ゼミナール発表

日時: 11月22日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:浅原 助手
高橋 典宏 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:論文紹介”Actions as Space-Time Shapes”(Tenth IEEE International Conference on Computer Vision, Volume2, pp.1395-1402)
発表概要:近年、映像監視における監視の見落とし抑止や監視の省力化のため、映像中の動物体の行動認識や異常行動の検出を自動的に行う技術が重要となっている。本論文では、映像の各フレームから抽出した動物体(人間など)のシルエットを時系列でつなぎ合わせたSpace-Time Shapeを用いて行動の認識・検出を行っている。つまり、映像中の動物体の動きを空間と時間の三次元的形状として扱う。実験により、「足を高く上げて歩く」「鞄を持って歩く」「犬と並んで歩く」などの様々な歩き方と、「歩く」「跳ぶ」「手を振る」などの様々な行動を比較し、行動認識のロバスト性に関する検証を行っている。また、バレエの映像から類似動作を検出する実験により、行動検出の精度についても検証を行っている。
 
竹内 翔太 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:音声案内システム「たけまるくん」における誤答の分析
発表概要:音声案内システムはユーザにとって自然で負担の少ない案内システムであ り、実用化が求められている。 当研究室では質問例文と応答を対にした質問応答データベースを整備している。 運用している音声案内システム「たけまるくん」では音声認識結果に最も近い データベース内の質問例文を選択し、応答を決定している。 現状では大人発話で応答正解率が70%程度であり、性能の向上が必要とされてい る。誤答への対策として、「表記ゆれの統一」・「言い回しによる識別」・ 「キーワードの言い換え」・「読みも考慮した形態素マッチング」が挙げられ る。今後は言い回しによる識別を行う方法として、頻出する言い回しをテンプ レートとして用いた質問例文選択を提案し、有効性を検証する予定である。
 
武富 貴史 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:論文紹介"Going out: Robust Model-Based Tracking for Outdoor Augmented Reality"(Gerhard Reitmayr et.al, International Symposium on Mixed and Augmented Reality 2006)
発表概要:屋外環境中での拡張現実感を実現するためモデルベースのハイブリッドトラッキングシステムを紹介する。提案手法ではテクスチャ情報を持った3次元の粗いエッジモデルを用いてカメラ位置・姿勢の推定を行う。また、オクルージョンの発生によって位置・姿勢の推定が失敗した際には、推定が成功していたフレームと画像間の対応関係を求めることでトラッキングが失敗したフレームのカメラ姿勢を求める。提案手法ではモデルから抽出したエッジを利用することで入力されたフレームとのマッチング精度を向上させる。また、粗いモデル使用することでモデル作成のコストを削減することが可能である。提案手法の精度やロバスト性については地上較正データとの比較により行った。
 
橘 健太郎 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:2次統計量に基づくICAの解析解を初期値とした高次統計量ICAに基づくBSS
発表概要:ブラインド音源分離とは (BSS) とは,観測された混合信号のみを用いて元の音源信号を推 定する技術である. BSS の代表的手法である独立成分分析 (ICA) は,元の音源信号が互いに独立であると いう仮定の下,混合信号中の独立な成分を評価することで,高度な音源分離が可能とな る手法である. しかしながら,従来の ICA では,分離フィルタは適切なコスト関数を用いて勾配法によって 反復学習されるため,演算量が多く,収束が遅いという問題がある. また,ICA の学習には,大きく分けて2 次統計量を用いるものと高次統計量を用いるものの2種類があり,長年に渡ってどちらがより妥当かの議論が行われてきた. 近年,これらの手法のうち,2 次統計量に基づく ICA において,反復法ではなく解析的に最適フィルタを得る手法が発見された. そこで,解析解によって得られた分離フィルタを高次統計量に基づく ICA の初期値 に用いることにより,従来の反復法の問題点であった収束性や演算量を解決する新たな BSS 手法を提案する. 本発表では,提案法の有効性を確認するために,従来法との比較実験の結果を報告する. また,提案法の分離性能結果から,ICA における 2 次統計量と高次統計量のうちど ちらが優れた統計量であるかという議論に対して,ある程度の見解を与える.
 
