ゼミナール発表

日時: 12月1日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:川口 助手
松田 智 ソフトウェア基礎学講座 伊藤 実
発表題目:仮想空間で現実世界に近いコミュニケーションを実現するためのフレームワークの提案
発表概要:ネットワークを介した多数の遠隔ユーザ間のコミュニケーションは,CSCW(Computer Supported Cooperative Work),臨床(教育・医療・福祉など),エンタテイメント分野において,今後ますます重要になると考えられる.既存のTV会議システムでは,各参加者の表情や動作などのアウェアネス情報を容易に認知できるが,話者と聞き手が明確に別れるため,複数の小グループを編成してグループ毎に会話を行ったり,グループ構成を臨機応変に切り替えることは困難である.一方,ネットワークゲームでは,多数のユーザが仮想世界を共有し,ユーザ間で仮想世界での位置関係に基づく会話が可能である.しかし,ネットワークゲームでのコミュニケーションはテキストが主であり,臨場感やアウェアネスの点でコミュニケーション性は劣る.関連研究として,仮想環境を共有する遠隔ユーザが各ユーザの視点で互いの 3D実写映像を実時間で再現するTele-imersionと呼ばれるシステムが提案されているが,現時点では,特殊かつ高価な装置を必要とし,普及性,拡張性に欠けるという問題がある.本研究では,多数の遠隔ユーザ間で,実世界の情報を取り込んだ効率良いコミュニケーションを行うための新しいフレームワークを提案する.提案方式では,ユーザはネットワークゲームと同様に仮想空間を共有し,アバタ(ユーザの分身)を操作して仮想空間を自由に移動できる.仮想空間で 近くのユーザとのコミュニケーション手段として,テキスト,音声に加え,表情,動作や,さらには, Webカメラでキャプチャしたユーザの映像を用いることが可能である.この際,音声や映像は仮想空間上でのユーザの状態に合わせて,聞こえ方や見え方を制御する.本発表では提案方式を実現するための基本方針を主として説明する.
 
松本 真佑 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:バグモジュール予測における外れ値除去法の比較
発表概要:ソフトウェア開発において効率よくテストを実施するためには,バグを含みやすいモジュールに対して多くのテスト工数を割り振るべきである.そのために,新たに開発したモジュールがバグを含みやすいかどうかを予測するバグモジュール予測を行う.しかしモジュール群の中には,潜在的にバグを含んでいてもまだバグが検出されていないといった,特異なモジュール(外れ値)が存在する.このようなモジュールは予測精度低下の原因になると考えられるため,あらかじめ削除した上でバグモジュール予測を行うべきである.そこで,モジュール群に対して外れ値除去法を適用し,特異なモジュールを削除する.本研究では,各外れ値除去法を適用することによるバグモジュール予測の精度を比較し,最も精度の向上に繋がる手法を調べる.
 
宮崎 友彰 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:論文紹介:Is web-based seminar an effective way of learning in adult education?
発表概要: 近年大学に進学し,または大学に復帰する学生が増えている.特に情報科学においては欧米諸国をはじめとして,高等教育の必要性が高まっている.その一方で大学において多くの学生が受講する演習では学習効果が上がらないことがある.これを解決するために,様々な方法が提案されているが,本論文ではコンピュータを用いてグループワークを行う方法を採用した.実験として大学の授業において二つのグループに分けられた学生達は,それぞれ同じ授業を受講したが,一方はe-Learningを用いて,もう一方は講義形式の授業を受けた.授業ではグループワークを行い各人の理解度を深めた.各グループ共に学期開始時と終了時にアンケートを採り,それらを統計解析した.二つのグループ間のグループワークによる理解度に有意な差はあるのか,また社会人学生と高校を出てすぐの学生との間に差があるのかどうかを調べた.
 
