ゼミナール発表

日時: 11月9日(水)3限 (13:30-15:00)


会場: L1

司会:和泉順子助手
加藤 正治 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:論文紹介“High-resolution myocardial perfusion mapping in small animals in vivo by spin-labeling gradient-echo imaging”(Magnetic Resonance in Medicine, 2004) 発表概要:近年,臨床の場において心筋梗塞をはじめとした虚血性心疾患の診 断にperfusion MRIやマルチスライスCT,核医学検査による心筋の毛細血管レベルで組織血流を画像化した潅流画像が用いられている.これは組織内を通る血流に目印をつけ,その目印を追跡することで画像を得る方法で,目印として外部から薬剤を投与する必要があり,perfusion MRIやマルチスライスCTは造影剤を,核医学検査では放射性同位体を用いるため侵襲性を持っている.そのため,人間の病理を再生できる動物モデルが用いられた病理研究が行われ,さまざまな新手法が提案されている.それらの一つとして、心筋の潅流を画像化するには困難なラットを用い,perfusion MRIの手法の一つであり,目印として薬剤を用いないArtery spin labelingを適用した論文を紹介し,今後の研究方針について述べる.
 
河本 敏孝 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目: 医療手技VRシミュレーションにおける高精度な反力提示に関する研究 発表概要: 近年,医療事故や医療手技訓練の減少など,様々な問題点に対して コンピュータシミュレーションを用いた手法が提案されている. まず,現在注目を集めているヴァーチャルリアリティを使った人体シミュレーションの紹介を行う. 次に,本手法における問題点をあげ,その解決策として,一つの手法が記述された文献の紹介を行う. 最後に,現時点での研究の進捗状況,今後の方向性について述べる.
 
亀井 靖高 ソフトウェア工学 松本 健一
発表題目:協調フィルタリングに基づくJavaクラスファイル推薦システムの評価 発表概要:近年,多くのソフトウェア開発プラットォームでは,開発に役立つ様々なソフトウェアコンポーネントが提供されている.しかし,提供されるコンポーネントの数が膨大になるにつれ,開発者が有用なコンポーネントを発見しづらくなるといった問題が生じている.その問題を解決するために,協調フィルタリングを用いてJavaクラスファイルを推薦するシステムが提案されている.その推薦システムでは,開発中のソフトウェアを入力とし,今後の開発に有用と思われるクラスを未使用のクラスから推薦する.ただし,システムの評価は十分に行われていない.本研究では,現実のソフトウェア開発に沿った実験方法を設計し,Javaクラスファイルの推薦精度を評価する.本発表では,現在までに行った実験結果について述べる.
 
河合 紀彦 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介"Region Filling and Object Removal by Exemplar-Based Image Inpainting"(IEEE TRANSACTION ON IMAGE PROCESSING, VOL.13, NO.9, SEP 2004) 発表概要:近年、デジタル画像から大きな物体や引掻き傷を取り除き、視覚的に尤もらしく穴埋めする研究が盛んに行われている。以前、この問題は2つの方法により議論されてきた。1つは、大きな修復領域をサンプルのテクスチャより生成する"テクスチャ合成"手法、もう1つは、小さな修復領域を埋める"インペインティング"手法である。前者は統計学的な方法でテクスチャを修復領域に当てはめることで実現され、後者は線や物体の輪郭線といった構造を修復領域の内部に伝播させることで実現される。本研究では、これらの2つのアプローチの長所を合わせた新しく効果的なアルゴリズムを提案する。サンプルを基にしたテクスチャ合成はテクスチャと構造の両方の情報を伝える。しかし、構造の伝播を成功させる鍵は、穴埋めの順序である。提案するアルゴリズムは穴埋めの順序を決める優先度を計算し、優先度に基づいてサンプルからコピーすることにより画素を埋めていく。そうすることによって、テクスチャと構造情報を同時に伝播することが可能となる。また、計算はブロックごとに穴埋めすることで効率的となる。多くの実画像や人工的な画像で実験し、本手法で細かい傷や大きな物体を取り除くことを実証した。修復領域は手動で選択するが、修復領域の形に関わらないロバストな手法である。
 
