ゼミナール発表

10月1日(水)2限


会場: L2

司会:作村勇一、大羽成征
野村智和 石井信 川人光男 湊小太郎 銅谷賢治
発表題目:<題目>
発表概要:<概要>
 
平井里実 石井信 川人光男 湊小太郎 銅谷賢治
発表題目:複数の粘性力場における内部モデルの獲得法とその比較
発表概要:ヒトは複数の環境に適応する能力をもっていると考えられる。たとえば、日常生活においては、スポーツで新しい技を覚える際に、同時に2つ以上の技を並行して練習し、獲得できることなどが知られている。この際、複数の内部モデルを切替えて学習し、状況に応じて使い分けていると考えられる。しかし先行研究では、ヒトが同時に複数の内部モデルを獲得し、それを切替えて使用することは難しいとされてきた。これは、複数の内部モデルを同時に学習すると、内部モデル間に干渉がおきてしまうためである。そこで、本研究では、複数の内部モデルを同時に獲得し、それを状況に応じてうまく切替えて利用するためには、どのような学習を行なうのが最も効果的であるのかを比較検討した。
 
松山和裕 石井信 川人光男 小笠原司 銅谷賢治
発表題目:大脳基底核の強化学習による確率的行動選択システム
発表概要:動物は行動の選択を迫られたとき、行動をある程度確率的に行うこと で長期的に見て適した行動を獲得することができる。そこで実際の脳においてど のように学習が行われ、また行動が選択されているのかという疑問について、大 脳基底核の計算モデルとしての強化学習により一つの解釈を与えている。様々な モデルが提案されている中で、Bartoは大脳基底核の入力部である線条体におい て状態の評価、及び行動選択を行うというモデルを提案している。これに対し銅 谷は線条体では報酬予測が表現され、行動選択は大脳基底核の出力核である黒質 網様部と淡蒼球内節で表現されているというモデルを提案しているが、それぞれ の核内部の生理的性質を含めた上での理解はされていない。
そこで本研究では、仮説を元にそれぞれの核をある程度の単位ごとに分割したニューロンポピュレーションにおいて大脳基底核の強化学習モデルを提案し、動的な環境下における最適な行動が大脳基底核により学習されることを示す。
提案モデルでは、黒質網様部と淡蒼球内節で確率的行動選択が可能であり、その確率制御は視床下核の活動により制御される。これは視床下核が線条体-淡蒼球内節伝達の一時的整形を行う可能性があるという生理実験結果と合致する。また、行動価値関数を表現する線条体のmatrixでは視床からの投射による行動表現のフィードバックにより、選択された行動価値関数のみを学習できることを示す。
 
河村洋一 石井信 浅井潔 箱嶋敏雄
発表題目: P-ループ含有NTP加水分解酵素スーパーファミリーの配列・構造・機能に基づく系統解析
発表概要: 大多数のPurine nucleotide triphosphate(NTP) hydrolase(P-loop 含有NTP加水分解酵素) superfamilyは Walkerらに報告された配列パターン、Walker A とWalker Bという2つの異なるモチーフを持ち(Walker et al., 1982)、更にこのスーパーファミリーは酵素(EC)番号を機能の指標とすると6種類の主要な酵素のうちの4種類(加水分解酵素、転移酵素、酸化還元酵素、リガーゼ)を含む。このような様々な機能を持つスーパーファミリーは稀である。我々は、この生物学的、機能的にも重要であると思われるP-ループ含有NTP加水分解酵素スーパーファミリーに属する蛋白質の配列、立体構造と機能との関係を議論するために様々な手法(PSI-BLASTといった配列解析 や 構造比較法、MATRAS (Kawabata & Nishikawa, 2000))を用いて、系統的な解析を行った。
このスーパーファミリーに属する53個から成る配列ファミリー間の立体構造の類似性から、各ファミリー間の距離を求め、多次元尺度構成法(MDS)を行い、多次元空間上の各ファミリーの位置を2次平面にプロットした。その際に、各配列ファミリーの機能をEC番号に基づいてアノテーションを行った。4つのクラスターのうち、中央に位置しているクラスターには、様々な蛋白質群(酸化還元酵素、 転移酵素、 加水分解酵素、 リガーゼ、及びにシグナル認識粒子蛋白質)が観られた(クラスターS0)。その右上に位置したクラスターはシグナル伝達系の蛋白質であり、全てが非酵素であった(クラスターS1)。S0の左には主に加水分解酵素が観られ、その他に転移酵素、ABCトランスポーターや伸長因子などの蛋白質群が観られる(クラスターS2)。S0の右下には全て転移酵素が含まれるクラスターS3が観られた。クラスターS1のみがGTP結合蛋白質であったのに対して、それ以外のクラスターはATP結合蛋白質であった。このように、クラスタリングの結果がEC番号に基づく機能を反映することから、立体構造の類似性と機能の類似性には相関関係があると考えられる。