村松 孝彦 「アミノ酸配列からの膜タンパク質の機能予測に関する研究」

発表梗概

膜タンパク質は生体膜に局在しているタンパク質であり、全タンパク質の約20-40(J\(B%占めているといわれており、生体機能において情報伝達や物質輸送等の重要な役割を担っている。ゲノム解析によって新規に同定された多くの膜タンパク質の機能解析の観点から実験を支援する計算機を用いた手法の開発は不可欠であるが、膜タンパク質に焦点をあてた計算機手法は少ない。本論文では、タンパク質の配列解析には欠かせない配列アラインメント法について膜タンパク質に特化した手法を提案する。また、作成した配列アラインメントを利用した機能予測方法を提案する。

まずはじめに汎用的な膜タンパク質アミノ酸配列のペアワイズアラインメント法について述べる。ペア隠れマルコフモデルを用いて、膜貫通領域予測を考慮しながら配列アラインメント法を行うことができる方法を開発し、その手法が従来手法より高い精度であることを示す。

次にGタンパク質共役型受容体(GPCR)という特定のファミリーに対するアラインメント法及び機能予測法について議論する。汎用的なアラインメント手法よりも高精度のアラインメントを作成するために、プロファイル隠れマルコフモデル使用し、さらにモデルに対して立体構造構造に基づく改良を行った。その手法で作成されたアラインメントを基に2つの機能予測法を提案する。

1つ目の機能予測法として、GPCRのペプチド・タンパク質リガンドの残基長を予測する手法を提案する。GPCRの機能解析で主要な課題の1つにはオーファンGPCRのリガンド決定である。ここではペプチド・タンパク質リガンドの特性の1つである残基長をGPCRのアミノ酸配列から予測することで、リガンド候補の優先順位の新しいアプローチを提案する。予測方法としてはアラインメントを基にアミノ酸指標を用いた特徴量を作成し、サポートベクター回帰を用いた。予測の評価結果とオーファンGPCRに適用した結果について議論する。

2つ目の機能予測法として、GPCRとGタンパク質の共役選択性についての予測方法を提案する。オーファンGPCR に対して共役選択性を予測することは、リガンドをスクリーニングする時のアッセイ系構築に役立つ。アラインメント情報からアミノ酸出現頻度の観点から共役選択性と関連があると予測される部位を探す手法を提案し、予測部位と共役選択性の関係について考察した。考察から得られた情報と他の物理化学的な特徴を特徴量として定め、サポートベクター分類を用いて共役選択性を予測する手法を提案する。