ゼミナール発表

日時: 11月10日(金)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:村田 助手
青山 瑠美 情報基礎学講座 関 浩之
発表題目:低密度パリティ検査符号の復号アルゴリズムの改良法:アイデアと予備的検討
発表概要:次世代無線通信の誤り訂正符号として,低密度パリティ検査(Low-Density Parity Check: LDPC)符号が注目されている.LDPC符号は,シャノン限界に迫る性能を持つ線形符号であり,非常に疎な検査行列を持つことが特徴である.LDPC符号の復号時間は符号長に比例するが,シャノン限界に迫る性能を発揮するためには10の7乗もの符号長が必要であるといわれている.そこで,本研究では,LDPC符号の復号アルゴリズムの性能向上を目的として,復号アルゴリズムで復号に失敗するときのシンドロームの計算結果に着目した復号アルゴリズムの改良を検討する.本発表では,シンドロームの計算結果から,正しく推定された送信記号を推測,抽出することによって,復号アルゴリズムを改良するアイデアを述べる.
 
池田 直嗣 コンピュータ設計学講座 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介“Design for Hierarchical Testability of RTL Circuits Obtained by behavioral Synthesis”
発表概要:現在社会においてLSIは日常生活から医療機器等,非常に広い範囲で用いられている.そのためLSIに故障が存在すると,社会に多大な影響を与えてしまう.これを防ぐためにもLSIテストは必要不可欠である.しかしLSIテストにはテスト生成時間,テストデータ量,テスト実行時間や消費電力の増大等といった問題がある.本論文ではテスト生成時間の問題を改善する.具体的には,RTL回路に対して高位合成時の情報を用いて効率よくテスト生成ができる階層テスト生成を可能にする階層テスト容易化設計を提案している.ベンチマーク回路を用いた実験では提案法を用いて小さいオーバーヘッドで階層テストを可能とし,テスト生成時間の短縮に成功していることが示されている.
 
伊藤 信裕 情報基礎学講座 関 浩之
発表題目:
文献紹介 "History-Based Access Control and Secure Information Flow" (A. Banerjee & D. A. Naumann, CASSIS2004, LNCS3362)
発表概要:
情報フロー解析とは, プログラムにどのような機密度のデータが入力されたとき, どのような機密度のデータが出力されるのかを解析することをいう. 本論文では, HBAC(History-Based Access Control)と呼ばれる新しいアクセス 制御機構のための情報フロー解析法が提案されている. HBACとは, プログラムの実行履歴に基づいて, 動的にそのプログラムのアクセス権や メソッド呼出し権を決定する機構のことであり, Java実行系などで 用いられている「スタック検査」の拡張となっている. 本論文では,型理論に基づく定式化の下で,HBACプログラムの情報フロー解析法を提案している. また,「型安全なプログラムが非干渉性を満たす」という意味で,提案する解析法の正当性を証明している. 本発表では, Banerjeeらの論文の概要を紹介する. また, 今後の研究方針も述べる.
 
伊原 誠人 ソフトウェア工学講座 松本 健一
発表題目:論文紹介"How to Bridge the Last Gap of Detail for a Complete Integration of Web Services into Users' Tasks"
発表概要:近年,Webサービスに関する研究が盛んに行われている. Webサービスを用いることで,複数のサービスを連携させたシステムを容易に構築することが可能となる. しかし,サービス連携には専門的な知識が必要であるため,一般ユーザがサービス連携を実現し利用することは困難である. 本論文では,一般ユーザが自然言語を入力すれば,容易にサービス連携が実現できるアーキテクチャを提案する.
 
