ゼミナール発表

日時: 11月24日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:橘 助手
中村 大介 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:膝前十字靱帯断裂に対する歩行アシスト方法の研究
発表概要:現在,日本国内において年間約数万人の膝前十字靱帯断裂受傷が発生していると推定されている.医療機関ではこの外傷に対して外科手術をはじめとするいくつかの治療法が実施されているおり,そのひとつとして,日常生活レベルの運動のみで十分と考える受傷者には経過観察のみを行う保存療法がある.この療法では運動における断裂の影響を抑制する代償歩行に移行する事例が多い.しかし,この代償歩行は健常者の歩行とは異なり,下肢筋肉に影響を及ぼすことが知られている.そこで本研究では,筋骨格モデルを用いて膝関節運動に関係する筋肉や靱帯の発揮力を解析し,代償歩行に対して最適な補助力について検討を行う.また,計算された補助力を剛体リンク構造とアクチュエータによって実現するアシスト装具について考察する.
 
野口 慎 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:ZMP規範に基づく歩行と受動歩行に関する調査報告
発表概要:2足歩行ロボットの研究には, ZMP規範に基づく歩行や受動歩行の原理に基づくも のなどがある.ASIMOやHRP-2で用いられているZMP法は, 実際の2足歩行を実現 するうえで重要な役割を果たしているが,ZMPという仮想的な量を経由して歩行動 作を与えており,必ずしも歩行の本質に迫ることを目的とした手法ではない.これ に対し受動歩行は, 対象のダイナミクスを積極的に利用して,低消費エネルギーで 歩行動作を実現するものであり,人間の高効率な歩行原理を考えるうえで有効な指 針となりうる.本報告では,まず両者の立場の違いを明確にし,後者に対して遅延 フィードバックと呼ばれる時間遅れを積極的に利用した周期運動の制御法を適用す るための初歩的な検討をおこなう.
 
羽田野 あゆみ ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:教示動作の主成分を用いたロボットハンド操作の実現
発表概要:複雑で多種多様な作業の実現のため,多指ハンドの研究が盛んに行われている.本研究室においても多指ハンドの研究が行われており,手の教示動作から関節角度を得ることにより,遠隔操作が可能である.しかし,手とロボットハンドの形状が異なることから,教示動作と実行動作が同じになるとは限らない.そこで,関節角度に対して主成分分析を行い,手の形状の違いに左右されない操作を実現する手法を提案する.
 
丸山 耕輔 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:心筋細胞モデル"Kyoto model"を用いた心臓の拍動に関する研究
発表概要:心臓は全身に血液を循環させる機能を担い、生命の維持にとって最も重要な臓器の一つである。しかし、非常に多くの心筋細胞から構成されているためその構造は複雑であり、心臓の拍動を完全に再現したモデルは未だ開発されていない。これに対し、様々なイオンチャネルや各種細胞機能を、実験より得られた値を基に実装した心筋細胞モデル"Kyoto model"は、より実際の心臓の拍動に近い挙動を示すモデルを目的として開発されている。本発表では、心筋細胞モデル"Kyoto model"について論じた二つの論文を紹介する。
 
丸山 淳一 計算神経科学講座 石井 信
発表題目:強化学習を用いたステッピングによるバランス回復動作の学習
発表概要:近年、ヒューマノイドロボットのバランス制御に関する研究が活発に行われているが、大きな外乱等が与えられた状況を想定した研究はほとんど行われてない。また、従来手法の多くは環境やロボットの正確なモデルに基づいて運動計画を行っているため、ロバスト性を制御器に持たせることが困難である。そこで、本研究では強化学習を用いて、大きな外乱が与えられたときに、適切なステッピングを行うことで転倒を回避するための動作を、自律的に獲得させることを目指す。強化学習を用いることで、一般的なモデルベースドな制御法で扱いにくい、ロボットの関節限界やアクチュエータの性能限界といった問題も考慮した上で、転倒回避動作を生成されることが期待できる。本発表では、研究の途中経過として富士通製ヒューマノイドロボットHOPA2モデルを用いた数値シミュレーションにおける学習結果と今後の研究計画について報告する。
 
