今やインターネットは社会に深く根付いた情報通信基盤(インフラ)を形成するようになった。インターネットにおけるセキュリティ管理に対する取り組みは、単に個人、組織における情報保護、通信サービス保全に資するだけでなく、今や社会あるいは国家が機能していくために不可欠な作業となっている。このため、セキュリティ管理の方策については、単に技術的に洗練されているものを利用するというだけでなく、その実施においては合理性の追求、説明責任を果たすための機構導入、既存の社会制度との整合性といったことも十分に考慮されなければならない。本講義では、真に機能するインターネットセキュリティを構築するために求められる技術、さらには、社会制度などの非技術要素についても議論を行い、現代の情報通信基盤に深く依存した社会に適応した「セキュリティ」という概念を包括的に理解することを目的とする。

この講義では、インターネットに代表される情報通信技術が広く活用でき、 市民の生活がより豊かになる可能性があるとともに、 一方で社会の情報通信技術への高依存度を逆手にとりサイバーテロのような情報通信システムが国家間、あるいは、民族間の紛争に利用されるような状況が同時に発生しているような時代において、 セキュリティをどのように捉え、維持していくのか、自ら考え、行動を起こしていくための契機を提供する。
具体的には、この授業では、複数の議論テーマを設定し、
(1)テーマに強く関連する技術要素、社会要素について、講義担当者による講義
(2)テーマをより深く掘り下げるための教官、学生を交えた議論(ディベート)
(3)テーマの理解を促進するためのホームワーク(レポート課題)
を組み合わせて授業を構成する。議論テーマはインターネットセキュリティに関連する技術、社会制度などに潜む問題を取り上げ、技術開発の方向性、社会へのインパクトと問題、 その解決に向けての(法)制度の在り方といった点について 議論し、我々が今後進むべき道を模索する。また、随時、各話題の専門家をゲストスピーカーとして招く予定である。
また、この授業では学生同士が協力して一つの課題を解決するグループワークを課す。 この授業は、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で行われる授業と遠隔、かつ、合同して行われれる。このため、学生の履修管理(登録、課題提示、課題提出等)は、SOI 環境 (http://www.soi.wide.ad.jp) を積極的に利用して行われる。履修前に必ず SOI 環境に対する理解をすること。

なし

SOIの授業ページで適宜紹介する。

この授業では、インターネットの基礎的な技術を前提に議論が進められる場合があるので、インターネットを構成する基本的な通信技術、主要プロトコルといった、第I期に開催される「情報ネットワーク論I」で取り上げられている内容を理解していることが強く望まれる。また、2001年度、2002年度に行われた本授業を、事前にSOIで閲覧しておくことが望ましい。

各テーマで提示される課題(レポート)、授業で行われる議論(ディベート)に対する貢献、および、グループワークの成果の採点に基づき評価を行う。
評価におけるレポートの比重は全体の40%を占める。議論(ディベート)に対する貢献は、ディベートにおける発言、議論展開の積極性などを教官と授業をサポートするTAの合議によって評価し、全体の20%を占める。また、グループワークの評価は全体の40%を占める。