ゼミナール発表

10月2日(木)1限


会場:L1

司会: 上田淳
阿賀俊幸 湊小太郎 小笠原司 杉浦忠男
発表題目:核磁気共鳴顕微鏡を用いた局所弾性率測定の試み
発表概要:近年、深部に存在する病変の弾性特性とその分布を定量的に測定するために、MRI(Magnetic Resonance Imaging)を用いた手法に関する研究が進められている。それら手法の中で、測定対象に外部振動を印加した状態でMRI撮影を行いその撮影結果から測定対象の局所弾性率を求める手法として、 MRE(Magnetic Resonance Elastography)法と呼ばれる手法があり、現在臨床用MRI等を用いて研究が進められている。しかし臨床用MRIの空間分解能では病変の細部にわたる構造を探るには不十分である。そこで本研究では、計測対象を数十から数百ミクロン程度の空間分解能で撮影可能な核磁気共鳴顕微鏡を用いて、高い空間分解能で生体組織の局所弾性率を非侵襲的に計測可能なMRE計測システムの構築を進めている。 今回、MRE撮影システム全体のプロトタイプの作成及び、得られたMRE画像から局所弾性率を求める解析手法の開発をし、その妥当性の評価と検討をした結果を報告する。
 
西村政哉 石井信 小笠原司 柴田智広
発表題目:複数の制御器の系列学習法によるAcrobot制御
発表概要:アクロボット(Acrobot)とは,制御対象よりも少ない数のアクチュエータしか持たない二重振子のことであり,強い非線形性を伴った制御困難な力学系であることが知られている. 従来の研究では,エネルギー関数を用いた制御器やZeroDynamicsを用いたものがあるが, 大きなトルクが必要となる,初期位置に依存するなどの問題がある. 本研究では,部分的な制御器と強化学習の組み合わせによってトルクが制限された環境でもアクロボットの振り上げ・倒立制御が達成できたことを示す.
 
坂東誉司 石井信 小笠原司 柴田智広
発表題目:動的な再サンプリング法の切替えによる高速かつ頑健な視覚追跡
発表概要: 近年,非ガウス性雑音が加算された信号の時系列解析手法として,パーティクルフィルタが様々な分野から注目を集めている.実時間ビジョンの分野でも,カルマンフィルタでは行う事ができないノイズや障害物などの非ガウス性雑音で汚れた実画像上での物体運動の推定や予測を統計的に行う事ができる,パーティクルの数を調節することで計算量を抑えて実時間性を維持しながらも比較的よい結果が得られるなどの理由により、パーティクルフィルタによる応用研究が盛んになってきた. 本研究では,視覚追跡において最も基本的なパーティクルフィルタアルゴリズムの一つであるCondensationと,その問題点を改善したAuxiliary Particle Filter(以後APFとする)を視覚追跡に特有な状況の下で再評価を行う.Condensationは遮蔽などにロバストだが精度良く追跡ができないことが多く,それに対してAPFは観測結果を重視し追跡対象に精度良く正確な追跡を行う事はできるが遮蔽がある場合雑音に収束してしまう事が多い事がわかった. そこで,この二つを推定状態の確信度によって切り替えることで,各アルゴリズムの長所を生かし,実環境におけるより多くの状況において頑健な実時間追跡追跡が可能となることを示す.
 

会場:L2

司会: 中村豊
西垣弘二 伊藤実 砂原秀樹 安本慶一
発表題目:協調動作を行う携帯電話アプリケーション開発のためのミドルウェアの実現
発表概要:多数携帯電話ユーザ間の協調型アプリケーションの容易な開発を目的に,地理的位置や共通の話題などに関する条件により動的にグループを形成する機構と,グループメンバ間でマルチキャスト,同期,排他制御などのグループ通信機構を提供するミドルウェアの提案を行う.現在の携帯電話上のJava実行系では,ユーザプログラム間の直接通信機能が利用できず,メモリ容量なども限られているため,提案ミドルウェアでは,ユーザ端末側プログラムの大部分をサーバ上のエージェントとして実行し,グループ形成やグループ通信を実現するための一連のメッセージ交換を,サーバ内のプロセス間通信で実現する方式を考案し,実装した.
 
