ゼミナール発表

日時: 10月29日(金)(11:00-12:30)


会場: L1

司会:新保 助手
大元 靖理 M2 鹿野 清宏 松本祐治 Nick Campbell 猿渡 洋
発表題目:F0コーパスを用いた韻律変換システムの提案
発表概要:入力された音声を異なる特徴を持つ音声として出力する技術を声質変換と言い、これは主に音声の話者性変換を目的としている。現在は声道情報であるスペクトルを操作して目的話者の声色に近付けているが、声帯情報である基本周波数の時間変化(F0パターン)は変換されていない。故にイントネーションなどの韻律情報は元話者のままである。本研究では従来変換されていなかった声帯情報を変換して、より目的話者に近い音声を作ることを目的とする。今回は韻律情報の中でも特にイントネーションの変換に注目した。発表ではF0コーパスを用いた韻律変換手法を提案し、その試作結果と今後の研究計画を報告する。
 
東 剛生 M2 鹿野 清宏 松本裕治 Nick Campbell 猿渡 洋
発表題目:Non-Audible-Murmur(NAM)から通常音声への変換手法の提案
発表概要:周りに自分が話している内容が聞こえない、迷惑がかからないという利点がある無音声電話の実現が望まれている。この実現のために、NAMという体の中を伝わる音が利用できると考えられる。NAMの特徴として基本周波数(f0)がないことと高域の周波数成分がないという問題がある。本研究ではこのNAMの持つ特性を考慮してNAMから通常音声に変換することを目的とする。発表ではGMMに基づく声質変換技術を用い、スペクトル変換を行った結果を示すと共に、有声音から無声音への変換手法の検討も行う。
 
山田 真士 M2 鹿野 清宏 松本裕治 猿渡 洋
発表題目:実環境情報案内システムにおける自立語信頼度を用いた不要発話の棄却
発表概要:近年、音声認識技術を利用した音声対話インターフェースに対する注目が高まっている。静かな環境でシステムに対して明確な意図をもってな発話が行わる場合、システムが応答可能な発話が多く、また高精度な認識結果を得ることができるので、スムーズな対話が行われるケースが多い。しかし実環境では、雑音や背景会話などの不要な入力によってシステムが誤応答する問題が生じる。この問題に対する1つの手法として、自立語の単語信頼度から不要発話を棄却する手法を提案する。本研究では生駒市北コミュニティセンターに設置されている実環境音声情報案内システム「たけまるくん」によって収集されたデータを元に不要発話の棄却実験を行い、システムの応答精度への影響を調査した。本発表では実験結果を示すとともに、今後の研究方針について報告する。
 
加藤 有己 M2 関 浩之 松本裕治 楫 勇一
発表題目:RNA2次構造記述向き文法の生成能力について
発表概要:RNA(ribonucleic acid, リボ核酸)の構造は階層的に1次構造、 2次構造、3次構造と分類されている。 特に、相補的な塩基どうしが結合して構成される2次構造を、 文脈自由文法で記述する試みが広く行われている。 しかしながら、シュードノットと呼ばれる文脈自由文法では表現できない 構造があるため、 シュードノットを記述するための形式文法がいくつか提案されているが、 互いの生成能力の比較は行われていなかった。 一方、発表者のグループは以前に文脈自由文法を拡張した多重文脈自由文法を 提案しており、シュードノットを記述できることがわかっている。 本研究では、代表的なRNA2次構造記述向き文法に対し、 それらと生成能力の等しい多重文脈自由文法の部分クラスを導入する。 次に、これらのRNA2次構造記述向き文法について、 閉包性や生成能力の相互関係を明らかにする。
 

会場: L2

司会:佐藤哲大 助手
五十嵐 康伸 D2 石井 信 湊 小太郎 柴田 智広 作村 勇一
発表題目:前頭前野にみられる神経細胞の持続的発火活動に対する短期シナプス抑制の役割:シミュレーション研究
発表概要:サルの遅延反応サッケード課題において前頭前野の神経細胞活動を記録すると,まるで手がかり刺激を記憶しているように持続的な発火活動を示す神経細胞がある. この持続的発火活動は興奮性神経細胞が再帰的に結合することで実現されていると考えられている.しかし抑制性神経細胞からのフィードバックを考慮にいれると,持続的発火活動は非常に不安定になる.本研究では,短期シナプス抑制が興奮性-抑制性神経細胞の活動のバランスを自動的に取り,持続的発火活動を安定化させる機構であることを提案する.
 
