ゼミナール発表

日時: 12月6日(火)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:小木曽公尚 助手
殿谷 徳和 論理生命学 石井 信
発表題目: ベイジアンネットワークの構造推定 発表概要: ベイジアンネットワークは、複数の要因間の依存関係に基づいて不確実で非明示 的な情報を確率的に扱うための計算モデルとして、近年、データマイニング、ユー ザモデリング、機械学習、ゲノム解析など様々な分野に応用されている。ベイジ アンネットワークを用いて確率的な推論を行うためには、要因間の依存関係(グ ラフの構造)を知る必要があるが、これは一般的に困難であり、得られているデー タから要因間の依存関係を推定すること(構造推定)が必要となる。しかし、要 因数の増加と共に、考えられるネットワーク構造は指数関数的に増加するため、 要因数が多い場合に全てのネットワーク構造について考えることは不可能である。 本発表ではまず構造推定を効率よく行うための従来手法を紹介し、これらの手法 を実装した結果を報告する。更に、従来手法の問題点を明らかにして、今後どの ような研究を行っていくかを述べる。
 
中野 高志 論理生命学 石井 信
発表題目:報酬予測に関わるシグナル伝達系の同定 発表概要:ヒトをはじめとする動物は,自らの欲求を満たすような行動を適切に選択することで生き延びている. このとき欲求を満たすことを報酬と仮定すると, 動物は得られる報酬を予測し,得られる報酬が最大となるような行動則を獲得している. このような行動則獲得の過程を強化学習という. Doyaは脳内の神経修飾物質の働きと強化学習におけるメタパラメータの機能が対応づけられるという仮説を提唱した. 神経修飾物質の一種であるドーパミンは,黒質のドーパミンニューロンから線条体に投射され, 報酬予測に関わっていることが言われている. しかしドーパミンが分子レベルでどのように働いているのかという研究はほとんどなされていない. そこで本研究ではドーパミンを与えたときの線条体ニューロンのシグナル伝達系を同定し, ドーパミンがどのように報酬予測に関わっているのかを解明することを目標とする. 今回の発表では,これらの関連研究を紹介すると共に,自身の今後の研究方針について述べる.
 
仲野 嘉信 像情報処理学 千原 國宏
発表題目:論文紹介:"FOLEYAUTOMATIC : Physically-based Sound Effects for Interactive Simulation and Animation" 発表概要:近年のコンピュータ・グラフィックス(CG)は、コンピュータの性能の飛躍的な向上に伴う大域照明計算、物理シミュレーション計算の高速化によって、より自然の物理現象に近い映像をリアルタイムに表示することが可能となってきている。 しかし、CGにおける効果音については、未だ音響デザイナーが多くの労力、時間をかけて手作業で音入れを行っており、その効果音の妥当性は、個々の音響デザイナーの音感に依存している現状がある。 今後、よりリアルな映像表現を行うためには、映像に伴う効果音も、CGの物理シミュレーション計算とともに自動的にシミュレートする必要があると考えられる。 本発表では、その効果音シミュレート手法の1つである"PBS:Physically-Based Sound"を用いた"FOLEYAUTOMATIC"システムについての研究論文を紹介するとともに、自身の今後の研究方針について述べる。
 
福嶋 昌子 像情報処理学 千原 國宏
発表題目:論文紹介:"Projective Surface Matching of Colored 3D Scans" 発表概要:遺跡や遺物の保存手法の一つとして,近年三次元計測によるデジタルアーカイブの作成が頻繁に行われている.三次元計測においては,複数の方向から取得した複数の面の情報を一つの三次元物体に再構成するための位置合わせが必要となり,種々の研究が行われている.本発表では,位置合わせによって起こる不自然な領域を減らす手法の一つとして,色情報と距離情報,シルエットを利用したずれの指標を定義し,この指標を最小にするアルゴリズムについて述べた研究論文を紹介するとともに,自身の今後の研究方針について述べる.
 
西川 博志 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:ユビキタスアプリケーションシミュレータにおけるGUIの設計と実装 発表概要:大規模なユビキタスアプリケーションの開発において,その動作の正しさを現実空間においてテストするには,莫大な労力とコストがかかる.また,センサーやデバイスの設置位置と利用者の行動パターンの起こりうる組み合わせは多数存在しそれらを全て確認するのは非常に困難である.これらの問題を解決するために,著者の所属する研究グループでは,大規模ユビキタスアプリケーションのシミュレータの実現を目指して研究を行っている.本シミュレータでは,仮想空間の定義,仮想デバイスの設置,デバイス間の通信のシミュレーションにより,現実空間およびそこでのデバイスの動作を再現しアプリケーションの動作をシミュレートする.また,仮想デバイスの設置支援機能,環境の変化を忠実に再現する機能,与えた環境設定およびアプリケーションシナリオが意図通りに動作することを系統的に調べる機能などの実現を目指している.仮想空間上でのデバイス間の通信,デバイスを制御するソフトウェアについては現実環境で使用するものと互換性を持たせるようにする.本研究では,本シミュレータにおいて,仮想空間の定義,仮想デバイスの設置,ユーザの移動軌跡の設定,シミュレーション結果の3D表示を行うGUI部の設計・実装を行う.
 