辰巳 格 知能情報処理学講座 木戸出 正継
発表題目:拡大教科書製本支援システムの開発
発表概要: 学校教育において、弱視と呼ばれる視覚障害のある子供でも普通教科書で勉強できるようにした拡大教科書というものがある。しかしこの教科書を製本するにあたり、弱視者が読みやすいように1)文字のフォントやサイズの変更、2)図表におけるコントラストの強調、といった配慮が必要なために、製作に手間がかかり常に供給が追いついていないという現状がある。そこで、本発表ではその拡大教科書の製本支援システムの開発を目的として、背景や提案システムの概要、及び研究対象として考えている分野(処理)を説明する。最後に今後の予定を述べる
 
谷 大輔 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:話者選択に基づく多対一声質変換の提案
発表概要:近年,ある人の音声を他人の音声へと変換する声質変換(Voice Conversion:VC)の研究が盛んに行われている.VCが社会に広く普及するためには,ユーザが手軽に使えることが望まれる.しかしながら,現状のVCは変換規則(変換モデル)を学習するために予め50文程度の発話データを必要とするなど,ユーザへの負担が大きいシステムとなっている.そこで,VCの新しい枠組みとして,変換する際に極少量の発声しか必要としないVCとして,話者選択に基づく多対一VCを提案する.ここで多対一VCとは,任意の話者の音声をある特定の話者の音声へと変換する枠組みであり,語学学習支援システムなどのアプリケーションへの応用が期待される手法である.提案法は,事前に収録された音声データベースからユーザに似た声質を持つ話者を数名選択し,選択された話者のみを用いて変換モデルを作成するという手法である.本発表では提案法における実験を行ったため,その結果を報告する.
 

会場: L2

司会:斎藤 助手
岩本 聡史 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:CSCWの現状 -問題領域の整理と分散システム領域の研究-
発表概要:コンピュータが社会へ浸透し、ネットワーク基盤が整備されたことによって、コンピュータを介した相互コミュニケーションや、情報の共有が盛んになってきた。学術的な側面からは、CSCW(Computer Supported Cooperative Work)という分野において、コンピュータ支援による共同作業が研究されている。本発表では、CSCWの現状について説明する。まず、CSCWにおいて現在議論されている問題を調査し、それらが5つの問題領域に分類できることを説明する。さらに、その中の分散システム領域に関して具体的に言及するため、この領域に関する2本の論文を紹介する。
 
辻 俊 情報基礎学講座 関 浩之
発表題目:グループ鍵管理に関する研究紹介
発表概要:安全にグループコミュニケーションを行うには、メンバ間でメッセージ送信する際の秘匿性、信頼性、完全性を保証しなくてはならない。これを実現するため、グループ鍵管理の研究がなされている。グループ内のメンバが使う鍵は、グループメンバの加入、脱退の際に必ず更新する必要がある。すなわち、グループに新しく加入するメンバには、その加入以前のグループ鍵が漏洩しないよう、また、グループを脱退するメンバには、その脱退後のグループ鍵が漏洩しないよう、鍵を更新する必要がある。単純な方法でグループ鍵管理をすると、グループメンバの数に比例した大きなコストが必要となるため、安全で効率的なグループ鍵更新方式が強く求められている。本発表では、LKH法を中心とした既存研究の紹介を行う。
 
嵪司 恭大 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介”The Real gain of Cross-Layer Routing in Wireless Mesh Networks,”(L. Iannone, K. Kabassanov, and S. Fdida, Mobihoc 06, pp. 15-22.)
発表概要: メッシュネットワークにおいて効果的なルーティングというのは解決されるべき問題である.そこで,無線特性を考慮したルーティングを可能にするために,階層間で情報を直接交換可能とするクロスレイヤアプローチを取り入れる.本論文では,クロスレイヤアプローチがどのように無線マルチホップのスループットを改善するのかを示す.また,ルーティングプロトコルをクロスレイヤデザイン有無の二種類用意し,いくつかの計測を行うことで,メッシュバックボーン性能の改善にはクロスレイヤアプローチが重要であることを示す.
 
