ゼミナール発表

日時: 11月25日(金)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:木谷友哉 助手
星野 貴昭 コンピュータ設計学 藤原 秀雄
発表題目:論文紹介 "Efficient Template Generation for Instruction-Based Self-Test of Processor Cores" 発表概要:ギガヘルツ単位で向上していくマイクロプロセッサに対して、実稼働速度でのテストが必要である。そのようなテストのためにプロセッサの命令でテストを行うことが重要になっている。このテストを行うための命令列であるテンプレートを、隣接レジスタという概念を利用し、レジスタ間のデータ転送と命令の依存関係を考えることにより効率的に生成する方法について紹介する。
 
堀 磨伊也 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介"Detecting Irregularities in Images and in Video"(International Conference on Computer Vision 2005) 発表概要:ビデオシーケンスで疑わしい振る舞いを追跡したり、画像で顕著なパターンを検出したりする問題に取り組みます。入力される画像データにおいて対象領域が疑わしいかどうかを判断する問題に対し、パズルをつくる過程として取り組みます。観測された画像やビデオを以前に作成されたデータベースより得られたデータの断片で構成しようとします。データベースから、連続したデータの断片として構成される場合、観測されたデータは正当で、逆にデータベースから構成できない場合、疑わしいと判断される。この問題は確率グラフモデルの推定プロセスとして述べられる。最後に画像とビデオで疑わしい振る舞いを認知するアプリケーションを示します。
 
松田 幸大 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介 "Fusing Points and Lines for High Performance Tracking" 発表概要:本論文は特徴点ベース、エッジベースのトラッキングシステムを統合することにより、リアルタイムでの3Dモデルベースのトラッキングにおける問題を解決します。これら二つのトラッキングシステムの特性を詳しく解析し、統合における設計をすることで、非常に高いパフォーマンスを実現できました。ここでは特に、二つのシステムの統合手法と、それらによる姿勢推定を示します。さらに、特徴点追跡のパフォーマンスを実現するためにどのようにオンライン学習が使用されるかも示し、リアルタイムでのパフォーマンスに向けて、FAST特徴検出器を紹介します。これらの技術の統合が、50°のカメラを6Hzで振っても、フレーム間で200ピクセル移動した物体でも追跡できるという、非常にすばやい動きでもトラッキングが可能であるという結果を生み出します。
 
堀内 崇宏 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:歩行の着地位置の確率的モデリング 発表概要:経路予測などヒトの行動予測に関する研究がヒトとロボットのインタ ラクションや監視カメラなどによる人物追跡などの研究分野において行われてい る.しかし,それらの多くがヒトを点や丸とみなしヒトの歩行を2足歩行運動とは みなしていない.また,臨床歩行やバイオメカニズムの分野においても進行方向が 変化するような歩行の研究はあまり報告されていない.そこで本研究はヒトの両 足支持期の状態と次の足の着地位置との関係を進行方向が変化するような歩行も 含め確率的にモデリングすることによりヒトの行動予測やヒューマノイドロボッ トの歩行経路生成に役立てることを目指す.
 
松本 修 ロボティクス 小笠原 司
発表題目:ネットワークカメラと移動ロボットの協調によるナビゲーション 発表概要:ロボットに搭載できるセンサには限界があり、また基本的なタスクを実現する 統一的な手法も考えられていない。しかし、近年ユビキタス社会の実現に向け た動きの中で、センサーネットワークの構築が考えられており、あらゆるセン サがネットワークに分布し、その情報にアクセスできるようになってきた。こ のセンサネットワークを利用してロボットの機能を拡張し、タスクを実現する 手法を考えることができる。発表では”移動”というタスクに注目して、ロボッ トに既存の機能とネットワーク上のセンサを融合して移動を行うシステムを提 案する。
 
牧野 明 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:高精細3次元ビデオ生成のための人物の部分領域トラッキングおよびカメラ制御 発表概要:近年、文化財のデジタルアーカイブの試みがなされている。この一つとして、能や日本舞踊といった無形文化財の高精細3次元ビデオ生成がある。本発表では、まずこの高精細3次元ビデオ作成 における本研究の位置づけについて述べる。 本研究の目的は、「人物の対象とする部分をズームアップした状態で精細にとらえ続けること」 である。これに必要なトラッキング及びカメラ制御について述べ、続いて関連研究の紹介を行う。最後に今後の方針について述べる。
 

