ゼミナール発表

日時: 10月19日(火)(15:10-16:40)


会場: L1

司会:安達 助手
片山 俊郎 D2 湊 小太郎 杉本 謙二 杉浦 忠男
発表題目:血糖値予測のためのカオスモデルの作り方
発表概要:2型糖尿病の空腹時血糖の変動を抑え、高血糖状態を是正するために、インスリン療法による血糖コントロール法を新たに開発した。空腹時血糖の変動はインスリン分泌とインスリン抵抗性のバランスで規定されているので、まず、ターケンスの埋め込み定理を用いてカオスモデルを作成し、次に、局所ファジィ再構成法を適用し空腹時血糖値の予測を行った。この予測値から最適なインスリン投与量を計算し、インスリンの分泌と抵抗性のバランスを安定させた。また、この予測値から生活行動に関する自己マネージメントを作成 し、患者自身の生活習慣を規定する食事などの環境要因の変動を抑えることができた。これより、カオスモデルは安定し、予測精度は向上した。本研究により、このカオスモデルによる非線形予測法を適用した血糖コントロール法では、高血糖応答を正常化し、疲弊した膵β細胞を休息状態に維持することにより内因性基礎インスリン分泌の機能を回復し、空腹時血糖を正常化することができた。
 
鵜飼 訓史 M2 鹿野 清宏 杉本 謙二 猿渡 洋
発表題目:SIMOモデルに基づくICAと適応ビームフォーマを統合したブラインド音源分離
発表概要:未知の伝達系を通って混合された音源信号を観測信号のみから推定する手法はブラインド音源分離(BSS)と呼ばれる.現在独立成分分析(ICA)を用いたBSSが盛んに研究されているが,一般的にICAは長い残響下では最適解への収束が困難であり,局所解に陥りやすい.そのため出力信号に非目的音が残留するという問題がある.また,一般的なICAの出力信号はモノラル信号であるため,後処理としてICAの出力信号に対して高精度なマルチチャネル信号処理を適用することは不可能であった.本研究では,この問題に対し,各音源に対してマルチチャネルの分離信号が得られる single-input multiple-output(SIMO)モデルに基づくICA(SIMO-ICA)の出力に対して適応ビームフォーマを適用する手法を新たに提案する.本提案法はICA出力中に存在する非目的音の残留成分をマルチチャネル信号処理によって効果的に除去することが可能である.また本報告では,実験による本提案手法の有効性検証の結果も発表する.
 
小原 幸智子 M2 鹿野 清宏 杉本 謙二 猿渡 洋
発表題目:Kurtosis基準によるビームフォーマ選択処理の検討
発表概要:ハンズフリー音声認識の実現が期待されているが, 周囲の雑音の影響を受けやすいという問題がある. よって,周囲の雑音を抑圧し,音声を強調する必要があるが, 従来手法では,演算時間が掛かるなどの問題点がある. 本研究では,高速に音声強調を行うために, 様々な方位に死角を向けたビームフォーマ出力群のkurtosisを相互比較し、 適切なビームフォーマを選択する。 本発表では,様々な種類の雑音と音声の混合信号に関して分離実験を行った結果を報告する。
 

会場: L3

司会:浮田 助手
増田 健司 M2 小笠原 司 木戸出正継 金出 武雄 加賀美 聡
発表題目:ステレオ視を用いた確率的自己位置同定法
発表概要:移動ロボットにおいて実環境内における自己位置の認識は大変重要な機能である.この分野において,そのほとんどがレーザーやソナーといった2次元ベースのセンサを用いて環境をセンシングし自己位置を推定してが,これではセンシング平面外の障害物を認識することは難しく十分とは言えない.そこで本研究は,ステレオカメラを用いることによって2次元の位置情報と高さ情報からなる.2.5次元情報を用いて自己位置同定を行う手法を提案する.本システムでは,ステレオ距離画像からパーティクルフィルタを用いることによりロボットの位置,姿勢を推定し位置同定を行う.実際にNOMAD200という移動ロボットに実装し,屋内環境を220m走行し位置同定を行う実験をおこなった.結果として,最大位置誤差は6cm,角度誤差は6度であり長距離を走行しても自己位置を見失わず同定を行うことができた.また本手法では,走行距離に応じて誤差が蓄積していかないことが大きな特徴である.本発表ではこのシステムの概要と,実験についての説明,今後の課題について述べる.
 