大阪 知克 データベース学講座 植村 俊亮
 

会場: L2

司会:久米 助手
安部 拓也 像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介 "Efficient Simulation of Large Bodies of Water by Coupling Two and Three Dimensional Techniques" (Irving G, et al. 2006. ACM TOG 25)
発表概要:大量の水の効率的なシミュレーションの新手法を紹介する。この論文では水ボリュームを従来のheight fieldの手法と同様に高く細い格子によって表現し、垂直方向に格子を粗くしたことによって計算の効率化を図っている。また、height field法の典型的な弱点を克服するために、水面付近のボリュームを3次元Navier-Stokes方程式の自由表面解によってシミュレートしている。これらにより、水底地形の影響を詳細に表現しながら水面の3次元的なふるまいを表現するのに成功している。本発表では、この論文に使われているいくつかの水のシミュレーション手法を紹介する。
 
粟津 優作 視覚情報メディア講座 横矢 直和
発表題目:論文紹介 "Space-time video completion" (In IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition 2004)
発表概要:動画像中に存在する不要なオブジェクトの除去や古いビデオフィルムの破損もしくは、欠落したフレームの修正等が可能な動画像の補間システムについて紹介する。提案手法では、局所構造に基づいた動画像の補間を行う。具体的には評価関数を定義し、この関数を最適化することで空間的、時間的整合性を保った動画像に修復する。失われた領域を含むシーケンスは参照シーケンスと対応させることで、整合性を保ったシーケンスに修復される。また、本手法はビデオフレームの1つとして考えることで、画像にも適用することが可能である。
 
飯田 拓  像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介”Comparison of Two VR Platforms for Rehabilitation: Video Capture versus HMD”(Debbie Rand et. al; Presence: Teleoperators & Virtual Environments April 2005, Vol. 14)
発表概要:近年,個々の病状に対するリハビリテーションに、バーチャルリアリティ(VR)技術を応用した研究が数多くなされている.依然としてバーチャルリアリティのリハビリテーションにおける有効性については,充分な検証がなされていない.未解決の問題の一つとして,適切なVRプラットフォームの選択が挙げられる.本発表ではスクリーンとHMDによるプラットフォームごとの臨場感や性質,副作用や疲れなどの特徴を比較することで適切な手法の検討を行った論文を紹介する.
 
石原 愛美 論理生命学講座 石井 信
発表題目: Aspect Modelによるユーザモデリング手法
発表概要:情報化社会によってユーザが膨大な量のデータを扱うシステムなどが出現し、ユーザがシステムを思うように扱うのが困難になっている。システムがユーザモデルを持つことでユーザの思考などの性質を予測、推定し、問題を解決することができる。このため、ユーザモデリングの必要性が考えられる。ユーザの性質が時間的変化する場合のユーザモデリングを目標として、まず複数ユーザに共通する隠れた性質を抜き出し、ユーザの性質を表現するモデルであるAspect Model(Hofmann,1998)を利用して、実際に各ユーザごとの印刷行動データを解析した結果、いくつかの特徴を持った性質をモデリングすることができた。結果の考察とともに今後の展望も述べる。
 
伊藤 哲雄  像情報処理学講座 千原 國宏
発表題目:論文紹介 "Imitation Learning of Whole-Body Grasps" (Proceedings of the 2006 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems October 9-15, 2006, Beijing, China) 
発表概要:ヒトはしばしば他のヒトを観察することによって操作を模倣し学習することがある.同様に,ヒトはロボットに対してデモンストレーションを行うことで、操作を教示することができる.それによって,ヒトは複雑なプログラムを書く必要がなくなってきている.現在,この技術を用いて舞踊をロボットに教示することや、オブジェクトを把持するという行為を教示することが可能になってきている.しかし,オブジェクトを把持する行為は指先だけで行うものが多く、腕や胴など身体全体を使ってオブジェクトを把持する行為は少ない.この発表では身体全体を使ってオブジェクトを把持する手法について紹介する.
 
大迫 慶一 音情報処理学講座 鹿野 清宏
発表題目:死角制御型ビームフォーマを組み合わせた独立成分分析に基づくブラインド音源分離の高速化手法
発表概要:ブラインド音源分離 (BSS) とは,観測された混合信号のみを用いて元の音源信号を推定する技術である. 独立成分分析 (ICA)に基づくBSSは,高精度な音源分離が可能という利点があるが,自身の分離フィルタを学習するために多大な計算量を必要とする欠点を持つ. そこで本研究では,ICAの学習に用いる周波数帯域数を削減し,削減された帯域を計算量の少ない死角制御型ビームフォーマで補間する演算量削減手法を提案する. 本発表では,提案法の有効性を検証するために,音声信号による従来法との比較実験の結果を報告する.
 

