ゼミナール講演

日時平成 12年 10月 11日(水)4限(15:00 -- 16:40)
場所L1
講演者安本 吉雄
所属 松下電器産業株式会社・マルチメディア開発センター・企画推進グループ主担 当・兼画像グループ主担当
講演題目 シンガポールにおける情報基盤整備の国家プロジェクト
概要
シンガポールは小さな都市国家ながら1970、 80年代に驚異的な経済成長を遂げ、現在、アジアでは日本についで第2位の 一人あたりのGDPを上げるまでになった。1990年代に入り、国家政策を情 報基盤の整備によるR&D投資の誘導に向け、それによる産業構造の変革を目指 すようになった。これは従来の単純な組み立て産業からR&Dに裏付けされた高 度な製造業の育成をねらうものである。金融および物流の拠点としての整備と 平行して、国家のGDPの25%は製造業に依存することを方針としている。  1990年代の当初に、いわゆるIT2000計画を立案した。これは2000年に は情報技術を社会のすみずみにまで活用して産業・生活の質を向上させる目的 であった。1990年代の後半にはいり、世界的なインターネットの爆発的な 普及にあわせて、この目標をより具体的に進化させた。そのプロジェクトが、 Singapore ONE である。これはシンガポールの350万所帯を高速のネットワー クで結び、教育・政府サービス・電子商取引などを協力にサポートする国家計 画である。実際、ケーブルモデムあるいはADSLの2種類のアクセスネットワー クで家庭が結ばれている。その後、研究フェーズでは SINGAREN 計画がスター トし、世界の高速インターネットと結合して次世代のインターネットの研究開 発に参加している。放送分野においても、デジタル化の世界的な流れにいち早 く乗り、日本のISDB-T方式、欧州のDVB-T方式、米国のATSC方式の3つの地上 波デジタルテレビ方式を公開実証実験を実施し、1998年には欧州のDVB-T 方式を国家方式として採用することを決定し、2000年度の商用化を目指し ている。本講演では、筆者の5年にわたるシンガポールでの研究開発活動を通 じたシンガポールの国家プロジェクトの実態を明らかにすると同時に、関連し た技術分野の解説を行うものである。米国についで世界第2位の国際競争力を 持つとされるシンガポールの秘密を解き明かす。(日本の国際競争力は世界で 17位である)

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平成12年度ゼミナール担当:笠原 正治, 河野 恭之, 小笠原 司