ゼミナール発表

日時: 9月26日(月)5限 (16:50-18:20)


会場: L1

司会:佐藤哲大 助手
川脇 大 D2 石井 信 湊 小太郎 川人 光男 柴田 智広
発表題目: 円滑性追跡眼球運動において視標運動予測に関わる神経活動 発表概要: 近年,ヒト脳機能についての研究は,大脳皮質が統計的学習に基づいて外界の推定と予測を行っているとする仮説に焦点が当てられるようになってきた.それに対する数多くあるアプローチ方法の中で,眼球運動系は他の運動系と比べて明確な部分が多く非常に良い研究対象である.円滑性追跡眼球運動の系は網膜上の像のすべり(網膜誤差)を入力とし,100ms程度の遅延が存在する.しかしその制御は,正弦波運動に対してゲイン1で追跡できることから,主に視標運動予測に基づいて駆動されると考えられている.我々はこの視標運動予測の神経機構を調査するために,課題1:Overt pursuit task,課題2:Covert pursuit task,そして課題3: Attend-to-stationary target taskという3つのfMRI実験を行った.課題1は点灯し続けるか点滅しながら正弦波運動する視標を眼で追跡する課題であり,視標が点滅する条件では視覚入力の欠落を視標運動予測によって補う必要があるため,視標予測に関係する活動増加が期待できる.この課題を行った結果,中心前野,補足運動野,頭頂連合野,外側後頭側頭野の眼球運動関連領域と背外側前頭前野で視標点滅時の活動が増加した.次に,課題2は点灯し続けるか点滅しながら正弦波運動する視標を,固視点を注視したまま心的に追跡する課題である.実際に眼球運動を行わないこの課題では,Overt pursuit taskと同様の解析によって,直接眼球運動の遂行に関わる活動よりも視標運動予測に関わる活動が残ることが期待される.この課題を行った結果,外側後頭側頭野の活動のみが視標点滅時に増加した.最後に,課題3は静止する視標に固視点を注視したまま注意を向ける課題である.上の2つの課題の結果が点滅に対する注意の増加の効果によるものでなければ,視標の点滅の有無による活動の差はみられないはずである.実際にこの課題を行った結果,視標の点滅の有無による活動の有意な変化はどの領域にもみとめられなかった.以上の3つの課題の結果を総合すると,外側後頭側頭野における神経活動が視標運動予測の計算を担っていることが示唆された.本研究では視標運動予測に関わる部位を発見することができたが,円滑性追跡眼球運動に関するその他の領域との関係については推測の域を出ない.今後は数多くある円滑性追跡眼球運動の説明モデルの違いによって予想される脳内のプロセスの違いを考慮して,ヒトがどのようなプロセスを経て予測的な眼球運動を実現しているのかを調査する必要がある.
 
塚田 祐基 D2 石井 信 湊 小太郎 作村 勇一 川端 猛
発表題目:細胞の形態変化とシグナル分子時空間変化の定量的な解析 発表概要:細胞内シグナル伝達研究分野では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が開発されたことにより、これまで難しかった細胞内シグナル伝達の時空間的な観察が可能になりつつある。しかしながら、神経突起の伸長や遊走性細胞の細胞移動に見られるような、形態変化の激しい状況での解析は困難であり、これまでに定量的な考察はほとんど行われていない。本研究ではFRETのデータを時間、空間的に定量的な解析をすることで、細胞の形態変化や遊走性に関わるシグナル伝達機構の解明を目指す。発表では、神経突起を伸ばすPC12細胞において、形態変化の制御に関わるシグナル分子、Cdc42の時空間的な活性分布の変化と、細胞の形態変化について解析した結果を報告する。定量的な解析の結果、Cdc42の活性分布変化と細胞の形態変化のこれまで知られていない関係が示された。
 

会場: L2

司会:樫原茂 助手
笠藤 麻里 M2 砂原 秀樹 山口 英 藤川 和利
発表題目:医療にかかわる個人情報の共有およびプライバシ制御の現状と展望 発表概要: 医療の質を向上させるための取り組みの1つとして、必要に応じて患者を紹介したり、共同の診療にあたるなど、一次二次三次医療期間が、それぞれの機能の役割を分担する医療機能分化がすすんでいる。 この傾向にともない、患者の医療情報をどのように共有するかが問題となっている。 現在、医療情報がどのような流れで流通しているか、情報に関する所有者と権限は どのようになっているか調査を行った。 患者の医療情報の所有者は患者であり、医療期間はそれを預かっている立場にある。 プライバシ保護、個人情報保護、肖像権などの視点からみて、医療期間は 患者の意図しない情報の流通を防がなければならない。 本研究では、医療にかかわる個人情報、プライバシ情報をどのように扱っていくべきか、IT技術による展望を述べる。
 
斎田 佳輝 M2 砂原 秀樹 山口 英 藤川 和利
発表題目:サンプリング計測における トラフィック傾向把握手法の提案 発表概要:ネットワークを管理運用する者にとってネットワークがどのように利用されているかを知ることは、日々の管理および増強計画を立てる上で非常に重要である。一方でネットワークトラフィックは日々増え続け、その利用形態も多様になってきている。それぞれの解としては、サンプリング計測であったり、IDSを用いて利用形態を把握するなどが挙げられるが、同時に用いたときに新たな問題が発生する。本研究ではその様な状況下においても利用傾向を把握するために、サンプリング計測とIDSとを用いたときの問題点と、それらを用いてネットワークの利用傾向を把握するための手法について述べる。
 
