制御理論は,古典制御理論,現代制御理論,ロバスト制御理論のように大きく
分けることができる.そのため,それらの考え方が違っているように理解して
いる人がいるかも知れないが,基本的に違いはない.その基本は,制御対象の
ダイナミクスを数式で表し,それに基づいて解析・設計を行うという考えであ
る.違いは,制御対象を表す数式表現であり,また解析・設計に用いる数学的
手法である.そして,そのような違いがもたらす解析・設計結果が与える知見
の違いである.
これら制御理論がもっている (もつべき) フィロソフィは
どのような制御対象に、
どのような状況のもとで,
どのような情報を,
どのように使うと,
どのような制御ができて,どのような制御ができないか
を明らかにすることであると,講演者は考えている.理論を開発してきた人々
の中で,どれだけ明確にこのフィロソフィが意識されてきたかはわからないが,
理論の発展の歴史はこのフィロソフィを具体化してきている.
制御理論をこの観点でとらえるということは,理論の研究者だけでなく,理論
を使う立場の技術者にも大切なことである.古典制御,現代制御,ロバスト制
御の中で多数提案されている理論のどれが自分の制御問題に適しているかを判
断するには,この観点がなければならない.本講演では,制御理論の歴史とと
もに,このフィロソフィのもとで,制御理論がどう役立つか,どう役立つべき
かについて,簡単な例を使って述べる.また、講演者がこれまで関わってきた
産業応用も紹介する。