ゼミナール発表

日時: 9月30日(金)5限 (16:50-18:20)


会場: L2

司会:中村文一 助手
開原 雄介 M2 鹿野 清宏 西谷 紘一 猿渡 洋
発表題目:マルチチャネル音場再現における 高品質な緩和逆フィルタの設計手法 発表概要:マルチチャネル音場再現システムとは,複数のスピーカーと 部屋の特性を打ち消す逆フィルタを用いて,任意の点に 所望の音を再現するシステムである. しかし伝達系が変化した際,固定逆フィルタでは音質の劣化や 雑音の拡大等が引き起こされる. この問題に対し,逆フィルタの不安定性を緩和することで 雑音の拡大を大幅に抑える手法が提案されている. しかしこの手法は,逆フィルタの緩和によって再現精度を 低下させる欠点を持つ. そこで本研究では,OnLine Adaptive TSVDを基に, 元の逆フィルタからの変化を最小限にする緩和により, 音質の劣化を抑えた緩和逆フィルタの設計手法を提案する. 本発表では,実験による提案手法の評価とこれからの 研究課題について報告する.
 
島田 雅之 M2 鹿野 清宏 西谷 紘一 猿渡 洋
発表題目:二次音源選択強調性を持つ多チャネル逆フィルタによるユーザ移動に頑健な音場再現 発表概要:本発表では,ユーザが定位置にいるときは原音場で聞こえる音像を正確に提示でき,かつユーザが移動しても音源の方向感が保たれる新たな音場再現システムを提案する. 従来手法では定位置以外での再現性は考慮されていないため,ユーザが移動すると音像が崩れる問題点がある. これを解決するため,音源方向の二次音源の音量を最も大きくするような逆フィルタの解を求めることにより,ユーザが定位置から離れた場合ではその二次音源の方向に音像を感じさせることが出来,かつ定位置では従来手法同様に精密再現できるようなフィルタの設計手法を提案する. 実験によって,従来法と比べて提案法がユーザの動きに対して頑健であることが示された.
 
田中 孝志 M2 小笠原 司 西谷 紘一 松本 吉央
発表題目:詳細な作業計測に基づく上肢機能訓練の定量的評価 発表概要:近年, 人口の高齢化が急速に進みつつある日本において, 様々な病状により機能訓練を余儀なくされる人々が増加している. 現在, 機能訓練の評価は療法士たちによる主観評価で行われており, 機能訓練に対する定量的評価が望まれている. そこで本研究では, 操作計測物体および様々な計測機器用いて上肢における機能訓練中の動作計測を行い, その定量的評価法を提案する. 予備実験として, 健常者を対象にペグインホールをタスクとした上肢機能訓練を実施した. モーションキャプチャおよび表面筋電計測装置を用いて, 被験者の上肢運動と筋活動を計測した. また, 被操作物体に加速度計と圧力分布センサを取り付け物体の運動と把持位置を計測した.
 
中村 幸紀 M2 杉本 謙二 西谷 紘一
発表題目:伝送遅延時間とその変動を考慮したゲイン切替え型オブザーバの設計 発表概要:近年,遠隔操作ロボットの災害救助や遠隔医療のように,ネットワークを介してフィードバック信号を伝送する制御方式が注目されている.しかし,ネットワーク通信を用いたとき,信号の伝送遅延時間が発生し,その遅延時間が不規則に変動する.その影響を受けて, 制御性能が劣化することが知られている.  このような系に対して, 遅延時間を伴う観測信号から,制御対象の現在の状態を 知ることができれば, 制御系を設計する上で好ましい. 例えば, 状態を知ること で, 出力情報を用いた制御則だけでなく, 状態量を用いた制御則も適用できるため,  制御系設計の選択肢が広がる. 現在の状態を知る際に,状態の推定機構(オブザーバ) の適用が考えられる.しかし,遅延時間が不規則に変動する系に対して,有効なオブザーバは残念ながら提案されていない. そこで本発表の目的は,遅延時間が不規則に変動する系に対して,状態推定を行う オブザーバを設計することである.具体的には,ゲイン切替え型オブザーバを提案 する.このオブザーバは,観測信号の遅延時間に応じてゲインを切替えることで, 制御 対象の現在の状態を推定する.また,共通なLyapunov解を用いてゲインを設計するので,遅延時間が変動しても,推定誤差が零に収束することが保証される.さらに,設計時にD-stabilityを用いて極配置の領域を指定することで, オブザーバの性能を改善することができる.
 

会場: L3

司会:石川周 助手
高井 友美子 D2 箱嶋 敏雄 小笠原 直毅 児嶋 長次郎
ネッノスツ・ワ。ァ多様な分子認識に関与するラデキシンFERMドメインの相互作用解析 ネッノスウオヘラ。ァERM(ezrin/radixin/moesin)タンパク質は細胞膜や細胞膜上の接着分子とアクチンフィラメントをつなぐ架橋タンパク質であり、N末端に約300残基からなるFERMドメインをもつ。このFERMドメインと相互作用する分子種は多く、相互作用の結果、FERMドメインの活性化、さらに他のタンパク質の活性化が引き起こされ、細胞接着・細胞骨格の制御などが行われる。本研究では接着分子とラデキシンFERMドメイン間における分子認識機構を理解するために、FERMドメインと接着分子PSGL-1、CD43間の相互作用を定量的に解析すると共に、複合体結晶構造解析を試みた。
 
福原 直志 D2 箱嶋 敏雄☆1 小笠原 直毅 川端 猛
発表題目:統計ポテンシャルを用いたタンパク質間相互作用予測 発表概要:細胞内では複雑な相互作用ネットワークが動的に形成されており、このメカニズムをより詳細に解明することがゲノム研究に望まれている課題である。本研究では、複合体のホモロジーモデリングを用いることによってタンパク質間相互作用データベースと複合体の立体構造データベースを統合し、モデル構造のタンパク質間相互作用面の立体構造情報を基に、未知の相互作用の予測を試みた。まずタンパク質間相互作用面におけるアミノ酸残基のコンタクト統計ポテンシャルを計算したところ、疎水性アミノ酸間などにコンタクトを好む傾向、同符号の荷電性アミノ酸間などにコンタクトを嫌う傾向が見られた。3種類の統計ポテンシャル(シングルポテンシャル、コンタクトポテンシャル、特異的コンタクトポテンシャル)を作成し、酵母のタンパク質ペアで相互作用するものとしないものについてスコア計算を行うと、両者の分布の分離は充分でないながらも、いずれの統計ポテンシャルを用いた場合も統計的に有意な差が得られ、コンタクトポテンシャルを用いたときに分布の分離は最大となった。さらに統計ポテンシャルの性能を評価するため、いくつかのデータセットについてタンパク質複合体の結合自由エネルギー(ΔG)と統計ポテンシャルから作ったスコアとの間の相関を調べたところ、相関係数は0.33〜0.85の値を示し、相互作用面のサイズ(残基数)を考慮した際に最も効果が上がることが分かった。データセットの中には、相互作用面のサイズと統計ポテンシャルを組み合わせてスコアを作ったときにΔGとの相関が最大となるものもあった。今後は、タンパク質間相互作用予測に有効な統計ポテンシャルに代わる特徴量を開発していく方針である。