公原勝彦 伊藤実 砂原秀樹 安本慶一
発表題目:P2P環境でのネットワークゲーム向け負荷分散機構の提案
発表概要:近年のインターネット接続回線の広帯域並びにPCおよび高性能ゲーム端末の普及により、数万人規模のユーザが同じ空間を共有し、お互いにインタラクションを行なうネットワークゲームが人気を集めている.そこで、本研究ではピアツーピア(P2P)の環境で特定のサーバを設置することなく多人数参加型ネットワークゲームを実現することを目的として、ゲームで発生するイベントの登録・通知機構を、幾つかのゲーム参加者の端末に割り当て、分散処理させる機構を提案する。
 
小野とも子 植村俊亮 砂原秀樹 宮崎純
発表題目:ユーザプロファイル自動生成による協調フィルタリングの性能向上
発表概要:近年インターネットが普及し,インターネットショッピングなどを使用する人が大幅に増えた.しかし,膨大な情報の中から自分の興味・関心にあったものを見つけることは難しい.また,システム側から,ユーザの興味・関心にあったものを推薦することも難しい.  その解決策として協調フィルタリングが現在の推薦システムの主流として使われている.しかし,この手法は新しいユーザに対する場合,ユーザの嗜好に関する情報が少ないため,推薦が難しい.そこで,ユーザのアクセス履歴からユーザプロファイル自動生成し推薦性能を向上する方法を提案する.
 

会場:S1+2

司会: 小林和夫、石川周
福原直志 箱嶋敏雄 小笠原直毅 川端猛
発表題目:表面アミノ酸分布に基づくタンパク質間相互作用サイトの予測
発表概要:タンパク質間相互作用サイトの予測は、そのタンパク質の相互作用を探るための第一ステップとして重要な課題である。本研究では、単量体の立体構造から相互作用サイト予測を目指し、相互作用面の解析と簡便な予測法の開発を行った。
複合体の立体構造データを1800程度準備し、相互作用サイトの表面アミノ酸分布を統計的に調査すると、疎水性や芳香族の側鎖を持つアミノ酸が比較的多く含まれていることが分かった。この出現傾向の値を用いることにより、シンプルな予測法を構築した。まず立体構造上近傍に位置する表面残基をグループ化し、そこに含まれるアミノ酸に応じて出現傾向から得られるスコアを与えた。スコアが閾値を越えたものについてはその中心に位置する残基を相互作用サイトとして予測した。
複合体の立体構造データに対して予測を試みたところ、相互作用サイトにおけるアミノ酸残基の出現傾向のみを用いても、シンプルな予測アルゴリズムを構築することにより相関係数0.21の精度で予測を行うことができた。今後は詳細な相互作用サイトの観察に基づき、予測法を改良していく方針である。
 
山川明子 箱嶋敏雄 小笠原直毅 渡邊日出海
発表題目:生命の起源につながるコア代謝系の推定
発表概要:オパーリンが1924年に、生命の発生過程として、無機物が有機物そしてより複雑な系へと自律的に変化してゆく過程、すなわち、化学進化を提唱して以来生命の起原に関する現代的研究がさまざまな形で行われて来ている。例えば、前生物的環境条件の下で特定の有機物が無機物から生成されうることを示す研究が個別に数多く行われている。しかし、それらの異なる有機物や原料となった無機物を包括的に関連付け、生命の起原に至る過程を明らかにしようとする研究はまだなされていない。そこで、生命維持の必須要素である代謝系の形成に着目し、前生物的環境下において存在し得た原始代謝系(ここではコア代謝系と言及する)の推定を試みた。具体的には、先行研究で合成が確認された有機物を結び付ける変換経路を、現生生物の代謝系を参考にして推定した。その結果、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸といったアミノ酸が高エネルギーを消費すること無く相互に変換する網目様の代謝系がコア代謝系の候補として浮かびあがって来た。
 
海堂剛央 小笠原直毅 箱嶋敏雄 川端猛
発表題目:枯草菌必須蛋白質間の相互作用解析
発表概要:枯草菌は富栄養培地、37℃での増殖に必須な遺伝子が271個存在している。そして、 それらは限られた細胞プロセスに関与していることが明らかになっている。しかしな がら、ゲノム複製・蛋白質合成・細胞分裂など各必須プロセス間のネットワークは、 その存在が予想されているにもかかわらず、未だに不明である。このネットワークの 解明を目指し、酵母2ハイブッリド法を用いて必須蛋白質の相互作用ネットワーク解 析をおこなった。271の必須遺伝子を含む295の遺伝子について、正しい立体構造がと れるように全長を用いて、全ての組み合わせ(295×295)について1対1の解析を行 った。こうして完成した相互作用ネットワークには、187種類の相互作用が存在し た。Initiosome及びReplisome複合体、脂肪酸合成系、Smc複合体、dNTP合成酵素複合 体、細胞分裂蛋白質など、既知および予想された相互作用が検出され、一定レベルの 解析感度を保っていることが示された。また、細胞壁・細胞膜合成と染色体複製に関 係する遺伝子産物間や修復酵素と細胞分裂に関係する遺伝子産物間でも相互作用が検 出されており、細胞増殖の基本プロセス間の協調システムの解明のための手がかりが 示唆された。