牟田口 公洋 コンピューティング・アーキテクチャ講座 中島 康彦
発表題目:論文紹介”実行パスとローカル履歴を重み選択に利用したパーセプトロン分岐予測器”
発表概要:近年、プロセッサのパイプラインは深化している。そのためプログラム中に分岐命令が存在するとストールのサイクルが長くなり、パフォーマンスが低下する。そこで、この低下 を防ぐため分岐予測の技術が不可欠となっている。本発表ではまず、既存手法としてシンプルでかつ低いミス率の予測器について紹介し、次に紹介論文にあるパーセプトロン分岐 予測器及びそれをより実現可能でかつ低いミス率に改良したものについて紹介する。
 
湯浅 直弘 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:論文紹介 An Evaluation of k-Nearest Neighbour Imputation Using Likert Data
発表概要:様々な研究分野において,分析対象となるデータセット中に未記録の値(欠損値)が含まれることが, 分析の妨げとなっている.多くの統計解析手法は,欠損値がないことが前提となっているためである. 本論文では,ソフトウェア工学分野におけるあるデータセットを用いて, 欠損を埋める一手法であるk-Nearest Neighbour Imputation(k-NN法)を実験的に評価している. k-NN法は,あるケースXの変数Yの欠損値を,Xに類似するk個のケース(いずれもYが欠損していないもの)から推定する. 実験では,データセット中の欠損値の含有率(欠損率)を変化させたり,kの値を変化させたときの 推定精度を評価している. 本発表では,k-NN法の手順および実験結果を紹介し,論文から得られた知見を基に 今後の研究の方針について述べる.
 
吉井 迪利 データベース学講座 植村 俊亮
発表題目:論文紹介"Usability and design considerations for an autonomic relational database management system"
発表概要:オートノミックシステムはオートノミックでないシステムとの間に数多くの利点を与え、そしてこれらの多くの利点は使いやすさに関連している。 その利点は低レベルのシステム管理タスクの数を減らすことを含めた使いやすさに関連し、システム管理者のインターフェースを単純化し、他ではシステムアラートとして出た例外を処理し、そしてシステムによって管理者がとった行動を学習する。 しかし、人間のシステム内部への干渉は未だ要素としてあり、そしてシステム管理者のタスクがより困難にならないようにオートノミックシステムのデザインにおいて注意しなければならない。 本論文では一般に関係データベース、特にIBM DB2 Universal Database TMVersion 8.1のオートノミックコンピューティングシステムの使いやすさに関するコンテクストにおけるオートノミックコンピューティングの影響を調べる。
 

会場: L2

司会:佐藤(智) 助手
橋村 雄介 情報システムアーキテクチャ講座 関 浩之
発表題目:複数のWebページの情報を一覧表示するユーザインタフェース技術の提案
発表概要:近年、インターネット利用者の増加などによりますますWebページの数は増加しており、その数は膨大となっている。そのため多くのユーザは、情報収集するために検索エンジンを利用している。しかし、検索エンジンの提供する検索結果の表示では、表示されるWebページ内の情報が乏しいため、複数のWebページを巡り情報を探す必要があるなどの課題がある。そこで本研究では、内容確認に有効で、かつ一覧性を損なわない程度の情報を検索結果として提示する手法を提案することを目的とする。本発表では、提案手法、利用する技術、今後の課題について述べる。
 
橋本 和希 言語科学客員講座 柏岡 秀紀
発表題目:自然な対話音声を用いた音声認識
発表概要:近年の音声認識研究において、新聞記事やニュース原稿などの読み上げ音声の認識においては非常に高い認識率を得られるようになった。しかし話し言葉、特に自然で日常的に発せられる音声の認識を行った場合、その認識精度は極端に低下するという問題がある。その問題に対処するため、現在日本語話し言葉コーパス(CSJ)の講演音声を用いた音声認識が行われているが、これは厳密には自然発話であるとは言い難い。そこで本研究では、親しい人との会話のように、何気なく使われる自然な音声を用いて音響モデルを作成し認識実験を行った。本発表では、その認識実験の結果及び今後の予定について述べる。
 
辻村 裕美 像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目: 論文紹介:Relief Texture from Specularities(Jing Wang and Krintin J. Dana ,IEEE TRANSACTIONS ON PATTERN ANALYSIS AND MACHINE INTELLIGENCE,VOL.28,NO.3,MARCH 2006)
発表概要: 近年、文化財や美術品などの歴史的遺物を、電子アーカイブ化する需要が高まっている。また、アーカイブ化した物体を詳細に視覚化するには、形状に加え、物体表面の反射率などの光学特性も必要となる。特にガラスなどの透明物体に関しては、背景の映り込みを正確に表現するために、屈折率が必要となる。また貴重な遺物は非破壊非接触で計測する必要があるが、従来のレーザレンジファインダなどの計測手法の多くでは、鏡面反射面からの距離計測が難しく、拡散反射面を対象としている。しかし透明物体は鏡面反射をするため従来手法では難しい。そこで本研究では、透明物体の形状と屈折率を、物体表面で起こる鏡面反射を利用して計測する手法を提案する。関連して本発表では、鏡面反射をする物体表面の形状を計測する先行手法に関する論文を紹介する。
 