会場: L2

司会:蔵川圭 助手
牧野 研司 論理生命学 石井 信
発表題目:強化学習を用いた複数制御器によるロボットの環境適応 発表概要: 近年ロボットの発達は目覚ましく、実環境下でもロバストな行動が可能なロボットの開発 が待たれている。本研究では、実環境での予想困難な外乱やダイナミクスの変化に適応する ための手法として、複数制御器を用いた適応制御に対する強化学習法に着目する。 これまでに、劣駆動型アクチュエータであるアクロボットの、振り上げ時及び倒立時の 制御器の切り替えのタイミングが、強化学習によって最適化されたことが 示されている。本研究ではこの複数の制御器に、周期的な信号を発生するCPG(Central Pattern Generator) を適用し、移動ロボットの環境に適応した運動生成を行う。 また、各制御器のパラメータの最適化も同時に行うことで階層的に学習 を行い、よりロバストな制御システムの獲得を計る。 発表では、本研究の概要と先行研究の紹介を行う。
 
森本 智志 論理生命学 石井 信
発表題目:拡張版Tiger Problemを用いた推定に関わる脳部位の機能分離 発表概要:環境同定に基づいて予測的最適意思決定を行うモデル同定強化学習が ヒトの脳内でも実現されているという仮説のもとで、環境のモデル、 価値関数、隠れ変数の推定といった主な要素が前頭前野の異なる局所 部位において実現されるという脳内情報処理モデルが提唱された。 またヒトのfMRI実験でも提案モデルと矛盾しない結果が得られてきた。 しかし、隠れ変数の推定と環境モデルの獲得の両方を同時 に学習する際の脳活動については、まだ調べられていない。 本研究では、これらの推定に関わる脳部位の機能分離を目的としている。 不確実情報のみに基づいて隠れ状態を推定する課題である「Tiger problem」 を拡張することで、不確実情報と状態遷移モデルから隠れ状態の推定を 行う課題を実現し、両課題実行時における脳活動を比較検証したい。
 
松原 佳亮 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:高比放射能[18F]標識薬剤を用いたPETによる薬物動態のCompartment解析 発表概要:PET(陽電子放射断層撮影)を用いて,生体内物質や投与した薬物の体内における動態の解析を行う研究が数多く行われている.しかし,現在までそれらの研究で使われてきた,[18F]F2を用いて標識されたPETトレーサーは,比放射能(単位分子数中の放射能量)が低く,投与する容量がコントロールしにくいため,データの精度が悪く,実験誤差も大きいという問題がある.そこで,本研究では,国立循環器病センターで開発中の高比放射能[18F]F2合成装置で生成した[18F]F2を用いて,投与量のコントロールが容易な高比放射能[18F]標識トレーサーを合成し,それを用いてPETで動物を撮像し,その測定結果から薬物動態のCompartment解析を行う.そしてより正確な薬物動態を捉えていく. 今回の発表では,主なPETトレーサーの1つである[18F]Fluoro-6-L-Dopa(18F-Dopa)の薬物動態に関する先行研究について,及び,本研究の概要について発表を行う.
 
和田 眞昌 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:ランダムショットガンデータに基づいたSNPs解析 発表概要:近年、多くの生物ゲノムが解析されその配列決定が行われている。また、その解析データから様々な研究が行われている。そのような研究のなかで多種間の生物ごとのゲノムの違いではなく、同じ生物間での遺伝子の変異といったことについての研究も注目を浴びている。一塩基多型(SNP)と呼ばれる変異はそのような研究から明らかとなってきた。 ゲノム解析は主にショットガン法という方法を用いて行われる。これはゲノムを断片化して解析を行い最終的に一本のゲノムとして繋ぎ合わせる解析法である。この時に得られる断片のデータを基に細菌におけるSNPの解析を試みる。
 
山倉 健 比較ゲノム学 金谷 重彦
発表題目:メタゲノム解析における統計的手法の開発 発表概要:メタゲノム解析というのは、細菌の群集構造を理解するため,環境を一つの遺伝子プールと捉え、ある環境下に生存している細菌群集をまるごとゲノム解析し,全遺伝子の動態を解析しようという新たな方法である。細菌群集をまるごとゲノム解析する場合,まず環境中より得られた細菌を単離培養することなく,ゲノムを抽出し直接シークエンスを行う。したがって,得られるデータはどの細菌由来か分からない約700bpの大量の配列断片データである。本研究は,メタゲノム解析全般でこれから必要とされる新たな解析手法の開発,および解析から得られる情報に基づいた新しい知見の創出が目的である。発表では、具体的に行う研究について述べる。
 
三井 康平 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:ソフトウェア開発者の作業や状態に着目した定量的データの収集・分析支援 発表概要:ソフトウェアの生産性・信頼性向上に対する社会的ニーズが高まっている昨今,ソフトウェア開発時の作業履歴や行動を計測,分析し,ソフトウェア開発の進捗管理や品質管理に役立てようという研究が盛んに行われている. 本研究は,従来から計測,分析が行われてきた開発者の作業や行動だけでなく脳波や心拍といった生体データを利用することにより,従来結果を認知的側面から検証するための環境を構築することを目指している.
 

