ゼミナール発表

日時: 11月4日(金)2限 (11:00-12:30)


会場: L1

司会:中尾恵 助手
上野山 雅史 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:GPSと慣性航法装置のオブザーバを用いた融合による位置推定 発表概要:移動する物体の位置を把握することは重要な問題であり、「自己位置推定」とよばれ古くから研究が行われている。通常、位置推定を行うため には複数のセンサを用いて、それらの計測値を融合することで精度を高める。本研究では、GPSと慣性航法装置(加速度センサとジャイロセンサの組合せ)をセンサとして扱う。しかし、従来法では加速度センサを用いる場合に初 期速度のずれにより誤差が累積する。そこで本研究ではオブザーバを用いて初期速度を推定することを提案し、高精度の位置推定を目指す。
 
植松 亨介 システム制御・管理 西谷 紘一
発表題目:ドライバの疲労度の推定 発表概要:疲労は感覚器官や認知能力の低下を招き、単純なヒューマンエラーを引き起こす。国内の交通事故の約75%はヒューマンエラーが原因とされており、疲労は交通事故の増加の一因となると考えられる。本研究では、生理指標と運転行動からドライバの疲労度の推定を行う。疲労と関連性がある考えれられる緊張度を評価することを目的として、ドライバの心拍変動の周波数解析を行った。本発表では、解析結果と走行場面の映像を示す。
 
大谷 真司 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:繰り返し制御理論を用いたパワーアシストの応用 発表概要:制御工学において、繰り返し制御という制御手法がある。繰り返し制御とは、周期運動に対する制御手法で時間遅れ要素を巧妙に用いて表現され、周期目標に対して出力が良好な追従特性を示すものである。その繰り返し制御の理論の概略を説明し、数値シミュレーションにより振る舞いを示す。また、繰り返し制御理論を用いて、周期運動である電動自転車のパワーアシスト制御を行う可能性について触れる。
 
小笠原 知義 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:遅延フィードバック制御とセンシングへの応用 発表概要:通常、線形制御理論では非線形な制御対象に対して平衡点近傍で線形近似を 行い、その近傍で制御を行う。しかし、システムのパラメータが変化することで 平衡点の位置が変化すると制御性能が劣化する。 一方、カオス制御の一つである遅延フィードバック制御では平衡点の情報を必要とせず、システムを漸近安定化できる。 本発表では、まず、遅延フィードバック制御について紹介する。続いて、倒立振子系に対する数値シミュレーションの例を示し、さらに今後の傾斜角センサへの応用について述べる。
 
甲斐 宏輝 応用システム科学 杉本 謙二
発表題目:拘束システムの遠隔制御に対するスイッチング制御則の改良手法の適用 発表概要:現実の制御系は、アクチュエータの飽和要素や制御対象の保護のための制限など、多くの制約条件が存在する。このとき補償器には、要求される制御性能を制約を満たしながら達成しなければならない、という一般に相反する性能が要求される。このような問題を解決する一手法としてスイッチング制御によるアプローチが注目されている。今回の発表では、平田、藤田らの論文「入力に制限を有する線形離散時間システムに対するスイッチング状態フィードバック制御則の構成法」を簡潔に紹介し、スイッチング制御の概要を説明する。また、今後の研究課題として、RCヘリコプターの操作やネットワークを介した車両制御のような、制約条件の存在するシステムを遠隔から制御する問題に対して、スイッチング制御則を改良した解決手法を提案する。
 
大谷 大和 音情報処理学 鹿野 清宏
発表題目: 混合正規分布モデルに基づく話者変換の品質改善と柔軟性の改善 発表概要:音声合成技術のひとつに混合正規分布モデルに基づく話者変換法がある.話者変換法では音声分析による合成を行うので,高品質な音声を得るためには高精度の分析が必要となる.本研究では,分析手法としてSTRAIGHT分析を導入し,話者推定の条件を変えた場合の音声の品質について比較,評価を行った.今後の研究課題として,話者変換の柔軟性の改善について述べる.
 

会場: L2

司会:安達直世 助手
内田 肇 論理生命学 石井 信
発表題目:ヒト視覚野において表現されている視覚情報の復号化 発表概要:現在までに,機能的磁気共鳴画像(fMRI)などの非侵襲的計測法によってヒトの脳の機能局在が数多く調べられているが,たいていは大まかな機能局在を明らかにするものであり,脳を理解する為に十分であるとは言えない.しかし最近の研究で,パターン認識に使われる技術をfMRIデータに応用し従来では調べることのできなかった情報を扱うことに成功しているものがある.つまり,fMRIデータには今までは調べられていなかった数多くの情報が含まれており,それらを研究することでヒトの脳の研究が更に進むと思われる.本発表では,既に発表されている新しい解析方法を紹介し,また,ヒト視覚野における情報表現・情報処理過程の解明の為にfMRIデータから視覚情報を復号化する手法についての今後の課題について発表する.
 
