frequency Divison Multiplexting:直行周波数分割多重)方式は,低レートのサブキャリアを 多数重畳することにより伝送レートの高速化をはかり, 広帯域伝送で問題となるマルチパスフェージングへの耐性を持つ変調方式である. この方式は複数のサブキャリア重ね合わせるため,伝送する情報の組み合わせによっては高いピーク値を 発生する問題点がある. ピーク電力を抑えるために用いられる方法として,あるしきい値を超えるピークの振幅を抑圧するクリッピングがある. クリッピングを行うためには振幅値を求める必要があるが,今回提案する 手法は振幅値を求めることなく,直接クリップを行う方法で,従来のクリップ法に比べ計算量を削減することが 期待できる.本発表では,提案方式でOFDM信号のピーク電力を削減する原理とその従来方式との比較検討を行う.
 
中村 俊文 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:符号シフトスペクトル拡散方式を用いたリモートキーレスエントリーシステムに関する研究
発表概要:近年,自動車の利便性やセキュリティを向上させるためにRKE(Remote Keyless Entry)を搭載する自動車が増えている.また,安全対策としてTPMS(Tire Pressure Monitoring Systems)の搭載も増えてきている.そこで,今後,両システムを搭載する自動車が増えると考えられる.従来これら2つのシステムではFSK(Frequency Shift Keying)信号を用い同じ周波数帯を用いていため,互いに干渉を与える.そのため,異なるシステムの信号が衝突した時に受信したデータを正しく復調できないという問題が生じる.また,TPMSの送信信号は規定により狭帯域FSK信号を使用することが定められている.そこで解決方法として,RKE信号に狭帯域信号の干渉に強いスペクトル拡散方式を用いる.そして,受信機における演算量の簡素化を図るために同期検波が不要なCSK(Code Shift Keying)を採用するRKEのシステムを提案する.
 
本間 知教 コンピューティング・アーキテクチャ講座 中島 康彦
発表題目:論文紹介”Multiparty controlled quantum secure direct communication using Greenberger-Horne-Zeilinger state”
発表概要:1984年にBennettとBrassardにより、量子力学を用いた量子鍵配送方法(Quantum Key Distribution)が提案された。この通信プロトコルはBB84と呼ばれ、観測行為が量子状態の変化につながるという性質を利用した通信プロトコルである。QKDはこの性質を利用する事により、計算時間で保障された安全性ではなく、情報学的に安全な共通鍵の生成が行えるという特徴を持っている。この手法の提案後、現在までに様々な種類の量子通信方法が提案されている。本発表ではQKDのような鍵配送方法ではなく、送受信者間に共通鍵を生成せずに、送信者の秘密文を直接受信者に送信する方法の一種を紹介する。そして、本手法の問題点と今後の自分の研究方向についても述べる事とする。
 
山内 正人 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:センサネットワークにおけるオペレーションに関する論文紹介
発表概要:近年、ネットワーク環境の整備とセンサの小型化、低コスト化によって世界中に多数のセンサが配置され、センサネットワークが構築されている。しかし、これらは異なった組織によって管理されており、センサの扱いが煩雑であったり、アプリケーションの開発が煩雑、センサネットワーク間の相互接続が難しいといった問題がある。そこで本論文では、ミドルウェアを作成することによってセンサやセンサネットワークを抽象化し、これらの問題を解決する。また、本論文の問題点や得られた知見をまとめ、今後行っていきたい研究の方向性についても言及する。
 

会場: L3

司会:戸田 助手
箕岡 武志 像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介"Freehand Ultrasound Reconstruction Based on ROI Prior Modeling and Normalized Convolution"(Raul San Jose Estepar et. al., MICCAI'03, pp382-390, 2003)
発表概要:三次元超音波画像は、医療診断において幅広く用いられるようになり、得られたデータの可視化と更なる解析を可能とする。三次元超音波画像の生成には、複数の断層像をボクセルにマッピングする必要があるが、不規則な間隔で得られる断層像から規則正しいボクセルを再構築することは困難な問題である。本論文では、座標系の選択に関心領域(ROI)のモデルを適用した主成分分析を用いる。また穴の開いたボクセルの補間に正規化畳み込み手法を用いる。それにより、診断の対象となるROIにおいて、詳細に三次元再構成を行うことが可能となる。また、生体を対象とし、既存の手法と比較することにより、提案手法の有効性を確認した。
 
村上 伸太郎 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:医学教育のためのバーチャルリアリティ技術に関する論文紹介
発表内容:近年、医療ミスによる事故が報告されている。様々な計測技術、シミュレーション技術を用いて医学教育や手術計画を支援できれば、外科医の医療技術、手術の安全性の向上につながると考えられる。そこで,支援手段の一つである医学教育用の電子教科書の構築に関する研究について論文紹介を行う。現在、術者や助手視点の外科医用の手術シミュレータがないところに着目し、著者らはImmersive electronic books(以降、IEBookと省略)を開発した。IIEBookの撮影装置を用いて記録した手術の2Dビデオデータを3Dで再現することができるため,教育環境として役立つと考えた。外科手術の基本概念を具体化するIEBookを作成するための方法論とツールについて説明する。本報告では、論文紹介をするとともに,研究の方向性について述べる。
 
矢野 哲 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:ポイントベースレンダリングの手術シミュレーションへの応用に関する研究
発表概要:近年,医療技術の高度化に伴い,手術計画や臨床教育を目的とした外科手術シミュレーションが注目されている.そのシミュレーションでは,患者から実測された大規模なボリュームデータを実時間で変形させたり可視化することが求められる.現在,ボリュームを可視化する手法として代表的なものにテクスチャベース法が挙げられるが,大規模なボリュームデータへの対応が難しく,変形の描出も精度・効率の面で十分とは言えない.そこで,本研究では新しい可視化手法としてポイントベース法に着目した.本発表では,ポイントベースでのサーフェスレンダリングに関する論文を紹介し,ボリューム可視化への可能性を検討する.
 
山本 好美 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:肺の実時間力学構造シミュレーションに関する研究
発表概要:肺疾患の代表例として、肺腫瘍や慢性閉塞性肺疾患があげられる。例えば、近においては腫瘍の治療として、患者の負担が少ない放射線治療が効果的とされている。しかし、放射線照射範囲を決定するためには、腫瘍の位置や形状等の正確な情報が必要となる。特に肺の腫瘍においては、呼吸時の肺の振舞いに伴い位置や形状が変化するため、的確に腫瘍を捕えるのは困難となる。そこで、本研究では肺の物理特性を考慮した疾患時の肺を再現し、その振る舞いをシミュレートすることで治療計画支援を目的とする。本発表においては、肺モデルの従来研究の紹介と今後の研究方針について述べる。
 
牛 冰心 像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介“Augmented Reality Visualization for CT-guided Interventions: System Description, Feasibility, and Initial Evaluation in an Abdominal Phantom”(Das et al. Radiology 2006;240(1);23-33. SPL Technical Report #590, posted July 2006)
発表概要:近年,X線写真に代表される医用画像は画像診断に利用されるだけではなく,手術支援にも広く利用されている.単に医用画像を観察するだけではなく,バーチャルリアリティ(VR)や複合現実感(MR)の技術を用いて医用画像を処理し,手術支援への応用する試みがされている.本論文は,腹部ファントムにおけるバーチャルCTガイドを使った診療行為について,AR可視化の実現性と性能を評価したものである.本発表では,病変認識,手術シミュレーションの2つを対象とした実験によって示されているプロトタイプシステムのパフォーマンス,実行可能性及びファントムの有用性について紹介する.