自己回帰モデルを用いた脳波・筋電信号ネットワークの同定

須原 優一 (0351068)


ヒトから発生する多様な生体信号が構成する多チャンネルのネットワークの構成 やダイナミクスを理解することは,工学や臨床応用に大変有用であると考えられ る.しかし,異なる種類の生体信号から構成されるネットワークの推定に関する 研究はあまり報告されていない.そこで我々は,脳波信号(EEG)と筋電信号(EMG) という異なる種類の生体信号で構成される運動に関するネットワークの推定に取 り組んだ.本研究では,左右の第1次運動野付近から得られる脳波2 チャンネル と,手の筋電1チャンネルから成るネットワークを解析することにより,良く知 られた交叉支配(半身の運動を対側の脳が制御していること)の様子を明らかに することを目的とした.

得られた信号は一般に非定常であるため,まず局所定常ARモデル解析により定常 なブロックを選定した.選定したブロックに周波数解析(dDTF)とモデル選択によ る伝達の必要性の評価を適用した.伝達の必要性の評価については,ネットワー クのパスの必要性を調べるために新しく考案した方法である.

解析した結果,周波数解析により交叉支配の伝達を表現することが可能であるこ とがわかった.またパス解析によって脳波に含まれている成分が運動野からの情 報だけではなく,感覚野などの情報についても混入していることがわかった.