大佐賀 智 論理生命学 石井 信
発表題目:MOSAICモデルの方策オフ型強化学習法による拡張 発表概要:人間の環境や制御対象に対する適応能力に関して、脱適応や再適応が初めての環境への適応に比べ著しく早いという知見から、脳内の情報処理モデルとしてモジュール構造の考え方が提唱されている。この考え方に基づいて考案されたモデルの一つに、多重順逆対モデル(MOSAIC model)がある。これは、予測器(順モデル)とコントローラー(逆モデル)の対を単位としたモジュールを複数用意し、それらの予測誤差が最小のモジュールが最大の値をとるsoft-max関数により「責任信号」が計算され、それによって各モジュールの出力と学習を重み付けするモデルである。本研究は、MOSAICモデルに方策オフ型の強化学習手法を導入し、行動時に出力生成に関わっていないモジュールについても学習を進めることで、モデルパラメータの学習効率を上げることを目的としている。
 
大迫 政徳 論理生命学 石井 信
発表題目:階層ベイズモデルを用いたEEG電流源推定 発表概要:一般的に、MEGおよびEEG計測による電流源推定は、センサ数より電流源数が多い劣決定問題である。従来、電流源推定法としてダイポール推定法や空間フィルタ法などが考えられてきたが、これらの手法は電流源数をいくつに設定すればよいかなどの問題がある。そこで、これらの推定法の問題点を解決した手法として、階層ベイズモデルを用いた推定法がある。これはすでにMEG計測でその性能が確かめられており、本研究ではこの手法をEEG計測に応用しようと考えている。 EEG計測による電流源推定はMEGの場合に比べフォワードモデルが複雑となり電流源推定が難しいとされている。研究目的は、この手法を用い、シミュレーションと実験を通してその推定精度を調べることである。中間発表では、階層ベイズ推定の簡単な説明、EEG実験計画および今後の課題などを発表する。
 
大塚 誠 論理生命学 石井 信
発表題目:古典的条件付けの生成モデル 発表概要:脳の汎化・識別能力について語るとき、しばしば古典的条件付けのモ デルであるレスコーラ・ワグナーやピアースのモデルが引き合いに出される。し かしながらこれらの線形判別モデルは、動物実験の結果を再現するだけのために、 合成刺激を表すユニットを事前に入力層に含めなければならないなど、いくつか の問題点を含む。これらを解決するために、Aaron Courvilleらはベイズ推論に基づく生成モデルを提案し、判別モデルとは全く異るアプローチで古典的条件付けの実験結果を再現した。本発表では、このモデルについて説明し、いくつかの問題点を指摘した上で、可能な拡張について考察する。
 
宇山 一世 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:無線環境におけるサービス合成にもとづいたメディア配送方式 発表概要:ユビキタス社会では,ユーザは携帯無線端末を介してより高度なサー ビスが利用できるようになることが望まれる.そのような高度なサービスの一つ として,複数のマルチメディアコンテンツをハイビジョンTVのように好みのレイ アウトで見ることができるようにするサービスが考えられる.このようなサービ スを実現するため,携帯無線端末に複数のコンテンツを同時に受信・処理させる とネットワークや端末自身に負荷がかかる.本研究では,複数の携帯無線端末お よびそのコンテンツ配信要求(複数コンテンツおよびレイアウトを含む)に対し ,プロキシサーバでコンテンツを合成しユーザ端末に配信することで,ネットワ ーク資源および端末での計算資源をできるだけ削減する方法を提案する.提案手 法が扱う問題では,ユーザごとに見たいコンテンツの集合およびそのレイアウト が異なり,無線帯域にも制限がある.従って,全てのユーザの好みに合わせた合 成コンテンツをプロキシで作成し同時配信することはできない.そのため,ユー ザの要求を満たすために,プロキシではユーザ間で部分的に一致するコンテンツ およびレイアウトを合成コンテンツとして配信させ,ユーザ端末では幾つかのコ ンテンツを受け取って合成・表示させる.その際,合成のための計算負荷および 配信のためのネットワークの負荷の重み付き和を最小化するような合成コンテン ツの組合わせを計算するアルゴリズムを提案する.
 
榎本 真 ソフトウェア基礎学 伊藤 実
発表題目:MANETにおける需要を考慮した情報の登録・検索方式 発表概要:移動端末間のネットワークにおいて必要通信量および応答時間の点で優れた情報検索方式を提案する.本方式ではネットワークを地理的なエリアに分割し,カテゴリ分けされた各種情報に対するユーザの需要情報を集計して,検索時の応答時間が小さくなるように需要の多いエリアの各端末に情報を保持させる.これにより,各カテゴリごとに情報を保持するエリアが特定でき,LBMなどの既存プロトコルを用いてクエリを送信することで,フラッディングなどの方式に比べ通信量を低く抑えることが可能である.また,クエリに対する応答時間を短縮するため,各カテゴリの情報を保持するエリアをそのカテゴリの情報に対し需要が多いエリアに配置する.シミュレーションを行い,一般的な検索において提案方式がコストとパフォーマンスにおいて効果的であることを確かめた.
 

