ゼミナール発表

10月3日(金)1限


会場:L1

司会: 横矢研,佐藤智和
松井信也 千原國宏 横矢直和 眞鍋佳嗣
発表題目:ビリヤード練習システムの構築
発表概要:近年、仮想現実感(VR)において、力覚デバイスの研究が盛んに行われている。しかし、物体間のインパクト時の撃力を提示できるデバイスはまだ数少ない。 本研究では撃力を提示するために、可動鉄芯の運動をソレノイドにより制御し、 1軸方向の撃力を生成する小型デバイスを提案する。また、その応用事例であるバーチャルビリヤードを通じたデバイスの主観的および客観的評価について述べる。 最終的に、力覚的、視覚的に整合性のとれたビリヤード練習システムを構築する。
 
山本雅樹 千原國宏 横矢直和 眞鍋佳嗣
発表題目:バーチャルスタジオのための影の変形と合成
発表概要:バーチャルスタジオを用いた生放送の番組では、仮想空間と人物を合成しているが、 人物の影付けは行われていないのが現状である。影付けされていない合成画像は、 人物が床から浮いたように見え違和感がある。本研究では、現実感の高い合成 を行うために影の提示だけでなく、仮想物体の形状に合わせて影を変形させ 合成画像を生成する手法を提案する。
 
村岡俊幸 千原國宏 横矢直和 眞鍋佳嗣
発表題目:ユーザの移動に起因する光源環境の変化の推定手法
発表概要:ウェアラブルコンピュータや仮想空間共有などのシステムでは, ユーザの移動により光源環境が一定でない状況での使用が予想される. 現在, 物体認識の多くは画像を用いて行われているが, 光源環境の変化による物体の見掛けの色の変化が, 色を用いた物体認識を困難にしている. 本研究では, 色を用いた物体認識の安定化を主な目的として, 光源を直接撮影することでシステム周辺の光源環境を推定する手法について提案する.
 
佐官雄介 千原國宏 横矢直和 眞鍋佳嗣
発表題目:ウェアラブルコンピュータに適した高精細手書き情報生成のためのペンデバイス
発表概要:近年、タブレットPC等のデジタル手書き入力インターフェースが普及し始め、その有用性に期待が高まっている。しかし、その多くは特定の入力用書字面を必要とするため、使用できる場所や形態に制限がある。本研究では、ペンデバイスに小型カメラを装着し、面に対するペン先の動きを検出することにより、任意の面上でペンデバイスのみで精細な手書き情報を生成するシステムを実現する。
 

会場:L2

司会: 小笠原直毅研,小林和夫、石川周
小林克史 箱嶋敏雄 小笠原直毅 児嶋長次郎
発表題目:小胞体ストレス応答タンパク質IRE1の構造研究
発表概要:細胞は、小胞体特異的なストレス応答機構をもち、異常タンパク質蓄積による小胞体ストレスを回避しようとする。また、強いストレスに対してはアポトーシ スを誘導する。その誘導経路の分子機構の全貌は、いまだ未解明であるが、スト レスセンサーであるIRE1とTNFシグナルの下流でアダプター分子として機能する TRAF2が関与しているという報告がある。本研究では、構造生物学の立場から、 両者の相互作用の構造的基礎の詳細を明らかにして、この情報伝達経路の理解を 深めることを目的として研究を始めた。IRE1に関しては、様々なコンストラクト を作成し発現条件の検討を行った中で、最も多く可溶化しているIRE1β-RNaseド メインについて大量培養を行い精製系の確立を試みた。TRAF2に関しても同様に コンストラクトを作成し大量培養・精製を行った。今後得られたタンパク質を用 いて結晶化条件の検討やそれぞれのタンパク質の物理化学的性質の測定を行って いく予定である。
 
近藤倫央 箱嶋敏雄 小笠原直毅 児嶋長次郎
発表題目:L-selectinとRadixin FERMドメインおよびCD44とRho kinase PH様ドメインのX線構造解析
発表概要:細胞の形や細胞表面の運動を制御しているアクチンフィラメントを細胞膜に連結する役割を担うタンパク質の一つにEzrin/Radixin/Moesin(ERM)と呼ばれるタンパク質群がある。ERMはそのFERMドメインで一群の細胞接着分子を認識するが、L-selectinは、既に複合体構造が明らかになっているICAM-2との相同性がなく、両者にはまったく別の分子認識機構が存在するものと考えられる。 また細胞接着・骨格を制御する低分子量Gタンパク質Rhoの標的タンパク質であるRho kinaseはPH様ドメインでCD44を認識していることが示唆されている。本研究ではこれらの特異的な相互作用を、複合体構造を決定することにより原子レベルで明らかにすることを目的として、試料調製し、相互作用の検討とともに結晶化を試みている。
 