原口 雄基 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:音源分離に基づくオーディオオブジェクトの制御に関する研究
発表概要:近年のオーディオオブジェクトの高技術により音質や音場のコントロールが実現する中,「音像そのものを操作したい」というユーザの声があるもののそういったオブジェクトの定位を任意に動かせる「音像コントロールシステム」は未だ開発されてない.音源信号が混合された観測信号から特定のオブジェクトの定位を動かすためには,そのオブジェクトだけの情報を分離する必要があり,その処理に対しては独立成分分析 (ICA) によるブラインド音源分離 (BSS) の技術が有効であることがわかっている.従来の ICA による BSS では周波数領域で処理する際に起こる「周波数ごとに分離信号の大きさが異なる」という scaling を解決するために Projection Back (PB) という技術を使用し,分離信号を観測地点でのステレオ信号として復元することが一般的である.本発表ではその scaling に着目し PB を利用することで,モノラル信号に定位感を与えるフィルタを抽出する手法を提案する.またその応用例として,定位している音源を第三のモノラル音源に挿げ替える「パンチイン」の実験結果を報告する.
 
東山 昌彦 自然言語処理学講座 松本 裕治
発表題目:経験抽出のための極性付き表現の獲得
発表概要:ネット上で話題になった製品が大ブレイクするなど、近年Webにおける個人の意見の重要性が評価され始めた。現在でも評価表現についての研究はBlogWatcherなどのシステムでも見ることができる。本研究では更に、評価表現だけに捕らわれず、より拡張した枠組みを経験と名付けその抽出を目指す。今回の発表ではその前段階となる極性付き表現の獲得を行い、その予備実験の結果を報告する。
 
堀 元  像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介"Going out: Robust Model-based Tracking for Outdoor Augmented Reality"(Gerhard Reitmayr, et al; ISMAR2006)
発表概要:本発表では紹介論文で提案されている、モデルに基づいた屋外ARアプリケーションのためのトラッキングシステムを紹介する。このシステムは追跡対象の3次元モデルを用いたエッジベーストラッキングに加えてジャイロセンサと磁気センサを用いることで、正確でロバストなトラッキングを実時間で実現している。また、一時的なオクルージョンによって追跡対象を失った場合でも、3次元モデルや過去のフレームを利用することで、オクルージョンが回避された後のトラッキング復帰がなされている。
 

会場: L3

司会:中村(文) 助手
森 渉 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:人型多指ハンドとロボットアームによる変化球投球動作の実現
発表概要:近年、様々な人型多指ハンドが開発され、人型多指ハンドに人間の手のような器用な物体操作を行わせる研究が盛んに行われている。しかし、人型多指ハンドとロボットアームによる高度な協調作業についての研究はあまり行われていない。本研究では人間の出来る器用な物体操作として投球動作を取り上げ、人型多指ハンドとロボットアームを用い、任意の速度、コース、球種の変化球投球動作の実現を目標とする。本発表ではまず、変化球としてジャイロボールを取り上げ、ジャイロボール投球動作実現のための方針を示し、進捗としてジャイロボール実現のための指とボールの2次元モデルについて説明する。
 
山口 明彦 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:再利用性から見た運動学習:複数タスク実現を目的とした多自由度ロボットの動作生成モデルの構築
発表概要:ヒューマノイドを始めとする多自由度ロボットの最大の特徴のひとつとして,多様な動作を実現できることがあげられる.従来の動作研究では単一の動作の実現に焦点を絞っているものが多く,これをそのまま複数の動作実現へ適用すると,効率の悪さや,あるいは想定している環境の違いによる再キャリブレーションの必要性と言った問題が生じる.こういった問題は,動作の実現に共通して使われる機能を再利用することで解決できる.本研究では再利用における問題を定式化し,これを解決する動作生成モデルを提案する.このモデルは運動学習を前提として設計されるものであり,学習による高度なスキルの発見や,解析的な知見が少ない動作の獲得を目指す.具体的には,環境とインタラクションしながらダイナミクスを推定し,目標軌道を実現する制御信号を出力できるMOSAICモデルを拡張して,複数動作の同時実現における干渉の除去と言った再利用問題を解決する.
 
