Ramachandranプロットを用いた分子モデルの妥当性の評価
 −評価に用いる領域の検討−

及川 雅隆 (0351022)


ポリペプチド鎖の主鎖は、立体障害の結果、エネルギー的に好ましい構造を取る。
各残基の主鎖の立体配座は、2つの回転角phi, psiによって決まる。phiとpsiの分布
は、Ramachandranプロットで特徴を表すことができる。

X線構造の精密化の過程では、結合距離や結合角に対して制約をかけるが、phiと
psi、あるいはこれらの組み合わせに対しては、たいてい制約をかけない。このため、
Ramachandranプロットにおいて、ある構造のプロットが取り易い領域からどの程度
離れているかを表す指標は、分子モデルの質の評価に用いることができる。

ProCheckは、タンパク質の構造のチェックを目的とするプログラムで、phi, psiの空間
を、most favored、additional allowed、generously allowed、disallowedの4つの領域に
分割している。GlyとProを除く18種のアミノ酸は、これらの共通の4つの領域で評価
される。

しかし、phi, psiの分布は、これらのアミノ酸種間で著しく異なる。この違いを反映させる
ため、アミノ酸種毎にphi, psi空間を領域に分割したい。しかし、統計量を上げるため、
分布が似ているアミノ酸種はグループにまとめる必要がある。このグループ化は、
クラスタリング解析で行った。その結果、18のアミノ酸種を8つのグループとした。

それぞれのグループについて、密度に依存した平滑化関数を用いて , 分布の滑らか
な等高線を得た。phi, psiの空間は、5つの等高線によって6つの領域(領域1から領域
6)に分割した。最も好まれる領域(領域1)は、50%の残基が含まれるように定義した。
領域2から6は、それぞれさらに30%. 10%, 8%, 1.9%, 0.1%が含まれるように決めた。
X線構造が低分解能であるほど、その残基は好ましくはない領域により多く現われる
傾向が確認できた。
その相関係数は+0.53。ProCheckの領域の基準を用いた場合、この傾向は弱く、相関
係数は+0.38であった。

最後に、回転異性体を利用した、分子モデルの妥当性を評価する可能性も示す。