高井友美子 箱嶋敏雄 小笠原直毅 児嶋長次郎
発表題目:多様な分子認識に関与するラディキシンFERMドメインの相互作用解析
発表概要:ERMタンパク質は細胞膜とアクチンフィラメントをつなぐ架橋タンパク質であり、N末端に約300残基からなるFERMドメインをもつ。このFERMドメインと相互作用する分子種は多く、相互作用の結果、FERMドメインの活性化、さらに他のタンパク質の活性化が引き起こされ、細胞接着・細胞骨格の制御などが行われる。これまでに、数種の接着分子、Na+/H+交換制御因子(NHERF)のC末端領域、非受容体型チロシンキナーゼのタンデムにつながったSH2ドメイン、Rho-GDI(GDP dissociation inhibitor)などが、ERMタンパク質のFERMドメインと相互作用することが知れられている。これらのタンパク質間において、FERMドメインが結合すると考えられている領域の相同性はないか、あるいは極めて低く、FERMドメインの分子認識の詳細は完全には理解されていない。本研究ではFERMドメインとCD43、PSGL-1、SykのタンデムSH2ドメイン、Rho-GDI間の相互作用を主にSPR(biacore)を用いて定量的に解析すると共に、複合体結晶の調製を試みた。
 
深水弥生 箱嶋敏雄 小笠原直毅 児嶋長次郎
発表題目:接着分子CD44とFERMドメインの相互作用解析
発表概要:接着分子CD44は一回膜貫通型糖タンパク質で、細胞外でヒアルロン酸やプロテオグリカンと結合し、細胞内ではアダプタータンパク質であるERM(Ezrin,Radixin, Moesin)やMerlinを介してアクチンフィラメントと相互作用する。接着分子〜細胞骨格系の相互作用は細胞の接着性や運動性に関与しており、実際に多くの悪性腫瘍でCD44の変異・過剰発現が認められることから、この経路が腫瘍細胞の悪性化(転移・浸潤)に大きく貢献していると考えられる。そこでCD44が細胞質ドメインでERMやMerlinのFERMドメインとどのように相互作用しているのかを明らかにすることを目的として、生化学・構造生物学的な実験を進めていくつかの知見を得た。
 

会場:L3

司会: 湊研,佐藤哲大
塚田祐基 石井信 湊小太郎 柴田智広
発表題目: rhoファミリーGタンパク質の相互作用と成長円錐の遊走性、形態変化についての考察
発表概要: 成長中の神経細胞が軸索を伸ばすとき、軸索の先端にある成長円錐は数%のガイダンス因子の濃度差を検知して、正しい方向へと経路を選択することが観察される。このとき、成長円錐はその形状を変化させながら進行方向へ進んだり、方向を変えたりする。ここでの疑問は、1)成長円錐はどのようにして濃度差を検知しているのかということ 2)形態変化と濃度検知にはどのような関連があるのかということである。一方、成長円錐の形態変化に深く関わるシグナル因子としては、低分子量Gタンパク質の研究が近年盛んであるが、線維芽細胞の研究などから、これらはお互いに相互作用をすることが示唆されている。本研究ではこれら低分子量Gタンパク質の相互作用をMichaelis-Menten式を中心とした微分方程式で表し、コンピュータシミュレーションを使って振舞いを考察した。その結果、この相互作用が成長円錐のダイナミックな形態変化に関係しており、濃度検知の仕組みに寄与しているのではないかということが示された。これらの知見は、神経細胞がいかに効率良く軸索の誘導を行なっているかということの理解につながると考えられる。
 
池山智之 小笠原司 湊小太郎 松本吉央
発表題目:<題目>着席面の圧力分布を用いた車いすの走行支援システムの開発
発表概要:<概要>我々は、ユーザの状態推定により走行支援を行うインテリジェント車いすの開発を行っている。本研究では着席時の圧力分布に着目をし、ユーザの状態推定を行うシステムについて述べる。車いすにおいて、座席はユーザと唯一接触する部分であり、着席時における圧力分布はユーザが左右を見ているなどの状態によって変化する。その変化からユーザの負担をかけず、かつ非拘束なシステムを用いてユーザの状態推定を行うインタフェースの提案を行う。
 