会場: L3

司会:石川周 助手
應和 春香 像情報処理学 千原 國宏
発表題目:論文紹介 Optical and Range Flow to Measure 3D Plant Growth and Motion (Image Vision Computing NewZealand 2000) 発表概要:絶滅に瀕している高山植物など、採集の難しい貴重な植物に傷をつけ ることなく三次元データを得られれば、いつでも手軽に復元して見ることが出来 る。しかし、植物の葉や茎、花などは形状が変化しやすいため、測定方法を工夫 する必要がある。本発表では、三次元での速度場の変化であるレンジフローを用 いてデータを取得する手法を紹介する。紹介する論文では、見かけの速度場の変 化であるオプティカルフローを用いて二次元での植物の成長速度を、また、レン ジフローとデプスマップを用いて三次元空間での成長に伴う植物の動きを調べた。
 
大蔵 君治 ソフトウェア設計学 飯田 元
発表題目:ソフトウェア開発用メーリングリストの情報を元にしたトラブルの発生から収束までの期間の特定 発表概要:ソフトウェア開発用メーリングリストのテキスト情報から自然言語解析とクラスタリングアルゴリズムを用いて,ソフトウェア開発におけるトラブルの発生から収束までの期間を特定するシステムについて述べる.
 
大里 まゆみ 情報コミュニケーション 山本 平一
発表題目:キャリア重畳衛星通信における遅延測定手法 発表概要:無線通信においては、周波数有効利用技術は必須の技術である。衛星通信においても、画像通信のニーズの高まりの反面、衛星軌道が限られているため、周波数不足が深刻な問題となっている。そこで、周波数有効利用のために、キャリア重畳衛星通信というものが考案されている。キャリア重畳方式を用いる通信では、自局送信信号が他局送信信号と重なって受信されるため、信号キャンセラが用いられる。本発表では、そのキャンセラに必要な遅延測定に関する研究を紹介し、より高精度な手法についての今後の研究課題を述べる。
 
賀川 圭介 情報コミュニケーション 山本 平一
発表題目:地上波デジタルテレビ放送携帯受信機のリアクタンス可変アンテナによる低速フェージング特性改善 発表概要:地上波デジタルテレビ放送の移動体向け受信では、マルチパスフェージングによる伝送特性の劣化大きな問題となる。マルチパスフェージング対策として、時間、周波数インタリーブを併用した誤り訂正符号化が行われている。しかし、フェージング速度が数Hz以下の低速になるとフェージングによる電界強度の低下時間が時間インタリーブサイズを超えるためにインタリーブ効果が低下し、誤り訂正によるフェージング特性改善効果が低下するという問題があった。そこで、リアクタンス可変アンテナのリアクタンス値を高速に変化させることで、擬似的に高速フェージング状態を作り出し、ダイバーシチ効果をあげる方式を提案する。
 
大野 純佳 視覚情報メディア 横矢 直和
発表題目:論文紹介 Continuous Tracking Within and Across Camera Streams(CVPR '03) 発表概要:異種の複数のカメラによって観察された動物体の継続的な追跡のための新しい手法を提案する。本手法では固定カメラと、パン・チルト・ズームを行うカメラからのビデオストリームを同時に処理する。動くカメラのストリームから動物体の検出は、アフィン変換によりカメラ動作を概算して考慮する順応的な背景モデルを定義することによって実行される。動物体の動作と外観を別々に2つの確率モデルとして作成することにより、追跡問題を対処する。外観確率モデルのための色分類モデルは、追跡されている物体のより詳細な説明を保証するであろう。動作確率モデルはカルマンフィルタプロセスを使って得られる。これは動物体の次の位置を予測する。そして追跡は同時確率モデルの最大化によって行われる。本提案における新しさは動くカメラ、固定カメラによって観察された複数の軌道を作成することである。これは、同時に2つのカメラで見られたオブジェクトのためのより正確な運動計測とオクルージョン(検出とカメラハンドオフにおけるエラー)を自動的に取り扱う。最終的にビデオ監視における本システムの実行結果を示す。
 
海内 梨紗 生命機能計測学 湊 小太郎
発表題目:論文紹介 A new determination of the shear modulus of the human erythrocyte membrane using optical tweezers (Biophys.J. 1999) 発表概要:近年、工学・医学・生物学分野で光ピンセットを用いた研究が増加している。光ピンセットは、レーザー光を対物レンズで集光させ、放射圧を利用し、非接触・非破 壊で微小粒子を捕捉し、自由自在に操作する技術である。本発表では、光ピンセット を用いて細胞膜の力学的特性(shear modulus)を計測する方法を開発し、ヒト赤血球の 細胞膜のshear modulusを計測した結果について報告された論文を紹介する。本論文で は、細胞膜上に固定した粒子を光ピンセットで操作することで赤血球を変形させ、力 と変形量の関係を計測することで力学特性を求めている。発表では、光ピンセットに よるヒト赤血球の計測について述べ、マイクロピペットを用いた同様の実験結果と比 較する。