ゼミナール講演

日時平成 15年 7月 14日(月) 3限(13:30 -- 15:00)
場所L1
講演者古川 康一
所属 慶応義塾大学 大学院 政策・メディア研究科 教授
講演題目 身体知の解明に向けて
概要
楽器の演奏を例として、暗黙的な身体知を言語化するために、熟達者の演奏を モーションキャプチャリングシステム、筋電図などで測定し、データから法則 性を抽出するための方法論を展開してきたが、その過程で、幾つかの有用な知 見が明らかになり、今後の発展の可能性が見えてきた。具体的には、運動学と 運動力学の両面からのアプローチにより、見かけはほぼ同じでも異なる筋肉の 使い方によって、技巧的な動きとそうでない動きが区別できることが明らかと なった。また、スキルを、競合する動きでの制約充足問題として捉えることに より、その解明の可能性が示された。その過程で、たとえば弓の返しや弓の弦 移動をスムーズに行う方法、左手のポジションチェンジをすばやく正確に行う 方法などを発見できた。

これまでに得られた新たな発見は、実験手法、モデル化手法、制約充足による 形式化、筋骨格系の役割、筋肉の利用の種々のモードの重要性、柔軟な運動を 実現するための回転軸、重心などの役割、メンタルモデルの重要性などが明ら かになってきた結果として、われわれ自身の洞察によって得られたものである。 その過程を通して得られた知見は、今後のスキルの自動発見につながる、背景 知識の整備を行ったことになると考えられ、現在、ベイジアンネットワークに よるモデル化を進めているところである。

本テーマは、認知科学、人工知能、生体力学、脳科学などが深く関わったテー マであり、それらのコラボレーションによる新たな領域の展開が期待される。


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平成15年度ゼミナール担当