会場: L3

司会:小坂 助手
植良 諭 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:活動筋における酸素動態を考慮した筋疲労推定
発表概要:近年,人間の身体運動時の疲労を定量的に計測・推定し, 運動の有効性を客観的に評価する試みが注目を集めている. 一方,生理特性の計測分野では血液の動態を非侵襲的に測定する技術が新たに発見され,これまで以上に詳細な計測実験が可能となった. そこで本発表では,これらの実験から得た生理学的知見をもとに運動時における活動筋の酸素動態を推定し,筋骨格系,循環器系モデルを統合した人体モデルを用いた疲労状態を推定するシステムを考案する.
 
梅田 博徳 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:論文紹介"Having our cake and eating it too : How the GALEN Intermediate Representation reconciles internal complexity with users’ requirements for appropriateness and simplicity","Reconciling Users’ Needs and Formal Requirements: Issues in Developing a Reusable Ontology for Medicine"
発表概要:近年、患者の診療録情報を記載したカルテの電子化が普及している。電子カルテ化されれば、異なる病院間でも診療録情報を共有できるようになるはずだが、実際には実現されていない。その大きな理由の一つは、コンピューター内部では診療録記載の医学用語ターミノロジーが単なるテキストとして処理されており、語彙間の関係や意味的構造的な知識が含まれていないからである。そこで、病院間での電子カルテ共有を実現するため、語彙間の関係を知識としてコンピューターに与えるための関係表現方法について論じた論文を2件紹介する。
 
大堀 彰大 応用システム科学講座 杉本 謙二
発表題目:パケットロスが存在する環境下での遠隔制御系設計
発表概要:近年, 遠隔地にあるプラントをネットワーク越しに制御する遠隔制御が注目されている. この遠隔制御において, パケットロスはシステムの不安定化や制御性能の劣化を引き起こす原因となる. 近年, Imerらによってパケットロスを考慮した最適制御手法が提案された. そこで本発表では, このパケットロスを考慮した最適制御手法を紹介する. またその問題点を示し, 今後の方針として新しい遠隔制御手法を提案する.
 
川村 雄 応用システム科学講座 杉本 謙二
発表題目:モデルベース制御による調理家電のためのロバストPID制御
発表概要:IHクッキングヒーターや炊飯ジャーなどの調理家電の分野においても高機能化,高付加価値化の要求は日々高まっている.しかしこれらの機器の制御系設計は,依然として経験的なPIDゲイン調整が主流であるといわれており,近年発展の著しいモデルベースの各種制御理論の成果が生かされているとは言い難い.本発表では調理家電の温度制御において,有限要素法による数値解析に基づいて数理モデルを導出し,得られたモデルをもとに適応制御あるいはロバスト制御理論によって外乱や変動の影響を受けにくい高性能な制御系を設計する方法について考える.
 
倉木 大輔 ロボティクス講座 小笠原 司
発表題目:自然さを表すために必要なロボットの自由度に関する研究
発表概要:近年,様々なヒューマノイドロボットが開発されており,オフィス内にて 人の代わりにロボットが働く日もそう遠くはないと思われる. しかし,人のような自然な動きをできるように開発されているロボットは 少ない. 本発表では,まず既存のヒューマノイドロボットの自由度に注目し, その特徴を述べる.次にロボットが自然な動きを行うために必要な自由度に 関する論文を紹介し,最後に自然な動きをさせるために必要な自由度の 選別方法を提案する.
 
坂本 祐輔 生命機能計測学講座 湊 小太郎
発表題目:PETのためのDOI検出器の方式に関する研究(論文紹介)
発表概要:近年、三次元データ収集が可能なPET(陽電子放射断層撮影)の普及とともに体軸視野を拡大して感度を一層改善することが期待されている。しかし、従来型の検出器では高感度と高解像度を同時に達成することができなかった。この問題を解決するための方法として深さ方向の位置情報(DOI,Depth of interaction)を同定できる検出器(DOI検出器)が考案されている。今回、DOI検出器の方式について論じた二つの論文を紹介する。