源 朋之 システム制御・管理講座 西谷 紘一
発表題目:高効率燃料電池コジェネレーションシステムのモデル予測制御系の構築
発表概要:近年,地球環境問題として化石燃料の枯渇,地球温暖化が深刻化している中,燃料電池やコジェネレーションシステムといった次世代を担うエネルギーシステムが開発されてきている.燃料電池の中でも固体酸化物形燃料電池(SOFC)は,作動温度が高温であることから,他のどの種類よりも発電効率が高いという利点があり,ガスタービン(GT)との併用によりさらに高い発電効率が期待できる燃料電池である.SOFCに関する研究の多くはシステムの特性評価を行っている.システムの制御に関する研究は,家庭用燃料電池のモデル予測制御(MPC)に関する研究報告があるが,使用電池がSOFCではなく規模が小さい.そこで,本研究では,制御対象をSOFC/GTのハイブリッドシステムとし,MPCを用いて化学プラントやビル等の大規模施設を想定した制御系の構築について検証する.本発表では,これまでの先行研究の紹介を踏まえて今後の研究方針について述べる.
 

会場: L2

司会:川波 助手
伊達 虎三 論理生命学講座 石井 信
発表題目:視覚追跡のための確率的主成分分析を用いた基底画像学習
発表概要:視覚認識や追跡の研究分野において、見え方に基づいたモデルを利用 する手法が盛んに研究されている。特に、数学的にも見通しの良い固有空間法が しばしば利用される。しかし、実際に視覚追跡課題に応用しようとするとき、追 跡対象の見え方が、例えば照明、位置、姿勢、角度、スケールや対象の変形に 伴い、変化し続けることが問題となる。この問題に対して、今回は確率的主成 分分析を用いてオンラインで基底画像を学習することを考える。確率的主成分 分析を用いることで、隠れやノイズの多い環境について安定した基底画像の更新 が期待できる。本発表では、これまでに行ったシミューレーションの結果及び今後の研究計画について報告する。
 
谷口 雄作 自然言語処理学講座 松本 裕治
発表題目:コーパス管理を行うWebアプリケーションの開発
発表概要:現在,約1億語の収録を目指した大規模な日本語コーパス(日本語の文データベース)を構築するプロジェクトが国立国語研を中心に行われており,我々の研究室が種々の文法情報のタグ付けや処理ツールの開発に関わっている.コーパスの構築には多分野に渡る多くのチームがこのプロジェクトに携わっており,コーパスを用いた言語研究を行うための支援環境の構築が重要課題となっている.また将来コーパスの公開に伴い,言語学的な要求を満たす検索や統計処理といった,有用な情報を一般利用者に提供するインターフェースが必要になる.そこでこれらの要求を満たすために,まずコーパスの検索機能を持ったアプリケーションの開発に取り組む.本発表ではその進捗と今後の方針について報告する.
 
永田 裕樹子 知能情報処理学講座 木戸出 正継
発表題目:周囲状況を考慮した自発的コミュニケーションロボットの開発
発表概要: 近年、ユーザの手助けや心の癒しを行うパートナーロボットやペットロボットが多く開発されてきている。しかし、行動や発話、表情の種類の有限性や、ユーザからの命令を受けるだけの受動的行動、外界との繋がりの薄さなどによって、ユーザはロボットに対して飽きや不自然さを感じる傾向がある。そこで、ユーザや周囲の状況を考慮し、自発的にコミュニケーションを図るロボットの開発を目的とする。本発表では、提案手法の紹介と今後の方針について説明する。
 
永松 明 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:論文紹介"A Sketch-Based Interface for Detail-Preserving Mesh Editing"(in proceedings of ACM SIGGRAPH 2005,pages 1142-1147)
発表概要:近年、映画やゲームなどには多くの3次元メッシュモデルが利用されている。そうした背景に利用意図に応じてモデルを変形したいという要求がある。従来研究には、3次元メッシュモデルをスケッチにより手軽に編集が行えるものや、曲率を一定に保つことで3次元メッシュモデルの幾何学的構造を保つものがあった。この論文では、ユーザにとって変形が直感的にわかりやすく、かつ変形によって幾何学的構造を損なわないように3次元メッシュモデルに対し変形を加えることを目的とし、直感的な操作を可能とするために、ユーザが直接スケッチすることによって指示を与え、幾何学的な構造を損なわないために表面の曲率を一定に保つことで変形するインタフェースを紹介する。
 