森本 健志 M2 砂原 秀樹 山口 英 藤川 和利
発表題目:会議の意見交換システムを利用した議事録体系化手法の提案 発表概要:会議では,発表者と参加者で質問や指摘に議論が行われるが,この議論に参加できるのはごく少数の人間である.参加者で共有される口頭議論も,口頭議論に参加していない人間の指摘や質問・疑問も,共に発表者にとって重要な意見である.口頭議論に参加しない人間は,多くの場合,参加者同士で各種IMソフトを使って会話の延長線上で意見交換を行っている. そこで本研究では,現在一般的に使われているIMソフトであるmsn Messengerのエージェントを会議で稼働させ,参加者同士で会話のように交わされた意見の記録と,発表者の資料,口頭議論の内容を記録したログのそれぞれを関連づけ,会議の後に議論の様子を一元的に参照できる事を目的とする.その前述の目的のため,意見の記録を構造化する手法と,構造化によって一元的に参照できる関連づけの手法を提案する.
 

会場: L3

司会:中村文一 助手
中道 上 D2 松本 健一 小笠原 司 門田 暁人
発表題目:ユーザの振る舞いによるWebユーザビリティの低いページの検出 発表概要:Webユーザビリティは売上に影響するなど企業にとって重要性が高いと言われている. 使いやすいWebサイトを構築するためにはユーザビリティ評価を行う必要がある. 代表的なユーザビリティ評価の手法の一つとしてユーザビリティテスティングが挙げられるが, ユーザの発話データやVTRなどの記録データを分析するのに時間がかかるため, 評価作業の効率化,客観的な評価の実現を目的として, Web閲覧時のユーザの振る舞いに関する様々な定量データを記録し, それらを利用した評価支援手法が提案されている. このような評価支援手法に利用されるユーザの振る舞いの定量データには操作に要する時間, マウスの動き,視線の動きなどが挙げられる. ユーザの振る舞いに関する定量データには,専門的な知識を必要とせず ユーザビリティの低いWebページを検出できる可能性がある. しかし,これらのデータのうち,どのデータがWebページのユーザビリティの検出に有効で, どの程度の検出力があるかは明らかになっていなかった. 本発表では,ユーザの振る舞いに関する定量データとユーザによるWebユーザビリティ評価の関連について実験を行い, 定量的に分析したことについて述べる. その結果,視線の移動速度が使いにくいWebページを検出するのに有効であることがわかった. さらにマウスのホイール回転量を利用することにより, 192ページから89ページを判別し,ユーザが使いにくいと評価した18ページのうち, 17ページを検出することが可能となった.
 
近藤 誠宏 D2 小笠原 司 西谷 紘一 松本 吉央
発表題目:手内操作を対象とした直接教示入力のための物体操作認識システムの開発 発表概要:多指多関節を持つロボットハンドは構造が複雑であるため,従来の単純な教示法の適用は困難である.そこで人間の動作の観察から多指ハンドの教示入力を行う手法が提案されている.この手法は多関節の入力を直感的かつ一度で行えるため有効である.しかし教示者と多指ハンドとの間に,構造上の差がある場合は,教示データをそのままハンド側に転送しても,作業を正確に遂行できない.そのため,教示データを用いた操作認識により抽象的な操作の情報を取得し,そこから動作計画を立てるシステムが求められる.本論文では被操作物体に取り付けた圧力分布センサの正確な接触位置情報を用いて,指及び掌部(以下併せて掌面とする)の接触部位を取得し,掌面の接触状態の遷移を観察することで操作を認識する手法を提案する.これまでの研究では,単純な掌面の分割を用いて本手法の基本的特性を明らかにした.また、複数の操作データから平均を取ることで操作のテンプレートを生成した.さらに慣れや疲れを考慮したテンプレートの生成を行なった.本発表ではこれらの進捗について報告し,今後の研究の方針を述べる.
 
新田 益大 D2 杉本 謙二 西谷 紘一
発表題目:独立成分分析を用いた未知外乱抑制制御系設計 発表概要:本研究では独立成分分析を用いた未知外乱の同定とその抑制制御系の設計について議論する. 外乱はシステムに悪影響を及ぼす外生信号の一種であり,それは一般に,未知な信号が未知な経路を経由して作用するという特徴を有する. したがって外乱の情報を把握するのは困難であり,そのために抑制制御系の設計は難しい. しかし外乱は他の信号とは無関係に作用するため独立であると仮定できる. そこで本研究は,信号処理の分野でよく知られる独立成分分析を外乱推定に適用することを考える. 著者らは既に独立成分分析をブラインドシステム同定に応用する方法を提案しているが,外乱推定の場合,外乱のみが未知であり,制御対象は既知であるため``セミ''ブラインド同定の考え方が必要になる. 本発表ではブラインド同定のセミブラインド同定への拡張について述べ,それを用いた簡単かつ効果的な外乱抑制制御器の設計方法を提案する. また同定結果が外乱の伝達特性を表すため,外乱から評価出力までの$H^\infty$ノルムを最小化する制御器の設計も可能となる. 独立成分分析を用いた未知外乱抑制制御系の有効性を数値例によって確認する.