馬場 朗 D2 鹿野 清宏 木戸出正継 猿渡 洋
発表題目:家庭環境における音声認識のための残響抑圧手法の研究
発表概要:家庭環境におけるユーザインターフェースとして音声認識を用いる場合,ユーザとマイクロホンの距離が離れるために,音声が残響による変形を受け,結果として音声認識性能が低下するという問題がある.本研究では,実際の住宅においてこの問題を分析するとともに,時間フレーム間でのスペクトルサブトラクションによる残響抑圧手法を提案する。実験結果より,提案手法が様々な環境においても有効に残響成分を抑圧でき,音声認識性能が大幅に改善されることが確認された.
 
鮫島 充 M2 鹿野 清宏 木戸出正継 猿渡 洋
発表題目:子供音声に対する自動話者クラスタリングおよび十分統計量に基づく教師なし話者適応
発表概要:不特定の話者が利用する音声認識システムでは,話者の個人性や年齢層などを考慮し,その話者に音韻モデルを適応させることが有効である.適応技術の従来法として,任意の一発声文から教師なし話者適応が可能な十分統計量に基づく教師なし話者適応が提案されている.この適応法は,任意の一発声から近傍な話者データベースを用いて音韻モデルを適応するものであるため,適応の際には,話者ごとに大量のデータベースが必要である.しかし特に子供音声については,音韻バランスの整った学習データを大量に集めることは本質的に困難である.そこで本研究では,音声情報案内システムで自動収集した大量の子供音声データを用い,音韻バランスを考慮した自動話者クラスタリング等により,子供音声に対する十分統計量に基づく教師なし話者適応を行う.本発表では,進捗状況および今後の研究計画を述べる.
 

会場: S1,2

司会:上田淳 助手
大橋 靖明 M2 鹿野 清宏 小笠原 司 猿渡 洋
発表題目:空間的サブトラクションアレーを用いたハンズフリー音声認識の頑健性調査
発表概要:実環境において雑音に頑健なハンズフリー音声認識を実現するため,著者らは空間的サブトラクションアレーによる雑音抑圧手法を提案している.本手法は,ユーザ音声を強調する主パスと雑音を推定する参照パスから成り,主パスから参照パスを減算することで雑音抑圧を行う.本処理では,ユーザ方位を想定し,音声強調と雑音推定を行っている.しかし一般的には,ユーザが想定した方位から発話するとは限らない.そこで本発表では,ユーザの移動に対する提案法の頑健性を調査した結果を報告する.
 
松本 大典 M2 鹿野 清宏 小笠原 司 猿渡 洋
発表題目:ロボットへの音声入力を目指した遠隔発話の認識
発表概要:近年,日常生活の中で活動する人間型ロボットが現実のものとなりつつある.このようなロボットとコミュニケーションを行うのに,音声は有力な手段であり,人間同士の会話と同様に距離を保っての音声入力が自然である.その際,実環境においては壁や床からの反射による残響音が直接音から遅れてマイクロホンに入力されることにより,認識精度が低下することが問題である.本研究では、実環境における残響およびその変化に頑健な音声認識を目指した残響成分の抑圧手法について検討する.まずインパルス応答によって残響信号の遅延時間を推定する.音声認識の短時間フレーム分析において,その遅延時間分前のフレームを残響成分とみなして特徴量をフレーム間で減算することで,残響の影響の抑圧を目指す.本発表では,進捗状況および今後の研究計画を述べる.
 
須原 優一 M2 石井 信 小笠原 司 柴田 智広 作村 勇一
発表題目:ARモデルを用いた脳波・筋電の運動に関するネットワーク推定
発表概要:本研究の目的は,脳情報に含まれる運動指令情報の抽出である.脳から運動指令情報を得ることが出来れば,臨床やスポーツなど様々な分野に応用が可能である.また運動指令には,半身の運動を対側の脳が制御している交叉支配と呼ばれる現象が存在することが知られている.我々は生体信号である脳波から運動指令が抽出可能であるかを,交叉支配に着目して調査した.右脳と左脳の脳波と右腕の筋電を使い,3chによる信号間のネットワークを推定した.この推定方法は,脳波と筋電という異なる信号を含んだ状態でのネットワーク解析のアプローチでもある.そのネットワークモデルとして,3chによる局所定常ARモデルを当てはめた.モデルの有効性に関しては情報量規準であるAIC,BICを用いた.そして同定されたモデルに基づき,ネットワーク間で重要な伝達経路を調べるパス解析と,周波数解析(dDTF)を行った.本発表では,この解析方法の説明とその結果について報告する.