金子祐子 石井信 湊小太郎 柴田智広
発表題目:<題目>前頭前野の機能局在と階層型強化学習モデル
発表概要:<概要>ヒトは複雑で大規模な問題に対し、1つの問題として捉えるのではなくいくつかの下位階層問題に分割し、それらを上位階層で統括することで対処することができる。 このように、問題を分割して階層的に学習する機能を発現させる脳の機構の解明を目的とし、高次認知機能を司るといわれている前頭前野(Prefrontal Cortex,PFC)を中心とした実験的アプローチと強化学習による理論的アプローチを組み合わせた、システム脳科学からのアプローチで研究を進めている。 本発表では、PFCにおける階層型強化学習モデルと、以前行なった機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いたヒトの実験とその結果について述べる。
 

会場:S1+2

司会: 西谷研,中村文一
近藤誠宏 小笠原司 西谷紘一 松本吉央
発表題目:多指ハンドのための物体操作認識システムの開発
発表概要:本研究では,多指多関節を持つ,人間の手を模したロボットハンドのための直接教示ベースの教示入力システムを開発する. 本システムは,人間の作業計測システムと,物体操作の種別及び軌跡を認識(操作認識)するシステムから構成される. 複数の作業計測用センサを搭載した教示専用の操り対象物体を用いて操作認識を行い,動作計画に反映させる. ターゲットタスクは環境接触を伴わない単一剛物体の複雑な操りとし,従来研究に多いピックアンドプレース等の単純なタスクとは異なり, 複雑で細かい操りの教示が可能となる.
 
淺井達紀 鹿野清宏 西谷紘一 猿渡洋
発表題目:適応型音場制御とマイクロホンアレーを併用したバージインフリー音声対話システム用インタフェース
発表概要:音声対話システムにおいて,ユーザの発話中にシステムの応答音が混入した場合,応答音の影響による誤認識を引き起こすという問題点がある.一般に,この問題点を改善するための手法として,音響エコーキャンセラが用いられる.しかし,音響エコーキャンセラはユーザ発話中の伝達関数の変動,及び雑音の混入に脆弱である.音響エコーキャンセラの問題点を解決するため,Hinamoto et al.は複数のスピーカと複数のユーザ音声収録用マイクロホンを用いた伝達系変動に頑健なバージインフリー音声対話システムを提案した. しかし,Hinamoto et al.の手法では伝達系の変動に頑健ではあるが,変動に追従することができない.従って本研究では,伝達系の変動に追従する適応型音場制御と,ユーザ音声を強調するマイクロホンアレーを併用する手法を提案する.
 
相宅玲志 小笠原司 西谷紘一 松本吉央
発表題目:表面EMGと運動データによる腕動作時における筋力推定
発表概要:人は筋肉に刺激を与え収縮し筋力を発生させて腕を動かす.ところが,腕の自由度に対し筋力を発生している筋肉数は多く、冗長性が高い.そのため,筋肉の使い方によって運動効率が大きく変わってくる.つまり,筋肉の使い方を知ることは運動の評価ができ,新たなリハビリ手法の提案が可能になる.筋力の推定は従来においても人の骨や筋肉をモデル化し,モーションキャプチャより得られる人の腕の運動データより運動方程式を解いて筋力推定は行われてきた.しかし,握力など外見上変化が無い内力の発生した場合では使えないという問題点がある.そこで問題点の解決として新たに表面EMGのデータを組合せ、筋力の推定を行っていきたいと考えている.まず,握力の変化が腕を動かすための筋肉に影響を与えるのかを確認実験を行い,その結果について報告する.
 
新田益大 杉本謙二 西谷紘一 笠原正治
発表題目:独立成分分析を用いた多入力多出力系の同定
発表概要:システム制御において対象を知ることは最も重要なことである.しかしシステムが複雑になると解析的にモデルを求めることが困難であり,システム同定の考え方が重要になる.システム制御では多入力多出力系を扱うことが一般化しており,従来のシステム同定法では1入力1出力系についてしか議論していない.そこで多入力多出力系の同定アルゴリズムを提案する.多入力多出力系は見方を変えれば多変量解析の問題とも見なせる.そこでシステムへの入力が独立であると仮定すると多変量解析の手法である独立成分分析を適用できるはずである.そこで本研究では独立成分分析を用いた多入力多出力系の同定について議論する.独立成分分析は静的な混合については解くことができるが,伝達関数を扱うシステム制御には一見すると適用できないように思われる.そこで離散時間伝達関数を考え,時系列展開することで動的な問題を静的な問題に帰着させる方法を提案する.このとき信号の独立性が破れるが,情報エントロピーの考え方を用いると,この問題が解決できることが分かった.提案手法の有効性をシミュレーションによって確認したので報告する.