会場: L2

司会:小坂洋明 助手
中村 圭吾 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:発話障害者音声を対象とした音響モデルの適応と評価 発表概要:近年の急速なIT技術の発達により、発話内容を文字に変換する音声認識技術が大きく進展した。これにより私達健常者の生活がより便利になっている一方で、発話に障害のある人達に対しては、この音声認識の技術を応用することは難しい。そこで本研究では発話障害者への支援を目的として、ある発話障害者の音声を対象に、音素ごとの音声波形パターンのモデルである音響モデルの適応を行い、発話障害者用音響モデルを作成した。また、作成した音響モデルの発話障害者音声に対する認識精度を検証するために、音声認識実験を行った。本発表ではこの音声認識実験の結果、現段階における問題点及び今後の研究方針について述べる。
 
早川 直樹 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:音声対話システムにおける履歴を考慮した適切な応答 発表概要:音声認識技術の高精度化によって、近年、様々な音声対話システムが構築されている。その中で、音声対話システム「たけまるくん」は、北コミュニティセンターで情報案内および天気予報やニュースの案内など幅広いタスクで情報提供をしている。ただし、現在のシステムは大規模なコーパスから作成された統計的言語モデルを用いており、専門的なドメインを追加する場合、そのモデルの更新によって実現することはコーパス収集及びモデル作成のコストが大きいという難点がある。そこで、ネットワーク文法を併用することで簡易にタスク拡張を行い、発話に対してのタスク判別も行う手法を適用し、生駒市のwebコンテンツであるフィールドミュージアムタスクの追加を行った。しかし、単に統計的言語モデルとネットワーク文法を併用するだけでは、ユーザの発話に対し正しい応答生成ができない。本発表では、その問題を改善する方法として対話履歴を考慮した適切な応答手法を説明し、今後の研究方針について述べる。
 
西野 勝章 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:ステレオビジョンを用いた人の検出に関する研究 発表概要:近年様々な場面において人の検出が要求されている。人の検出を行う事で交通や防犯また販売での展開を期待する事ができる。人検出の方法は様々な方法があるが、画像から人検出する方法としてステレオビジョンを用いた人検出がある。本発表ではステレオビジョンを用いた人の検出手法について概要と問題点を発表する。
 
初田 真吾 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:コンパス型ロボットのリンク角の制御による歩容の生成 発表概要:近年、歩行ロボットの研究では受動歩行と呼ばれる脚を歩きやすいような構造にして効率よく歩行を行う研究がなされている。しかし、受動歩行では直進のみといったごく単純な動きしかできていない。本研究ではコンパスモデルの二足歩行ロボットをその股関節の角度を制御することにより、簡易に歩容の生成、速度の可変、そして停止行動ができるかどうかを実験により示す。今回の発表では実験を行うまでの手順を具体的に説明する。
 
速水 能弘 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:ステアリング制約を有する車両の車庫入れ制御 発表概要:近年,バスの自動運転やパーキングアシスタントシステムなど,車両自身を制御する電子制御技術が注目を集めている.一般的な車両の制御は,ステアリング角により状態制約が与えられる非ホロノミック系の制御であるため,与えるステアリング角によっては移動不能となる場合や,任意の位置へ移動を行う際に切り返し動作などを必要とするなどの問題が生じる.しかし,ステアリング角に制約を与えたものや,切り替えし動作を自律的に行う車両制御についての研究はあまり見受けられない.そこで,本研究ではステアリング角に制約を与えた状態で自律的に任意の位置への車庫入れを行う車庫入れ制御について検証を行う. 今回の発表では,実機を用いた実験を行うために試作車両の設計を行ったので,作成する試作車両を中心に今後の研究方針について述べる.
 
東川 誠久 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:交差点進入時におけるドライバーの運転行動解析 発表概要:我が国の交通事故件数は自動車保有台数に比例して増加し,最近では年間に100万件近く発生している.事故原因を見ると,出会い頭の事故が最も多い.このことから正しい交差点進入を実践できていないドライバーが多いと考えられ,交差点進入行動を明らかにすることは重要であると考えられる.このような背景を受け,本研究ではドライバーの交差点進入行動を明らかにし,模範的な交差点進入行動モデルを提案することを目的としている.本発表では,主に解析に必要なデータ収集のための実験について述べる.
 