北市 泰寛 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介 Reconstructing Open Surfaces from Unorganized Data Points (2004 IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition) 発表概要:曲面のレベルセット表現を用いて、組織化されていない点群に開曲面をフィッティングし、物体の曲面形状を得る手法を提案する。このような開曲面のフィッティングは、開曲面の境界を表している曲線を、陰関数表現で定義された曲面上で追跡することでなされる。この曲線は、曲面を表すレベルセットと補助的な役割をするレベルセットの交線で与えられる。この二つのレベルセットは、同じ動きベクトル場によって伝播していく。二つのレベルセットが開曲面の境界以外の場所で交わらないように特に注意しなければならない。このことを成し遂げるための手法を提案する。そして、早く良い初期値を見つける新しい手法を提案する。この新しい手法は、凸包の一区分を用いて、初期曲面の境界を線形近似する。この手法を用いて、structure from motionより得た点群に対して開曲面をフィッティングする。多くの場合、曲面は開いているか、またある方向からしか見ることができないので、この論文は実際的に重要な問題を解決している。いくつかのデータに対する実験が、この手法を後押ししている。
 
小谷 享広 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文発表 Automatic determination of text readability over textured backgrounds for augmented reality systems (International Symposium on Mixed and Augumented Reality '04) 発表概要:拡張現実感(AR)システムにおけるテキストの読みやすさに対し、パターン認識のアプローチを試みる。多くのARアプリケーションにおいて、ユーザに対し情報を提示する1つの手段として、対象領域にテキストのラベルを配置するというものがある。しかし複雑な背景にテキストを配置してしまうと、テキストの読みやすさに悪影響を及ぼす。本研究ではテキストの読みやすさに対する1つの指標を設けることを目的とする。そのために、背景の性質やテキストの読みやすさを決定する視覚的な特徴を利用する。これらの特徴に基づいて被験者による読みやすさの判定データを収集し、教師つき分類器を構築する。50種類の異なる背景に対して被験者の背景を400程度集めることで、分類器の85%以上の正解率を獲得した。
 

会場: L2

司会:河合栄治 助手
川口 誠敬 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:位置指向の情報の収集、構造化および検索手法 発表概要:インターネット上に分散するWWW文書を位置指向に検索するシステムを開発した。本システムでは、任意の地理的領域に属するWWW文書を検索することが可能である。本検索システムでは、選択的収集手法、構造化手法、地理的検索手法の3つの手法を開発した。選択的収集手法は、WWW文書の内容を予測し、位置に関連した情報を高い割合で収集することができる。構造化手法では、住所辞書を持った形態素解析と、住所表記の正規化を用いて、WWW文書からの住所抽出を行った。地理的検索手法では、構造化で付与された緯度経度情報と検索領域の重なりに存在するWWW文書の情報を提示する。この手法を評価した結果、提案手法は、検索領域として住所文字列をしようする従来のキーワード検索で少なくとも約25%存在していた検索もれを解消することができた。
 
久保 力也 インターネット・アーキテクチャ 砂原 秀樹
発表題目:論文紹介:Load Sharing and Session Preservation with Multiple Mobile Routers for Large Scale Network Mobility 発表概要:ネットワークモビリティ(Network Mobility:NEMO)において、ユーザーはモバイルルータを用いてインターネットへ様々な通信装置を接続することが可能になる。NEMOの特徴は、ネットワーク全体を移動体として扱うことができることである。そして、ネットワークへ接続するためのモバイルルータは、信頼できる通信とノードグループ内への高いデータ転送率を保証することが重要になる。この論文では、複数のモバイルルータの使用からくる問題を扱い、複数のモバイルルータを用いた場合の負荷分散及びセション保存に対するシミュレーションを行う。シミュレーション結果から複数のモバイルルータを用いた場合の効果を検証する
 
川嶋 賢二 像情報処理学 千原 國宏
 
川田 祥平 知能情報処理学 木戸出 正繼
発表題目:実時間任意視点画像生成に適した三角パッチ生成に関する検討 発表概要:複数台のカメラが設置された部屋の様子を異なる部屋から観察する研究を行っている.今回の発表では,現在取り組んでいる,複数のカメラ画像に基づく任意視点画像生成の手法について述べ,三角パッチ生成に関する検討を行う.また,現時点までの進捗状況と今後の課題について述べる.
 