佐々木 豪 M2 石井 信 湊 小太郎 柴田 智広 作村 勇一
発表題目:2ニューロン系の多変量ARモデルに基づいた相互作用解析
発表概要:本研究の目的は、神経ネットワークの推定である。脳機能の理解に向けて、単一ニューロンの性質や非侵襲計測による機能の局在性に関する研究が盛んに行なわれてきたが、脳の高次機能を解明するためには、相互に影響し合う神経集団や、複数の電極・チャネルによって構成されるネットワークの相互作用の理解が重要である。ユニット間の因果を明らかにしたり、ネットワークのダイナミクスを理解するには、従来の相関解析では不十分でネットワークのモデルに基づいた解析が必要であるが、これまで十分な研究がなされてきたとは言えない。本研究では、神経細胞ネットワークのシステム同定手法確立への一歩としてニューロンが結合した系を対象とし、その相互作用をAkaikeよって提案され多変量ARモデル(MVAR)に基づいたフィードバックシステム解析法を用いて行ったので報告する。
 
本田 直樹 M2 石井 信 湊 小太郎 柴田 智広 川端 猛
発表題目:神経細胞における局所カルシウムシグナルと拡散効果の 重要性(シミュレーション研究)
発表概要:発表概要:神経細胞におけるシナプス可塑性は、シナプスに高頻度 刺激が与えられることにより、NMDA受容体から後シナプスへCa2+イ オンが流入し、シグナル伝達に影響を与えることにより誘導される 。最近、NMDA受容体近傍の高濃度Ca2+領域において、LTP誘導が制御 されていることが報告されている。これは空間局所的なシグナル伝 達の存在を示唆しており、タンパク質の局在や拡散が重要な要素で あると考えられる。しかしながら、それらの要素がシグナル伝達に 対してどのような効果を持つかに関しては実験技術的な問題により 調べられていない。本研究の目的はタンパク質の局在や拡散の影響 を、シミュレーションを用い解析することである。中間発表では、 シミュレーション結果と今後の予定について報告する。
 
豊田 盛裕 M2 湊 小太郎 石井 信 杉浦 忠男
発表題目:光ピンセットを用いた一分子蛋白質間相互作用における力場計測システムの開発
発表概要:本研究では、光ピンセットを用いて単一蛋白質分子間に生じるnNレベルの微小力を定量的に測定するシステムを開発することを目的としている。蛋白質―蛋白質間の相互作用における力場を定量的に計測することで、蛋白質間の相互作用を評価する方法として非常に有効な手法であると考えている。研究計画では、計測対象となる蛋白質は、相互作用することが明らかになっているストレプトアビジン−ビオチン、酵素と基質の関係であるGST−グルタチオン、リガンド−レセプターの関係である繊維芽細胞増殖因子とその受容体FGF−FGFR、それぞれの一分子蛋白質間における相互作用の力場計測を目的としている。 主要な要素技術として、光の放射圧により粒子を捕捉する技術である光ピンセット、一分子の粒子を照明するための全反射型顕微鏡システムであるエバネッセント顕微鏡、そして粒子からの散乱光を電圧に変換するために光電子増倍管を用いている。さらに、nmスケールの精度でZ軸方向の移動制御が可能なピエゾアクチュエータを用いる。これらの計測機器などをPCに統合することで、光学的に一分子蛋白質間の力場を計測するシステムの構築を目的としている。