山本リサ システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:マイクロ化学プロセスにおける閉塞検出
発表概要:マイクロスケール空間で化学反応が行えるマイクロリアクターが登場したことにより、高速で高効率な化学プロセスの構築が可能になる。このマイクロリアクターを化学プラントに適用することで従来の大規模、多量生産のプラントから小規模でon-demand生産のできるプラントへ移行できるとして様々な研究が行われている。そこでマイクロ化学プラントの実用化へ向けた課題の一つとして、長期連続運転を妨げる閉塞問題を取り上げる。先行研究から2つの閉塞検出システムを紹介し、今後の方針を述べる。
 
湯浅 卓也 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:ヒューマノイドによるレーザレンジファインダを用いた屋内三次元地図作成と自己位置推定
発表概要:近年ロボット技術の発展により、様々なヒューマノイドロボットが研究・開発されてきている。少子高齢化の進む現在、ヒューマノイドロボットにはエンターテインメントの他にも人の代わりとなって働く労働力としての期待も大きい。ヒューマノイドロボットが安全に高度な作業を行なうためには、周囲の環境をできる限り正確に認識することのできる機能が重要だと考えられる。 本研究では、計測対象物の模様や照明条件に影響されにくい小型・軽量かつ高精度のレーザレンジファインダをヒューマノイドロボットの手先に搭載する。そして、それを用いた屋内環境の三次元地図作成と自己位置推定システムの提案を行なう。
 
藤崎 朋子 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:論文紹介“Two-photon imaging to a depth of 1000 μm in living brains by use of a Ti:Al2O3 regenerative amplifier”(Patrick Theer, Mazahir T.Hasan, and Winfried Denk, Optical Society of America 2003)
発表概要:二光子顕微鏡は、生きている脳の比較的深部の神経細胞を観察することができる。二個の光子を使って蛍光粒子を励起させることで、エネルギーが小さく(つまり細胞へのダメージが小さい)、波長の長い(深部が観察可能)光を得ることができる。また、焦点面のみで励起されるため、蛍光の退色を防ぎ(長時間の観察可能)、一光子で励起した場合よりも鮮明な画像が得られる。本論文では、従来は600μm程度の深度までイメージングが可能であったが、深度1000μmのところをイメージングできないかという発想の下、チタンサファイア再生増幅器を使うことによって光の瞬間的な強度を上げる実験を行う。
 
吉井 悠喜 蛋白質機能予測学 川端 猛
発表題目:論文紹介:Prediction of the phenotypic effects of non-synonymous single nucleotide polymorphisms using structural and evolutionary information
発表概要:人の遺伝子を構成しているDNA配列には個体差(遺伝子多型)がある。この遺伝子多型の一つであるSNP(Single Nucleotide Polymorphism)は遺伝子発現に影響を及ぼすことから、病気のリスク診断などに応用できる事から注目されてきた。本論文では、SNPの中でもアミノ酸置換を引き起こし、ヒトの遺伝性の病気に関わると知られている遺伝子変異のほぼ半分の遺伝子変異に関連すると報告があり、かなり重要性が高いnsSNPs(non-synonymous Single Nucleotide Polymorphisms)に着目している。著者らはコンピュータツールを用いてnsSNPsの表現型に与える影響を予測し、大量のnsSNPsデータから病気に関連するnsSNPsデータの特定を進める事を目的とした。病気に関連するnsSNPsとそうでないnsSNPsを見分けるための予測子として、buried areaなどの構造情報、SIFT scoreなどの進化的情報が用いられた。また、分類器には、サポートベクターマシーンやランダムフォレストの二種類の機械学習を用いて、予測精度を算出している。この算出した予測精度を、最も優れた予測手法の一つであるSIFT scoreと比べて著者らが用いた予測手法の評価を行った。その結果、SIFT scoreと同じくらいもしくはそれ以上の予測精度を示す事が明らかとなった。  本論文を参考に、私はUniProt?Swiss-Protを利用し、nSNPsに関するデータを用いて、ヒトのアルブミンについて相同性配列検索、マルチプルアライメントを行った。その後、位置特異的スコア行列により置換部位における各アミノ酸の出現頻度を出した。また、検索した相同性配列の蛋白質立体構造を調べ、変異部位の構造的特徴を確認した。