中村 隆志 知能情報処理学講座 木戸出 正継
発表題目:見えの変化や遮蔽に対してロバストな人体姿勢推定
発表概要:近年、一般家庭環境の情報化、インテリジェント化が進んでおり、居住者に対して適切な情報やサービスを自動的に提供することのできるシステムなどが注目を集めている。 こうした技術では、動作やジェスチャなどその人間の意図や状態を表す情報を必要とする場合が多い。 こうした人間の状態推定を行う上で、多くの研究では姿勢情報が積極的に利用されている。 カメラを利用した人体の姿勢推定に関する研究は数多く提案されているが、そのほとんどが「遮蔽の生じない人体観測」「人体とカメラまでの距離が固定されており、見えの大きな変化が生じない観測」という仮定の下でのみ動作することが保証されている。 しかし、一般家庭環境下では、「家具等による大きな遮蔽」「カメラから見ると部屋内を自由に移動する人間の見えが大きく変化する」といった問題が生じてしまう。 そこで、一般環境内で起こりうる見えの変化や遮蔽という問題に対してロバストな姿勢推定を本研究の目的とした。 今回は、まず一般家庭内という撮影環境に依存した見えの変化や遮蔽といった特殊な問題点について述べ、この問題点の解決に利用可能な姿勢推定の関連研究を紹介し、今後の予定を発表する。
 
西海 嘉志 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:"Multiview Geometry for Texture Mapping 2D Images Onto 3D Range Data" (In IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition 2006)
発表概要:従来2次元画像を3次元モデル上にテクスチャマッピングする研究が行われているが、これらの多くは特徴点対応によるモデルの再構築を行うものである。しかし、この手法では人為的に特徴点を選択する作業を必要としたり、レンジスキャナ上にとカメラを固定しなければならないといった問題点が存在する。この論文では、3次元レンジデータにおけるレンジジオメトリにより生成した3次元モデルと2次元である画像のジオメトリにより、都市構造物のように広範囲の領域を写実的にモデリングするための手法の自動化と、その自動化した3次元ジオメトリ技術と複数視点ジオメトリを統合するシステムを提案し、都市環境内での実験から得られた結果を紹介する。
 

会場: L3

司会:高田 助手
栗山 恭嘉 ソフトウェア基礎学講座 伊藤 実
発表題目:他のユーザの行動を考慮した混雑回避巡回スケジューリング手法の提案
発表概要:複数の地点を時間制約,混雑度などを考慮しながら効率よく巡回するスケジューリング手法の確立は,観光の満足度やビジネス(荷物配送など)の効率を高めるために重要である.市販のカーナビでは,現在の混雑状況に基づいて迂回経路を案内できるが,多数のユーザが迂回経路に流入し新たな混雑を招く可能性が高い.また,観光目的等では,各訪問地での混雑度(サービスを利用するための待ち時間)も考慮したスケジューリングが望ましい.これまで,ユーザ間で経路情報を共有し互いに重複しない経路を選択することで移動時の混雑を 緩和する方式や,直近の混雑情報から最も混雑していない地点を次に訪問することで特定の地点にユーザが集中することを防ぐ方式が提案されている.しかし,これら既存研究では,訪問地間の移動時間,各地点での待ち時間の両方を考慮したスケジューリングはできない.本研究では,各移動経路,各地点の混雑を同時に考慮した複数地点巡回スケジューリング手法を提案する.提案手法では,各ユーザの希望巡回地点リストから時刻毎の各地点,各経路の混雑状況を予測し,予測混雑下においてユーザの要望をできるだけ満足するよう,経路だけでなく巡回順序の変更や巡回地点数の削減を行ったスケジュールの算出を行う.各ユーザが混雑を避けて優先度の高い地点をなるべく多く巡回し,希望する時間までに帰還できるようなスケジューリングを行うことで,独自の判断で行動した時に比べてより満足な結果が得られるようにする.本発表では,提案方式を実現するための基本方針を主として説明する.
 
