ゼミナール発表

日時: 11月29日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:和泉 助手
諏訪 公洋 インターネット工学講座 山口 英
発表題目:論文紹介:"A Real-time Integrity Monitor for Xen Virtual Machine"(Ngueyn Anh Quynh, Yoshiyasu Takefuji,ICNS 2006)
発表概要:計算機の監視を行うことにより、計算機への不正侵入やデータの改ざんから保護する研究が行われている。しかし、計算機管理者の権限を奪われた場合に、同一マシン内でこれを発見することは、ログが改ざんされる恐れがあるため困難である。そこで、この問題を仮想マシンモニタであるXenのドメイン間の絶縁性を利用することにより解決を図った”A Real-time Integrity Monitor for XenVirtual Machine”の紹介を行い、今後の研究方針について述べる。
 
妙中 雄三 インターネット工学講座 山口 英
発表題目:無線 LAN 再送回数を用いたハンドオーバ制御手法に関する研究
発表概要:WLAN で構築されたユビキタス環境では,モバイル端末が異なるドメイン間を 移動することが想定される.このような状況において,パケットロスや遅延に 影響されやすいリアルタイム通信(VoIP)を行うには,無線リンクの通信品質 を考慮し,品質劣化を予測できるハンドオーバ手法が必要である.この要件を 満たすために,先行研究では通信品質が劣化するより先に発生する MAC レイ ヤにおけるデータフレーム再送に着目し,再送回数を考慮したハンドオーバ管 理手法の提案,及びシミュレーションによる評価を行っている.本発表では,シー ムレスなハンドオーバを実装するための必要要件をまとめ,ハンドオーバ手法, 実装の詳細について述べる.
 
浦谷 剛史 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:衛星キャリア重畳方式における非線形増幅器の影響
発表概要:現在、信号重畳方式を利用した衛星通信の受信機の開発を行っている。信号重畳方式ではレプリカを生成し、それによって不要波をキャンセルする方式がとられる。キャンセラでは、信号が衛星特有のTWTAの非線形素子を通過した場合、歪みによってレプリカと不要信号波形の間に差異が生じ、それが残留誤差(干渉)を増大させる。本研究では、開発中のCシミュレータの入力を非線形TWTAの影響を受けた信号として残留誤差を調べることにより、非線形による影響を考察するものである。本発表では、信号キャンセルの原理とTWTAによる非線形の影響、ならびに今後の研究計画について述べる。
 
木村 聡 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:マルチキャリア変調信号のPAPR抑圧を効果的に行うクリッピング法の検討
マルチキャリア変調、特にOFDMは周波数を有効に利用できることなどから無線LANやディジタル放送などに広く用いられている。マルチキャリア変調信号にはピーク電力が高くなるという大きな欠点がある。これにより帯域外輻射やアンプのコスト増大などの問題が発生するため、ピーク電力の削減は大きな課題の1つとなっている。ピーク電力削減手法の1つとしてクリッピング法が広く知られているが、クリップ後の信号に帯域外輻射を抑えるLPFをかけるとクリップ効果が損なわれてしまう問題がある。そこで本発表ではクリップ効果を損なわないクリッピング法を提案する。
 
高橋 宏樹 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:CI符号化によるOFDM衛星通信の非線形歪み軽減に関する研究
発表概要:無線通信において周波数利用効率を高める手段として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式がある。この方式は、近年地上波デジタル放送などでも用いられており注目を浴びている。しかし、OFDMはその特性上、信号に鋭い振幅ピークが現れることがあり、これを衛星などの非線形特性を持つ伝送路に通すと、高い振幅成分が劣化し、結果誤り率を増加させる要因となる。この問題に対する解決手法としてCI符号によるOFDM信号のピーク圧縮があげられる。本発表では、高速フーリエ変換を用いたCI符号化について説明するとともに、CI/OFDMとOFDMの非線形伝送路における比較シミュレーションの結果を示し、その有効性について検討する。
 
村田 真一 情報コミュニケーション講座 岡田 実
発表題目:
非線形AD変換器による直交周波数分割多重伝送受信機の入力ダイナミックレンジ改善効果
発表概要:
コンパンディング処理を用いた非線形AD変換をもちいることで直交周波数分割多重伝送方式の受信機のダイナミックレンジを改善する手法を検討する
量子化ビット幅を大きくすること無く量子化精度を改善する対策として、PCMに用いられるコンパンディングは有効な処理である。
そこで、ディジタル無線通信システムに非線形AD変換を用いた場合、どの程度の量子化誤差が生じ、システムに影響を与えるのかを検討する。
さらに、この手法を一般化し、無線通信システムの設計段において、ハードウェア規模の制限の下で、所要量子化精度、演算精度の設計手法および設計ツールを提案し、システム設計を高速化することを目指す。
 