会場: L3

司会:中島伸介 助手
平本 新哉 言語設計学 渡邉 勝正
発表題目:論文紹介:"Highly Pipelined Asynchronous FPGAs" 発表概要:近年回路の動作周波数が上がるにつれて,消費電力の増加等が問題となっている. この解決方法として,クロックに同期せず動作する非同期式回路がある.しかし, 非同期式回路の設計には,予め回路の遅延モデルを想定する必要がある等,特有の問題が多い.紹介する論文は パイプライン動作する非同期式回路を実装するためのFPGA(Field Programmable Gate Array)の設計を行っている. このFPGAは,細かくパイプライン化され,ステージの数が多い,アーキテクチャの詳細を理解しなくても非同期式回路の設計,実装が行える, ロジックやワイヤの遅延が演算結果に影響しない等の特徴がある.本発表では論文の紹介を行うと共に, 今後の研究方針について述べる.
 
福井 健司 言語科学 ニック キャンベル
発表題目:統計的機械翻訳の改善を目的とする対訳コーパスを利用した言い換え表現と語の分類化 発表概要:近年、注目を浴びている「統計的機械翻訳」は対訳コーパスから翻訳知識となるモデルを構築し、そのモデルを用いて翻訳する技術である. モデルを構築する際、現状では対訳コーパス中の言い換え表現や語の分類化は全く考慮されていないが、これらを考慮することで現状のモデルよりも更に精度の良いモデルが構築できると考えられている.対訳コーパスを用いた言い換え表現獲得と語の分類化に関しては様々な研究が行われているが、両者は独立に研究されている傾向がある.本研究では言い換え表現と語の分類化を同時に獲得する手法を提案する.提案手法は、語の単語対訳を対訳コーパスから自動的に抽出し、 単語対訳と対訳フレーム(単語対訳が抽出された後の対訳文)の情報を二次元空間にマッピングすることにより、言い換え表現と語の分類化を行う.本発表では提案手法の実験結果を示すと共に、有効性・問題点・今後の研究方針について述べる.
 
福田 雄介 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介:"March Based Memory Core Test Scheduling for SOC" 発表概要:SOC(System On Chip)とは、複数のシステムを一つのチップ上に実装しているチップである。SOCでは、以前に設計されたシステムを一つのコアとして再利用することができ、現在、SOCには多数のコアが搭載されている。特に、メモリコアと呼ばれるメモリに関するコアの数が、大幅に増加している。このため、これらメモリコアをテストするために必要な時間が、SOC全体のテスト時間に大きな影響を与える。本論文では、メモリコアをテストするためのアルゴリズムの一つであるMarch Algorithmを用いて、多数のメモリコアを効率的にテストするためのスケジューリング方法が提案されている。
 
伏田 享平 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:論文紹介:"The Impact of Institutional Forces on Software Metrics Programs" 発表概要:ソフトウェア測定プログラムは,ソフトウェアやその開発プロセスなどの評価指標を定め,評価に必要なデータの収集・分析を行う組織内の活動であり,ソフトウェア開発組織の生産性および品質を評価するうえで重要なものである.一般にソフトウェア測定プログラムを実施するための具体的な作業は,組織内の環境の影響を受ける傾向にあると言われている. 本論文では,組織内部および外部の環境がソフトウェア測定プログラムに与える影響に関する調査を行った.その結果,組織内外の環境は,組織がソフトウェア測定プログラムの実施に関わる作業を行っていく際に実際に影響を及ぼしていることが統計的手法により確認された.さらに,これらの作業が組織にあった形に修正・適合されていくにつれ,組織内の意志決定時におけるソフトウェア測定プログラムの使用が増加することもわかった. 本発表では,本論文で得られた知見を元に,ソフトウェア開発管理およびプロセス改善活動に関する研究について,今後の研究方針を述べる.
 
和田 千穂 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:テーラーメイド医療実用化に向けた最近の展開-SNP解析技術と解析プロジェクト- 発表概要:ヒトゲノム解読が終わり、得られたゲノム情報を医療へ役立てるための数々の試みがなされ、その過程で単なるゲノム情報だけでは医療分野への適用に不十分であることが指摘されている。そこでゲノム情報を補完する形でプロテオーム解析、トランスクリプトーム解析、SNP解析が行われている。この中でもSNP解析は個人の一塩基多型を調べる解析であり、個々人の生まれながらの遺伝型に基づく体質・性質を知ることを可能にし、これらに対応した医療すなわちテイラーメイド医療の実用化に役立つと考えられている。よって効率的にSNP解析を行い、データベースとうまく連携した系を構築することがテーラーメイド医療の早期実現につながると考えられる。本発表では、マイクロアレイを用いたSNP解析技術の一つについての論文 “A Genome-widescalable SNP genotyping assay using microarray technology”と、この技術が大きく関与している「HapMapプロジェクト」(SNP解析推進のための国際プロジェクト)についての論文“The international HapMap project”を取り上げ、SNP解析に基づいたテイラーメイド医療実現への道のりを紹介する。