田中 秀一郎 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:論文紹介"Towards a Web Service Composition Management Framework"
発表概要:Webサービス技術は,複数のWebサービスをメソッドとして呼び出し容易に連携させられるところに利点がある.しかし,既存のWebサービス管理方法では,それぞれのWebサービスを個別にしか管理できない.そのため,特定のWebサービスに問題が生じた場合,それを代替Webサービスと変更し発生した障害を解決することができない.この問題を解決するために本論文では,連携Webサービス管理の要求を分析し,その要求を満たす連携Webサービス運用管理のフレームワークを提案する.
 
西岡 隆司 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:プログラム難読化の一手法 "類似命令列の畳込み" の提案
発表概要:近年, デジタルコンテンツの普及により, デジタルコンテンツを扱うプログラムの解析や改ざんを防ぐ, プログラムの難読化が注目されている. プログラムの難読化とは, プログラムの解析が困難となるように, プログラムを等価変換することである. 本研究では, 自己書換えを用いた類似命令列の畳込みによる難読化手法を提案する. 類似命令列を畳込むことにより, 畳込みで削除された命令列を復元するための領域を不足させ, 難読化前のコードへ逆変換することを困難にすることが可能であると考えている. 本発表では, 類似命令列の畳込み実現のためのアイデアと予備実験による本研究の実現性について述べる.
 
西澤 茂隆 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:論文紹介 "Monitoring E-Business Web Services Usage through a Log Based Architecture"
発表概要:近年,Webサービスの出現によってe-ビジネスは大きな進歩を見せている.Webサービスによってもたらされるビジネス効果を十分に調査するには,ユーザによるWebサービスの利用状況を詳しく知ることが重要である.そのためにはWebのログをとる必要がある.しかしながら,既存のログ取得方法はWebサービスの利用を考慮したものではないため,ユーザの動向を追跡するのに必要な情報を十分に得ることができないという問題がある.そこで本論文では,顧客のネット上の振る舞いをフィードバックするために,Webサービスのログをとる新たなアーキテクチャ,"WSLogA"を提案する.具体的には,既存のログ取得法と,SOAPによる仲介に基づいたWSLogAを組み合わせることによって,ユーザからより多くの情報を得,問題の解決をはかる.本発表では,論文紹介と共に今後の研究方針についても述べる.
 
長谷川 宗士 コンピュータ設計学講座 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介“Software-Based Self-Test of Processors under Power Constraints”
発表概要:今日,LSIは広く利用されており,LSIに故障が存在すると正しく動作しないため情報機器などに多大な影響を与えてしまう.これを防ぐため,LSIテストは必要となる.しかしLSIテストのとき,考えられ得るすべてのテストパターン・系列を入力し,それらの出力をみることは不可能である.また,テストを効率よく行わないと,テスト生成時間,テストデータ量,テスト実行時間や消費電力の増大等といった問題がある.改善策として,プロセッサの命令レベルの自己テストという手法が提案されている.しかし,従来の手法では,信頼性の問題,歩留まりの低下,オーバーヒートという問題が残されていた.これを防ぐために本論文ではスイッチング頻度に注目した命令系列の並べ替え等を行い,高い故障検出率と電力量消費と平均電力消費の削減を同時に達成した.
 
福岡 佑介 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目: 論文紹介 "Web Service for Information Extraction from the Web"
発表概要: ウェブの成長に伴って有用なオンライン情報源が増加しているが,ウェブ上の情報は人間がブラウザを使用してアクセスすることを前提として表現されているため,プログラムから直接利用しにくいという欠点を持つ.その解決策としてウェブページから情報を抽出する Web サービスを構築することが挙げられるが,ウェブページからの情報抽出は様々な操作からなる複雑な作業であり,特定のウェブページに対応した情報抽出 Web サービスを構築してしまうと柔軟性が失われるという問題がある.本論文では,情報抽出タスクをいくつかのサブタスクに分解し,それらを組み合わせることで柔軟性の高い情報抽出 Web サービスを構築する手法を提案し,さらにサブタスクの組み合わせを容易に変更できるよう,その組み合わせを記述する XML ベースの言語を提案している.また,この提案手法を現実的な情報抽出タスクに適用し,その有用性を確認している.