会場: L2

司会:佐藤(哲)助手
玉井 康之 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:非接触な運動視差3次元ディスプレイのための実画像提示
発表概要:3次元情報を立体的に表示させる3次元ディスプレイの研究は盛んに行われており,特に実画像の立体視は様々な分野への応用が検討されている.人が立体的に感じる奥行き知覚手がかりの代表的なものとして,両眼視差と運動視差が挙げられるが,本研究では,運動視差を用いた非接触で高解像度な3次元実画像提示を目標とする.3次元実画像の生成はマニピュレータとその先端に取り付けたカメラによって行い,カメラで多視点の画像を撮り溜めし、その画像をユーザの頭部位置・視線に合わせて提示する.その際,キャプチャ画像面はカメラ光軸に垂直であるため,視点の左右移動によって画像の歪みが生じ,また前後移動においては,頭部がモニタ面に近付くほど撮影すべき視野が広がるといった問題がある.本発表ではこの関連研究の紹介と研究方針について報告する.
 
仁科 勇作 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:論文紹介”Time-Varying Surface Appearance: Acquisition, Modeling and Rendering”(Jinwei Gu et.al, ACM Transactions on Graphics (SIGGRAPH). 25(3) July 2006.)
発表概要:コンピュータグラフィックスレンダリングでは、通常物体表面の外観は時間軸方向の変化を起こさない。しかし実世界では燃焼、乾燥、腐敗、腐食等時間が経つにつれて変化が起こる自然現象がある。そこで本論文では物体表面の外観が時間が経つにつれ起こす変化を測定しモデル化する事で、レンダリングにもこの変化を適用する手法を提案する。物体表面の見え方は光源の方向により左右するため、測定では5パターンの自然現象について光源を変化させながら物体表面の外観の変化をデータベース化した。このデータを用いて時間と光源の変化を考慮したBRDFとしてTSV-BRDFを提案し、レンダリングに適用する事で物体表面の外観の変化を実現する。
 
西牧 悠史 知能情報処理学講座 木戸出 正継
発表題目:長時間撮影画像からの視点非依存な動作認識
発表概要:健常者である高齢者を対象として,移動ロボットに搭載されたカメラより長時間撮影された画像の中から,対象者の生活行動認識を行うことで,高齢者見守りシステムを実現することができる.しかし,この撮影環境での動作認識には,(1)長時間撮影画像中から各動作の観測区間が正確に切り出されていないと認識精度が悪くなる,(2)同じ動作でも視点が変化することで対象の動きの見え方が変わるため,2次元的な動きの軌跡を参照した認識手法では異なる動作として誤認識されてしまう,という問題点がある.本発表では,これら問題点の解決に利用可能な(1)長時間撮影画像からの動作区間スポッティング,(2)視点非依存な動作認識,に関する関連研究を紹介し,今後の予定を発表する.
 
二村 智康  像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介:"Tracking Moving Devices with the Cricket Location System"
発表概要:ユビキタス環境において、ユーザの位置に依存するアプリケーションの実現には、ユーザ位置の取得は必要不可欠である。 屋内におけるユーザ位置を取得する手法の研究は多くなされているが、今回は、電波と超音波の送受信により計測する距離を用いて、ユーザの位置を推定する手法の検証について述べた論文を紹介する。 本論文では、ユーザが持つモバイルデバイスの動作をアクティブ型、パッシブ型で分けその特徴を述べ、パッシブ型を改良したハイブリッド型を提案し、実験とシミュレーションによりその性能を比較検討することを目的とし、結果として、パッシブ型の長所を活かした精度向上の可能性が示唆されている。
 
二山晃子 言語科学客員講座 柏岡 秀紀
 

会場: L3

司会:北野 助手
吉田岳彦 神経計算学講座 銅谷 賢治
発表題目:眼窩前頭皮質における報酬予測タイムスケール表現とそのループ構造の 電気生理学的検証
発表概要 :社会科学では社会変動または経済変動を説明する際、何らかの人間モデルをおくことになる。そこで経済学では合理的人間像を仮定してきた。しかし、近年の心理学等の知見から必ずしも人は合理的、利己的にばかり行動しないことが指摘されている。実際に人がどのように行動をするかを生理機能との符号から読み出すことを目的としている。そこで本発表ではその意思決定をしている場所を脳内と位置づけ、先行研究により眼窩前頭皮質(OFC)での機能、特に報酬予測時定数(γ)との符号。さらにそれが脳、神経生理学的にどのように働きかけているかを示し、それをラットを用いた実験で証明することを試みる。
 