佐藤 貴彦 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:RFIDシステムのセキュリティとプライバシ問題に関するサーベイ
発表概要:近年,次世代バーコードや個人認証技術としてRFID(Radio Frequency Identification)の普及が広まっている.NAISTにおいても学生証にRFID技術が導入された.しかし無線によりIDを読み取れるRFID技術は,その普及と共に様々なプライバシ流出の脅威が懸念されている.今回RFIDの様々な技術,そしてそれに伴うプライバシの脅威とその解決手法に関するサーベイを行った.
 本発表ではBlocker Tag,Soft Blockingなど既存のRFIDタグに適用できるプライバシ保護の手法,そしてハッシュ関数をベースとしたID保護手法などを紹介し,RFIDのプライバシ問題についてまとめる.
 
関本 純一 インターネット・アーキテクチャ講座 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介 "Toward bandwidth-efficient and error-robust audio streaming over lossy packet networks"
発表概要:帯域幅の有効利用とパケットロスによるエラーに対する堅牢性は、 マルチメディアストリーミングでの本質的な問題である。本論文ではパケットロスが多い ネットワークを前提とし、それらの問題について取り組んでいる。提案するエラー訂正法は、 再送を基準とした伝送と冗長データを付加する伝送であり、更にMPEG AACオーディオフレームを 複数のパケット間でシャッフルするというものである。また、優先度に基づいたデータ伝送に ついても示す。提案した手法はネットワークリソースの利用に関する理論値計算により評価する。 その結果より、帯域幅の利用効率とエラー堅牢性とのトレードオフを考慮した上で、最適な 手法を選ぶ。
 

会場: L3

司会:石川 助手
南條 信人 論理生命学講座 石井 信
発表題目:強化学習における価値関数近似の基底生成の考察
発表概要:価値関数近似を用いた強化学習法としてLagoudakisとParrによって提 案されたLSPI法という手法を用いて研究を行っている。この手法はランダムにサ ンプル生成を行い、オフラインで最適価値関数を学習するという枠組みが提案さ れている。また、LSPI法ではパラメータ線形の価値関数近似器が与えられたとき、 良い方策を得るためには基底関数の設定が重要である。これは基底の表現力が乏 しいとき、これは近似誤差の大きな価値関数を学習してしまうため、その価値関 数に基づく方策改善も大きな誤差をもつ。したがって、基底関数自体のパラメー タの学習もしくは、問題に適した基底関数の生成方法をする必要がある。従来研 究で用いられている手法を例として基底関数の自動生成方法を発表する。
 
西田 孝三 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:ポストゲノム研究における類似発現パターンクラスタリングアルゴリズムの検討
発表概要:マイクロアレイ実験技術の発達に伴い、大量の遺伝子に対する発現プロファイルデータを転写解析するためのバイオインフォマティクス技術も進展している。同じような機能を示す遺伝子は発現パターンが似ていることが多いことが経験的に知られているため、類似性の高い発現パターンをクラスタリングするアルゴリズムがいくつか提案されている。その一方Bittnerら(1999)およびIhmelsら(2002)は、ポストゲノム研究における統合データに既存のクラスタリングアルゴリズムを用いることの限界を指摘している。その指摘は、[1] 明確なクラスタが生成されるためには、解析に用いるデータにおいて十分な分離がなされていることが必要とされるが、ポストゲノムデータではこのような状況は得にくいこと[2] 遺伝子発現プロファイル解析による遺伝子制御関係を検討する場合に、遺伝子は典型的に制御される実験条件のみを対象とするべきこと[3]遺伝子とオントロジーなどによる遺伝子分類は1対多の関係にあることである。Ihmelsらは"Signature Algorithm"というアルゴリズムを提案し、上記指摘に対応したクラスタリングアルゴリズムを開発した。本発表では、ポストゲノム解析における問題点を整理し、"Signature Algorithm"を中心に発現プロファイル解析でのデータ分離、典型的に制御される実験条件の選択はいかにすべきかという問題の解決法を提案する。
 
