Phylogenetic Footprinting法に基づいたグラム陽性菌におけるDnaA-Boxのゲノム分布の比較解析

三原 健治 (0451113)


 DnaAタンパク質が結合する特定の9塩基の配列dnaA-boxは、バクテリアの複製開始点oriCの領域に共通に存在する染色体複製のイニシエーターである。さらにdnaA-box はoriC以外の領域においてもその下流の遺伝子を制御するシスエレメントとしての機能を有することが知られている。本研究では枯草菌及びその近縁種である低GC含量のグラム陽性菌21種間におけるオーソログ遺伝子群(オーソログクラスター)を用いて、Phylogenetic Footprinting法によりdnaA-boxコンセンサス配列が保存されている特定のオーソログクラスターを同定し、DnaAタンパク質が結合することにより、下流遺伝子の転写を制御するようなdnaA-boxコンセンサス配列の予測を試みた。

 低GC含量のグラム陽性菌21種間における4,923種類のオーソログクラスターを、まずdnaA-boxコンセンサス配列の有無、続いてオーソログ遺伝子に対するdnaA-boxコンセンサス配列の相対位置による絞り込みを行った。さらにdnaA-boxコンセンサス配列の存在確率によるマトリックスを利用したオーソログクラスターの絞り込みを行い、最終的に37種類のオーソログクラスターを取り出すことができた。これらのクラスターについて各オーソログ遺伝子のマルチプルアラインメントを行い、dnaA-boxコンセンサス配列が特定の位置に整列するか否かを検討した。また、非コーディング領域にdnaA-boxコンセンサス配列が整列するオーソログクラスターについては、さらに絞り込み条件を緩和することで検討した。その結果、非コーディング領域の共通する位置に、dnaA-boxコンセンサス配列が整列するオーソログクラスターを同定することができた。これらのオーソログクラスター中の各オーソログ遺伝子と転写方向に隣接する遺伝子も他のオーソログクラスターに含まれていることが明らかとなり、隣接する遺伝子を含むオペロンの転写がdnaA-boxにより制御されている可能性を示唆できた。