池原 辰哉 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:FRET法を利用した細胞膜シグナル伝達検出法の開発
発表概要:環境ホルモンの検出や新薬の開発において、細胞膜受容体に機能的に結合するリガンドの新しいスクリーニング法の確立が求められている。現在主流である方法はリガンドと受容体の結合能を指標としているが、この方法ではリガンドの結合がシグナルとして細胞内へ伝達されているか判定できない。このため、偽陽性信号が多い、作動薬(アゴニスト)と拮抗薬(アンタゴニスト)の区別ができない、といった問題点が生じている。そこで、シグナル伝達時に生じる受容体の構造変化を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法によって検出するシステムを確立し、シグナル伝達能を指標としたスクリーニング法の開発を目指している。今回の発表では、FRET法による構造変化検出に成功した論文紹介と、これから取り組んでいく研究について発表する。
 
木浦 義明 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:タイリングアレイ情報に基づく枯草菌のRNAポリメラーゼシグマサブユニットsigAの結合配列の推定
発表概要:現在驚くべき速度で細菌のゲノムの配列が決定されており、その全ゲノムが決定された細菌の中に枯草菌という細菌がいる。 枯草菌は近縁種に病原菌や産業有用株を持つため、枯草菌において転写領域を正確に予測し、遺伝子の転写・制御に関わるシステムを理解できれば、近縁種に応用することで医療や産業の分野においてきわめて有用な情報を提供可能となる。 そこで、本研究ではRNAポリメラーゼシグマサブユニットsigAに対して行ったChIP-on-chip法の実験データを情報学的に解析し、sigA結合領域の推定方法の確立を目指す。
 
草場 亮 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:Construction of Prokaryotic Gene Evolutional History Database
発表概要:バクテリアは今日に至るまで,ポイントミューテーションだけでなく、遺伝子伝播、遺伝子重複、遺伝的交配などの様々な方法で進化を繰り返してきた。 遺伝子伝播の媒体であるファージ,プラスミド,溶存DNAなどは環境中で多量に確認されており、これらが遺伝子プールとなることで、 環境中において多くの遺伝子伝播の機会をバクテリアに与えていることから、バクテリアは高等生物のように系統だった進化ではなく、 個々の遺伝子の系統が異なる、モザイク様の進化を繰り返していると考えられる。 本研究では、バクテリアゲノムにおける全遺伝子個々の進化履歴、つまり、進化のどの段階で生成された遺伝子なのか、 どのように生成したのか、などの情報をデータベース化し、ゲノムレベルでの分子進化を体系化することを目標としている。
 
中川 幸雄 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:Transcriptome Analysis of Arabidopsis through GeneChip technology
発表概要: これまでのシロイヌナズナにおける遺伝子発現プロファイル解析は、有意な発現変化を示す遺伝子の抽出を目的として、GeneChipやDNAマイクロアレイにより行われてきたのが大部分である。シロイヌナズナの全遺伝子発現のふるまいの様子を理解することを目的とし、膨大なGeneChipデータを統合した複数実験間の解析はあまり行われていない。そこで、この研究では世界中に公開されているシロイヌナズナGeneChipデータに着目し、発現量変化が相関する遺伝子のグループ化により、可能な限り多様な条件の実験間データの比較を行うことを検討する予定である。
 
野村 啓仁 論理生命学講座 石井 信
発表題目:マイクロアレイの仮説検定への新手法、ODP(Optimal Discovery Procedure)
発表概要:マイクロアレイなどによって測定された遺伝子発現量から、各状況に 特異的な発現をする遺伝子を検出することは重要なタスクである。例えばこれに より癌などの予後の予測や最適な治療法の判断のために遺伝子発現情報を用い ることが期待できる。 私は癌に関すマイクロアレイ解析の研究を通じて、有意遺伝子野選出による癌 のメカニズムの解明を進めていくことを目指している。 本発表では、このマイクロアレイ解析において有用と思われる手法、ODP (Optimal Discovery Procedure)(J.Store, 2006)について紹介する。 従来のグループ間での発現量野際への検定は、対象である遺伝子の発現量を扱 うことにより有意であるかを検定する。 一方ODPは一つの遺伝子の検定にデータセット全体の情報を考慮にいれた新た な統計量であり、この手法を用いることによって彼らは擬陽性率(FDR)を低 く維持したまま従来手法よりも高い検出力を得ることができた。