前田くれあ 計算神経科学講座 石井 信
発表題目:感情の自己制御における脳活動計測〜感情のデコーディングと感情の自己制御における学習〜
発表概要:近年,感情(情動)と脳活動の関連を調べる研究がさかんに行われており,感 情を制御する分野においては単一の感情を主観的に自己抑制することに焦点が当てられて きた。しかしながらこの手法では感情変化の評価方法が主観的であるがゆえに,抑制した 結果を一般的に定量化することはできない。その上、人の心が単一の感情のみで動くこと は少なく,また感情を単純に抑圧することは精神医学の観点からもあまり勧められること ではない。そこで本研究においては,デコーディングの技術を用いて客観的に複数の感情 をリアルタイムで定量化し,それを用いて感情を自在に自己制御することを学習する。ま たその結果,感情の制御時における感情操作の学習がどのように行われているかの解明を 目指す。
 
山内 智博 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:MRIにおけるvariablePhase-Contrastを用いた血流計測に関する論文紹介
発表概要:非侵襲的な方法で生体内の血流を撮像する方法としてMRI (磁気共鳴イメージング)は用いられている。 MRIでの血流の撮像方法の1つとして、PC(phase-contrast)がある。 しかし、総頸動脈の血流は大きく変化するために、PCで撮像を行うとVNR(velocity-noise ratio)は低下する。 そこで、近年、総頸動脈の血流変化に対応したPCに関する研究が注目されている。 本発表では、総頸動脈の血流計測で従来のPCとvariablePCのVNRを比較した論文を紹介する。
 
黒岩 将 生命システム学講座 作村諭一
進化論的グラフ理論によるスケールフリー構造の動態解析(論文紹介)
遺伝子転写制御ネットワークなどを中心とした生物ネットワークにおいて、ネットワーク・モチーフ呼ばれる構造が多く現れることが知られている。現在の研究のフェーズは、モチーフの出現頻度などを調べるものから、モチーフがどのように「働く」かを調べることに移行しており、構造から機能への流れが加速している。モチーフには多数の種類があるが、とくにフィードフォワードループ(FFL)の機能に関しては石原ら(Gene to Cells, 2005)が構造と機能に一定の法則性を、計算機実験によって示した。Nowak(Nature, 2005)が提案する進化論的グラフ理論は石原らと異なったグラフの機能を定義しており、これに基づいたネットワークモチーフの動態解析は、新しい知見を得る可能性があると考える。本発表ではNowakらの論文を紹介し、それに考察を加える。
 
山下 哲矢 論理生命学講座 石井 信
発表題目:Error-correcting Output Coding に基づいたマルチカテゴリ問題の分類手法
発表概要:マルチカテゴリ問題とは, 入力に対して複数のカテゴリが割り当てられる場合にそのカテゴリを予測する問題である. 典型的な例は WWWの文章のカテゴリを分類する問題である. この問題を解くために2つのアプローチが研究されている. その1つは各クラスの2値分類器の結果をうまく組み合わせることで, 複数のクラスを予測する手法である. もう1つは多項分布が複数のクラスの組合わせを表現するように拡張されているParametric Mixture Model である. 本研究は前者の代表的な手法であるError-correcting Output Codingの枠組みの中で, 各分類器の識別結果を成分とする符号列と対応する教師信号を成分とする符号列が異なる場合を通信路のノイズによる反転と解釈し, 符号列に対するパリティを用いて, 識別率の向上を目指す枠組みを提案する. また, 提案手法の実験結果からその有効性を議論する.