ゼミナール発表

日時: 9月30日(金)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:佐藤智和 助手
貝野 友美 M2 鹿野 清宏 横矢 直和 猿渡 洋
発表題目:マルチ発話様式を考慮した肉伝導音声用音響モデルの評価 発表概要:空気伝導音声の収録を目的とした従来のマイクロフォンによる音声認識は,主に通常音声を対象としている.しかし,音声認識を利用する際に,周囲の環境に応じて発話様式は変化する.音量の小さな発声は,外部雑音の影響を受けるため従来のマイクロフォンによる利用が難しい. そこで,微小な音声に対応でき,外部雑音にも頑健であるNAMマイクロフォンを利用する.NAMマイクロフォンを利用して,様々な発話様式のデータを収集し,音響モデルの評価を行う.音圧レベルの異なる雑音下でのLombardデータに対しても音響モデルの評価を行う.
 
佐々尾 直樹 M2 小笠原 司 横矢 直和 松本 吉央
発表題目:単眼カメラによる顔情報計測 発表概要:近年,人の顔に関する様々な情報,顔向きや視線方向をリアルタイムに計測する 顔情報計測システムが提案されてきた.当グループではステレオカメラを使用し,非接触でかつ受動的に人の顔の動きに関する6自由度の情報の計測を行なう顔情報計測システムの構築を行なってきている. しかし,より広範囲な顔情報計測システムの利用を考えるにあたり,カメラ間の位置関係キャリブレーションのわずらわしさが問題となった.そこで,本研究では詳細な人の顔の3次元形状を使用し,単眼カメラによって非接触でかつ受動的に人の顔の動きに関する6自由度の情報を計測するシステムの構築について述べる.
 
高松 渉 M2 小笠原 司 横矢 直和 松本 吉央
発表題目:ビューシーケンスを用いたヒューマノイドのナビゲーション 発表概要:ヒューマノイドロボットが居室やオフィスのような環境内で人間と共存する際には,環境のナビゲーションは必須であるが,ヒューマノイドロボットには搭載できるセンサにサイズ,重量面の制約が大きいため,新たなセンサを追加することは難しい.そこで本研究では,ヒューマノイドロボットの頭部に搭載されているカメラを用いたナビゲーションを実現することを提案する.本発表では,カメラ画像を用いた経路教示手法を示し,その手法によって得られた経路に沿って実際にヒューマノイドロボットHRP-2を歩行させる実験を行い,その結果と考察を示す.
 

会場: L3

司会:北野健 助手
松本 将宜 M2 湊 小太郎 箱嶋 敏雄 杉浦 忠男
発表題目:全反射蛍光相関分光法を用いたプロテインチップの開発 発表概要:蛍光分子を結合させたタンパク質分子をガラス基板上に結合させたプロテインチップを作製する。この基板を調べたい物質の溶液に浸すと分子間相互作用が存在すればタンパク質分子に物質が結合して重量が変化する。これを全反射蛍光相関分光法で用いて測定し、蛍光の揺らぎの変化から重量の変化を求めてタンパク質相互作用を計測する。さらにチップ化することで、多種の分子間の相互作用を一度に網羅的に探索することを目指す。
 
奥村 元 M2 小笠原 直毅 箱嶋 敏雄
発表題目:Clostridium perfringensウエルシュ菌における染色体複製開始機構の解析 発表概要:染色体の複製・分配、細胞分裂の分子機構は枯草菌・大腸菌で詳細な研究が進んでいる。しかし、こうしたモデル細菌の知見が、自然界に成育する細菌でも同じなのか、かならずしも明らかでない。 Clostridium perfringensウエルシュ菌は、胞子を形成するグラム陽性偏性嫌気性桿菌で、枯草菌の類縁菌であり、3,03Mbpの環状染色体を有しGC含量が28.6%と著しく低く、2,660のタンパク質コーディング領域を有している。また、ガス壊疽、食中毒等を引き起こす病原微生物である。この菌の特徴として、感染時に著しく速い増殖速度を示すという報告があり、我々はこれに興味を持ち、その増殖の制御に関わる分子の挙動を、枯草菌と比較することを、研究目的とした。 まず、ウエルシュ菌の倍加時間をいくつかの温度下で測定した。しかし、予想と異なり、増殖速度の著しい速さを見いだす事は出来なかった。一方、蛍光顕微鏡を用いて核様体を観察したところ枯草菌とは明らかに異なっていた。このことより、染色体複製と分配機構について両者に大きな相違があるのではないかと推察した。 そこで、フローサイトメトリーを用いて染色体複製開始頻度を測定した。複製開始の同調性のために、枯草菌においては、oriCが4及び8個の細胞のピークが観察されるのに対して、ウエルシュ菌ではそうしたピークを測定することは出来なかった。そこで、この時の細胞を蛍光顕微鏡で観察し、細胞1つ当たりの核様体数を測定した。その結果、枯草菌とは異なり、ウエルシュ菌では、核様体が2から5個の間でランダムに存在していることが観察された。このことは、ウエルシュ菌が複製開始の同調性を失っている可能性も考えられる結果である。 今後は、FISH法によりoriCとterCを直接観察し、これまでの実験で得られた結果を再検討し、同調性を失っている複製開始機構についてさらに明らかにしたいと考えている。
 