会場: L3

司会:佐藤哲大 助手
松本 律子 情報基礎学 関 浩之
発表題目:センサネットワークにおける鍵格納法 発表概要:センサネットワークでは、ノードどうしが直接通信を行うため、安全なノード間通信の確立が望まれている。そのため、ノード間で暗号鍵を共有する必要がある。しかし、ノードは計算能力が非常に低いため、Diffie-Hellmanの鍵共有プロトコルの利用は望ましくない。そこで、ノードにあらかじめ鍵を格納する方式が提案されている。本発表では、既存研究で提案されている2つの手法と新たに提案する手法のアイデアを紹介する。提案手法では、高いリンク確率と高い盗難耐性の両立を目指した鍵格納法を構成する。
 
湊 大助 情報基礎学 関 浩之
発表題目:時間情報を利用した暗号に関する研究 発表概要:近年、機密情報漏洩事件が多発している。この種の事件では、デジタルデータの複製の容易さや不劣化性ゆえに被害が拡大しやすい。本研究では、長期間保持していてもデジタルデータは劣化しないという点に着目し、これを制御することで被害拡大を防止することを目指す。しかし現在これに関する既存研究は存在しない。そこで研究の手がかりとして、時間情報の利用という点で類似性のある時限式暗号の手法について調査した。本発表では時限式暗号に関する関連研究を紹介し、今後の課題について述べる。
 
安田 侑八 情報基礎学 関 浩之
発表題目:アドホックネットワーク上でのPKIに基づく認証モデル(文献調査) 発表概要:最近、モバイル端末間で自律的に構成される通信形態であるアドホックネットワークが注目されている。アドホックネットワークは、低コストで迅速かつ容易に配備できる反面、セキュリティ保全が従来のネットワークに比べて困難である。本発表では、アドホックネットワークにおけるPKI(公開鍵基盤)の構築に関する研究として、(1)複数の認証局を用いる方法、(2)PGPを利用した証明書連鎖による方法、(3)両者を組み合わせた方法を紹介し、併せて今後の研究方針を述べる。
 
三橋 禎 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:音源分離技術を用いた可変音像提示システムのための多チャネル圧縮技術 発表概要:近年,従来のステレオ再生技術より高い臨場感で音像を提示する5.1ch,7.1chなどの多チャネルサラウンドシステムが開発されている.この信号の多チャネル化に伴い伝送量が増大するため,多チャネルシステムに適した圧縮技術開発の要求が高まってきている.また,多チャネル音響システムで再生可能な現在のオーディオコンテンツは予め作成された音像のみであり,ユーザの嗜好に合わせた音環境を提供することは困難である.本研究では,音源分離技術と両耳受聴モデルを統合した可変音像提示システムのための多チャネル圧縮技術を提案する.提案法では,音源分離技術を用いて多チャネル信号を音要素毎にモノラル化し,音源の性質を利用して圧縮する.再生システムの多チャネル復元では,両耳間の関係を利用することにより,予め設定された方位,或いはユーザ所望の方位に音像を合成する事が可能である.本発表では,2音源の混合両耳受聴信号を用いた実験を通して提案手法の有効性を検証する.
 
矢井 友樹 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:マルチチャネル音場再現における温度補正処理のサブバンド分割による高速化 発表概要:マルチチャネル音場再現システムとは,複数のラウドスピーカを用いて所望の音を再現するシステムである.このシステムでは,室内の残響の影響を打ち消す逆フィルタが用いられるが,温度などの室内環境が変動すると再現精度が劣化してしまう.温度変動を補正する手法として線形伸縮処理が提案されている.これは,温度変化にともなう音速の変化を,室内の伝達特性を表すインパルス応答の伸縮により補正する.しかし,この処理には膨大な計算量が必要である.そこで,本研究では温度補正処理のサブバンド分割による高速化を提案する.この手法は,インパルス応答を各周波数帯域ごとに分割し,それぞれの帯域ごとに線形伸縮処理を行う.本発表では,実験結果から提案手法の評価とこれからの研究課題について述べる.
 
宮城 安敏 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介“Towards Commercial Mobile Ad Hoc Network Applications : A Radio Dispatch System” 発表概要:MANET(Mobile Ad Hoc Network)上で動作する無線通信システムのモデルを提案する。このシステムを経済性、技術性の両面から評価することによって、実現可能性のあるより完全なシステムを構想することが出来る。また、ノードの密度、接続時間、混雑による影響についてシミュレーションを行い、本モデルの実現性の高さを検証した結果、最適に運用するための手法を見いだした。さらに本モデルは特定のシナリオに限定した話ではなく、どのMANETシステムにも応用可能であり、非常に汎用性が高いものとなっている。