木田 学 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:単語信頼度を用いた音声案内システムにおける応答正解率の改善 発表概要:音声認識分野において、人と機械との対話を実現する音声インタフェースの研究が盛んに行われている。そのなかで、一問一答形式の受付案内サービスを提供する「たけまるくん」は、実環境において多様な年齢層のユーザに利用されている。「たけまるくん」では、音声認識結果のうち尤度の高い候補から順次選択し、あらかじめ用意した各応答文のキーワードに対して単語マッチングによるスコア計算を行い、応答文を選択する。しかし、収集した発話データに対する応答文を主観評価した応答正解率から、現状では必ずしも適切な応答を選択していないと考えられる。本発表では、収集した発話データに対する応答正解率を示すとともに、認識エンジンによって算出される単語信頼度を用いて適切な複数の認識結果を選択し応答正解率を改善する手法を提案する。
 
小島 摩里子 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目:NAM音声を用いた個人認証の研究 発表概要:近年、生体情報を用いた個人認証(バイオメトリクス認証)の需要が高まっており、現在、指紋・声・虹彩などを用いた認証の研究が行われている。その中の一つである音声による認証は声を出すことで発声内容が周囲に聞こえてしまうため、パスワードを利用することが難しい。しかし、周りの人に聞こえることのないつぶやき声(NAM:Non-Audible Murmur)を使うことによってパスワード発声での話者照合が可能となり、より安全かつ高精度な認証が期待できる。本発表では男女計31名のNAM音声を用い、GMMとSVMを使用して行った話者照合の実験結果と共に、今後の研究課題について述べる。
 

会場: L3

司会:上田悦子 助手
木村 学 自然言語処理学 松本 裕治
発表題目:時系列を考慮したPLSAによるトピック抽出 発表概要:現在、インターネットなどを通じて大量の電子テキストに容易にアクセスできるようになっている。ネット上のニュース記事など、内容が多様に変化する大規模な文書群からトピックを自動抽出することは、実現が期待されている技術の1つである。本研究では、統計的学習の観点から同技術を確立することを目指しており、特に、新聞記事が与えられた場合に、トピック群の推移を抽出する問題を扱う。本発表では、前述の問題設定を明確にし、問題を解決する上で要求される理論的機能を提示する。さらに、近年注目を集めている確率的なトピック抽出手法であるPLSA(Probabilistic Latent Semantic Analysis)について説明し、本問題に対してPLSAを理論的に拡張する必要性があることを示し、その方向性を検討する。
 
木村 祐己 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:複数のカメラを用いたビジュアルフィードバックに関する研究 発表概要:視覚センサからの画像情報をもとにフィードバック制御をおこなう ビジュアルフィードバックが広く研究されている。 しかし、高速なサンプ リングを可能にする視覚センサ系は高価であり、導入へのボトルネックと なっている。本研究では30fpsのビデオレートで動作する複数のUSBカメラを 用いることで、安価で高速に応答可能なビジュアルフィードバック系の構築を検討する。 本発表では、複数のカメラの映像を統合する際の技術的な問題点を提示し、 特に、カメラ間の視点の違いによる問題に関して関連研究を紹介し、 その解決手法を提示する。
 
小島 知也 言語設計学 渡邉 勝正
発表題目:論文紹介“Configuration prefetching techniques for partial reconfigurable coprocessor with relocation and defragmentation”(FPGAs,ACM Press,2002) 発表概要:近年,動的にハードウエア回路を再構成する動的リコンフィギャラブルプロセッサが注目されている.このプロセッサはプログラム実行中に回路を再構成することで低消費電力,高い面積効率により柔軟で高速な処理を行うことが可能である.一方で,ハードウエア回路の再構成に要するオーバーヘッドが処理速度向上の問題となっている.本発表では,動的再構成可能なプロセッサの問題の一つであるオーバーヘッドを静的,動的,ハイブリッド方式のプリフェッチ技術を用いて削減した論文を紹介する.そして,今後の研究方針について述べる.
 
後藤 慶多 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:ソフトウェア開発プロジェクト再現シミュレータを用いた分析・レビューの効率化 発表概要:我々は、プロジェクト実行中に自動収集したファイルの更新や障害管理,メールによる会話などの履歴データから,プロジェクトの進行する様子をグラフィカルに再現するツールProject Replayerを開発している. 本ツールを利用することでプロジェクトの事後レビューを効率的に行うことが期待できる. 本発表では、Project Replayerのプロトタイプについての説明、デモ、今後の課題について述べる.
 
小橋 浩之 情報コミュニケーション 山本 平一
発表題目:キャリア重畳衛星通信方式の多値変調による伝送速度向上の研究 発表概要:静止衛星による衛星通信は,軌道上のスペースが限られているため周波数の有効利用が求められている.その一つの手段としてキャリア重畳衛星通信方式が提案されている.これは,例えばVSATシステムにおいて,自局からの信号と相手局からの信号を同じ周波数帯に重畳するもので,最大で二倍の周波数利用効率が得られる.従来研究では,変調方式としてBPSKやQPSKが考えられてきたが,本研究ではより高速伝送可能な16QAM多値変調にも対応できるように高性能化する.本発表では,その場合の問題点と今後の研究について述べる.