楠屋 陽子 M2 小笠原 直毅 箱嶋 敏雄
発表題目:枯草菌の二成分制御系遺伝子ykoGHとABCトランスポーター遺伝子ykoFEDCの機能解析 発表概要:生物は環境の変化によって生存を脅かされており、環境の変化を感知し応答することは生き残るために重要である。細菌においては、その様なシステムの一つとして二成分制御系が存在する。一方、環境の変化に対応して細胞膜を超えて物質の排出・取り込みを行うことで細胞の恒常性を保つシステムも重要である。そうしたシステムとして、ABCトランスポーターが存在する。本研究では、枯草菌ゲノム上において隣り合って存在する二成分制御系遺伝子ykoGHとABCトランスポーター遺伝子ykoFEDCの発現が関連性を持つ可能性を考慮し、両者の解析を試みた。そこで、二成分制御系ykoGHがABCトランスポーター遺伝子ykoFEDCの転写制御をしているかをin vitro,in vivoそれぞれにおいて検証した。まず、レスポンスレギュレーターYkoGとykoF遺伝子の上流のDNA断片のゲルシフト解析を行った。その結果、YkoGがin vitroにおいて、ykoF上流配列を含むDNA断片に結合することが明らかとなった。次に、ykoF遺伝子のlacZ融合遺伝子株を用いて、細胞内におけるykoFEDCの発現制御様式を解析した。ykoFEDCはプロモーター領域の配列解析とYkoFの結晶構造解析からチアミントランスポーターであることが予測されている。そこで、チアミンがykoFEDCの発現を制御するかどうかを解析した。その結果、チアミン存在下では発現が抑制され、チアミン非存在下において発現が促進することが判明した。さらにチアミン非存在下におけるYkoG , YkoHによるykoFEDCの遺伝子の発現制御について解析した。その結果、ykoGH遺伝子欠損時においてもykoFEDCの発現に変化はなかった。今後、ykoGHとykoFEDC のプロモーター部位とYkoGの結合する部位の特定を行うと同時に、細胞内におけるykoGHとykoFEDCの転写制御の関連を検討する。
 
平松 鉱之介 M2 小笠原 直毅 箱嶋 敏雄
ネッノスツ・ワ。ァ :枯草菌YlmFはFtsZと直接結合して分裂に関与する ネッノスウオヘラ。ァ細菌の細胞分裂にはFtsZ、FtsA等の様々な因子が関わっており、タンパク質間の相互作用は細胞分裂における重要な要素である。そこで、分裂初期におけるタンパク質相互作用を同定するために、FtsAのHis-Tag融合タンパク質を発現する枯草菌細胞をホルムアルデヒドで処理し、そこからFtsAを含むタンパク質複合体を精製した。質量分析計により特異的に精製されたタンパク質を決定したところ、FtsA、FtsZ、EzrAに加えてYlmFが同定された。ylmFは枯草菌ゲノム上でftsAZと15kbp離れた位置に存在するが、多くの近縁種でylmFのオルソログはftsAZとオペロン構造をとっている。さらに最近、ylmFはStreptococcus pneumoniaeやSynechococcus elongatusにおいて分裂に関わる因子であることが報告されている。これらのことからYlmFが枯草菌においても分裂に関わる因子である可能性が高いと考えた。 本研究ではこの可能性を確かめるためにYlmFの細胞内局在の観察、ylmF欠損株における分裂への影響の観察、Yeast two-hybrid解析により分裂に関わるタンパクとの相互作用解析を行った。YFP-YlmFの細胞内局在を見たところ、分裂中の細胞でYlmFが細胞中央に局在することが観察された。またylmF欠損株では野生株に比べて細胞長が長くなる表現型が見られた。さらにYeast two-hybridの結果からYlmFはFtsAではなくFtsZと直接的に結合することが示唆された。このことからYlmFはFtsZと直接結合して分裂機能に関わっていると考えられる。 FtsZはtublinホモログであり、分裂時に重合して細胞中央でZリングを形成する。これまでにFtsZに直接結合するタンパク質としてFtsA、ZipAが知られており、どちらもFtsZのC末端に結合してZリングの安定性に関与していると考えられている。この様に、FtsZにおけるYlmFの結合領域の決定は、分裂初期にFtsZで起こる分子メカニズムを解明するのに重要な情報となりうる。そこで現在、FtsZにおけるYlmFの結合領域決定をYeast-two hybrid解析により行っている。また、YlmFと相互作用しなくなる変異型FtsZに関してもYeast-two hybrid解析によりスクリーニングし、実際に枯草菌でその変異がどのような影響を与えるかを観察する予定である。